スイッチのチュートリアル
DigiKeyの提供
2017-09-21
スイッチはエレクトロニクスに欠かせません。ほとんどの電子機器には、数個とは言わないまでも、スイッチが搭載されています。なぜなら、デバイスが使用される場合、通常、いくつかの動作モードが存在するからです。明確なモードとしてオンとオフがありますが、多くの場合、調整可能な設定もあります。車のウィンドウはモーメンタリスイッチで操作し、ウィンドウを上げたり下げたりすることができます。ゲーミングステーションでは、スイッチでゲームを操作します。エレクトロニクス業界では、スイッチの用途を挙げればきりがありません。今日、市場にはさまざまな種類のスイッチがあり、スイッチを選ぶ際に一般的に考慮される項目がいくつかあります。必要な極や投はいくつか、スイッチは保持式かモーメンタリ式か、最大電流や電圧定格など電気的な考慮事項は何か、といった質問があるのです。この記事で、スイッチの世界に少しでも光を当てることができればと思います。
各種のスイッチを説明する前に、それぞれのスイッチにあるさまざまな回路を確認しておくとよいでしょう。スイッチの回路を表す用語として、次の2つがあります。それが「極」と「投」です。「極」は、スイッチの中にいくつの回路があるかを示します。単極スイッチでは、一度に1つの回路しかアクティブになりません。「投」は、極をいくつのポジションに接続できるかを示します。図1には、単極単投スイッチ(SPST)の回路図を示します。

図1:SPST回路図。
SPSTスイッチの場合、極は1つであり、この構成で使用可能な回路は1つだけです。開いているか、閉じているかのどちらかです。単極スイッチには、ノーマリオープンとノーマリクローズがあります。閉じているときはスイッチに電流を流すことができ、開いているときは電流を流すことができません。ここで、電流が流れる経路は1つしかありませんが、電流が流れる場所には2つの選択肢があるとします。それが単極双投(SPDT)です。このポイントを図2に示します。

図2:SPDT回路図。
このようなロジックを使うことで、スイッチの理解が容易になります。SPDTと似たようなものに、二極双投(DPDT)があります。図2と似ていますが、極が1つではなく2つになっています。図3は、DPDTの回路を示したものです。

図3:DPDT回路図。
スイッチの注意点として、同じような目的を達成するために、異なる回路がうまく機能することが挙げられます。たとえば、モーメンタリ機能を持たない単純なオン/オフスイッチがあります。これはSPSTまたはSPDTで実現可能です。CW IndustriesのGRS-2011-2019を例にとって説明します。このデバイスの底面には、SPSTスイッチの代名詞ともいえる2つの端子があります。スイッチが1つのポジションにあるとき、これらは接続され、電流を流すことができます。スイッチが他のポジションにあるときは、接続されず、電流は流れません。もし、SPSTの代わりにGRS-2013A-2000のようなSPDTを使用しても、同じ結果が得られます。単純に、2つの端子だけを使い、1つは空けておくということです。これは、ノーマリオープンまたはノーマリクローズのSPSTスイッチが必要な場面で便利です。SPDTは、そのどちらにもなります。SPDTを振り返ってみると、スイッチの機能を理解することも重要です。SPDTには、アクチュエータのポジションが2つある場合と3つある場合があります。これを理解するために、ON-OFF-ONのスイッチを思い浮かべてください。これは、モータが一方向に回転した後、停止し、もう一方に回転するような用途によく使われます。SPDTでも可能ですが、すべてのSPDTスイッチで可能なわけではありません。GRS-2013A-2000はON-OFF-ONスイッチなので、このスイッチでその動作を実現することは可能でしょう。C&KのD508J12S205QAでは実現できません。ON-MOMスイッチだからです。これは、スイッチが通常ONのポジションにあり、瞬間的にOFFにできるということです。応用例としては、スーパーのレジのコンベアなどが考えられます。配線を逆にするだけで、アクチュエータが押されるまでコンベアのモータが作動しないようになります。アクチュエータが押されると、スイッチの内部で瞬間的に接触し、電流が流れるようになります。アクチュエータが解除されると、スイッチは通常のオフポジションに戻り、電流は流れなくなります。
スイッチを選ぶ際には、電気的な特性も重要なポイントになります。50アンペアが必要な回路では、10アンペアの定格を持つスイッチは機能しません。スイッチの電圧と電流の定格を確認することが常に重要になります。また、交流の電圧・電流と直流の区別もあります。多くの場合、メーカーはこの2つの定格を示していますが、必ずしもそうとは限りません。スイッチの電圧定格を確認する際は、メーカーが示している電圧の種類を確認します。定格が125VACであれば、AC電圧を指していることになります。定格が125Vと記載されていれれば、DC電圧を指していることになります。この用語は、製品のデータシートや図面に記載されています。DigiKeyのウェブサイトでは、さらに区別することが可能です。E-SwitchのPS1024AREDはAC定格ですが、DigiKeyのウェブサイトでは125Vと記載されています。これは、その定格の欄が「電圧定格-AC」だからです。図4はDigiKeyのウェブサイトの内容、図5はPS1024AREDの定格を示しています。

