統合型充電器/インバータによるオフグリッド太陽光発電ソリューションの簡素化

著者 Steven Keeping(スティーブン・キーピング)

DigiKeyの北米担当編集者の提供

最大電力点追従(MPPT)を利用した太陽光発電(PV)パネルによるオフグリッド電源ソリューションは、ユーザーが代替エネルギー源を採用するにつれて普及しています。しかし、これらのシステムは設置や構成が複雑です。オプションを組み合わせにより、複数のインバータや充電器が必要となり、コストが増えます。

設計者は、AC/DC充電、DC/AC変換、ACバイパスユニットを1つに統合することで、オフグリッド電源とバッテリ充電を簡素化し、コストを削減することができます。

この記事では、オフグリッド電源アプリケーションと、PVパネル/MPPT充電の複雑さについて簡単に説明します。その後、MEAN WELLの統合型ユニットを紹介し、設置や運用をいかに簡素化し、コストを削減する方法を示します。家庭用アプリケーションでは、統合型製品を使用する利点について説明します。

オフグリッド電源アプリケーションとは

オフグリッド電源が普及しているのは、技術が成熟し、これらのシステムが信頼性が高く、効率的で、費用対効果が高く、ユーザーがエネルギーユーティリティから独立できるようになったからです。

その名が示すように、オフグリッド電源は、太陽光を電気に変換するPVパネルなど、電力会社以外のエネルギー源から得られます。風力発電も選択肢のひとつです。

完全なグリッド自律性を実現するためには、オフグリッドシステムには次のようないくつかの重要なコンポーネントが必要です。

  • PVパネル:太陽光を直流電気に変換
  • 外部ソーラーMPPT充電器:エネルギー貯蔵を最大化するためにバッテリへの電源供給を最適化
  • バッテリ:PVパネルで発電したエネルギーを貯蔵
  • DC/ACインバータ:バッテリの電源を家庭用電化製品に必要なACに変換

多くのユーザーは完全なエネルギー自給を目指す一方で、PVパネルが家庭内の全システムに十分な電気を安定的に供給できない可能性があることを理解しており、電力会社に接続するという賢明な予防措置を取ります。グリッドからのAC入力は、バッテリのエネルギーを高めるためにDC電気に変換されます(図1)。

PVパネルによるオフグリッド電源システムの画像(クリックして拡大)図1:バックアップのACユーティリティ入力を備えた、PVパネルによるオフグリッド電源システム。(画像提供:MEAN WELL)

自律型オフグリッドシステムは実用的ですが、導入は簡単ではありません。セットアップとメンテナンスには注意が必要で、バッテリを充電するための電源リターンを追加するとさらに複雑になります。PVパネルが最適な位置に最適な角度で設置され、バッテリが日照時間が限られているかゼロの時間帯でも家庭に電源を供給できるだけのエネルギーを蓄えるのに十分な容量を持っていると仮定すると、外部ソーラーMPPT充電器、AC/DC充電、DC/AC変換、ACバイパスがシステムの有効性を決定する重要な要素になります。

インバータの仕事のひとつは、PVパネルとバッテリで構成されるシステムから得られる直流電気を230V/60Hzの出力に変換することです。MEAN WELLISI-501-212Bインバータのような製品は、12VDC入力に対応し、全高調波歪み(THD)は3%未満で、450Wの正弦波出力、±3%のACレギュレーションを提供します。

図1に示すセットアップでは、インバータはMPPT PV充電器として動作し、鉛蓄電池に求められる定電流および定電圧充電特性を備えています。MEAN WELLユニットは、開放型または密閉型鉛蓄電池に補充電するために、25V~50VのMPPT電圧範囲で最大30アンペア(A)の充電電流を供給します。

MPPTとは

MPPTは、PVパネルのような可変電源で使用され、条件の変化に応じてエネルギーの取り出し量を最大化します。MPPTは、PVセルからの電力伝達効率が日射量、日陰、PVパネルの温度、負荷の電気的特性による変化から生じる課題を解決します。これらの条件が変化すると、最も高い電力伝達を実現する負荷特性(インピーダンス)も変化します。負荷特性が最大効率で送電を維持するとき、システムは最適化され、これが最大電力点(MPP)となります。MPPTは、条件の変化に応じて負荷特性を調整し、MPPを達成するプロセスです。

最新のMPPTの多くは、変換効率93~97(%)程度を実現しています。MEAN WELL ISI-501-212B の標準的な変換効率は 98% です。

ISI-501-212BのMPPT充電器からの出力は、PVパネルの出力を利用してオフグリッド電源システムのバッテリを充電するために使用されます。これは、MPPTを使用して定義された定電流/定電圧充電プロファイルを使用して行われ、バッテリの最大容量を確保し、バッテリの充電サイクル数を最大化します(図2)。フロートステージは、バッテリを満充電に近い状態に保ち、自己放電を防ぎます。

