高度な光電デバイスの使用による近接センシング導入の簡素化
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2024-11-07
光電(PE)センサは、その有効性、堅牢性、動作原理の明確さにより、生産、産業、商業システムにおいて非接触近接センシングに広く使用されています。代表的なアプリケーションには、高速生産ラインでのボトルや缶の検出、出荷用箱内のパッケージの有無の確認、ドアの開閉チェック、あるいは人の存在検出などがあります。
PE近接センサは、さまざまな光センシングモード用に設計することができ、基本的な回帰反射方式は典型的な機構です。シンプルな動作原理にもかかわらず、PEセンサのセットアップには、初期化、微調整、アプリケーションに合わせた構成とセンシングアルゴリズムの最適化、あるいは異なる生産工程に合わせた再調整など、時間のかかる試行錯誤が必要になることがあります。システム設計者は、関連するセットアップや設置の遅れを避けるため、より合理的なソリューションを必要としています。
この記事ではPEの基本の概要を説明します。その後、SICK, Inc.のPE近接センサを紹介し、独自に簡略化されたセットアッププロセスを用いて、PE近接センサをどのように適用できるかを示します。
PEセンシングの基本
PE近接センシングは、検出すべき物体に向けられた、しっかりと集光されたビームを持つ光源に依存しています。この光ビームは、レシーバでどのように検出されるかに応じて、3つの方法のいずれかで使用されます(図1)。
図1:PE近接センシングは、3つの物理的配置で透過光ビームと対応するレシーバを使用することができます。(画像提供:Proximity Switch)
- 拡散反射型センシングでは、トランスミッタとレシーバが一緒に収納されており、トランスミッタからの光ビームが物体に当たって反射することで検出が行われます。
- 回帰反射型センシングでは、トランスミッタとレシーバも同じ筐体に収納されていますが、反射板は物体の反対側にあります。
- 透過型センシングでは、光センサは物体の反対側に位置し、トランシーバからレシーバへの光を物体が遮ることでその存在を検知します。
PE近接センシングは、ライトバリアやライトカーテンのような安全目的にも使用でき、これらのデバイスは戦略的に取り付けられ、安全ゲートとして機能します(図2)。障害物が検出されると、ライトバリアはコントローラまたはハードワイヤード安全回路に信号を送り、障害物が予期せぬものであったり、危険なものであったりした場合、機械をシャットダウンします。
図2:近接センサは安全関連のライトバリアやカーテンに使用できます。(画像提供:SICK Inc.)
PEセンシングは、直感的な動作原理と物理的配置を採用しているので魅力的です。また、反射方式は、片側だけに有線デバイスを必要とするため、設置を簡素化できる点でも優れています。
新たな設計とユーザーインターフェースで多くの課題を解決
PE近接センシングは、そのコンセプトはシンプルですが、慎重な現場での取り付け、設置、調整が必要です。視覚的にノイズの多い環境は、技術者にとって困難でフラストレーションのたまるものであり、射程と照準の考慮は性能と一貫性に影響を与えます。
PEセンシングは、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)と組み合わせて使用されることがよくあります。多くの場合、設置者はPEユニットから離れた場所にあるPLCでセットアップ、テスト、調整、再テストを行う必要があります。さらに、照明の変化、不要な反射や変化、その他の現実世界の歪みは、性能と精度に影響を与える可能性があります。
生産中に発生する問題は特に厄介であり、迅速な解決が求められることで、さらに悪化することがよくあります。
これらの問題を克服するために、SICKは近接センサのW10ファミリを開発しました(図3)。
図3:W10シリーズは、コンパクトで頑丈なハウジングに、完全で洗練されたPE近接センサを搭載しています。(画像提供:SICK Inc.)
このユニットは、タッチスクリーンディスプレイを搭載した初のデバイスとして特に注目に値します(図4)。
図4:W10ユニット独自の一体型タッチスクリーンは、ユーザーエクスペリエンスを大幅に向上させます。(画像提供:SICK Inc.)