図4:PS1024AREDの製品属性。

図5:PS1024Aの電気的仕様の図。
DigiKeyのウェブサイトには記載されていませんが、図面上の注記を見ると明らかなのは、このスイッチには2種類の定格があるということです。第1の定格は125VACで3A、第2の定格は250VACで1.5Aです。同じスイッチに2つの定格があるのはなぜでしょうか。それは、電力が電圧と電流の関数であるためです。どちらの定格も、同じ電力定格になります。次の数字を電力定格の式に入れると、同じ数字が得られます。

多くの場合、スイッチはAC定格のみで、DC定格はありません。ACスイッチのDC定格を判断するために使用できる経験則があります。スイッチの最高電流定格が何であれ、電流は変わらず、DC電圧は30ボルトに設定されます。PS1024Aには、125VACで3A、250VACで1.5Aという2つの定格があります。このルールは、スイッチが3Aの定格を取り、それを30VDCまで使用できることを意味します。これは、Carling Technologiesの「DCの経験則」と呼ばれる一般的なルールです。多くの場合、スイッチには馬力定格も示されます。これは、誘導性負荷が極めて高い突入電流を持つことがあるためです。馬力定格は、ACモータで使用されるスイッチ用に設計されます。これは、これらのスイッチが他のデバイスに使えないということではありませんが、その定格がスイッチに付けられている理由となっています。
押ボタンスイッチ
スイッチの一種に押ボタンスイッチがあります。これらのスイッチには、アクチュエータが搭載されています。アクチュエータは、あまり堅苦しい用語を使わずに、ボタンと呼ぶこともあります。これらは多くの場合、パネル実装されたり、ボードに設置されたりします。図6は、NKK SwitchesのKB16CKW01-5F-JFを示しています。

図6:KB16CKW01-5F-JF。
KB16CKW01-5F-JFの面白いところは、端子の数が多いことです。これはSPDTのため3端子しかないはずですが、このデバイスには5端子あります。これは、このデバイスが照光式であるためです。多くのスイッチが照光式であり、公称照度電圧が設定されます。このスイッチの照度電圧は2.1VDCです。ドキュメントでは、2番端子がコモン端子であり、図7のようにL(+)とL(-)の端子からLEDに電源供給されることが示されています。

図7:KB16CKW01-5F-JFのドキュメント。
多くの場合、スイッチの製品ページの一番下にアクセサリが掲載されています。DigiKeyウェブサイトでKB16CKW01-5F-JFの製品ページ下部を見ると、このスイッチに付属する4つのアクセサリを確認できます。
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これらのアクセサリは、DigiKeyウェブサイトのKB16CKW01-5F-JFのページ下部、またはシリーズのデータシートに記載されているドキュメントで確認できます。多くの場合、メーカーはスイッチの完全なシリーズを作成します。これは、それに付属する独自の製品グループです。KB16CKW01-5F-JFは、ドキュメントに記載されている特定のアクセサリを装着できるように特別設計されています。保護ガードアクセサリは、シリーズデータシートのD34ページに記載されています。図8は、保護ガードとその注文可能な部品番号であるAT494を示しています。

図8:KB16CKW01-5F-JFのドキュメント。
スイッチメーカーがシリーズ全体を1つのデータシートにまとめているのは、部品ごとの変更点が些細なものであることが多いためです。品番の違いは、色の違いだけであることも多くあります。LEDアクセサリのAT635Fは、その好例です。ドキュメントには、オプションとしてAT635という番号だけが記載されています。先ほどの製品の末尾は「F」です。図9は、末尾「F」が緑色のLEDであることを示す発注図を示したものです。発注図の左側には、AT635のベースLED番号が記載されています。中央の列には、赤色、こはく色、緑色の選択肢があります。「緑色」のボックスの下には、5Fと書かれています。つまり、AT635Fの場合、LEDは緑色になります。

