産業環境におけるLED照明ソリューションの指定

著者 Jeff Shepard(ジェフ・シェパード)氏

DigiKeyの北米担当編集者の提供

照明は、ロジスティクス、機械操作、制御キャビネット、作業場、製造ラインなど、さまざまな活動において、安全で効率的、かつコスト効率の高い産業環境を設計するための重要な要素です。LEDが優れた照明ソリューションを提供できるケースは増えています。従来の蛍光灯、メタルハライド、高圧ナトリウムなどの照明技術に比べて、LED照明器具はエネルギー効率が高く、運用コストを削減し、長寿命で、メンテナンスコストも低減できます。産業用照明器具は、厳しい環境下で使用されることが多く、労働安全や衛生に加えて、保護等級や規定レベルの電力品質が要求される場合があります。これらの多様な要件のバランスを取ることは、照明器具の選択プロセスを複雑にします。

この記事では、LEDを中心とした産業用照明器具に関連した、ルーメン、ワット数、効率、ルクス、帯状ルーメン分布、相関色温度、演色評価数、定格寿命、コストなどの性能指標について考察します。さらに、保護等級要件、全高調波歪み、電力品質の要求、危険環境向けの照明など、環境的配慮について詳しく説明します。記事の最後に、ピックトゥライトシステムの照明、フォークリフトの誘導、作業場の一般照光、機械照明、制御キャビネットの照明向けに開発されたBanner Engineeringの具体的なソリューションを紹介します(図1)。

さまざまな形式で提供されているLED照明器具の画像図1:LED照明器具は、幅広いアプリケーションに最適化されたさまざまな形式で提供されています。(画像提供:Banner Engineering)

性能指標

用途に応じた最適な照明器具を選ぶための基本は、照光レベルを指定することです。照明器具の動作効率から、標準的な白色光をどれだけ再現できるかまで、数多くの指標を考慮する必要があります。それは1本のロウソクの明かり、つまりカンデラ(Cd)から始まります。Cdは、特定の光源(標準のロウソク)が特定の方向に発する可視光の光度を測る基本的なSI単位です。Cdの概念に基づいて考案された、照明器具を比較するための重要な指標には以下のようなものがあります。

  • ルーメン(lm) – 1Cdの均一な点光源が単位立体角内に発する光に等しい光束。全方向への光出力が考慮されます。
  • ワット(W) – 電力の消費量:DC回路の場合は、W=VDC x アンペア。AC回路の場合は、W=VRMS x アンペア。
  • 効率(lm/W) – 光源が可視光を生成する際の効率。
  • ルクス(lm/m2)– 人間の目で見たときの、ある面に当たる光の強さ。
  • 帯状ルーメン分布 – 照明器具から放出されるルーメンが、ディスクリート垂直面のゾーンに分布すること。照明器具の間隔要件を決めるために使用されます。
  • 相関色温度(CCT) – 光源と同じ色度を持つ黒体放射体の温度をケルビン(K)度で表したもの。白色光のCCTの範囲は2700K~6500Kです。
  • 演色評価数(CRI) – 理想的な光源や自然光と比較して、さまざまな物体の色を忠実に再現することができる光源の能力。CRIの範囲は0~100です。白熱電球のCRIは100ですが、LEDのCRIの範囲は80~90以上です。

照明技術の進化に伴い、最適なソリューションを指定するプロセスはより複雑になっています。たとえば、LEDの効率は、蛍光灯や高輝度放電(HID)ランプの効率よりも大幅に高くなります。蛍光灯やHIDが全方向に光を放つのに対し、LEDには指向性があります。要するに、LEDとLED、蛍光灯と蛍光灯などを比較する際に、これらの指標が最も有効だということです。異なる照明技術を比較するには、多くの場合、ユーザーはどれが最善かを判断するためにサンプルを並べて評価する必要があります。

生成される光の質に加え、ユーザーは照明器具を駆動するバラストやドライバの全高調波歪み(THD)や力率(PF)にも注意する必要があります。THDは、電子パワーコンバータに流入する電流の歪みを示す指標です。THDが低いということは、ピーク電流が低いということであり、ビル内の配電網の効率が上がり、地域の電力会社の需要が減ることを意味します。IEEE 519-2014は、高調波を理解し、電力系統における高調波制限を適用するのに役立つリファレンスです。THDの通常の要件は20%以下です。PFも同様に重要な指標です。同じ出力電力であれば、PFの低い負荷(バラストやドライバ)のほうが、PFの高い負荷よりも多くの電流を消費します。PFは0と1の間の無次元数です。バラストとドライバは、PFが0.9以上である必要があります。

