近接センサと距離センサの選択

著者 Jeff Shepard(ジェフ・シェパード)氏

DigiKeyの北米担当編集者の提供

物理的な接触なしに物品の存在や位置を検出するために近接センサや距離センサを使用することは、マテリアルハンドリング、農業機械、製造・組立作業、食品・飲料・医薬品の包装などの産業プロセスを制御する上で重要な要素となります。

これらのセンサは、光電式、レーザー式、誘導式、静電容量式、磁気式、超音波式など、さまざまな技術で利用できます。特定の用途に最適な選択を決定する際は、範囲、サイズ、精度、感度、分解能、コストなどの要素を考慮する必要があります。

多くの用途で重要になるのは、検出する物体の材質です。センサによっては、硬い表面と繊維状の表面で挙動が異なるものもあり、物体の色や反射率によって影響を受けるセンサもあります。

この記事では、一般的に利用可能な非接触近接センサ技術をレビューし、その仕組み、基本的な性能特性、SICKの代表的なセンサおよび、想定されるいくつかの用途について見ていきます。

光電センサ

SICKのW10光電近接センサのような光電センサは、使用と設置が簡単で、多くの用途に適したさまざまな機能を備えています。W10センサの頑丈な設計は、厳しい環境での正確な物体検出に適しています。統合されたタッチスクリーンにより、パラメータの設定やセンサの配置をスピードアップできます(図1)。

SICK光電センサのタッチスクリーンの画像図1:光電センサのタッチスクリーンにより、試運転や配備を迅速に行うことができます。(画像提供:SICK)

設計者は利用可能なティーチインにより、これらのセンサを特定のアプリケーション要件に適合させることができます。さらに、速度設定、標準/精密測定モード、フォアグラウンド/バックグラウンド抑制などの統合機能により、1つのセンサをさまざまな用途に使用できます。このセンサシリーズには、動作距離と取り付けオプションが異なる4つのバリエーションがあります。

バックグラウンド抑制

バックグラウンド抑制(BGS)付き光電近接センサは、送信素子と受信素子の間で三角測量を使用します。設定された検出範囲より後方の物体からの信号は抑制されます。さらに、SICKのBGS技術は、背景の高反射物体を無視し、困難な周囲照明条件にも対応できます。

バックグラウンド抑制は、対象物と背景(ベルトコンベアなど)の反射率が似ている場合や、背景の反射率が変化して検出の妨げになる場合に特に有効です。

フォアグラウンド抑制

フォアグラウンド抑制(FGS)を備えた光電近接センサは、定義された距離の物体を検出することができます。センサと検出距離(バックグラウンドに設定)の間にあるすべての物体が検出されます。信頼性の高い検出を確実に行うためには、バックグラウンドが比較的明るく、高さが変化しないことが必要です。

物体が白や明るい色のベルトコンベアのような反射面上にある場合、フォアグラウンド抑制によって検出を向上させることができます。センサは、対象物からの反射光を検出するのではなく、ベルトコンベアによって反射された光の有無によって対象物を検出します。

回帰反射

回帰反射センサでは、放射された光がリフレクタに当たり、その反射光がセンサによって測定されます。偏光フィルタを使用することで、誤差を最小限に抑えることができます。透明なストレッチフィルムやプラスチック包装は、これらのセンサを妨害する可能性があります。センサの感度を下げることで、こうした課題を克服することができます。さらに、標準的な赤外発光素子をレーザーに置き換えることで、より広い検出範囲と高分解能を実現できます。

回帰反射センサの性能は、通常よりも低いスイッチングヒステリシスを利用することで向上できます。この設計では、たとえばガラス瓶によるセンサとリフレクタ間のわずかな光の減衰でさえも、確実に検出することができます。また、SICKはAutoAdaptと呼ばれる監視システムも提供しており、検出システムの故障につながる可能性のある汚れが徐々に蓄積されるのに応じて、スイッチング閾値を継続的に調整・適応させます。

スルービーム

回帰反射センサとは対照的に、スルービームセンサは、送信機と受信機という2つのアクティブデバイスを使用します。スルービームセンシングでは、検出範囲を広くすることが可能です。IRエミッタをレーザーダイオードに置き換えることで、高分解能と精密な検出を維持しながら、検出距離をさらに伸ばすことができます。

光ファイバ

光ファイバセンサは、スルービーム設計のバリエーションです。光ファイバ光電センサでは、送信機と受信機が1つのハウジングにまとめられています。送信側と受信側で別々の光ファイバケーブルが使用されます。このセンサは、特に高温用途や危険で過酷な環境での使用に適しています。

