ファクトリオートメーション用AC/DC電源の選択と応用
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2024-12-16
産業用モノのインターネット(IIoT)とファクトリ4.0テクノロジーの応用により、ファクトリオートメーションへのシフトが加速しています。これらの技術の基盤となるのが、堅牢な電源です。そのため、設計者にとっては、製造施設の自動化、ネットワーキング、テスト・測定機器のニーズを満たすために、さまざまな電圧レベルをサポートする信頼性の高い電源を迅速に導入できることが重要になります。
このニーズに対応するため、設計者は電源を自ら構築することも可能ですが、コストと時間がかかる場合があります。あるいは、タスクに適合し、予算の制約内で容易に入手できるソリューションを見つけることもできます。いずれのソリューションも、電磁妨害(EMI)規制を満たしながら、電磁両立性(EMC)と安全基準を遵守しなければなりません。さらに、ファクトリオートメーション用電源は、産業環境に適した保護機能を備えている必要があります。
この記事では、ファクトリオートメーションにおけるアプリケーション用のAC/DC電源の要件について簡単に説明し、重要な性能とフォームファクタの選択基準について概説します。そして、すぐに導入可能なユニットの例として、RECOM PowerのDINレール電源を紹介します。
ファクトリオートメーション用電源
ファクトリオートメーションには、ネットワーク機器やテスト・測定ツールも含まれており、堅牢で信頼性の高い電力に大きく依存しています。電源の要件はアプリケーションや機器によって異なります。典型的なソリューションでは、主電源の交流(AC)電圧(90VAC~264VAC、国によって若干の違いがあります)を直流(DC)電圧に変換します。ファクトリオートメーション機器は、12V、15V、24V、48Vなど、いくつかの標準DC電圧で動作するため、出力要件はさまざまです。
関連する安全規制やその他の規制への適合が証明されていることに加え、モジュール式ソリューションは通常、エネルギー密度と効率を念頭に置いて設計されています。これらの製品は、さまざまな標準電圧と電流要件を満たし、高い信頼性と長寿命を実現するように製造されています。
ファクトリオートメーション用の工業用モジュール式電源には、一般的なDINレールシステムに適合するオプションがあり、導入が容易です。このシステムは、ユニバーサル標準の幅や取り付けハードウェア形状に対応しています。DINレールシステムにより、設置業者はメーカーに関係なく、電源を含む一連の製品における寸法の一貫性が保証されます。
このブランド間の互換性により、DINレールシステムのユーザーは、コンポーネントを柔軟に組み合わせて使用することができます(図1)。
図1:DINレールは電源の配置を簡素化し、コンポーネントの組み合わせやマッチングを可能にします。(画像提供:RECOM Power)
コスト効率の高いDINレール電源
ファクトリオートメーションのインフラは複数の電源を使用するため、コストが急激に上昇します。RECOM PowerのREDIIN120シリーズ 120W DINレールAC/DC電源(図2)は、コンパクトかつ信頼性を保ちながら、コストを最小限に抑えるように設計されています。各ユニットのサイズは123.6 x 30.0 x 116.8mmです。
図2:REDIIN120シリーズ 120W DINレール電源のサイズは123.6 x 30.0 x 116.8mmです。(画像提供:RECOM Power)
対流冷却式のREDIIN120 AC/DC電源は、-30°C~+50°Cの温度範囲でフルパワー動作が可能です。この製品は、安全規格IEC 62368-1、IEC 61010-1、IEC 61010-2-201に基づいて認証されています。
電源からの電磁放射および伝導エミッションは、EN 61000-6-2イミュニティ規格および重工業用EN 61000-6-4クラスBエミッション規格に準拠しています。また、RoHS指令による環境保護要件にも準拠しています。
REDIIN120シリーズは3つのモデルで構成され、それぞれ90VAC~264VACの入力範囲で動作し、出力電圧のみが異なります。REDIIN120-12は公称12V出力で、10.8V~13.2Vで調節可能です。REDIIN120-24は公称24V出力で、21.6V~26.4Vで調節可能です。REDIIN120-48は48V出力で、43.2V~52.8Vで調節可能です。最大出力電流はそれぞれ10A、5A、2.5Aです。
電源はユニットによって最大効率が86%~89.5%の間で動作し(図3)、無負荷時の消費電力は、12Vおよび24Vモデルで150ミリワット(mW)、48Vモデルで210mWです。
図3:REDIIN120-24電源の出力負荷に対する効率を示しています。(画像提供:RECOM Power)
この電源シリーズは定電流モードで動作できるため、モータ、ソレノイド、リレーのような誘導性負荷および容量性負荷に適しています。起動時の最大容量性負荷は、12Vと24Vのユニットで8ミリファラド(mF)、48Vのユニットで3mFです。
REDIIN120電源は、包括的な過電流保護(OCP)、過電圧保護(OVP)、過温度保護(OTP)を備えています(図4)。12Vユニットでは17.4VDC、24Vユニットでは33.6VDC、48Vユニットでは64.8VDCを超える電圧が発生すると、ラッチオフ状態になります。
