Wi-Fiを備えたワイヤレスセンサによるリモートモニタリング
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2020-09-01
最新の工場のデジタルシステムはますます複雑化しており、さまざまなベンダーが提供するデバイスやソフトウェアが相互接続されています。この複雑さは専用インターフェースからの脱却につながり、それらはEthernetやWi-Fi®などの共通規格によって置き換えられています。デジタル通信の標準化は、モノのインターネット(IoT)技術によりさまざまなデバイスの接続が大幅に簡素化される第4次産業革命(インダストリ4.0)の一部であると考えられます(図1)。この記事では、Wi-Fiベースのセンサネットワーキングの最も一般的な形態と代表的なアプリケーションについて考察します。
図1:Wi-Fi対応センシングは、産業環境でますます一般的になっています。
Wi-Fiの歴史とバージョン
Wi-FiはIEEE 802.11に基づくワイヤレスネットワークプロトコルですが、デバイスの相互運用性を確保するためにさらに標準化されています。Wi-Fi規格はWi-Fi® Allianceによって管理されており、この規格を満たしていると認定された製品のみがその商標を使用できます。
802.11規格は、無線ローカルエリアネットワーク(LAN)アプリケーションで定評があります。この規格は、Institute of Electrical and Electronics Engineers(IEEE)により、1997年に802.11-1997としてリリースされました。その後の主要リリースには、802.11b、802.11a、802.11g、802.11n、および802.11ac(年代順)が含まれます。IEEE 802.11はWi-Fiの技術的基盤を提供しますが、IEEEには認定や試験がなかったため、初期のデバイスでは相互運用性の問題が発生していました。
1999年、最初にIEEE 802.11を採用した企業の一部によってWi-Fi Allianceが設立されました。この団体の目的は、メンバー企業が製造していたデバイス間の相互運用性を向上させることでした。創設企業には、3ComやNokiaが含まれていました。表1に示すように、Wi-Fiの世代はIEEE 802.11規格の主要リリースに対応しています。
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表1:Wi-Fi規格の変遷。
範囲、速度、および周波数
Wi-Fiはさまざまな周波数で動作可能です。また、多くの場合、異なる周波数を使用するようにデバイスを設定できます。最も一般的な周波数は、2.4GHzと5GHzです。
一般的に、高い周波数は高速のデータ転送を提供します。ただし、高い周波数には、特に固い物体を通過すると消散しやすいという性質もあります。したがって、通常、低い周波数のほうがより広い通信範囲を提供します。
また、他のデバイスと同じ周波数範囲で動作する場合、Wi-Fiは干渉の影響をより受けやすくなります。たとえば、2.4GHzでは、電子レンジ、コードレス電話、およびBluetoothデバイスとの間でWi-Fi干渉が発生します。これは、特定の環境では、5GHzのほうが実際には2.4GHzよりも広い通信範囲を提供する場合があることを意味しています。特定の周波数で問題に直面する場合は、単に別のチャンネルまたは帯域を試すことが多くの場合最も簡単です。
周波数範囲は、内部で特定のチャンネルが定義される帯域です。たとえば、2.4GHzは14個のチャンネルに分割されます。チャンネル1は2401~2423MHzで、チャンネル2は2406~2428MHzといった具合です。5GHz帯域では、これよりもはるかに多いチャンネルが利用可能です。
Wi-Fi HaLowまたは拡張範囲として知られるIEEE 802.11ahは、約900MHzの低周波数帯域で動作し、狭帯域の1MHz RFチャンネルと組み合わされます。これら狭帯域の低周波数チャンネルをプロトコル変更と組み合わせることにより、消費電力を大幅に削減し、Bluetooth Low Energyよりも低く抑えることができます。範囲は2.4GHzの約2倍となり、シングルストリームの場合は150kbpsで40メートル以上、より複雑なデュアルストリームチップを使用する場合は80メートル以上になります。IEEEは802.11ah規格をすでにリリースしていますが、Wi-Fi Allianceはデバイスの認定を開始していません。
対照的に、IEEE 802.11ad(またはWiGig)は約60GHzの高周波数帯域で動作し、通常約7Gビット/秒の高いデータ転送レートを実現します。