光電センサアレイ

モデル1221950のような光電センサのRAY26 Reflex Arrayファミリは、平らな対象物の信頼性の高い検出や迅速な試運転を可能にします。光電センサをリフレクタと組み合わせれば、3mmほどの小さな、平らな、透明な、あるいは凹凸のある物体も検出できます。高さ55mmの均一なライトアレイの中で、センサが物体の前縁を検出します。つまり、穴のあいた物体でも、複雑なスイッチングを行わずに確実に検出できるのです(図4)。

光電センサアレイはわずか3mmの物体も検出可能なことを示す画像図2:光電センサアレイは、高さ55mmのフィールドでわずか3mmの物体を検出できます。(画像提供:SICK)

レーザー距離センサ

貯蔵容器のレベル監視、コンベア上の物体の位置検出、自動フォークリフトシステムの軸のXY位置、倉庫やオーバーヘッドコンベアのクレーンの垂直位置決め、コイル巻取り時の直径監視などのアプリケーションの設計者は、DT50レーザー距離センサを使用することができます。このセンサは、反射レーザー光を使用して最大数メートルのタイムオブフライト(ToF)距離測定をサポートし、周囲照明の影響を受けにくく、正確で信頼性の高い動作を実現します。

たとえば、DT50-2B215252は、200~30,000mmの測定範囲を持ち、以下のような特別な機能を備えています。

  • 保護等級IP65およびIP67の堅牢なハウジング
  • 1秒間に最大3,000回の距離測定
  • 最小応答時間0.83ms
  • 小型ハウジングで、産業用ロボットから貯蔵容器の充填高さ測定まで、さまざまなアプリケーションをサポート

統計学を用いた高分解能測定

HDDM+(High-definition distance measurement plus)は、レーザー距離センサやLiDAR(光検出と測距)センサに使用できる高分解能ToF測定技術です。シングルパルス技術や位相相関検出技術とは対照的に、HDDM+は統計的な測定プロセスです。

センサのソフトウェアは、複数のレーザーパルスのエコーを統計的に評価し、ガラス窓、霧、雨、ほこり、雪、葉、フェンス、その他の物体からの干渉をフィルタリングして、意図したターゲットまでの距離を計算します。その結果、厳しい環境条件下でも、確実性の高い距離測定が可能になります(図5)。

SICKのHDDM+ソフトウェアの図(クリックして拡大)図3:SICKのHDDM+ソフトウェアは、統計的評価プロセスを使用して、ガラス窓、霧、雨、ほこり、雪、葉、フェンスなどの「ノイズ」を除去します。(画像提供:SICK)

HDDM+技術の代表的な用途には、エレクトロニクス製造における品質管理のための距離測定、機械・プラントエンジニアリングにおけるLiDARによる多次元物体検出と位置特定、産業用クレーンや車両の位置特定などがあります。

HDDM+センサの検出範囲は、回帰反射テープ上で最大1.5kmです。たとえば、モデルDT1000-S11101の測定範囲は最大460mで、自然物に対する標準測定精度は±15mm、分解能は0.001~100mmで調節可能です。

誘導型センサ

SICKのIMEシリーズのような誘導型近接センサは、鉄や非鉄の金属物体を検出できます。これらのセンサは、高周波の交流電磁場を発生させるインダクタ・キャパシタ(LC)共振回路で構成されています。金属物体が検出範囲に入ると、交流電磁場は減衰します。この減衰は、信号評価回路と出力信号を生成するアンプによって検出されます(図4)。

基本的な誘導型近接センサの図図4:基本的な誘導型近接センサは、交流電磁場を生成するLC回路、信号評価器、アンプで構成されます。(画像提供:SICK)

いくつかの近接センサ技術の検出距離に関する2つの重要な仕様は、公称感知距離(Sn)と保証感知距離(Sa)です。Snは、製造公差や動作温度などの外部影響を考慮しません。Saは、製造公差と動作条件のばらつきの両方を考慮に入れます。Saは通常、Snの値の約81%です。たとえば、モデルIME08-02BPSZT0Sの誘導型センサの場合、Snは2mm、Saは1.62mmです。

静電容量センシング

誘導型センサと同様に、静電容量式近接センサも発振器を使用します。この場合、センサのアクティブ電極がアースに対して静電場を生成するオープンコンデンサが使用されます。これらのセンサは、金属や非金属の物体を含む幅広い物質の存在を検出することができます。

