Bluetooth LE搭載の認証済みWi-Fi 6モジュールを使用した産業用ワイヤレス統合の簡素化
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2025-02-12
モノのインターネット(IoT)の台頭により、ワイヤレスコネクティビティは、機器の監視や資産追跡からビルのオートメーションに至るまで、産業用アプリケーションの基本要件となっています。このコネクティビティを導入しようとする設計者は、ワイヤレスチップセット、アンテナ、ソフトウェアコンポーネント、グローバル認証、セキュリティ、過酷な環境下での信頼性など、複数の課題に直面しています。
これらの課題は、統合を簡素化しながら必要な機能を提供するBluetooth Low Energy(BLE)5.4搭載の堅牢で認証済みのWi-Fi 6モジュールを選択することで克服できます。
この記事では、産業用システム設計者が直面するワイヤレスコネクティビティの課題について説明し、BLE 5.4を搭載した認証済みのEzurioWi-Fi 6モジュールの例を紹介します。また、認証済みアンテナや関連開発キットについても説明します。
産業用ワイヤレス通信における主な課題
産業環境では、高速データの共有を必要とするエンドポイントがますます増えており、このデータ通信の手段としては、ワイヤレスネットワークが唯一の実用的な手段である場合が少なくありません。
そのため、旧式のワイヤレス技術ではネットワークが混雑し、レイテンシの問題やパケットロスが業務効率に影響を及ぼす可能性があります。また、旧式の通信技術では、ネットワークがサイバー攻撃に対して脆弱になる可能性もあります。
Wi-Fi 6やBLE 5.4のような最新技術では、これらの問題を解決することができますが、それらを開発、統合するには、特にスペースに制約のある機器や後付けアプリケーションにおいて、RFに関する高度な専門知識が必要です。さらに、多くのワイヤレスソリューションは、手作業による組み立て工程を必要とするため、生産が遅くなり、コストが上昇します。
信頼性も懸念事項の1つです。多くの産業環境は、著しい電磁干渉(EMI)、過酷な温度、振動や衝撃を特徴とします。最後に、多くのアプリケーションでは、世界基準への準拠を確保しつつ、バッテリ寿命を延ばすために低消費電力が要求されます。
堅牢なソリューション:Bluetooth LE 5.4搭載Wi-Fi 6モジュール
EzurioのSona TI351モジュールは、堅牢で認証済みのパッケージにWi-FiとBLEを組み合わせることで、産業用ワイヤレスコネクティビティの課題を解決します(図1)。Texas InstrumentsのSimpleLink CC3351 Wi-FiおよびBLEコンパニオンICを中心に構築されたこれらのモジュールは、面実装技術(SMT)とプラグ式のバリエーションがあり、内蔵チップアンテナまたはアンテナコネクタのいずれかを選択できます。
図1: Sona TI351は、コンパクトで認証済みのWi-Fi 6およびBLE 5.4モジュールファミリで、SMTおよびプラグ式のバリエーションがあり、内蔵アンテナまたはアンテナコネクタを備えています。(画像提供:Ezurio)
すべてのモジュールは、高速データ転送と内蔵エラー検出および訂正機能を備えたSDIO 2.0インターフェースを介してWi-Fi 6(802.11ax)をサポートしています。Wi-Fi 6は、混雑した産業用ネットワークで信頼性の高いパフォーマンスをサポートする次のようないくつかの機能を提供します。
- 直交周波数分割多重アクセス(OFDMA)により、同じチャネル上で複数のIoTデバイスから同時送信が可能になり、高密度な配備での効率が向上します。
- ターゲットウェイクタイム(TWT)は、デバイスのウェイクタイムを正確にスケジューリングすることで、バッテリ寿命を最適化します。
- 2.4ギガヘルツ(GHz)は障害物への浸透性を高め、5GHzはより高い帯域幅を実現します。
- 1ミリワット(dBm)を基準とした18デシベルの送信電力により、広い産業用スペースを確実にカバーします。
モジュールのBLE 5.4サポートは、専用の高速UART(HS-UART)チャネルを介して行われます。BLE 5.4は産業環境に適したプロトコルです。そして、次の機能をサポートしています。
- レスポンス付き定期広告(PAwR)により、所定の送信ウィンドウを使用して消費電力を削減
