パワーリレーの基礎
2024-02-13
リレーは基本的に、電気回路内の他のスイッチの動作を制御するスイッチとして機能します。低電力の入力信号を使用し、より大電力の回路に対して指令を出します。リレーの低電力信号の起動が電磁石の励磁をトリガーし、アーマチュアの動きを開始します。このモーションが電気コンタクトの閉鎖を促し、制御回路への送電を容易にします。
この設計の最大の利点のひとつは、低消費電力の制御信号を大電力回路から分離できることにあります。この隔離は、オペレータを潜在的な危険から守るだけでなく、装置を潜在的な損傷から守ります。さらに、この配置はデバイスやシステムの遠隔制御を容易にし、離れた場所からの操作を可能にします。
電気機械式リレーの起源は1835年までさかのぼり、その部品と多様性は年月を経て大きく進歩してきましたが、その基本的な機能は不変です。歴史上、最もよく知られたリレーのひとつがパワーリレーです。すべての電気リレーは本質的に電力を制御しますが、すべてのリレーが「パワーリレー」と正しく呼ばれているわけではありません。この記事では、パワーリレーの利点、構成、主な選択基準などを詳しく見ていきます。
パワーリレーの基礎
パワーリレーは、数アンペアからかなりの大電流まで、高レベルの電流スイッチングを管理する専用の機能として知られています。より堅牢な構造と大型化された寸法により、パワーリレーコンタクトは大電流に耐えることができ、通常10Aを超える電流が要求されるアプリケーションに理想的です。
自動車システム、エレベータ制御、バルブアクチュエータのほか、モータ、ソレノイド、電源装置、電子安定器など、初期電流サージが大きいことを特徴とするさまざまな装置に、多様な産業で使用されています。
他の電気部品と同様に、リレーにも安全に管理できる電力に関する固有の制限があります。各モデルには最大定格電力が割り当てられており、電球のような低電力から大型モータのような堅牢な機械まで、多様な負荷と効率的にマッチングできるようになっています。しかし、指定された定格電力を超えると、リレーに永久的な損傷を与える可能性があります。
さらに、コンタクトのミスアライメントがコンタクトのアーク放電を誘発することがあります。これは、リレーコンタクトが開いているのに互いに接近している場合に、コンタクト間のエアギャップを介して電流が流れることによります。この現象は、火花や発熱だけでなく、コンタクトのエロ―ジョンや不要な電気的干渉の発生など、周辺の装置に危害を及ぼすおそれがあります。
図1:電気機械式リレーのコンタクトのアーク放電。(画像提供: Same Sky)
パワーリレーは、ヒータ、モータ、照明アレイ、産業装置などの大電流デバイスの電気負荷に対応するよう特別に設計されています。パワーリレーの高電流・高電圧定格は、通常のリレーとは異なるスイッチコンタクトの素材の使用によるところが大きくなっています。これらの素材は、ハイパワーアプリケーションの厳しさに耐える能力で選ばれており、要求の厳しい産業環境での信頼性の高い動作と長寿命を保証します。
パワーリレーコンタクトの素材
リレーコンタクトに電流が流れると、コンタクトのサイズや材質によって抵抗が生じます。抵抗値の上昇は、リレー内で散逸する電力を増幅させるだけでなく、発熱を増加させます。接触抵抗を軽減する一つのアプローチは、コンタクトの素材を注意深く選択することです。
従来のリレーは、一般的に銀ニッケル製のコンタクトを備えています。この金属は、リレー構造において歴史的にどこにでも使われていることで有名です。銀ニッケルコンタクトは、電流と電圧が同位相である抵抗負荷のスイッチングに優れています。
対照的に、パワーリレーのような高負荷用に設計されたリレーでは、銀カドミウム酸化物、銀錫酸化物、金合金などの材料から作られたコンタクトが選択されます。これらの素材は、かなりの電流または電圧スパイクを生じる可能性のある非同期電流および電圧を特徴とする誘導性負荷を扱うのに理想的です。銀カドミウム酸化物と銀錫酸化物のコンタクトは、いずれも電気抵抗が減少し、高突入電流に起因するコンタクト溶着のリスクを軽減します。特筆すべきは、酸化銀錫を採用することで、カドミウムベースの合金に関連する環境問題を回避し、特定の国が支持する規制基準を順守できることです。
パワーリレーと信号リレーの比較
パワーリレーと信号リレーは、リレーの中でも人気のある2種類です。パワーリレーは、より高い電圧と電流を扱うことを優先する一方で、一般的に寿命サイクル数は少なくなります。逆に、信号リレーは寿命サイクル数が多くなるように設計されていますが、低電圧と最小電流で動作します。
パワーリレーに採用されているコンタクトの素材は、大電力のシナリオを管理することには長けていますが、低電力のスイッチングには理想的ではありません。これは、低電圧ではコンタクト間の物理的接続が最も重要であり、コンタクトの素材よりもコンタクトの圧力や清浄度といった要因によって決まるという事実に起因します。
さらに、電力アプリケーションに信号リレーを採用することには固有のリスクが伴い、過電圧や過電流による致命的な故障に至る可能性があります。このようなリレーが耐久できたとしても、アーク防止やコンタクトのセルフクリーニングといった重要な機能が欠けるため、長期的な信頼性が損なわれます。
