使いやすいスイッチモード電源(SMPS)マトリクスを使用して電源設計を簡素化

著者 Art Pini

DigiKeyの北米担当編集者の提供

電子製品や電子機器の設計者は、必然的に適切な電源を必要とします。パワーデバイスは数十ワットから数キロワット(kW)に及ぶため、適切な部品を見つけるのは困難です。整流器、パワーコントローラ、スイッチ、ゲートドライバなど、何千ものオプションがあるため、この問題により設計プロセスが遅延し、コストが増加し、納期が遅れる可能性があります。

問題を単純化する1つの方法は、信頼できるサプライヤのインテリジェントパワーデバイス製品から始め、そのオンラインツールを使用して最適な選択を行うことです。たとえば、スイッチモード電源(SMPS)の部品を用途、トポロジ、デバイス、および重要な特性ごとに分類したマトリクスがあれば、選択と設計のプロセスを加速することができます。

本稿では、SMPSの設計について簡単に説明します。次に、各用途の電力レベルに対応するブリッジ整流器、コントローラ、ゲートドライバ、パワースイッチを結びつけるonsemiのSMPS部品マトリクスを紹介します。重要な製品の定義を説明し、部品選択を簡素化するためのマトリクスの使用方法の例を示します。

SMPSの設計

電力レベル100WのUSB電源供給(PD)用途を想定した、基本的なACラインソースのSMPSの主要要素を考えてみましょう(図1)。電源のライン側または1次側には通常、整流器、力率改善(PFC)コントローラ、パワーコントローラ、オプトカプラ、ゲートドライバ、パワースイッチが必要です。2次側には通常、同期整流器コントローラ(SRC)、同期整流器(SR)スイッチ、USB PDコントローラ、オプトカプラが必要です。

一般的な100W SMPSの主要部品の画像(クリックして拡大)図1:一般的な100W SMPSの主要な部品を示します。(画像提供:onsemi、筆者修正)

この設計の部品は、電力レベルに一致しています。設計者は、PFCと電力制御用の1次側トポロジ、および2次側の整流器とレギュレータのトポロジを選択する必要があります。それらの決定に基づいて、個々の部品を選択することができます。

ここで、onsemiのSMPSマトリクスが電源部品の選択に役立ちます(図2)。

設計者が能動部品を選択する際に役立つインタラクティブSMPSマトリクスの表(クリックして拡大)図2:電源の電源クラスと希望するトポロジに基づいて能動部品の選択に役立つインタラクティブなSMPSマトリクスを示します。(画像提供:onsemi)

SMPSマトリクスでは、左側の最初の2列に表示される電力レベルと密度に基づき、設計の選択肢を決定します。電力レベルが最も高いのが上段で、下段に向かうに従って下がります。5Wから3kW以上の電力レベルが含まれています。電力密度は単位体積当たりの電力の値であるため、超高電力密度では高密度パッケージよりも小型の電源が実現できます。これら2つのパッケージの選択肢に代わるものとして、薄型パッケージがあります。マトリクスは、電力レベルに合った電源電圧レベルを設定します。

マトリクスの各電力レベルの項目には、電力密度の選択肢に対応する推奨部品が1~3列表示されており、1次側および2次側のトポロジに適した部品が選択されます。N/Aと表示されている項目は、その特定の電力レベルと密度に該当しないことを示します。

整流器の列には、該当する電力レベルに適合するブリッジ整流器の推奨部品がリストされています。場合によっては、項目に「ブリッジ不要」と記載されることもあります。これは、トーテムポールPFCのような別の部品がその機能を代替しているため、ブリッジ整流器が必要ないことを示しています。PFCの「ファーストレッグ」と「スローレッグ」の項目は、トーテムポールPFCを簡単に識別できます。これらのPFCには、ライン周波数で動作するスローレッグスイッチを備えており、ファーストレッグスイッチはより高い、より一般的なスイッチング周波数で動作します。

マトリクスは、希望する電力レベルに基づいて基本的なポロジを提案します。フライバック(スイッチャ)、アクティブクランプフライバック(ACF)、擬似共振(QR)フライバック、インダクタ - インダクタ ‐ コンデンサ(LLC)の4つの一般的なトポロジのいずれかを持つコントローラデバイスを推奨します。

フライバックコンバータは、1次側と2次側を直接電気的に接続されていない絶縁型電源トポロジです。パワースイッチデバイスがオフになると、結合インダクタは1次側から2次側へエネルギーを伝達します。コンバータの電圧制御は、固定周波数でのパルス幅変調(PWM)スイッチングにより維持されます。

ACF設計では、結合インダクタのフライバックの概念を利用して、1次側から2次側にエネルギーを伝達します。さらに、アクティブデバイスを使用して、結合インダクタの漏れインダクタンスをコンデンサに放電またはクランプし、MOSFETパワースイッチへのストレスを最小限に抑えます。

QRフライバックトポロジは、回路の寄生インダクタンスと寄生静電容量を使用して、共振に近い応答を得て、ドレイン電圧を最小限に抑えてパワースイッチをオンにします。この「ソフトスイッチング」により、コンバータのスイッチング損失が低減されます。その結果、スイッチング周波数は固定ではなく、負荷に応じて変化します。

LLCコンバータは、完全共振応答を利用して、真のゼロドレイン電圧スイッチングを確実に実現します。無負荷状態でもスイッチング損失が低減され、より高い電力レベルに最適です。

推奨されるコントローラは、特定の電力範囲に分類され、最低電力レベルにはスイッチャを、中間電力レベルにはQRとACFを、より高い電力レベルにはLLCコンバータが使用されます。

