紫外線放射の特性と利点
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2022-04-06
略史
1801年、ドイツの物理学者ヨハン・ヴィルヘルム・リッターがUV放射を発見しました。彼は、塩化銀を染み込ませた紙に、可視スペクトルの紫端の先にある不可視光線を当てると、黒ずみが加速されることを観察しました。この光線を、前年に発見された可視スペクトルの反対側の「熱線」(IR)と区別するために、彼はUV放射を「酸化光線」と呼んで、観察された化学反応性を強調しました。この言葉は、すぐに「化学線」という言葉に取って代わられ、19世紀の残りの期間、一般的に使われるようになった。化学線と熱線は最終的に、現在一般的に使用されている紫外線と赤外線という名称に置き換えられました。
UVとは?
電磁スペクトルにおいて、紫外線(UV)放射は100nm~400nmの波長を持つものとして分類されます。これらの波長は、可視光より短く、X線よりも長くなっています。紫外線には3つの分類があり、UVAは315~400nm、UVBは280~315nm、UVCは100~280nmの波長を持っています。
図1:UV波長は、人間の目で見える範囲のすぐ下の波長です。(画像提供:W.S. Badger Company, Inc.)
太陽は、100~400nmの範囲にわたってUVを放射しています。地球大気圏の端では、太陽光は約50%が赤外線(IR)、40%が可視光線、10%が紫外線で構成されています。太陽が最も高い位置にある場合、地表に到達する頃の太陽光の組成は、赤外線53%、可視光線44%、紫外線3%となります。地上に届くこの3%の紫外線のうち、約95%がUVA、約5%がUVBです。もちろん、この比率は雲量などの大気条件によって多少変化します。
UVC波長の多くは、上層大気中の酸素に吸収されます。これにより、オゾン層でオゾンが生成されます。オゾン層は、UVBの大部分と、まだ酸素に吸収されていないUVCの残りを遮断します。
人工UVエミッタ
UV放射の光源は、太陽だけではありません。この波を発生する人工デバイスもいくつかあります。
ブラックライト
最も身近なUV発生器は、ブラックライトです(図2)。一般的なブラックライトランプは、可視光をほとんど含まないUVA波を放射します。たとえば、蛍光灯ブラックライトは、ガラス管の内側に蛍光体を塗布することで、可視光の代わりにUVA波を放射します。より強力な水銀灯ブラックライトは、同じ原理でUVAをより大規模に放射し、主にコンサートや劇場のディスプレイに使用されています。
図2:一般的な蛍光灯ブラックライトは、UVA波を放射します。
ブラックライトの主な用途は、特定の物質に紫外線を当てたときに生じる蛍光を見る際に、外部からの可視光が望ましくない用途です。
短波UVランプ
短波UVランプは、蛍光体を塗布していない蛍光ランプ管で構成されます。UVC帯の253.7nmと185nmにピークを持つ紫外線は、主に管内の水銀によって放射されます。しかし、溶融石英ガラス管を通過するのは253.7nmの波長のみで、185nmの波長は完全に遮断されます。これらのランプの標準効率は30~40%で、UVC電力は従来の蛍光灯の2~3倍です。
これらのランプの主な用途は、実験室表面、食品加工表面、水源などの殺菌です。
UVガス放電ランプ
ガス放電ランプには、特定のスペクトル線でUV放射を発生させるために選択されたさまざまなガスが含まれており、特殊な科学用途で使用されます。これらのランプの主な用途は、化学分析に使用されるUV分光装置です。
レーザー
レーザーは、紫外線を発生させるために特別に製造されます。レーザー技術(ガスレーザー、レーザーダイオード、固体レーザー)や使用する材料に応じて、紫外線帯域全体をカバーするレーザーを作成できます。
UVレーザーには、レーザー彫刻、皮膚科学、角膜切除、化学、通信、光学ストレージ、集積回路製造など、多くの用途があります。
発光ダイオード
発光ダイオード(LED)は、特に紫外線を発生させるために製造されています。これらのデバイスは、紫外線硬化、滅菌、皮膚治療および、混合物の成分を識別するための化学用途で現在使用されています。
健康問題
UV放射は、人間の健康に有益な影響と有害な影響の両方を及ぼします。過剰暴露は有害ですが、適度の暴露には有益な効果があります。
有害な影響
UV放射(UVA LEDはDigiKeyで入手可能)に過度に暴露すると、目、皮膚、免疫系に有害な影響を受ける可能性があります。