定電流/定電圧充電プロファイルのグラフ図2:MPPTを使用した定電流/定電圧充電プロファイルで、バッテリ容量を最適化し、バッテリ充電サイクル数を最大化します。(画像提供:MEAN WELL)

歪みのない正弦波交流電圧の重要性

ISI-501-212BのMPPT充電器は重要ですが、オフグリッド電源システムの一部に過ぎません。たとえば、鉛蓄電池やリチウムイオン(Li-ion)蓄電池からの電気を、家庭用電化製品が必要とする交流電圧に変換するには、DC/AC変換が必要です。このような電化製品には、力率補正のような電気的課題を避けるため、歪みのない正弦波のAC電圧を供給する必要があります。

DC/ACインバータは、Hブリッジ回路とパルス幅変調(PWM)などの制御回路を使用してこれを行います。HブリッジとPWMを組み合わせることで、正弦波に近い平均電圧を作り出します。PWMは通常、1つまたは複数のマイクロコントローラユニット(MCU)によって制御され、パルスの幅を変化させて、ほぼ正弦波を形成する平均電圧を作り出します。高調波歪みのさらなる低減は、波形を平滑化し、よりクリーンな正弦波を生成するインダクタ-コンデンサ(LC)フィルタリングによって達成できます。

たとえば、MEAN WELLのNTN-5K-148連続インバータは、MCUを使用してTHDが3%未満 (図3)の正弦波を生成します。

MEAN WELL NTN-5K-148連続インバータの図(クリックして拡大)図3:NTN-5K-148連続インバータは、MCUを使用してTHDが3%未満の正弦波AC出力を生成します。(画像提供:MEAN WELL)

1台ですべてをカバー

PVパネル、MEAN WELL ISI-501-212Bインバータ、NTN-5K-148連続インバータを使用することで、設計者は完全なオフグリッドシステムを構築することができますが、連続インバータはさらに多くのことを提供します。この製品1台で、開発者はバッテリ用のAC/DC充電、家電製品への電源供給用のDC/AC変換、ACバイパスユニットを実現できます。

NTN-5K-148は48V入力で110VAC出力です。ピーク効率93%で連続4,000Wの連続供給が可能です。MEAN WELLNTN-5Kシリーズの一部で、いくつかのバリエーションがあります。たとえば、NTN-5K-2380は、AC充電器とUPS機能(ACバイパス)を内蔵した信頼性の高いオフグリッド正弦波DC/ACパワーインバータです。主な特徴として、MCU制御によるデジタル設計、環境の変化に素早く対応し信頼性を向上させる合理化された制御回路、低騒音の高品質ファン、連続5,000W出力、380VDC入力からの230VAC出力が可能です。ピーク効率は94.5%です(図4)。

MEAN WELL NTN-5K-2380 オフグリッド正弦波DC/ACパワーインバータの画像図4: NTN-5K-2380は、AC充電器とUPS機能(ACバイパス)を内蔵したオフグリッド正弦波DC/ACパワーインバータです。380VDC入力から連続5,000 W、230VAC出力を提供します。(画像提供:MEAN WELL)

NTN-5Kシリーズは,家庭用,業務用,船舶用,自動車用,鉱山用,建設現場用,商用電源のない遠隔地での使用に適しています(図5)。本シリーズは、アクティブカレントシェアリング機能を内蔵しており、最大6台を並列接続することで、より高いAC出力を得ることができます。

NTN-5Kの一般的な家庭での使用例の画像図5:NTN-5Kの一般的な家庭での使用例を示します。(画像提供:MEAN WELL)

まとめ

オフグリッド電源システムの魅力は、その自立性にあります。しかし、このようなシステムは設置や構成が複雑です。MEAN WELLの連続インバータは、統合されたAC/DC充電、DC/AC変換、ACバイパスユニットを採用することで、オフグリッド電源とバッテリ充電の簡素化とコスト削減を実現しました。その1つの例が、オフグリッドの家庭用電源とバッテリ充電に必要な機能を処理するNTN-5Kシリーズの充電器/インバータです。

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著者について

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Steven Keeping(スティーブン・キーピング)

スティーブン・キーピング氏はDigiKeyウェブサイトの執筆協力者です。同氏は、英国ボーンマス大学で応用物理学の高等二級技術検定合格証を、ブライトン大学で工学士(優等学位)を取得した後、Eurotherm社とBOC社でエレクトロニクスの製造技術者として7年間のキャリアを積みました。この20年間、同氏はテクノロジー関連のジャーナリスト、編集者、出版者として活躍してきました。2001年にシドニーに移住したのは、1年中ロードバイクやマウンテンバイクを楽しめるようにするためと、『Australian Electronics Engineering』誌の編集者として働くためです。2006年にフリーランスのジャーナリストとなりました。専門分野はRF、LED、電源管理などです。

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