複雑なインターフェースのないRTD温度センサの利点を享受
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2020-07-07
ヘルスケア、計測器、HVAC、および車載用アプリケーションからモノのインターネット(IoT)に至るまで、温度は最も広範に検知される現実世界のパラメータであり、正確さ、精度、および再現性をバランスよく組み合わせた温度検知は多くのアプリケーションにとって重要です。温度センサで広く使用される選択肢は、抵抗温度検出器(RTD)です。これは通常、純粋かそれに近いプラチナで作られた高精度金属エレメントです。プラチナベースのセンサには非常に詳細で再現性のある特性化された抵抗vs.温度の伝達関数があるため、RTDは科学用および計測器用アプリケーションで幅広く使用されています。
ただし、この一見単純な2端子センサの性能の可能性を十分に発揮するには、センサを駆動したり、その抵抗を測定したりするためのさまざまな方法を設計者が理解して、温度を見極める必要があります。さらに、多くのアプリケーションでは複数のRTDが必要です。そのため、インターフェースアプローチおよび関連回路も、アプリケーションに適合する必要があります。
設計者に必要なのは、RTD固有の特異性に対処してそれを克服するRTD専用部品です。この記事では、テキサス・インスツルメンツ社、マキシム・インテグレーテッド社、アナログ・デバイセズ社のICと、マイクロチップ・テクノロジー社の評価ボードを使って、アプリケーションを簡素化する方法を紹介しています。
RTDセンサの仕組み
RTDの動作原理は、サーミスタと若干似ており、見かけによらず単純です。これはプラチナ製のワイヤまたは薄膜(ロジウムなど他の貴金属が追加される場合もある)であり、既知の公称抵抗および抵抗の正の変化を温度の関数(すなわち、正の温度係数またはPTC)としています。RTDは多くの異なる公称抵抗値で製造できますが、最も一般的なのはPt100およびPt1000(PT100およびPT1000と表記される場合もある)であり、公称抵抗はそれぞれ100Ωおよび1000Ω(0⁰C時)です。
センサの一般的な製造方法には、プラチナ線をガラスまたはセラミック支柱の周りに巻いたり、薄膜製造のプラチナを使用したりすることが含まれます(図1)。RTDの広範な使用と互換性のニーズをふまえて、国際規格DIN EN 60751(2008)は、プラチナ温度センサの詳細な電気的特性を定義しています。この規格には、抵抗vs.温度、許容差、曲線、および温度範囲の表が含まれます。
図1:これらのRTDには、(左から右に向かって)薄膜、ガラス、およびセラミックの製造技術を使用します。(画像提供:WIKA Alexander Wiegand SE & Co. KG)
標準的なプラチナRTDは、-200⁰C~+800⁰Cの範囲で動作します。RTDの主な属性には、高度な安定性、再現性、および精度が含まれます。その条件として、RTDが電流源または電圧源によって適切に駆動され、最高の精度を実現するために線形化された電圧読み取りによって、適切なアナログフロントエンド(AFE)回路を使用した2つの端子間の電圧としてその抵抗が測定される必要があります。
RTDの抵抗は温度とともに極めて劇的に変化するため、高精度測定に適しています。標準的なPt100デバイスにおいて、抵抗は約25Ω(-200⁰C時)から約+375Ω(+800⁰C時)に変化します。0⁰C~+100⁰Cの平均的な傾きはアルファ(α)または温度係数と呼ばれ、その値はプラチナの不純物とその濃度に依存します。最も広範に使用されるアルファの2つの値は、0.00385055と0.00392です。
RTDは、多くのメーカーから数千ものモデルが提供されています。その1例として、Vishay BeyschlagのPTS060301B100RP100があります。これは、0603 SMTパッケージに収められた基本精度±0.3%、温度係数±3850ppm/⁰Cの100ΩプラチナRTDです。このモデルは、PTSシリーズの100Ω、500Ω、および1000ΩリードレスSMT RTDのメンバーであり、それぞれ0603、0805、および1206パッケージで提供されます。これらのデバイスは、高グレードのセラミック基板に蒸着されたプラチナの均質な膜を使用して製造されており、適切な温度係数と安定性を実現できるように調整されています。センサ素子は、電気的、機械的、気候的保護用に設計された保護コーティングに覆われており、性能およびコンプライアンスに関係するすべてのIECおよびDIN規格を満たしています。この0603パッケージに収められた100Ωデバイスはサイズが小型であるため、最終抵抗値の90%以内に対して2秒以下という高速応答時間を自由大気で提供します。