図9:KB16CKW01-5F-JFのドキュメント。
タクタイルスイッチ
タクタイルスイッチは押ボタンスイッチに似ていますが、一般的にかなり小型です。リセットスイッチのある個人用ホームルータを想像してください。このスイッチは通常、誤って押してしまわないように、プラスチック筐体に埋め込まれています。一般的に、このタイプのスイッチを押すには、ペーパークリップや爪楊枝を使う必要があります。このタイプのスイッチは、タクタイルスイッチやモーメンタリスイッチであることが一般的で、通常、オンまたはオフのスイッチとしては使用されません。多くの場合、リセット、カウント、ストップなどの用途で使用されます。これらは一般的に、非常に低い電圧定格と電流定格を備えています。タクタイルスイッチの一例として、APEM Inc.のMJTP1230があります。このスイッチは、SPST-NO(単極単投ノーマリオープン回路)です。つまり、アクチュエータが押されるまで、このスイッチには電流が流れません。アクチュエータを解除すると、スイッチは再び自動的に開き、電流が流れなくなります。図10は、MJTP1230の画像を示しています。

図10:MJTP1230。
このスイッチには4つの脚があります。これは、タクタイルスイッチの場合に多く見られます。これは接続できる回路が2種類あるためではなく、2本の脚を追加することで、基板にはんだ付けする際にスイッチに物理的なサポートを加えるためです。片側の2本の脚は、スイッチのポジションに関係なく、恒久的に接続されます。スイッチの反対側も同様に、脚が常に接続されます。アクチュエータが押されると、スイッチの両半分の間に導通が生じます。回路としては、このスイッチは図1の回路図に従うことになります。
ディップスイッチ
ディップスイッチとは、「デュアルインラインパッケージ」に入っているスイッチのことです。ブレッドボードに収まるように設計されます。これらのスイッチは、小型のSPSTスイッチの集合体です。たとえば、舞台照明のDMX制御などに使われています。また、すべての照明器具にアドレスを割り当てることができます。最近のDMX制御の照明では、これをマイクロコントローラでプログラムし、ディスプレイ上の数字を上下させるだけで制御できます。古いDMX制御の照明では、ディップスイッチを変更することで、その照明器具に適切なバイナリアドレスを与えることができました。このタイプのスイッチは、面実装やスルーホール実装が多いのですが、パネル実装のものもあります。図11は、CTS Electrocomponentsのディップスイッチである208-4を示しています。

図11:208-4。
ロッカスイッチ
ロッカスイッチもまた、市場で非常に人気があります。このタイプのスイッチは、凹型のアクチュエータを備えており、それぞれのポジションから前後に揺動します。民生用電子機器のON/OFFスイッチには、ロッカ型が多く使われています。パネル実装が一般的ですが、基板に直接設置することも可能です。図12は、ZF ElectronicsのCRE22F2BBRLEを示しています。

図12:CRE22F2BBRLE。
このスイッチはSPSTスイッチのため、ONかOFFにしかなりません。このスイッチは照光式であるため、中央の端子があります。照光式のSPSTスイッチには、通常3つの端子があります。外側の端子は、ソースからグランドへ電流を流す役割を担います。中央の端子はライトに使用します。スイッチが開いているときは、ライトに電流が流れません。スイッチを閉じると、電流はソースからライトを通り、グランドに流れます。
もうひとつ、ロッカスイッチで注目すべきは、端子の実際の大きさです。これらはパネル実装されることが多いため、クイックコネクト形式の端子でバラバラに結線されることが多くなります。CRE22F2BBRLEは、0.25インチ幅の端子を備えています。これは、DigiKeyウェブサイトの製品属性「終端スタイル」に記載されています。一般的な端子サイズは、0.110インチ、0.187インチ、0.250インチです。これらのクイックコネクタは、DigiKeyウェブサイトの「端子 - クイックコネクト&クイックディスコネクトコネクタ」ページでご覧いただけます。
スナップアクションリミットスイッチ
製造業ではしばしば、モノを数えるためにスイッチが必要になることがあります。ある時点で何個の製品が通過したかをカウントしなければならない生産ラインを想像してください。製品に一定の重量があり、スイッチを作動させることができるかもしれません。この用途では、何かをカウントするために少し動くだけのスイッチが必要になることがあります。OmronのD2VW-5L2-1HSは、このようなことを実現するために使用できるスナップアクションリミットスイッチの一例です。図13は、そのような工程に使用可能な延長アームを備えたD2V2-5L2-1HSを示しています。

図13:D2VW-5L2-1HS。
スナップアクションリミットスイッチには、ON/OFFスイッチのように回路を保持するものがありますが、その多くはモーメンタリ式です。SPST-NOまたはSPST-NCのスナップアクションリミットスイッチは、非常に一般的なものです。先ほども少し触れましたが、ノーマリオープンやノーマリクローズのSPSTの代わりに、SPDT回路を使用するのも良い方法です。それは、ノーマリオープンまたはノーマリクローズが要求される用途の場合、このスイッチがそのタスクを実行できるためです。
スナップアクションリミットスイッチの最も一般的なアクセサリは、アクチュエータアームでしょう。ローラーが付いていることが多いのですが、フラットバーだけの場合もあり、構成は数種類あります。図14は、D2VWシリーズのアクチュエータスタイルの一部を示しています。