寿命とコストの考慮事項

LEDは一般的に25,000時間以上の寿命となっていますが、経年変化により効率や輝度が低下します。LED照明器具の寿命は、初期の光出力の70%に低下するまでの時間を基準としています。これをL70パラメータと言います。LED以外の照明技術の場合、ある時点で致命的な故障が発生します。その寿命の定義は、ユニットの50%が故障すると予想されるまでの稼働時間数です。また、LED以外の技術でも、経年変化によりルーメン値が低下していきます。この効果はランプのルーメン低下(LLD)と呼ばれ、照明技術によって異なります(表1)。

照明技術 定格寿命(時間) 定格寿命を迎えたランプのルーメン低下(LLD)
ハロゲン白熱灯 3,000~5,000 5%
リニア蛍光 15,000~45,000 10%
高圧ナトリウム 15,000~40,000 30%
LED 20,000~50,000+ N/A

表1:ランプのルーメン低下と定格寿命の比較。(表提供:Banner Engineering)

照明技術のコストを比較するためには、ユーザーは初期の人件費と設備費に加えて、照明器具の寿命までのエネルギー、メンテナンスの人件費、設備費を考慮する必要があります(図2)。初期の人件費と設備費は、エネルギー効率の向上とメンテナンスの必要性の低下によって克服でき、より長持ちする効率の良いLEDは、寿命全体にわたって大幅な節約をもたらします。

15年間のライフサイクルを想定した照明コスト比較のグラフ図2:15年間のライフサイクルを想定した照明コスト比較のグラフ。(画像提供:Banner Engineering)

環境要件

産業施設で使用される照明器具には、危険な条件に耐える設計が必要です。National Electrical Code(米国電気工事規程)では、3種類の危険場所が定義されています。

  • クラスI – 可燃性ガスまたは蒸気
  • クラスII – 可燃性粉塵
  • クラスIII – 発火しやすい繊維や飛散物

米国の連邦規制によれば、「装置には、クラス、グループ、および動作温度または温度範囲(40℃の周囲温度での動作に基づいて承認されたもの)を示すマークを付けなければなりません。」

保護等級(IP)は重要で、2つの数字で表示されます。1つ目は埃などの固形異物に対する機器の耐性、2つ目は水に対する保護の度合いを表します。IP67等級の照明器具は、防塵/防水機能を備えているため、多くの産業環境に適しており、短期間の浸水にも耐えられます。IP68g等級の照明器具は、さらなる保護機能を備えており、油や水の浸入に対する耐性も高くなっています。

産業環境では、振動や極端な温度がしばしば発生します。一部の照明技術に使用されている細いフィラメント、繊細な部品、およびガラスエンベロープは、特に振動から損傷を起こしやすいと考えられています。LEDには繊細な部品がなく、振動や衝撃に対する耐性がはるかに高くなっています。LEDは機械的には堅牢ですが、周囲温度が高いとLEDの効率や寿命が低下する傾向があります。一方で、他の照明技術と比較して、LEDは温度が-40℃まで低下する冷蔵倉庫などの施設により適しています。

ピックトゥライト用照明器具

ピックトゥライトシステムは、効率性、生産性、精度の向上により、倉庫でのピッキング作業のコストを削減することができます。ピックトゥライトの設置向けに、BannerはK50LGRASXPQを含むEZ-LIGHT® K50Lシリーズを提供しています(図3)。K50L照明器具は、モデルに応じて1個のLED(緑)、2個のLED(緑/赤)、3個のLED(緑/赤/黄)を備えており、耐振動性があります。K50LGRASXPQは、緑と赤のLED照明に加え、複数の音による可聴アラームを提供します。K50Lシリーズの特長は以下のとおりです。

  • 高輝度LEDインジケータと可聴アラームで簡単にインストール可能
  • 堅牢な完全密閉型。モデルに応じて、IP67またはIP69K等級(DIN 40050-9準拠)
  • 自己完結型照明器具のため、外部コントローラは不要
  • 無線周波数妨害(RFI)および電磁干渉(EMI)に対する耐性
  • IP67モデルの可聴アラームは、連続またはスタッカートの強度を調節可能
  • 12VDC~30VDCの入力と逆極性に対する保護による柔軟な設置

Banner EngineeringのK50シリーズ ピックトゥライト照明器具の画像図3:Banner EngineeringのK50シリーズ ピックトゥライト照明器具は、DCで動作し、定常音またはスタッカート音による指示を備えており、モデルに応じて1、2、または3色のLEDインジケータを選択できます。(画像提供:Banner Engineering)

フォークリフト誘導用照明器具およびセンサ

フォークリフトの運転手は視界が遮られ、難しい荷物を置く際には何度も降ろさなければなりません。フォークリフト誘導用照明器具やセンサを使用することで、資材運搬作業の効率化を図れます。たとえば、BannerのモデルWLS27PXRGBW285DSQ照明器具は、WLS27 Proシリーズの一部であり、長さ285mm、保護等級はIP66、IP67、IP69Kで、赤色、緑色、青色、白色のLEDを搭載しています(図4)。