RTDの線形化
RTDはかなり線形化されていますが、曲線状の単調偏差もまだ存在します。この偏差はかなり小さいため、1度または数度の精度が必要なアプリケーションでは、RTD伝達関数を線形化する必要はありません(図2)。たとえば、-20⁰C~+120⁰Cにおいて、その差は±0.4⁰C未満です。
図2:0⁰C~+100⁰Cで直線近似を示すPt100 RTDの抵抗vs.温度。(画像提供:Maxim Integrated)
ただし、RTDはしばしば1度の10分の1以上の精度を必要とする高精度アプリケーションで使用されるため、線形化が必要です。線形化は、ソフトウェアでの計算またはルックアップテーブルにより実装できます。高精度の線形化には、Callendar-Van Dusen方程式が使用されます。
ここで、T = 温度(⁰C)、R(T) = Tにおける抵抗、R0 = T= 0⁰Cにおける抵抗 、A、B、およびCはRTD固有の定数。
α = 0.00385055の場合、DIN RTD規格はCallendar-Van Dusen係数値A、B、およびCを次のように定義します。
A = 3.90830 x 10-3、
B = -5.77500 x 10-7、および
-200⁰C~0⁰CではC = -4.18301 x 10-12 、0⁰C~+850⁰CではC = 0(これには、多項式をより単純な2階方程式に軽減するという利点があります。)
RTDの接続
パッシブの2端子抵抗器として、RTDインターフェースの駆動回路およびセンシング回路は原理上シンプルで、電圧源または電流源により駆動できます。電圧源を使用した最も基本的な形態では、RTDリードが電源と接続され、通常はRTDと同じ公称値を持つ安定した既知の抵抗器(RREF)が直列に配置されています(図3)。これは、標準的な分圧器回路を形成します。RTDと直列抵抗器にわたる電圧を測定した後に、簡単な分圧器計算を使用してRTDの抵抗を計算します。既知の抵抗器にわたる電圧やRTDにわたる電圧を測定することにより、精度を向上させることができます。
図3:この簡素化されたRTD信号調整回路は、既知のリファレンス抵抗器(RREF)や電流源と直列にしてRTDを使用します。RTDにわたる電圧とリファレンス抵抗器にわたる電圧を測定して、RTDの抵抗を計算します。(画像提供:Maxim Integrated)
この配列は単純ですが、不正確さの原因となる可能性も多く含まれています。それらには、電源電圧、リファレンス抵抗器の温度係数、接続リードの電流抵抗(IR)ドロップ、銅接続リードの温度係数(約+0.4%/˚C)などの変化が含まれます。これらのエラー原因を部分的に克服するために、RTDはしばしばレシオメトリックなホイートストンブリッジ構成で使用されます。
ただし、このブリッジおよび電圧駆動アプローチにも弱点があります。ブリッジなどのレシオメトリックな配列には、ブリッジエレメントの非直線性とは関係のない、よく知られた独自の非線形関係があります。したがって、この関係がRTDエレメントの非直線性を修正するための計算に含まれる必要があります。これにより、アルゴリズムが複雑化し、処理負荷が増加します。
この理由および他の理由により、ほとんどの場合、RTDは電流源で使用されます。これにより、駆動状態を完全に制御でき、接続リードにおける電圧降下および温度関連の変化をより直接的に補償する機会がもたらされます。アプリケーションおよびRTDとAFE間の距離に応じて、設計者は2線式、3線式、4線式、またはループによる4線式の接続を使用できます(図4)。
図4:RTDとAFE間の相互接続では、2線式、3線式、または4線式を使用できます。4線式では、ペアリングされた4線式接続にするか、2線に対して別個のループを使用できます。(画像提供:Texas Instruments)
2線式接続は、最も単純、省スペース、および低コストな方法です。ただし、この接続は、Pt100 RTDをAFE回路に接続するワイヤが数mΩ以下の非常に低い抵抗を持ち、RTD抵抗と比較してワイヤ抵抗が重要にならない場合にのみ、正確な結果をもたらします。一般的に、これによって距離が約25cmに制限されますが、それらのワイヤのゲージの関数でもあり、物理的な取り付け構成や制約によって薄くなる傾向があります。もちろん、計算を使用して電圧降下を修正することもできます。ただし、特にリード線の抵抗が温度の影響を受ける場合、これはより複雑になります。
最大約30mの長い距離の場合、3線式アプローチが使用されます。ここで、回路はケルビン接続を使用して電流ループの一方を監視し、ループの抵抗で電圧降下を測定してから、その降下を補償します。この方法は、非ケルビンリードの電圧降下がケルビンリード側と同じであることを前提としています。