Wi-Fiネットワークトポロジ
ネットワークのトポロジは、デバイス間接続の基本構造です(図2)。たとえば、スター型トポロジでは、1つのデバイスがハブとなり、他のすべてのデバイスがそのハブに接続します。フルコネクト型トポロジでは、各デバイスが他のすべてのデバイスに接続されます。メッシュ型トポロジは、接続が分散されているという点でフルコネクト型トポロジに似ていますが、デバイスのすべてのペア間で接続されるわけではありません。このトポロジは、パーシャルメッシュ型とも呼ばれます。バス型トポロジでは、すべてのデバイスがバスと呼ばれるケーブルに接続されます。
図2:ネットワークトポロジには多くの種類がありますが、ほとんどのWi-Fiネットワークはスター型またはメッシュ型です。(画像提供:Design World)
一般的に、Wi-Fiネットワークはスター型またはメッシュ型のどちらかです。メッシュ型トポロジは堅牢かつ安全で、消費電力を低減し、個別リンクが短くなるため範囲が拡大します。多くの低電力センサを備えた大規模IoTネットワークにおいて、これらは重要な利点です。ただし、スター型ネットワークも同様の利点を提供できます。スター型ネットワークでは、個々のデバイスは断続的に伝送でき、ハブだけがWi-Fi信号のための連続電力を必要とします。
産業用に特化したWi-Fiの実装
上述のように、Wi-Fi HaLowは低周波数を使用して、より広い通信範囲を実現し、消費電力を低減します。これは、小型の電池駆動デバイスに役立つ可能性があります。リアルタイム通信が必要な制御および産業用オートメーションアプリケーションにおいて、Wi-Fiは十分に高速で低レイテンシの安定した接続を提供するのに苦労してきました。リアルタイムWi-Fiへの関心は10年以上続いていますが、この技術は依然として広範囲に採用されていません。おそらく最も成功したリアルタイムWi-Fiの実装は、中国のプロセスオートメーション向け産業ワイヤレス通信規格であるWIA-PAです。
Wi-Fiの産業利用は、モーションセンサやバーコードスキャナなど、要求が厳しくないアプリケーションでより一般的です。機械の状態モニタリングは、非常に一般的になっています。回転機械では、振動を監視するために加速度センサが使用されています。環境モニタリングも状態モニタリングの重要な側面であり、小型の温度、圧力、湿度およびガス濃度センサがしばしば展開されています。
状態モニタリングセンサは、さまざまな環境で展開されています。これらの環境には、明らかな工場/倉庫機械だけでなく、トラックを含む高価値商用車、土木機器、および航空機も含まれます。さらに、状態モニタリングは、発電、採掘および掘削作業でも非常に定評があり、重要です。
交通、汚染レベル、および天候の監視は、ワイヤレスセンサが展開されているアプリケーションの一例です。
競合する技術
Wi-Fiは、産業用デバイス間のワイヤレス通信を実現する唯一の規格ではありません。短距離および低電力アプリケーションにおいて、Wi-FiはBluetoothやZigbeeと競合しています。長距離アプリケーションにおいてWi-Fiと競合する主な技術は、セルラー技術(3G、4G、および5G)です。
Bluetooth Low Energy(BLE)を介した通信やXBee Wi-Fiモジュールを介したWi-Fiを技術者がセットアップするのに役立つ低電力マイクロコントローラユニット(MCU)の例を、1つだけ考慮します。
Bluetoothは、定評のある低電力通信規格です。ZigbeeはIEEE 802.15.4に基づく新しい技術で、Bluetoothよりもさらに低コストのハードウェアおよび低電力を使用することを意図しています。Wi-Fi HaLowもこの分野で競合することを意図していますが、Zigbeeほどの超低コストおよび超低電力は実現していません。さらにややこしいことに、5Gには独自の低電力技術であるLow-Power Wide-Area(LPWA)があります。
これらの低電力規格の多くを補完しているのが環境発電機能です。
まとめ
多くの産業用デバイスメーカーは、依然として独自の産業用ワイヤレス技術を使用しています。これは相互運用性をより困難にしますが、それらの技術は高度なセキュリティやリアルタイム通信を提供できます。これらの分野でWi-Fiは向上し続けているため、技術者はこのオープン規格を採用するデバイスが増えることを期待できます。一方、ワイヤレスIIoTアプリケーションにおいて、5Gは大きな可能性を示しています。今後数年間、最新のWi-Fi 6規格と5G規格の間の競争はますます激しくなるでしょう。
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