過酷な産業用途および危険な場所向けの電源の選択

著者 Art Pini

DigiKeyの北米担当編集者の提供

生産ライン、ロボティクス、エネルギーインフラ、製油所、半導体製造など、過酷な環境や爆発の恐れがある環境における産業用システムは、ますます自動化が進んでいます。システム設計者は、信頼性、耐久性、安全性、高電力密度、効率、および複雑な規制への対応をサポートしつつ、高いピーク電力や逆起電力耐性の要件を満たす電源を必要としています。

本記事では、過酷な自動化アプリケーション向けの電源システムを設計する際に直面する課題について説明します。続いて、TRACO PowerのDINレール電源を紹介し、設計者がこれらの課題に対処するのに役立つ方法を示します。

産業用電源の課題

製造生産ライン、再生可能エネルギーシステム、物流倉庫、化学処理施設などは、いずれも電子機器やシステムを産業環境にさらすアプリケーションです。電子機器は、極端な温度、湿度、機械的衝撃、電磁干渉(EMI)、振動、ほこり、化学物質への暴露、爆発性雰囲気にさらされる可能性があります。電子機器は電源供給、制御、監視に広く使用されているため、これらすべての用途において、精度、精密性、信頼性、および安全性を確保するように設計されなければなりません。

特に電源は極めて重要です。産業用電子機器の中核をなす産業用電源は、ACおよびDCの両電源から安定化された電力を供給し、その出力は、接続された機械の最低限のエネルギー需要を満たすとともに、十分な安全マージンを確保しなければなりません。たとえば、モータ、ポンプ、モーション制御ドライブなどの電気機械システムは、起動時に高いピーク電流を必要としますが、電源はそれを供給できなければなりません。また、一般的に、過電圧、過電流、過温度からの保護も求められます。

電源は、負荷変動や電源電圧変動下でも良好な電圧安定性を示し、高い効率を保証しなければなりません。これは、小型筐体に搭載される電源において特に重要です。このような場合、効率が低いと過度な発熱につながります。

電源のフォームファクタも重要です。スペースが限られている機械や制御キャビネットに収まるものでなければなりません。また、産業用アプリケーションでは、故障したデバイスを迅速に交換できることが求められるため、物理的なデバイスは、取り外しや交換が容易にできるように取り付けられる必要があります。極めて重要な点として、電源は安全性および電磁両立性(EMC)に関する認証を取得している必要があります。

危険な場所

危険な場所(HazLoc)は、認証における特別な領域です。米国電気工事規定(NEC)では、危険な場所を、可燃性ガスや蒸気、可燃性液体、可燃性粉塵、あるいは引火性繊維や飛散物により、火災や爆発の危険性がある区域と定義しています。電源やその他の電子機器は、HazLoc環境での動作について、特に認証を受けている必要があります。

UL(Underwriters Laboratories Inc.)とATEX(Appareils destinés àêtre utilisés en Atmosphères Explosibles)(爆発危険区域で使用する機器)は、HazLocコンポーネントの試験基準を定めています。これらの認証は、指定された危険な環境で使用される機器が、関連する最低限の安全基準を満たしていることを確認するものです。

認証では、揮発性物質の種類と、その存在の可能性という2つの要素が考慮されます。爆発の可能性のある物質の種類によって、認証クラスが決定されます。Class 1は可燃性蒸気およびガス、Class 2は小麦粉などの可燃性粉塵、Class 3は引火性繊維や飛散物(布地などの小さな可燃性粒子)を対象としています。

揮発性物質が存在する可能性によって、区分分類が決定されます。Division 1は、通常、危険物が存在する環境を対象としています。Division 2は、通常は危険物が存在しませんが、特定の条件下では存在する可能性がある環境を対象とします。

HazLoc用途向け電源

TRACO PowerのDINレール対応高効率電源TIB-EXシリーズ(図1)は、過酷な環境や危険な場所での使用を想定して設計されています。DINレールとは、産業用制御機器を機器ラックやキャビネットに取り付けるために広く使用されている金属製レールです。また、これらの電源には側面取り付けオプションも用意されており、フラットパネルへの取り付け時に薄型化を実現します。本シリーズは、UL HazLoc Class 1 Division 2(C1D2)、ATEX(EN60079-0、EN60079-7、EN60079-15)の安全規格に適合しており、EMC認証も取得しています。

TRACO PowerのTIB-EX DINレール電源の画像図1:TIB-EXシリーズのDINレール電源は、HazLoc C1D2認定およびEMC認証を取得しており、定格出力は80W、120W、240W、480Wです。(画像提供:TRACO Power)

HazLoc C1D2電源は、通常は可燃性ガスや蒸気が封じ込められているものの、漏洩、機器の故障、換気システムの故障などの異常な状況下で漏れ出す可能性がある区域において、安全に動作するように設計されています。

C1D2機器の最も重要な特性は、通常の動作条件および予期せぬ動作条件のいずれにおいても、発火源となってはならないという点です。本機器は、揮発性雰囲気に引火するのに十分な電気エネルギーまたは熱エネルギーを放出しないように設計されています。そのため、通常運転中にアークや火花を発生させることはなく、その物理的な筐体構造により、揮発性物質が侵入する速度が制限されています。

HazLoc認証に加え、これらの対流冷却式電源は、88~95%(モデルにより異なる)という高効率を特徴とし、-40°C~+60°Cの温度範囲(全負荷)で動作可能です。出力電圧12V、24V、48Vで、定格電力80W、120W、240W、480Wのモデルが用意されており、85VAC~264VACの電源電圧(50/60Hz)で動作します。