4線式アプローチは完全なケルビンセンシングを使用して、RTDの電流ループの両側を監視します。このアプローチは、2本の電流源ワイヤ間の相違に関わりなく、リード抵抗の影響を高い精度で排除します。これは、数百メートルもの距離に使用できますが、材料およびワイヤの容量による影響が最大になります。
最後に、ループによる4線式アプローチでは、設計者がループ内の損失を測定する方法を選択できます。ループ接続ワイヤの抵抗は、2本の追加リードがRTDリードと同じであることを前提とし、実際のRTDループとは関係ない単純な抵抗として測定できます。このアプローチは取り付けや計算において直接的なケルビン配列よりも困難に見えますが、RTDで通常のケルビン接続の提供が物理的に難しい場合には実用的です。それでも、4線式および3線式アプローチでも適切なセットアップと較正によって同様の結果を提供できるため、この配列は最新の装置ではあまり使用されません。
2線式、3線式、または4線式インターフェースの使用の選択はRTDとは無関係であり、必要な物理的接続を実現するためのスペースとアクセスがあれば、RTDはどれを選択しても使用できることに注意してください。ただし、物理的に小さいセットアップでは、配線束のマスが熱シフトや追加の熱時定数をもたらす可能性があります。一般的に、検知されるマスと比較して、センシング配列のサーマルマスを最小限に抑えるのは良いことです。
接続リードや信号完全性に関連した問題は、単なる基本的なDC抵抗以上のものです。多くの場合、ノイズが懸念事項となります。温度がほとんどのノイズ信号と比較してゆっくり変化する現象においても、RTDにわたる電圧がサンプリングまたは変換される際に発生する場合、ノイズはAFEで信号を損なう可能性があります。極端な場合、ノイズはフロントエンドを飽和させ、飽和状態が終わるまで数ミリ秒間「盲目化」させます。
この理由および他の理由により、RTDの検知リードの長さが約1mよりも長い場合、グランドへの等しいインピーダンスとRTDの検知リードとの平衡(縦バランスとも呼ばれる)を保つ必要があります。その理由は、これらのパラレルリードにコモンモード電圧(CMV)およびノイズが存在する可能性が高いためですが、AFEの差動フロントエンドはこれらを拒否できます。ただし、リードが不平衡な場合、回路はコモンモード信号の一部を不平衡信号へ変換します。これらは、AFEの差動入力によって拒否されません。
Pt100とPt1000 RTDの選択
最も一般的なRTDは100Ωまたは1000Ωの抵抗(0⁰C時)で入手できるため、2つのうちどちらを選択したらよいかという明白な疑問が生じます。いつものように、これはアプリケーションの仕様に依存するため、トレードオフがあり、唯一の「正しい」答えはありません。Pt100 RTDとPt1000 RTDの両方で、特性曲線の直線性、動作温度範囲、および応答時間は同じまたはほぼ同じであること、また抵抗温度係数も同じであることに注意してください。
Pt100 RTDは公称抵抗が低く、リード抵抗がRTDに比べて大きくなるため、前述のように2線式構成の短い距離にのみ使用できます。対照的に、リード抵抗はPt1000の抵抗と比べて非常に小さくなるため、Pt1000のほうがより長い2線式の動作に適しています。
Pt1000 RTDの抵抗はより高いため、オームの法則(V = IR)に基づいて、特定の電圧を生成するのに必要な駆動電流が少なくなります。1mAの少ない電流で1Vの降下(0⁰C時)を発生させ、電圧はその値から温度の上昇に応じて増加します。
ただし、RTD電圧はより高い温度でAFEフロントエンドをオーバーレンジするため、高電圧による望ましくない結果が生じる可能性があります。また、電流源には、抵抗を通して固定電流値を駆動するための十分なコンプライアンスが必要です。たとえば、1000Ωを通過する1mAには、1Vを若干上回る電流源コンプライアンスが必要ですが、RTDが発熱してその抵抗が増加すると、必要なコンプライアンスも比例して増加します。そのため、高抵抗のRTD電流源には、十分なコンプライアンス電圧を確保するためのより高い電圧レールが必要になります。
特定の電圧降下でPt1000が必要とする電流は低いため、2つの利点がもたらされます。最初に、必要な電力が少ないため、バッテリ寿命が延びます。次に、RTDの自己発熱が軽減されるため、読み取りの精度に大きな影響を与える可能性があります。適切なエンジニアリング方式は、十分な電圧降下およびRTDにわたる高分解能の生成と調和して、センサの自己発熱を最小化する電流駆動レベルを使用することです。