図4:REDIIN120シリーズは、包括的な保護機能を備えています。12Vユニットでは17.4VDC、24Vユニットでは33.6VDC、48Vユニットでは64.8VDCを超える電圧が発生すると、ラッチオフ状態になります。(画像提供:RECOM Power)
REDIINファミリには15Vのバリエーションはありません。しかし、RECOM Powerは15V動作用としてRACM15E-15SK/PMAD-CTN AC/DCコンバータを提供しています(図5)。このDINレールマウントユニットは、80V~275VのAC入力または370VのDC入力から15V、1Aの出力を供給します。最大出力は15Wで、全負荷時の効率は85%です。医療用、家庭用、産業用、安全トランス規格の国際的な安全およびEMI認証を取得しています。
図5:RACM15E-15SK/PMAD-CTNは、ファクトリオートメーション用の15V、15W DINレールマウントAC/DCコンバータです。(画像提供:RECOM Power)
DINレール電源の設計上の考慮点
安全性、EMC、EMIの要件に加えて、設計者は、ファクトリ用AC/DC電源が長期間にわたって故障せずに動作することを保証できるよう、その他の重要なパラメータを考慮する必要があります。
たとえば、動作温度を電源の最大定格以下に制限することは、問題を回避するために不可欠です。高温での動作は性能を低下させるだけでなく、動作寿命を縮め、誤動作や故障のリスクを高めます。一方、低温での動作は、出力電圧リップルの増加や出力レギュレーションの低下など、性能上の問題を引き起こす可能性があります。さらに、低温時の電気的特性の変化により、起動に失敗することもあります。
メーカーは通常、ある温度閾値を超えた場合に電源のディレーティングを推奨しており、REDIIN120シリーズのユニットも、最大動作温度を超えた場合の安全カットオフ機能を備えています。REDIIN120-24 120W AC/DC電源のディレーティング曲線(図6)は、100VACおよび115VAC入力では+40°C以上、230VAC入力では+50°C以上で出力が低下することを示しています。70°Cを超えるとカットオフ機能がトリガされます。
図6:REDIIN120-24 120W AC/DC電源のディレーティング曲線は、+100VACおよび115VAC入力では+40°C以上、230VAC入力では+50°C以上で出力が低下することを示しています。70°Cを超えるとカットオフ機能がトリガされます。(画像提供:RECOM Power)
もう1つの考慮すべき点は、ケーブルの長さです。電源ケーブルが過度に長いと、抵抗損失が発生し、負荷への電圧が許容限界を下回ることがあります。ワイヤゲージや出力電圧を増やし、ポイントオブロード(POL)でのローカルDC/DCレギュレーションを使用することで、ケーブル損失を解消できます。
負荷の種類も考慮しなければなりません。容量性負荷や誘導性負荷に電力を供給するのは簡単ではない場合があります。モータ、ソレノイド、リレーなどの誘導性負荷は、高電圧スパイクを引き起こす可能性があります。容量性負荷に電源を供給すると、電源の動的負荷応答が低下したり、不安定性や出力リップルの増加につながったりする可能性があります。設計者は電源を選択する際に、アプリケーションが要求する負荷の種類を慎重に検討し、確実に対応できるようにすべきです。たとえば、REDIIN120ユニットには定電流モードがあるため、誘導性負荷および容量性負荷に適しています。
最後に、出力OCPはミスサイクルやドロップアウトの影響を最小限に抑えるために重要です。電源を保護する代表的な技術には、電流を設定値に制限すること、負荷が増加するにつれて電流を安全な値に「フォールドバック」すること、あるいは遅延後に出力をオフにして再びオンにする「ヒカップ」保護などがあります。過電流状態が継続している場合、ヒカップサイクルが繰り返されます。REDIIN120製品は、このヒカップ保護機能を備えています。
たとえば、REDIIN120-24 120W AC/DC電源は、定格負荷範囲内では定電圧モードで動作します(図7)。出力OCPでは、最大定格電流が公称値の105%~150%を超えると、ユニットは電流制限モードに入り、出力電圧を公称設定値の約80%にします。負荷がさらに増加すると電源はヒカップモードに入り、自動的に再起動します。
図7:REDIIN120-24 120W AC/DC電源は、定格負荷範囲内では定電圧モードで動作します。出力OCPでは、最大定格電流が公称値の105%~150%を超えると、ユニットは電流制限モードに入り、出力電圧を公称設定値の約80%にします。負荷がさらに増加すると電源はヒカップモードに入り、自動的に再起動します。(画像提供:RECOM Power)
まとめ
RECOMの工業用DINレールマウント用モジュール式電源は、コスト効率が高く、コンパクトで信頼性に優れ、導入が容易なファクトリオートメーション向けソリューションを提供します。このユニットは、必須規制に対する事前認証を受けており、幅広い標準DC電圧・電流出力が用意されています。また、さまざまな安全機能を備えており、容量性負荷や誘導性負荷に電力を供給するためのオプションも用意されています。
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