TIB-EXシリーズは、出力過電圧保護や短絡保護を含む、充実した動作保護機能を備えており、産業環境での使用に最適です。入力側では、電源供給ラインの電圧が定格の90%を下回る電圧降下(完全な停電ではない)から保護します。その一般的な持続時間は3~10サイクル、あるいは50ms~167msです。本シリーズはSEMI F47サグイミュニティ規格に準拠しています。

また、TIB-EX電源は短期間の過負荷にも耐えることができ、150%の過負荷状態でも最大4秒間出力を維持します。これは、初期接続時に大電流を消費するステッピングモータ、ソレノイド、またはアクチュエータを使用する設計に最適です。

産業環境においてもう1つ見られる現象は、逆起電力です。これはインダクタや減速中のモータなどの負荷が、電源に電圧を発生させる現象です。TIB-EXシリーズは、これらの負荷下でのシャットダウンや誤動作を防止するための重要な逆起電力耐性機能を備えています。

スイッチモード電源(SMPS)は、最初に入力コンデンサを充電する必要があります。そのため、電源をラインに接続した直後に大きな突入電流が流れる可能性があります。TIB-EXシリーズなどのほとんどのSMPSでは、突入電流リミッタを使用してこれを制御しています。これらの電源の突入電流定格は、230VAC入力で30A、115VAC入力で15Aです。

すべてのモデルは、DC-OK接点出力および前面パネルと側面パネルの両方にあるDC-OK LEDを介して出力ステータスを通知します。

80WのTIB 080-112EX AC/DC DINレール電源(図2)は、定格出力電圧12V、最大電流6.7Aです。この電源は、3.71インチ × 1.26インチ × 4.50インチの小型筐体内に収められています。

HazLoc認定のTRACO Power TIB 080-112EX DINレール電源の画像図2:TIB 080-112EXは12V、80WのDINレールHazLoc認定電源です。(画像提供:TRACO Power)

TIB 080-112EXは、スイッチング周波数が60kHz~75kHzのフライバック型スイッチングレギュレータを採用しています。12V出力は11.8VDC~15.0VDCまで調節可能で、定格入力電圧範囲の電源変動による入力電圧安定度は0.1% 、定格負荷の10~90% の負荷変動に対する負荷安定度は0.5%です。動作効率は90%で、IEC 61709に基づく平均故障間隔(MTBF)は195万時間(hr)です。

TIB 120-124EX(図3)は、120W DINレール電源の一例です。定格出力は24V、5Aで、サイズは4.5インチ × 4.89インチ × 1.42インチです。

TRACO Power TIB 120-124EX電源の画像図3:TIB 120-124EXは、4.5インチ × 4.89インチ × 1.42インチの筐体に収められた24V、120W電源です。(画像提供:TRACO Power)

TIB 120-124EXは、スイッチング周波数70~100kHzのハーフブリッジ型インダクタ-コンデンサ-コンデンサ(LCC)トポロジを採用しています。また、アクティブ力率補正機能も備えています。

この電源の公称出力24Vは23.5V~28Vまで調節可能で、定格効率は94%です。MTBFは145万時間です。

より高い電力を必要とする設計者は、TIB 240-148EX(図 4)を選択することができます。これは、公称出力電圧48V、最大出力電流5Aの240W電源モデルです。サイズは、4.5インチ × 4.89インチ × 1.89インチと、より大型になっています。

TRACO PowerのTIB 240-148EX DINレール電源の画像図4:TIB 240-148EXは、48V、5Aを出力する240W DINレール電源です。(画像提供:TRACO Power)

120Wモデルと同様に、この電源も75kHz~100kHzのスイッチング周波数を持つハーフブリッジ型LCCトポロジを採用しています。アクティブ力率補正機能を備え、公称出力電圧は48Vで、47V~56Vまで調節可能です。最大95%の効率を実現し、MTBFは130万時間です。

TIB 480-124EX(図5)は、24V、20A出力を持ち、効率95%の480W電源です。サイズは4.5インチ × 4.89インチ × 3.23インチで、リモートオン/オフ機能を備えています。出力電圧は23.5V~28Vの間で調節可能で、MTBFは130万時間です。

TRACO PowerのTIB 480-124EX 480W電源の画像図5:TIB 480-124EX 480W電源は、リモートオン/オフ制御機能を備えています。(画像提供:TRACO Power)

まとめ

TRACO PowerのTIB-EXシリーズ DINレール電源は、産業用アプリケーションの制御キャビネットへの取り付けに最適化された、高性能かつ信頼性が高く、効率的で耐久性に優れた回路設計を兼ね備えています。これらの製品は、危険な環境での使用が認められているという明確な利点があります。

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著者について

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Art Pini

Arthur(Art)PiniはDigiKeyの寄稿者です。ニューヨーク市立大学の電気工学学士号、ニューヨーク市立総合大学の電気工学修士号を取得しています。エレクトロニクス分野で50年以上の経験を持ち、Teledyne LeCroy、Summation、Wavetek、およびNicolet Scientificで重要なエンジニアリングとマーケティングの役割を担当してきました。オシロスコープ、スペクトラムアナライザ、任意波形発生器、デジタイザや、パワーメータなどの測定技術興味があり、豊富な経験を持っています。

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