NTCサーミスタによるAIデータセンターの温度監視
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2025-09-04
人工知能(AI)の需要拡大と電力密度の増加に伴い、データセンターは前例のない熱管理の課題に直面しています。過熱を防止しつつ性能と効率を最適化するためには、精密なリアルタイム温度監視が必要です。このようなセンシングソリューションは、高感度機器にかかる急激な熱負荷に対応するため、正確で応答性が高く、堅牢である必要があります。
この記事では、最新のAIデータセンターの設計者が直面する熱管理の課題を検討し、空調システム、液浸冷却、ヒートパイプソリューションなど、さまざまな冷却システムについて検証します。続いて、EPCOS(TDK)の負の温度係数(NTC)サーミスタソリューションを紹介し、これらの課題を解決するためにNTCサーミスタをどのように使用できるかを説明します。
AIデータセンターが熱管理の新たな課題に直面する理由
グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)やテンソルプロセッシングユニット(TPU)などのAIハードウェアは通常、従来の中央処理装置(CPU)に比べて、大幅に大きな電力を消費します。その結果、AIに特化したデータセンターでは、電力密度が著しく高くなり、従来の冷却手法では管理が困難なホットスポットが生じやすくなります。
さらに問題なのは、AIワークロードは変動が激しく、集中的なトレーニングや推論処理中に熱負荷が急激に上昇する可能性があることです。適切な熱管理が行われない場合、こうした状況は性能の低下、予期せぬ停止、ハードウェアの劣化加速につながる恐れがあります。
こうした新たな要求に対応するため、データセンターではより高度な冷却方法が採用されつつあります。ダイレクトツーチップ冷却はその代表例です。この技術では、冷却パイプ、コールドプレート、または熱交換器を、CPU、GPU、メモリなどの高電力コンポーネントに対して直接接触させて配置します。液浸冷却も別の選択肢です。ここでは、サーバ全体を非導電性の液体に浸漬します。
空調システムもさまざまな改良が行われています。たとえば、InRow冷却装置やInRack冷却装置は、施設全体の空調システムを局所的な冷却で補い、ホットスポットにリアルタイムで対応することができます。
これらの冷却システムの仕様はさまざまですが、いずれも分散型で、応答性の高い温度監視の需要を促進しています。ダイレクトツーチップシステムを例に挙げましょう。対象となる各チップには、温度基準が確実に維持されていることを確認するために、ヒートシンクにセンサを取り付ける必要があります。冷却液の流入を監視するためには配管にセンサを取り付ける必要があり、冷却液分配ユニットや熱交換器には、システムが効率的に稼働していることを確認するための追加のセンサを取り付ける必要があります。
データセンターアプリケーション向けNTCサーミスタセンサの利点
NTCサーミスタは、これらすべての要件に適しています。その名が示す通り、NTCセンサは温度上昇にともない電気抵抗が予想通りに減少する特性を持っています。NTCサーミスタの場合、この特性は、保護用の金属製またはエポキシ樹脂ハウジングに封入された小型熱感応性酸化セラミック素子で実現されています。
図1は、25°Cにおける定格2~5キロオーム(kΩ)のサーミスタの標準的な温度対抵抗曲線を示しています。このグラフが示すように、抵抗値の高いサーミスタは、抵抗変化の測定が容易であるため、高温用途に適しています。
図1:25°Cにおける定格2kΩ~5kΩのサーミスタの標準的な温度対抵抗曲線を示します。(画像提供:EPCOS(TDK))
AIデータセンターにおけるNTCサーミスタの利点は以下の通りです。
- 高精度および高速応答:NTCサーミスタは微小な温度変化に極めて敏感であり、熱容量が小さいため迅速に応答します。これらの特性により、NTCサーミスタはAIデータセンターの急激に変動する熱需要に最適です。
- 耐久性および安定性:NTCサーミスタは堅牢な材料で構成され、経時的な抵抗ドリフトが最小限に抑えられているため、長期にわたる優れた信頼性を提供します。この安定性により、メンテナンス要件が最小限に抑えられ、予期せぬダウンタイムのリスクが低減されます。
- 小型サイズおよび柔軟な取り付け:小型サイズのため、スペースが限られている混雑したデータセンター環境にも簡単に統合できます。さまざまな形状で提供されており、あらゆるAIデータセンターの冷却システムに対応可能です。
EPCOSのNTCサーミスタファミリは、このような利点を備えています。ラインナップには、ヒートシンクや配管の監視、液浸冷却システム、空調装置向けのソリューションが含まれています。
ヒートシンク搭載型NTCサーミスタによる大電力部品の監視
GPUやTPUのような高電力プロセッサは、性能を維持し過熱を防止するため、厳密な温度監視が必要です。B57703M0103G040(図2)は、ヒートシンクへの直接取り付けを想定して設計されており、この用途に適しています。このネジ止め式センサは、突出したリングラグを備えた金属タグケースにNTCサーミスタを封入しています。
図2:B57703M0103G040リングラグサーミスタは、高電力プロセッサ向けヒートシンク上の正確な温度監視を可能にします。(画像提供:EPCOS(TDK))