これは、Pt100 RTDの存在意義がほとんどないという意味ではありません。実際、Pt100 RTDは従来の理由により、リード長、低電力動作、および自己発熱が大きな要因とならない産業分野で幅広く使用されています。また、10倍高いループインピーダンス特性を持つPt1000 RTD装置と比較して、低インピーダンスループであるPt100 RTD装置はノイズのピックアップにあまり敏感ではありません。
電気的な懸念事項に加えて、機械的な懸念事項もあります。Pt100センサは、さまざまな物理的属性を備えた巻線および薄膜構造として入手可能です。一方、Pt1000 RTDは通常、薄膜デバイスとしてのみ提供されます。
高精度アプリケーションでは、RTDの自己発熱エラーを最小化するために他の手順も必要な場合があることに注意してください。 これを実行する1つの方法は、RTDを介して電流をパルスしてから、パルス期間中に電圧を測定することです。 パルスのデューティサイクルが短いほど、自己発熱エラーも少なくなります。ただし、このアプローチには、パルスタイミングとデューティサイクルを適切に管理し、電圧読み取りとパルスを同期させるために、さらに高度なインターフェースも必要です。
ICによるRTDインターフェースの簡素化
他の抵抗ベースの温度センシング部品と同様に、RTDは見た目も使用方法もシンプルです。結局のところ、RTDは、比較的動きの遅い温度センシングの世界において結果の依存がない2端子抵抗器です。それでも、サーミスタや他の多くの基本センサと同様に、このトランスデューサのユーザーは、駆動、線形化、較正、リード補償などを含む多くの考慮すべき問題に直面してきました。よくあることですが、RTDを2個以上使用すると、この状況の複雑さが増大します。
RTDのインターフェース接続と関連した問題に対処するために、ICベンダーはフロントエンドのアナログRTD側および調整済み出力の両方に対する接続を容易にするアプリケーション特定ICを開発しました。これには、完全なプロセッサ対応デジタルインターフェースも含まれています。たとえば、RTDへの基本的なインターフェース接続向けに、Texas InstrumentsのOPA317IDBVTオペアンプは、専用の自動較正技術を使用して、低オフセット電圧(20μV標準、90μV最大)および時間と温度にわたるほぼゼロのドリフト、ほぼゼロのバイアス電流を同時に提供します。結果として、オペアンプはRTDを「ロード」したり、それに影響を与えたりはしませんが、「不可視」で一貫性があります。オペアンプは、1.8V(±0.9V)から最大5.5V(±2.75V)までのシングルエンドまたはバイポーラ電源から動作し、その35μA(最大)の静止電流により、電池駆動アプリケーションに最適となります。
このオペアンプの特性の1つは、低電流レベル(および低電圧)で動作する「コールド」RTDの場合のように、グランドに非常に近い信号に対して動作するように構成できることです。対照的に、入力および出力信号が単一電源オペアンプの出力振幅の下限付近である0Vに近づくと、多くの単一電源オペアンプに問題が発生します。優れた単一電源オペアンプは単一電源グランドの近くまで振れるかもしれませんが、実際にグランドに到達することはありません。別の抵抗器と、オペアンプの負電源よりもさらに負の電源を追加することにより、OPA317IDBVTの出力は、単一電源でグランド(またはそれより少し低く)まで振れさせることができます(図5)。出力と追加の負電源との間にプルダウン抵抗を追加することにより、そうでなければ実現するであろう値よりも出力を低く抑えることができます。
図5:プルダウン抵抗(RP)とさらなる負電源を追加することにより、OPA317IDBVTはグランド電位に近い信号を処理できます。(画像提供:Texas Instruments)
Maxim IntegratedのMAX31865は、単なるアナログインターフェースオペアンプにとどまらない、Pt100およびPt1000 RTDに最適化された使いやすい抵抗~デジタルコンバータです(図6)。このICは小型の20リードTQFNおよびSOICパッケージで入手可能であり、プロセッサ側でSPI対応インターフェースを提供しつつ、2線式/3線式/4線式RTDインターフェース向けに構成できます。
図6:Maxim IntegratedのMAX31865 RTD~デジタルコンバータには、2線式/3線式/4線式RTD用のアナログインターフェース、デジタイザ、およびSPI出力が含まれます。(画像提供:Maxim Integrated)
単一の外付け抵抗は、使用されるRTD向けの感度を設定し、精密15ビットデルタシグマADCはRTD抵抗とリファレンス抵抗の割合をデジタル形式に変換します。これにより、あらゆる動作条件および極限状態の下でも0.03125⁰Cの定格温度分解能と0.5⁰Cの精度を実現します。