物体が静電場に入ると、共振回路の振動の振幅は材料の誘電特性に基づいて変化します。信号評価器が変化を検出し、アンプが出力信号を生成します(図5)。

静電場を生成する発振回路の図図5:静電容量式近接センサでは、発振回路が静電場を生成し、検知対象がその静電場に入ると特性が変化します。(画像提供:SICK)

誘導型近接センサと同様に、静電容量式近接センサの検出距離には、Sn、Sa、リダクションファクタなど、いくつかの仕様があります。たとえば、モデルCM12-08EBP-KC1のSnは8mm、公称Saは5.76mmです。

センシングされる物体は、少なくともセンサ面と同じ大きさでなければならず、センシング距離は材料のリダクションファクタによって変化します。リダクションファクタは材料の比誘電率に関係し、金属や水の1から、ポリ塩化ビニル(PVC)の0.4、ガラスの0.6、セラミックの0.5までさまざまです。

磁気センサ

磁気近接センサは磁石の存在に反応します。SICKの磁気近接センサは、次の2つの検出技術を使用しています。

  • 巨大磁気抵抗(GMR)センサは、磁場の存在下で値が変化する抵抗器に基づいています。ホイートストンブリッジを使用して抵抗の変化を検出し、出力信号を生成します。Tスロットシリンダとともに使用するために設計されたMZT7-03VPS-KP0のようなMZT7シリンダセンサは、GMR技術を使用し、空圧駆動や同様のアプリケーションでピストンの位置を検出します。
  • LCセンサは、小さな振幅で共振する共振回路を使用します。外部磁場が近づくと、共振振幅が増大します。増加分は信号評価器によって検出され、アンプが出力信号を生成します(図6)。MM08-60APO-ZUAのSnは60mm、Saは48.6mmです。

フィールドプローブではGMRまたはLC技術を使用できることを示す画像図6:磁気近接センサのフィールドプローブでは、GMRまたはLC技術を使用することができます。(画像提供:SICK)

超音波センサ

最大8m離れた物体に対しては、SICKのUM30ファミリのような超音波センサを使用することができます。これらのセンサは、測定精度を向上させるために温度補償を内蔵しており、色に依存しない物体検出、埃に対する耐性、+70℃までの動作を実現します。音速に音響ToFの合計(t2)を掛け合わせ、それを2で割ったものを距離とするToF技術に基づいて距離を測定します(図6)。

超音波センサで距離を測定できることを示す図図7:超音波センサは、音波の合計ToF(t2)に基づいて距離を測定できます。(画像提供:SICK)

モデルUM30-212111のような超音波センサは、空容器のモニタリングのような用途に適しています。内部温度モニタにより、測定精度は±1%となります。色に依存しないこれらのセンサは、汚れやほこりがあっても、識別しにくい物体を検出することができます。

まとめ

良いニュースは、近接センサや距離センサ技術の選択肢が幅広いことです。つまり、あらゆるアプリケーション要件に対応するソリューションがあるということです。そして課題は、多くの選択肢の中から、実際の用途や使用条件下で特定の物質を検出するための最適なソリューションを見つけることです。

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著者について

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Jeff Shepard(ジェフ・シェパード)氏

ジェフ氏は、パワーエレクトロニクス、電子部品、その他の技術トピックについて30年以上にわたり執筆活動を続けています。彼は当初、EETimes誌のシニアエディターとしてパワーエレクトロニクスについて執筆を始めました。その後、パワーエレクトロニクスの設計雑誌であるPowertechniquesを立ち上げ、その後、世界的なパワーエレクトロニクスの研究グループ兼出版社であるDarnell Groupを設立しました。Darnell Groupは、数々の活動のひとつとしてPowerPulse.netを立ち上げましたが、これはパワーエレクトロニクスを専門とするグローバルなエンジニアリングコミュニティで、毎日のニュースを提供しました。また彼は、教育出版社Prentice HallのReston部門から発行されたスイッチモード電源の教科書『Power Supplies』の著者でもあります。

ジェフはまた、後にComputer Products社に買収された高ワット数のスイッチング電源のメーカーであるJeta Power Systems社を共同創設しました。ジェフは発明家でもあり、熱環境発電と光学メタマテリアルの分野で17の米国特許を取得しています。このように彼は、パワーエレクトロニクスの世界的トレンドに関する業界の情報源であり、あちこちで頻繁に講演を行っています。彼は、定量的研究と数学でカリフォルニア大学から修士号を取得しています。

出版者について

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