パワーリレーと信号リレーのどちらを使用するかの決定プロセスでは、基本的なガイドラインを順守することが極めて重要です。スイッチングが行われる電力レベルとリレーの電力定格は必ず一致させてください。これにより、最適な性能を確保し、故障のリスクを軽減し、リレーと関連システムの完全性を維持できます。信号リレーに関する詳細は、Same Skyの他の記事「信号リレーの基礎」をご覧ください。
パワーリレーの種類
パワーリレーには、通常のリレーと同様に、主に電気機械式とソリッドステートの2種類があります。
電気機械式パワーリレーは、電気コイル、磁界、バネ、可動アーマチュア、コンタクトの組み合わせにより、デバイスへの電源供給を調整します。
一方、ソリッドステートリレーには可動部品がありません。その代わりに、シリコン制御整流子器(SCR)、トライアック(交流用三極管)、スイッチングトランジスタなどの半導体デバイスを活用して、交流と直流の両方の電流を切り替えます。ソリッドステートリレーは、電気機械式リレーに比べてスイッチング速度が速く、信頼性が高いなどの利点があります。しかし、電力需要が増大するにつれ、堅牢なパワー半導体と追加の熱管理コンポーネントの搭載に伴うコスト上昇により、その費用対効果は低下します。
図2:ヒートシンクと組み合わせたソリッドステートリレーの例。(画像提供:Same Sky)
一般的な構成と定格
パワーリレーは、非パワーリレーと同様に、コンタクトの構成に基づいて分類され、同時に制御できるデバイスの数を示します。一般的な分類には以下のようなものがあります。
- SPST(単極、単投)
- DPDT(双極、双投)
- 3PDT(3極、双投)
- SP3T(単極、3投)
リレーコンタクトは、リレーに電源が印加されていないときの状態によって、ノーマリオープン(NO)またはノーマリクローズ(NC)に指定されます。
リレー定格は、リレーによって安全かつ効果的に切り替えられる最大電力を示します。これらの定格は通常、交流電流と直流電流の両方のアンペア数で表されます。リレーの定格は、安全マージンを考慮した上で、切り替えられるデバイスの定格を上回ることが極めて重要です。
非パワーリレーと同様に、パワーリレーも「フォーム」という用語を使って説明することができます。「1フォームA」や「2フォームC」といったフレーズから、リレーの特性を知ることができます。「フォーム」の前の数字は、リレーで使用可能な記述されたコンタクトの数を示します。「フォームA」はノーマリオープンリレー、「フォームB」はノーマリクローズリレーを示します。「フォームC」と「フォームD」はSPDTリレーに適用され、それぞれどの位置がノーマリクローズとみなされるか、リレーがブレークビフォアメイクかメイクビフォアブレークかを示します。他にも多くのフォームがありますが、この4つが最も一般的に使われています。
- フォームA - ノーマリオープン
- フォームB - ノーマリクローズ
- フォームC - ブレークビフォアメイクSPDTスイッチ
- フォームD - メイクビフォアブレークSPDTスイッチ
その他の考慮事項
デバイス選択の際に考慮すべき追加事項には、以下のようなものがあります。
- 入力電力サージ:デバイスによっては、起動時に大きな電力サージが発生する場合があります。デバイスの損傷を防ぐためには、リレーを指定する前にこれらのサージを特定することが重要です。
- コイルの抑制:リレーサイクルは高電圧過渡現象を発生させる可能性があります。コイル抑制は、このような過渡現象から装置を保護するために、回路に追加のコンポーネントを使用します。しかし、これはリレーの寿命を縮める可能性があります。特定のアプリケーションに特定のコイル抑制戦略が必要かどうかを判断します。
- ラッチング:ラッチングリレーは、起動電源を切っても最後のコンタクト位置を保持します。この機能は、特定のアプリケーションで必要とされる場合があります。
- ノイズ:リレーは電磁妨害(EMI)または無線周波数干渉(RFI)ノイズを発生させる可能性があり、これは高出力デバイスで顕著になることがあります。このノイズに対するデバイスやシステムの感度をあらかじめ決めておきます。
- 接点バウンス:リレーがサイクルする際、接点バウンス(電気パルスを発生させる、短時間の開閉サイクル)がコンタクトで起きることがあります。アプリケーションの感度によっては、このバウンスが望ましくない影響を引き起こす可能性があるため、リレーを指定する前に、接点バウンスがアプリケーションに影響するかどうかを判断することが重要です。
図3:接点バウンスと急激に変化する電圧の例。(画像提供:Same Sky)
まとめ
リレーは、信頼性が高く、効率的で、頼りになるデバイスであり、システムおよびデバイスの安全な電気制御を行う一方で、オペレータを動作電流から安全に引き離します。パワーリレーは、電気機械式であれソリッドステートであれ、より高い電圧と電流を管理するために強化された機能で特別に設計されています。
製品の電源スイッチングニーズを評価する設計者に、Same Skyは多様なパワーリレーと信号リレーを提供します。扱う電流スイッチングが低レベルか高レベルかにかかわらず、Same Skyはさまざまなニーズを効果的かつ効率的に満たすリレーソリューションを提供しています。
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