- プライマリデバイスが同期データを共有できるようにすることで、ネットワーク管理を簡素化する定期広告同期転送(PAST)
- LE 2メガビット/秒(Mビット/秒)の物理層(PHY)により、スリープモードへの素早い復帰による高速データ伝送をサポートし、電力効率をさらに改善
- LE Long Rangeモードにより、長距離でも信頼性の高い通信が可能
モジュールはWi-FiとBluetoothの併用をサポートし、両方のプロトコルを必要とするアプリケーションに対応します。
高信頼性設計
Sona TI351モジュールは、パワーアンプ(PA)を内蔵しており、発信信号強度を高め、厳しい環境でも信頼性の高い動作を実現します。受信側では、ローノイズアンプ(LNA)がノイズ干渉を最小限に抑えながら微弱な信号を増幅し、信号受信を向上させます。この組み合わせにより、EMIや物理的な障害物が多い環境でも安定したワイヤレスコネクティビティを実現します。
また、モジュールは物理的な信頼性も考慮して設計されています。SMTバージョンでは、接続が振動や機械的ストレスに耐えれるほど強く、埋め込みアンテナオプションでは、潜在的な故障ポイントを取り除くことができます。モジュールの動作温度範囲は、-40°C〜+85°Cです。
LinuxとAndroid OSの包括的なソフトウェアサポート
Sona TI351モジュールには、LinuxとAndroid OS用の包括的なソフトウェアサポートが含まれています。Linuxの場合、コネクティビティスタックは複数のカーネルバージョンにわたってをテストされており、古いカーネルとの互換性を確保するため、v2.6.37以前のリリースのバックポートドライバが用意されています。スタックは、Buildroot、Yocto、Ubuntuなど、おなじみのビルド環境をサポートしています。
ハードウェア固有のドライバだけを提供するのではなく、Ezurioはテスト済みの完全なコネクティビティスタックを提供します(図2)。このアプローチは、コンポーネント間の非互換性を防ぎ、システム統合を加速するのに有用です。スタックは、最新のドライバソースとカーネルコンポーネントで継続的に保守され、最適なパフォーマンスを保証します。
図2:Sona TI351には、包括的なコネクティビティソフトウェアスタックが搭載されています。(画像提供:Ezurio)
セキュリティと認証に関する懸念
このモジュールは、Wi-Fi 6とBLE 5.4の高度なセキュリティ機能を活用しています。Wi-Fi側では、高度な暗号化と認証メカニズムを含むエンタープライズグレードのWPA2/3セキュリティプロトコルを強力にサポートしています。
BLEの場合、暗号化された広告データ機能は、継続的な接続を確立するオーバーヘッドなしに、機密情報を安全に送信できるため、環境データやアクセス認証情報を送信するビルオートメーションシステムで特に有用です。さらに、BLE Generic Attribute Profile(GATT)のSecurity Levels Characteristicは、さまざまなデータタイプに対して異なるセキュリティレベルを可能にし、セキュリティオーバーヘッドとパフォーマンスのバランスを最適化します。
規制遵守は、設計者がどのプロトコルを選択するかにかかわらず、特に国際的に出荷されるデバイスにとっては、大きな頭痛の種となる可能性があります。これらの懸念に対応するため、Sona TI351ファミリは、FCC(米国)、IC(カナダ)、CE(ヨーロッパ)、UKCA(英国)、MIC(日本)、RCM(オーストラリア/ニュージーランド)、KCC(韓国)などの規格で認証されています。
SMTおよびM.2オプションがアセンブリの柔軟性を提供
先に述べたように、Ezurio Sona TI351ファミリは、特定のアプリケーション要件を満たすために、いくつかの構成で利用可能です。たとえば、453-00200R(図3)は、コンパクトな12 x 16ミリメートル(mm)のM.2 1216 SMTフォームファクタを採用し、チップアンテナを内蔵しています。この設計は、産業環境に耐える堅牢な接続を提供しながら、自動組立を可能にします。このような特徴の組み合わせにより、このモジュールは、信頼性と製造効率が重要な大量導入に特に適しています。
図3:Sona TI351 453-00200Rは、M.2 1216 SMTフォームファクタのコンパクトな12 x 12mmモジュールで、チップアンテナを内蔵しています。(画像提供:Ezurio)