赤色、緑色、青色、白色のLEDを搭載したBannerの照明器具の画像図4:長さ285mmのこの照明器具には、赤色、緑色、青色、白色のLEDが搭載されており、フォークリフトの誘導に使用することができます。保護等級は、IP66、IP67、IP69Kです。(画像提供:Banner Engineering)

WLS27 Proシリーズのすべての照明器具は、マルチカラーのアニメーションをさまざまな速度やパターンで表示したり、セグメント化したりすることができるため、フォークリフトの誘導システムに適しています。WLS27 Proユニットは、飛散防止加工を施したコポリエステル製のハウジングとアルミニウム製のフレームで構成されており、破損や衝撃に対する耐性を備えています。IP69K等級のため、過酷な洗浄や屋外環境での動作も可能です。タイマやカウンタ機能を内蔵しており、パルス信号を利用して時間や距離/位置などの量を表示することができます。

WLS27 Pro照明器具は、Q5X多機能レーザーセンサと組み合わせることで、フォークリフトの誘導システムを実装することができます(図5)。Q5Xは、50mm~5mの範囲で使用できます。他の特長には、次のようなものがあります。

  • 透明な物体や反射する物体、多色の対象、光沢のあるメタリックな背景の黒い対象、黒い背景の黒い対象、暗い物体(0.1%未満の反射の黒い対象)の確かな検出
  • 光の強さと距離の両方を測定するデュアルティーチモード
  • さまざまな取り付け条件に対応するため、270度の回転が可能
  • IO-Link、リモートティーチ、オンボードユーザーインターフェース、またはオプションのリモートセンサディスプレイでプログラム可能

Banner EngineeringのQ5X多機能レーザーセンサの画像図5:Banner EngineeringのQ5Xのような多機能レーザーセンサは、フォークリフトの誘導システムの実装に使用できます。(画像:Banner Engineering)

一般の照明オプション

BannerのWLB32ZC285PBQMBは、長さ285mmの超高輝度LED照明器具で、750lmの均一な光出力とノングレアの「グロー」を備えています(図6)。本製品は、長さ285~1130mm、照度750~3000lmの照明器具を含むWLB32ファミリの一部です。これらの照明器具は、作業場、機械照明、制御キャビネット、製造ラインに適しています。

BannerのモデルWLB32ZC285PBQMB超高輝度LEDバーライトの画像図6:BannerのモデルWLB32ZC285PBQMBは、一般的な照明ニーズに対応する長さ285mmの超高輝度LEDバーライトです。(画像:Banner Engineering)

WLB32ライトバーでは、各ライトバーの独立した動作を維持しながら、最小限の配線で「デイジーチェーン」による連続した長さの照明を形成することができます。他の特長には、次のようなものがあります。

  • High/Low/Offスイッチ
  • 飛散防止ウインドウとメタルハウジング
  • マグネット付きブラケット、アングルブラケット、スナップクリップで柔軟に設置可能
  • アイシールドが側面の眩しさをブロック(一部のモデル)
  • モーション検出機能(一部のモデル)

まとめ

産業用照明ソリューションの指定には、性能、コスト、環境などさまざまな要素を考慮する必要があります。LED照明器具が魅力的な選択肢となるケースが増えています。従来の照明技術と比較して、LED照明器具は照明の柔軟性と信頼性が高く、LEDはより高いエネルギー効率、より長い寿命、より少ないメンテナンスニーズを提供します。その結果、LEDの初期取り付けコストは他の照明技術よりも高くなることがありますが、LEDは製品寿命間のコストを低く抑えることができ、優れた照明ソリューションとなります。

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著者について

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Jeff Shepard(ジェフ・シェパード)氏

ジェフ氏は、パワーエレクトロニクス、電子部品、その他の技術トピックについて30年以上にわたり執筆活動を続けています。彼は当初、EETimes誌のシニアエディターとしてパワーエレクトロニクスについて執筆を始めました。その後、パワーエレクトロニクスの設計雑誌であるPowertechniquesを立ち上げ、その後、世界的なパワーエレクトロニクスの研究グループ兼出版社であるDarnell Groupを設立しました。Darnell Groupは、数々の活動のひとつとしてPowerPulse.netを立ち上げましたが、これはパワーエレクトロニクスを専門とするグローバルなエンジニアリングコミュニティで、毎日のニュースを提供しました。また彼は、教育出版社Prentice HallのReston部門から発行されたスイッチモード電源の教科書『Power Supplies』の著者でもあります。

ジェフはまた、後にComputer Products社に買収された高ワット数のスイッチング電源のメーカーであるJeta Power Systems社を共同創設しました。ジェフは発明家でもあり、熱環境発電と光学メタマテリアルの分野で17の米国特許を取得しています。このように彼は、パワーエレクトロニクスの世界的トレンドに関する業界の情報源であり、あちこちで頻繁に講演を行っています。彼は、定量的研究と数学でカリフォルニア大学から修士号を取得しています。

出版者について

DigiKeyの北米担当編集者