UVA放射がすぐに反応を引き起こすことはほとんどありませんが、UVB帯の始まりに近い波長(315nm)では、光線角膜炎(目の痛み)や皮膚の赤み(肌の色が明るいほど敏感)が起こり始め、波長が300nmに近づくとダメージが急激に大きくなります。UVC帯の265nm~275nmのUVは、目や皮膚に最もダメージを与えます。
UVBの過剰暴露は、日焼けの原因になるだけでなく、ある種の皮膚がんの原因にもなります。
有益な影響
UVの過剰暴露は有害ですが、適度なUV暴露には健康上の利点があります。UV暴露による健康上の主な利点は、ビタミンDの生成、気分の改善、エネルギー増加の3つです。
ビタミンD
UV放射への適度な暴露は、ビタミンDの優れた源となります。このビタミンは、カルシウム代謝、インスリン分泌、血圧、免疫、細胞増殖の調節に役立ちます。ビタミンDの濃度が高いほど、心臓病、脳卒中、糖尿病の発症率が低く、血圧が低くなる傾向があることが分かっています。
皮膚疾患
皮膚疾患の中には、UV放射で治療できるものもあります。現代の光線療法により、湿疹、皮膚炎、くる病、アトピー性皮膚炎、限局性強皮症、黄疸、乾癬、白斑などの治療を成功させることが可能になりました。
心臓血管と高血圧
高血圧でビタミンDが不足している患者では、UVB暴露によって血圧が下がることが分かっています。他の医学的試験や研究により、ビタミンDとは関係なく、UV放射に測定可能な健康上の利点があることが示されました。
セロトニン
セロトニンの生成はビタミンDによって促進され、その生成量は体のUV放射暴露に正比例します。セロトニンレベルの変化は、気分や行動に影響を与えます。セロトニンが人体に及ぼす正確な影響は完全には分かっていませんが、満足、安らぎ、幸福といった気持ちをもたらすと考えられています。
メラニン
適度なUV暴露により、皮膚の褐色色素であるメラニンの量が増加します(日焼けとして知られています)。メラニンはUVA放射とUVB放射の両方を吸収し、熱として放散します。これにより、DNAの直接的および間接的な損傷から皮膚を保護することができます。
応用
UV放射の特性を活かした応用方法はいくつかあり、人々の健康や幸福に多くの恩恵をもたらしています。現在は、微生物を殺し、汚染物質を除去するUV波の能力が主に使用されています。
空気浄化
室内環境汚染物質は、有機炭素系化合物がほとんどで、240nm~280nmという高強度UVCに暴露すると分解されます。高強度UVCにより、微生物のDNAを破壊することも可能です。そのため、SETi/Seoul ViosysのTUD7MF1B UVC LED(図3)のようなUVCエミッタを通過した空気を循環させることで、設置した部屋の空気浄化を促進できます。この275nm(公称)のUVC LEDは、標準放射出力11.5mWで、スターボードユニットとして提供されており、空気浄化を含むさまざまな用途に適しています。
図3:SETi/Seoul Viosysが提供するこのUVC LEDは、熱工学を簡略化するために、スターボードユニットとして提供されています。(画像提供:ETi/Seoul Viosys)
滅菌と消毒
UVC LEDは、減菌および消毒のさまざまな用途にも使用できます。医学や生物学の研究所では、ツールや作業場の表面を滅菌するために、他の技術と組み合わせてUVC放射が使用されています。
UVC放射で一般的なその他の用途には、廃水処理や自治体の飲料水処理が含まれます。また、天然水メーカーによる製品の減菌にも使用されています。さらに、食品加工業界では、微生物の殺菌にUVC放射が使用されています。たとえば、光源を通過して流れる果汁を、UVCによって低温殺菌することが可能です。
治療
UV放射は浄化や減菌に役立つだけでなく、乾癬や白斑(皮膚が斑点状に色素を失う疾患)などの皮膚治療にも役立ちます。この場合に役立つのは、UVC波ではなく、UVB波です。この用途では、UVB LEDが最適です。280nm~315nm範囲のこれらのデバイスは、皮膚治療デバイスを設計する際の基礎となります。これらのデバイスには、取り付け方法と放射出力のさまざまなオプションが用意されています。
まとめ
UV放射には、人間に有害な影響と有益な影響の両方があります。適切に設計を行うことで、UVB波とUVC波の有益な特性を感染症予防や特定の皮膚疾患の治療に利用できます。DigiKeyはこの目的のために、上記の用途に最適で、他のUV光源よりも設計が容易なUV LEDを提供しています。
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