外部アンテナ接続が必要なアプリケーション用の453-00199R(図4)は、同じ堅牢なM.2 1216フォームファクタですが、チップアンテナの代わりにMHF4Lコネクタを搭載しています。この構成により、金属筐体やEMIの高い場所など、厳しいRF環境でも外部アンテナを使用して最適な信号受信が可能になります。
図4:Sona TI351 453-00199RモジュールはMHF4Lアンテナのコネクタを搭載しています。(画像提供:Ezurio)
前の 2 つの例とは異なり、453-00209(図 5)は、M.2 2230 Key Eコネクタを使用し、プラグ式システム構成が可能です。この機能により、現場での設置や交換が容易になり、メンテナンス時のシステム停止時間を最小限に抑えることが重要な機器監視アプリケーションに特に有用です。
図5: Sona TI351 453-00209モジュールは、M.2 2230 Key Eコネクタを使用し、プラグ式のシステム構成を実現します。(画像提供:Ezurio)
この幅広いオプションにより、システム設計者は、信頼性と統合の容易さを維持しながら、特定のユースケースに合わせて実装を最適化することができます。
認証済みアンテナがRF設計を合理化
MHF4Lコネクタを搭載したモジュールに対して、Ezurioは認証済みのさまざまなアンテナオプションを提供しています。その1例として、EFB2471A3S-10MH4L5Wフレキシブル平面逆Fアンテナ(FlexPIFA)(図6)があり、取り付けを容易にするために裏側に接着剤が塗布されています。このトリプルバンド(2.4/5/6GHz、7.125GHz対応)アンテナは、5.925~7.125GHzで1.6:1の低い平均電圧定在波比(VSWR)を維持します。5GHzで等方性(dBi)比3.9デシベルの利得を持ち、異なる周波数帯域での性能が要求されるグローバルアプリケーションに特に適しています。
図6:EFB2471A3S-10MH4Lはトリプルバンド2.4/5/6GHz、5Wアンテナです。(画像提供:Ezurio)
定置型産業用IoT(IIoT)および機器監視アプリケーション向けに、001-0021(図7)はデュアルバンド2.4/5 GHzソリューションを提供します。2.4GHzでのVSWRは2.5:1未満、5GHzでの利得は3dBiです。
図7:001-0021は2.4/5GHzのデュアルバンドアンテナです。(画像提供:Ezurio)
認証済みアンテナのラインナップは、製品開発を大幅に効率化することができます。Ezurioは、モジュールと組み合わせて使用するアンテナをすでにテストしており、想定外のRF性能の問題が発生するリスクを低減しています。より広い意味では、モジュールのフォームファクタとアンテナの選択肢の組み合わせにより、システム設計者は統合の容易さを維持しながら実装を最適化することができます。
開発キットでフルアクセス
設計者は、453-00200-K1開発キット(図 8)を使用して、モジュールをすぐに使い始めることができます。この包括的なキットは、453-00200チップアンテナモジュールを使用し、モジュールの機能と性能をテストするためのLinuxホストへの複数のソフトウェアおよびハードウェアインターフェースを備えています。
図8:Sona TI351開発キットは453-00200チップアンテナモジュールをベースとし、Linuxホストへの通信とハードウェアインターフェースを提供します。(画像提供:Ezurio)
このキットには、UARTまたは高速SDIOデバイスに接続する高速および低速ケーブルおよびアダプタ/ドーターボードが含まれています。基板上のヘッダ、ジャンパ、スイッチにより、ハードウェアおよびソフトウェアの開発時のテストや電力消費量を測定するために、電源と信号のネットを簡単に分離することができます。
まとめ
Sona TI351モジュールは、高度なワイヤレス機能をコンパクトで堅牢なデザインにまとめることで、産業環境におけるワイヤレスコネクティビティの主要な課題に対応します。モジュールとアンテナの事前認証、複数の取り付けオプションとフォームファクタ、包括的な開発キットにより、開発時間とリスクを最小限に抑えます。
免責条項:このウェブサイト上で、さまざまな著者および/またはフォーラム参加者によって表明された意見、信念や視点は、DigiKeyの意見、信念および視点またはDigiKeyの公式な方針を必ずしも反映するものではありません。