このマトリクスには、11種類の特定の設計における部品間の接続を示す、詳細なSMPSブロック図が含まれています。5種類の異なる電力レベルと密度が、ラベル付きタブで利用可能です(図3)。

詳細なSMPSブロック図が含まれているマトリクスの画像(クリックして拡大)図3:マトリクスには、ラベル付きタブで利用可能な5種類の異なる電力レベルと密度をカバーする、11種類の特定の設計に関する詳細なSMPSブロック図が含まれています。(画像提供:onsemi)

電力レベルと密度を選択すると、マトリクスの適切な電力レベルの行とトポロジ固有の列から部品を選択できます。ハイパーリンクされた部品番号をクリックすると、ハイライトされた番号がDigiKey部品番号にリンクされたマトリクスの拡張ビューが開きます(図4)。

元のマトリクスのリンクをクリックすると、DigiKeyの部品エントリへのリンク付きの拡張された2次マトリクスが開く画像(クリックして拡大)。図4:元のマトリクスのハイパーリンクされた部品番号をクリックすると、DigiKeyの部品エントリへのリンク付きの拡張された2次マトリクスが開きます。(画像提供:onsemi)

選択した行とトポロジにリストされた部品は全て互換性があります。

マトリクスの使用

説明を目的とした中程度の電力レベルの優れた例しては、図1のブロック図に示したユニットと同様のUSB PD用100W SMPSがあります。マトリクスを見ると、70W~200Wの電力レベルの行が、必要な100Wの供給をカバーしています。電力密度の定格の列で「高」を選択すると、必要な部品へのリンクが追加された拡張マトリクスが表示されます(図5)。

100Wの高密度SMPSの部品選択の概要を示す緑色のボックスの画像(クリックして拡大)図5:拡張されたマトリクス上の緑色のボックスは、100W高密度SMPSの部品選択の概要表示です。青色の品番は、関連するDigiKey製品のフィルタページにリンクされています。(画像提供:onsemi)

国際規制、特に欧州連合(EU)では、75W以上の電力レベルでPFCを使用することが義務付けられています。ここで推奨されるPFCコントローラはonsemiのNCP1623です。NCP1623は、コスト効率、信頼性、高力率、効率が必須要件である急速充電用電源アダプタやモジュール式コンピュータ電源向けに、最大300Wをサポートする小型フォームファクタの昇圧PFCコントローラです。外付けブリッジ整流器が必要で、onsemiのGBU6MまたはGBU6Kが推奨されます。互換性のあるPFCパワースイッチはonsemiのNTP125N60S5Hで、最大ドレイン - ソース間電圧(VDSS)600V、最大ドレイン電流(ID)22A、ドレイン - ソース間オン抵抗(RDS(ON))125mΩの定格を持つ高速MOSFETです。

推奨される1次側コントローラは、onsemiのNCP1343高周波QRフライバックコントローラです。これは、最新のSMPS設計に必要な部品をすべて内蔵しているため、AC/DCアダプタやオープンフレーム電源に最適なコントローラです。これは、定格650VのVDSS、12AのID、260mΩのRDS(ON)の特性をもつNVD260N65S3パワースイッチと組み合わされます。

onsemiのNPC4307は、電源の2次側にある同期整流ドライバです。これは、定格80VのVDSS、61AのID、10mΩのRDS(ON)の特性をもつNTMFSC010N08M7MOSFETスイッチと併用することで、効率的な同期整流を実現します。

設計における最後の主要な段階は、AC/DCアダプタやDC/DCポートの電源レギュレータの2次側にあるオプトカプラを制御できるUSB PDコントローラを選択することです。マトリクスは、onsemiのNTTFS4C02NTAGNチャンネルMOSFET(定格30VのVDSS、164AのID)を使用した電源出力に、onsemiのFUSB15101 PD3.0プロトコルコントローラ(USBプログラマブル電源(PPS)対応)を提案しています。そのRDS(ON)は、10Vで2.25mΩ、4.5Vで3.1mΩです。

結果として得られた電源は、onsemiのNCP1343PD100WGEVB評価ボード(図6)として入手可能で、出力電圧範囲は3.1V~21Vです。115Vまたは230VACの入力時の平均効率は92%です。この電源は、60×60×19mmの寸法に収められ、24W/立方インチ(W/インチ3)の電力密度を実現しています。

onsemiの100W USB PDリファレンス電源の上面(左)と下面(右)の画像図 6:SMPS マトリクスを使用して選択した部品に基づく100W USB PDリファレンス電源設計の上面図(左)と下面図(右)を示しています。(画像提供:onsemi)

まとめ

onsemi SMPSマトリクスは、電源部品の選択を容易に行えるようにし、設計の電力レベルに適合する互換性のある重要な部品が確実に選択されるようにします。部品の検索時間を短縮し、データシートや価格見積もりに即座にリンクします。

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著者について

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Art Pini

Arthur(Art)PiniはDigiKeyの寄稿者です。ニューヨーク市立大学の電気工学学士号、ニューヨーク市立総合大学の電気工学修士号を取得しています。エレクトロニクス分野で50年以上の経験を持ち、Teledyne LeCroy、Summation、Wavetek、およびNicolet Scientificで重要なエンジニアリングとマーケティングの役割を担当してきました。オシロスコープ、スペクトラムアナライザ、任意波形発生器、デジタイザや、パワーメータなどの測定技術興味があり、豊富な経験を持っています。

出版者について

DigiKeyの北米担当編集者