図14:アクチュエータのスタイル
トグルスイッチ
トグルスイッチも人気のあるスタイルのスイッチです。これらは多くの場合、ロッカスイッチのようにパネルに取り付けられます。瞬間的な機能にも使用できますが、通常は保持的な機能に使用されます。一般的には、小さなバットのような形のアクチュエータと、パネル実装用のネジ付きブッシングを備えています。図15は、E-Switchの200MSP3T1B1M2QEHを示しています。

図15:200MSP3T1B1M2QEH。
トグルスイッチの一般的なアクセサリは、取り付け用のロックワッシャと六角ナットです。これらは通常、DigiKeyウェブサイトの製品ページ下部にある「関連製品」エリアに記載されています。200MSP3T1B1M2QEHの場合は、図16に示すように、製品ページに両方のアクセサリが掲載されています。

図16:関連するロックワッシャと六角ナット。
その他、タクタイルスイッチのアクセサリとして、安全カバーやブーツが一般的です。図17と図18は、これらのアクセサリをそれぞれ示しています。安全カバーはCW IndustriesのGTS447A101HR用のアクセサリ、ブーツはNKK SwitchesのM2012SS1W01用のアクセサリです。

図17:GTS447A101HR用の安全カバー。

図18:M2012SS1W01用のブーツ。
ロータリスイッチ
多くの場合、複数の動作モードを選択できるスイッチが必要とされます。このような用途では、ロータリスイッチが必要になることがあります。極は1個から数個の間ですが、投はかなり多い場合があります。ロータリスイッチの一例として、ElectroswitchのC7D0124N-Cがあります。これはSP24Tスイッチです。つまり、電流を流すための選択肢は24種類ありますが、電流は一度に1つしか流れません。ロータリスイッチのアクセサリとしては、ノブ、ダイヤルプレート、ロックワッシャ、六角ナットなどが一般的です。前述した製品と同様、これらのアクセサリは通常、DigiKeyウェブサイトの「関連製品」タブで確認できます。図19は、C7D0124N-Cを示しています。

図19:C7D0124N-C。
ロータリスイッチには、「メイクビフォアブレイク」か「ブレイクビフォアメイク」かという区別があります。また、これを説明するための別の用語として「ショーティング」「ノンショーティング」もあります。「ショーティング」とは、「メイクビフォアブレイク」のことです。つまり、スイッチがあるポジションから別のポジションに移動しても、回路が開くことはありません。スイッチは、目的のポジションに完全に移動するまで、一時的に2つのアクティブな回路を持ちます。「メイクビフォアブレイク」ロータリスイッチの一例として、CTS Electrocomponentsの212T0111S332RAがあります。この反対が「ノンショーティング」または「ブレイクビフォアメイク」です。つまり、スイッチが新しい回路のポジションに来る前に、最初の回路が完全に切断されます。「ブレイクビフォアメイク」ロータリスイッチの一例としては、E-SwitchのKC52A30.001NPSがあります。
キーロックスイッチ
キーロックスイッチは、非常に一般的なスイッチです。自動車のイグニッションは、オフオンモーメンタリスイッチの一例です。車のイグニッションにキーを差し込むと、スイッチはONのポジションになりますが、車を始動させるまではONのポジションで何も起きません。モーメンタリポジションは、車両を始動させる位置で、その時点でキーはONのポジションに戻されます。車両の電源を切るには、キーをOFFのポジションに回す必要があります。キーロックスイッチの例としては、図20に示すHoneywell Sensing and Productivity Solutionsの84829-07があります。

図20:84829-07。
まとめ
現在、市場にはさまざまな種類のスイッチがあります。それらはすべて、回路をつなぐという同じ目的を達成するために機能します。スイッチの機能には、保持型とモーメンタリ型があります。保持機能付きスイッチは、手動で動かすまでそのポジションを保持します。逆に、モーメンタリ機能を持つスイッチは、自動的にデフォルト状態に戻ります。用途に応じて、必要なスイッチのタイプが絞り込まれます。スイッチの回路は、最大許容電流や最大許容電圧などの物理的なパラメータとともに、スイッチを選択する際の最大の決め手となります。スイッチのスタイルは置き換え可能です。電子回路は、トグルスイッチでもロッカスイッチでも同じように動作します。スイッチのスタイルは、技術者の好みやスイッチが置かれる環境によって、大きく左右されます。
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