多くの温度測定アプリケーションには、テストセットアップを完全に備えるために、複数のRTDに加えて、他の温度センサも使用することが必要です。これらのアプリケーション向けに、Analog DevicesのLTC2983センサ~デジタル高精度デジタル温度測定システムICは、多様なセンサやオプションをサポートしています。このICは、最大20個のセンサチャンネルを処理します。これには、2線式/3線式/4線式RTD、熱電対、サーミスタ、およびダイオードを組み合わせることができます(図7)。このICは、特定の種類のセンサと望ましい励起でプログラムでき、組み込みの標準係数をこれらのセンサに提供します。さらに、カスタムのユーザー指定の係数もサポートします。
図7:Analog Devicesが提供するLTC2983の20個のユニバーサル入力は、必要に応じて、温度センサとして使用される熱電対、2線式/3線式/4線式RTD、サーミスタ、およびダイオードを組み合わせることができます。(画像提供:Analog Devices)
このICは、SPIインターフェースを介して、0.1⁰Cの精度および0.001⁰Cの分解能を備えたデジタル結果を⁰Cまたは⁰Fで提供します。このICは、単一の2.85V~5.25V電源で動作し、各種温度センサに適した励弧電流源とフォールト検出回路に加えて、熱電対向けの冷接点補償(CJC)を内蔵しています。
RTDデータ収集設計において再開発ではなくカスタマイズされた完全な回路の作成を希望するチームのために、Microchip Technologyは、TMPSNS-RTD1 Pt100 RTD評価ボードを提供しています。このボードは、2個のRTDをサポートし、RTD電流を含む主な動作パラメータのユーザー設定が可能です(図8)。
図8:Microchip TechnologyのTMPSNS-RTD1 Pt100 RTD評価ボードは、2個のRTDをサポートし、ユーザーに主な動作パラメータの設定可能性を提供します。(画像提供:Microchip Technology)。
評価ボードのブロック図は、完全なRTDインターフェースチャンネルを機能ごとに構築する方法を示しています。これにより、ユーザーは回路を理解し、必要に応じて適応させることができます(図9)。ボードには内部RTDがあり、外部2線式、3線式、または4線式Pt100 RTD、さらには自己発熱を最小化する低電流電流源も接続できます。RTDにわたる電圧は、MCP6S26プログラム可能なゲインアンプ(PGA)を使用して増幅されます。PGAはRTD電圧を昇圧し、ユーザーがアンプのゲインをデジタル的にプログラムして、センサ出力範囲を拡大できるようにします。加えて、差動アンプは12ビットの差動A/Dコンバータ(ADC)を駆動します。最後に、コンバータ出力データはSPIインターフェースを使用するマイクロコントローラによって読み取られ、USBインターフェースを介してホストPCに送信されます。
図9:TMPSNS-RTD1 Pt100 RTD評価ボードのブロック図は、AFEおよびRTD励起/センシングからSPIインターフェースへの関連信号経路を示しています。(画像提供:Microchip Technology)。
関連するユーザーガイドには、完全なインストールおよびセットアップ情報、および直感的なPCベースのグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)の詳細な手順指示が含まれます。GUIにより、ユーザーは多くのサンプル、サンプルレート、PGAゲイン、内部RTD電流、および外部電流などのパラメータを設定することができます(図10)。
図10:提供されたPCベースのGUIを適用することにより、TMPSNS-RTD1 Pt100 RTD評価ボードのユーザーは主な動作点を調整し、結果として得られた性能を評価できます。(画像提供:Microchip Technology)。
付随資料として、ユーザーガイドには非常に詳細な部品リスト(BOM)、回路図、上部/下部のプリント基板レイアウト、およびシルクスクリーンが含まれます。
まとめ
温度測定は基本的な機能です。RTDは適切な使用方法が一見複雑に見えるものの、この用途において人気が高く、広範に使用されているセンサです。ただし、適切な回路で駆動および検知することにより、RTDは広い温度範囲で高い精度や再現性を提供できます。他の高性能センサと同様に、最適な性能を実現するためには、その特性を理解する必要があります。この記事で説明したように、ICとさまざまなレベルの機能を統合することにより、ユーザーは予期せぬ問題を最小限に抑えつつ、優れた性能を備えたRTDベースのシステムを構築できます。

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