ネジ止め式センサ設計は、便利であると同時に、ヒートシンク表面との良好な熱結合と均一な接触圧を確保する上で便利かつ重要です。これにより熱抵抗が低減され、負荷急変時の測定精度が向上します。
本センサは、+70°C環境下での10,000時間以上の長期安定性試験を実施しており、AIデータセンターワークロードで一般的な高温条件下での使用をサポートします。+25°Cにおける10kΩの定格は、より高い動作温度の測定において信頼性の高い基盤を提供し、温度制御システムへの正確なフィードバックを可能にします。
NTCサーミスタによる液体冷却配管の監視
液体冷却システムは、適切な温度の冷却液を安定的に供給する必要があります。B58100A0506A000(図3)は、配管に素早く取り付けられるように設計された10 kΩのNTCサーミスタで、冷却液供給ラインの監視に最適です。この成形アセンブリは、直径18mm~19mmのパイプに直接クリップで取り付けられます。その他のサイズも、さまざまな取り付け状況に合わせてご利用いただけます。内蔵のコンタクトタブにより、監視機器に簡単に接続できます。
図3:B58100A0506A000クリップオンサーミスタは、液体冷却システムの冷却液温度を測定します。(画像提供:EPCOS(TDK))
外部配管の温度を監視することで、センサを液体に直接浸すことなく、冷却液の性能を正確かつメンテナンスしやすい方法で追跡できます。このアプローチにより、取り付けの複雑さを最小限に抑え、漏れのリスクが低減され、必要に応じてセンサの迅速な交換が可能になります。
温度センサの主要な性能パラメータは熱応答時間とも呼ばれる熱時定数であり、これは外部温度変動に応じてNTCサーミスタの抵抗がどれだけ早く変化するかを反映します。このパラメータは、センサの設計、取り付け構成、および周囲の環境の影響を受けます。
たとえば、B58100A0506A000は、銅製ハウジングを採用し、センサと配管を熱的に結合させることで、配管上で測定した熱時定数を5秒(s)未満に抑えています。この迅速な応答時間により、信頼性の高い冷却液供給が可能になります。
NTCサーミスタによる冷却液分配システムの監視
液体冷却システムでは、熱源や冷却液供給ラインの監視に加え、冷却液分配ユニット、熱交換器、その他の中心コンポーネントにおける温度センシングが必要です。B57800K0103A001(図4)はこの役割に最適です。円筒形の銅製ケースは熱伝導性に優れ、システムの重要なポイントにおける流体温度を正確に測定できます。
図4:B57800K0103A001円筒形プローブサーミスタは、分配システムの冷却液温度を監視します。(画像提供:EPCOS(TDK))
動作温度範囲+150°Cのこの10kΩセンサは過熱のリスクなしに高温側に取り付けることができます。水中での熱時定数は約8秒で、システムレベルの制御と保護に十分な速度で冷却液温度の変化を追跡できます。
これらのコンポーネントの入口と出口の両方にセンサを取り付けることで、作業者は熱交換器や分配ループ全体の温度差を追跡することができます。温度差が大きい場合は、冷却液流量の減少、部分的な詰まり、または熱交換器表面の汚れなどの問題が発生している可能性があり、システム性能に影響が出る前に予防的なメンテナンスを行う必要があります。
NTCサーミスタによる液浸冷却システムの監視
サーバを絶縁油などの非導電性の液体に浸漬する液浸冷却システムでは、潜在的な腐食に耐えるセンサが必要です。B57504K0103A009(図5)は、このような環境向け専用に設計された10kΩセンサです。ステンレス鋼のケースにより、軽度の腐食性物質が存在する環境でも耐久性を発揮すると同時に、検出素子への効果的な熱結合を保証します。
図5:B57504K0103A009ステンレス鋼プローブサーミスタは、液浸冷却システムの冷却液温度を監視します。(画像提供:EPCOS(TDK))
このセンサは水中での熱時定数が2秒未満であり、液浸槽内の温度変化を正確に追跡することが可能です。
NTCサーミスタによる空調システム監視
最後に、B57500M0103A005(図6)について考えてみましょう。この10kΩデバイスは、シンプルなエポキシ樹脂封止を採用し、小型の形状を実現するとともに、470mmのワイヤリードにより柔軟な配線オプションを提供します。たとえば、小型サイズと長いリード線により、蒸発器コイルの近くや空気流路内に取り付けることができ、温度変化を迅速に検出することで安定した室内温度制御を維持できるようになります。
図6:B57500M0103A005エポキシ樹脂封止サーミスタは空調システムの監視が可能です。(画像提供:EPCOS(TDK))
その他の利点として、このセンサは、振動、急激な温度サイクル、および空調システムで一般的なその他の危険に耐え、物理的損傷や測定精度への重大な影響なしに動作することが検証されています。
まとめ
AIワークロードの増加により、データセンター内での分散型温度監視が急務となっています。ヒートシンク、冷却液配管、液浸槽、空調装置など多様なオプションを備えたEPCOS(TDK)のNTCサーミスタファミリは、過酷な環境下においても信頼性と応答性に優れた動作を実現します。
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