このディスプレイインターフェースは、使いやすく、素早い設置をサポートし、各アプリケーションへの適応を加速させます。ナビゲーションが容易なため、デバイスの始動にかかる時間を短縮し、異なるターゲット、速度、または予期せぬ問題に対する使用中の調整を容易にします。また、ユニット上の物理的なスイッチやノブ、調整が不要になるため、信頼性、筐体の完全性、セキュリティが向上します。
W10シリーズのクラス1レーザー光源は、高い繰り返し精度で正確な検出結果を提供します。集光された赤色レーザービームは、物体に小さな光スポットを作り出し、高速で正確なレーザー三角測量システムと評価ラインスキャンと組み合わされます。
これは、高い繰り返し精度と迅速な判断による検出結果の基盤となります。スピードモードでは、応答時間はわずか1.8ミリ秒(ms)であるため、機械の高速運転でも信頼性の高いスイッチング動作が保証されます。2色の表示用LEDにより、検出状態を即座に視覚的にフィードバックします。さらに、このユニットは、光沢、色、構造など、異なる表面特性を持つ物体を堅牢かつ確実に検出します。
PE近接センサは、特定の適応のための個別の「ティーチイン」(学習)オプションを提供しています。定義された距離で物体を検出する通常の1ポイントティーチに加え、2ポイントティーチモードにより、異なる高さの物体の検出が可能になります。マニュアルモードはティーチオプションが拡張され、さらに柔軟性が高まります。3つの用途に最適化された動作モードは、必要に応じて前景または背景の抑制を可能にするために、ディスプレイを使用して起動することができます。
オペレータは、一体型タッチスクリーンから、速度、標準または精密動作モード、周囲抑制、個別のティーチイン設定、事前設定パラメータ、および制限値の設定を直感的に選択、調整、保存することができます。W10のユニークなセキュリティスクリーンロック機能により、設定が第三者によるアクセスから保護されます。
ユーザーインターフェースの柔軟性はタッチスクリーンだけにとどまりません。W10のIO-Link機能からも同じ機能にアクセスできます。これにより、リモート設定や、記録されたセンサデータを既存のオートメーションネットワークへ効率的に統合するオプションが提供されます。
W10の電気的オプションとパッケージング
W10センサデバイスのデジタル出力は、設計上重要な考慮事項です。このユニットには、調整可能なプッシュプルPNP/NPN出力があります。出力がPNPに設定されている場合、出力信号は正で、センサの出力は電流シンク入力カー ドのために電流を吐き出すことができます。センサがNPNに設定されている場合、出力信号は負で、出力は電流シンク入力カードに接続するために電流を吸い込むことができます(図 5)。両方のオプションがあることで、PLCや他のシステムコントローラとの基本的な信号レベルの互換性が保証されます。
図5:W10ユニットの出力段は、関連するPLCとの互換性を保証するために、電流シンクモード(上)または電流ソースモード(下)の両方を備えています。(画像提供:www.realpars.com)
出力は明暗出力モード(ライトオンまたはダークオン)に設定できます。ライトモードでは、光がレシーバに届くとセンサの出力がオンになり、光が遮られるとオフになります。一方、ダークモードでは、光が遮られるとセンサの出力がオンになり、光がレシーバに到達するとオフになります。
これらのユニットは通常、産業環境で使用されるため、物理的なパッケージングは重要です。W10ユニットは、316Lステンレス鋼ハウジングを採用した頑丈な設計で、IP67およびIP69k保護等級を備えています。パッケージ寸法は18×57×42.2ミリメートル(mm)で、-10°C~+55°Cの周囲温度範囲で動作します。
産業用センサの課題の1つは、現場や工場でさまざまなユニットをサポートする必要があることです。この現実が、社内の在庫とサポートを複雑にしています。しかし、W10シリーズの柔軟性により、このファミリはわずか2つボディスタイルですみます(図6)。それぞれに2つのセンシング範囲があり、合計でわずか4つの異なるモデルしかないため、選択プロセスが簡素化されます。
図6:W10ファミリの機能的に類似したユニットには、2つのハウジングスタイルがあり、それぞれに2つのセンシング範囲があります。(画像提供:SICK Inc.)
W10シリーズのモデル1133545は長方形のハウジングで、標準取り付け用で1インチ(in.)の取り付け穴付きで、物体との距離は25mm~400mm、同様のモデル1133547は物体との距離が25mm~700mmに対応しています。ハイブリッド設置用に、モデル1133544は前面にM18用のネジ山と側面に1インチの取り付け穴付き、物体との距離は25mm~400mmで、対応するW10モデル1133546は同じエンクロージャですが、物体との距離は25mm~700mmです。
まとめ
W10 PEセンサユニットは、産業用アプリケーションに多用途で堅牢な拡散反射型ソリューションを提供します。その高度な機能には、業界初の一体型タッチスクリーンユーザーインターフェースが含まれ、設置、セットアップ、調整が簡素化される一方で、洗練されたアルゴリズムにより、機能と精度が向上しています。
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