ロボットおよびその他の高密度産業用途に適合する信号および電源コネクタ
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2025-08-13
スマートファクトリは、モジュール式ロボットマシンのコンセプトを活用し、分散型知能と制御によってますます自動化が進んでいます。このように制御機能の物理的分散化には、現代の工場環境の要求に適合した、信頼性と安全性を確保するコネクタを備えたワイヤやケーブルによる接続が不可欠です。こうしたコネクタには、低抵抗、定格電流を扱える十分な接触面積、振動や衝撃に耐える強力なロック機構が求められます。さらに、迅速な更新や変更を可能にするため、組み立てや改造が容易であることも重要です。
この記事では、産業用ロボットとファクトリオートメーションにおけるコネクティビティの要求事項について概説します。続いて、TE Connectivity AMPの一連のコネクタを紹介し、それらの特長がこれらのアプリケーションの電源、信号、信頼性、安全性のニーズをどのようにサポートできるかを示します。
スマートファクトリについて
スマートファクトリとは、制御、リアルタイムデータ収集、分析、意思決定のためにデジタルで相互接続された機械、ロボット、ローカルセンサを使用する統合施設です(図1)。こうした工場は分散化、モジュール化が進み、変化する生産ニーズに対応するため容易に再構成できるようになっています。モジュール化された組織は、生産の柔軟性を高めるため、ローカル制御と小型機械を重視しています。
図1:スマートファクトリでは、効率的な運用を確保するため、ネットワーク化された機械、ロボット、相互接続されたセンサが採用されています。(画像提供:TE Connectivity AMP)
これらの施設では、独立型または協働ロボット(コボット)を備えたモジュール式ワークステーションが使用されています。無人搬送車(AGV)や自律移動ロボット(AMR)などの移動ロボットが、ワークステーション間で製品を移動させます。AMRとAGVは、固定式ロボットに比べて移動性に優れ、ワークステーション間を巡回や移動できるという利点があります。AGV、AMR、コボットが連携することで、生産ラインでは異なる作業を別々のセル内で実行することが可能になります。ロボットはワークステーション間を移動したり、必要に応じて再配置することができ、これにより全体の効率性が向上します。これらのワークステーションは過酷な環境に置かれることが多いため、設計者はロボットやその他の自動化機械が高温、湿度、粉塵、腐食性化学物質、衝撃や振動にさらされる可能性があることを考慮する必要があります。
センサが全工程を監視します。設計に応じて、センサは有線または無線のいずれかになります。ワイヤレスセンサは通常、産業用モノのインターネット(IIoT)を介して接続されます。移動ロボットもIIoTを用いて監視および制御されます。
電子システムによく見られる傾向として、業界のトレンドはロボット、機械、センサ、コントローラの小型化に向かっています。小型化と軽量化は、低消費電力化と生産量向上のための床面積の増加につながります。また、プリント回路基板(pcボード)の小型化も意味し、体積効率の高い部品が求められます。
柔軟で信頼性の高い電源および信号コネクタ
コネクタは、ワイヤ対ワイヤ、ワイヤ対基板、ワイヤ対パネルのいずれにおいても、電源と制御信号を確実に伝送しなければなりません。コネクタの小型化に伴い、実装間隔は狭くなり、導体ピッは細かくなります。
モジュール式の設計は本質的に柔軟性を有するため、コネクタソリューションも、自動化システムと同様の適応性を備えている必要があります。柔軟性の必要性に応じ、コネクタは、確実かつ容易なロック機構を備え、組み立て時の誤嵌合と、衝撃や振動による偶発的なプラグ抜けを防止するよう設計されなければなりません。
TE Connectivity AMPのダイナミックシリーズコネクタは、高密度化が求められる産業用信号および電源回路のニーズを満たすように設計されています。これらコネクタは、2.6~100アンペア(A)の電流と125~1000ボルトの電圧範囲に対応する複数のコネクタシリーズを通じて、これらの要件を満たしています。電流および電圧定格に応じて、これらのコネクタは1.8~24.5ミリメートル(mm)までの導体ピッチで高密度相互接続を提供します。
最もコンパクトなダイナミックコネクタはミニシリーズです。ワイヤ対基板アプリケーション向けに設計された本シリーズは、コンタクトピッチ1.8mm、ピン数12、16、20極が用意されてます。22~26AWGのワイヤサイズに対応し、定格は250ボルトAC(VAC)で3Aです。
例として、1-2834461-2(図2、上)が挙げられます。これは12コンタクトのレセプタクルハウジングで、コンタクトは2列に配列され、列間ピッチは2.75mmです。コネクタの寸法は長さ19.3mm、幅15.7mm、高さ8.35mmです。
図2:12ピンダイナミックミニケーブル対基板レセプタクル(上)およびヘッダ(下)の構成要素を示しています。(画像提供:TE Connectivity AMP)
レセプタクルハウジングには、TE Connectivity AMP 2834464-5レセプタクルコンタクトが実装されています。これらは26AWGワイヤに対応する錫メッキ銅合金圧着ワイヤ端子です。定格は、動作電圧250VACまたは125VDCにおいて3Aです。各コンタクトはハウジング内に固定するためのロッキングランスを採用しています。さらに、ハウジングにはフラッシュマウントの2次ロックが備わっており、コンタクト端子のロック機構にさらなる安全機能を提供します。
レセプタクルは、12ピン面実装ヘッダである1-2834465-2と嵌合します(図2、下)。ヘッダの寸法は長さ19.3mm、幅12.3mm、高さわずか8.7mmです。このヘッダには、完全に覆われた四角断面の錫メッキコンタクトピンが含まれています。
コネクタペアは、誤挿入を防止するためのキー付き設計となっており、レセプタクルとヘッダが完全に嵌合した際に音響的および触覚的なフィードバックを提供するロッキングラッチを備えています。ラッチは、誤ってラッチが解除されるのを防ぐため、コネクタ上部より下に沈んでいます。サイドペグはヘッダを機械的に支持します。
ミニシリーズコネクタの小型化と高信頼性は、産業環境だけでなく、より高い耐振動性が求められるロボティクスや自動車などのアプリケーションの要求にも応えます。
大電流用コネクタ
コネクタのサイズは、より大きな電流を扱う必要性に対応するため大型化されています。ダイナミックD1000スリムコネクタ(図3)は、次段階の高電流範囲のニッチを埋める製品です。たとえば、1-2366600-4は、コンタクトピッチ2.7mm、列間間隔2mmの2列4極のプラグハウジングです。このプラグハウジングは、1-2366515-4レセプタクルハウジングと嵌合し、ワイヤ対ワイヤのインライン接続を実現します。ミニシリーズコネクタと同様に、D1000は、確実な嵌合を保証する音響的および触覚的フィードバックを併せ持つラッチ機構が組み込まれています。レセプタクルコンタクトとタブ圧着コンタクトの両方が利用可能で、22~30AWGのワイヤまでのサイズに対応しています。D1000コネクタの最大定格電流は、選択した線径によってことなりますが、8.3Aです。
図3:4極D1000スリムワイヤ対ワイヤコネクタのアセンブリを示します。(画像提供:TE Connectivity AMP)
ハウジングは、水平または垂直キーイングのいずれかで提供され、確実な嵌合を保証します。嵌合されたコネクタセットの寸法は、長さ21.5mm、幅7.2mm、高さ8.9mmです。ハウジングには、列識別とキータイプの両方が明確に表示されており、構成および配線ミスを最小限に抑えます(図4)。
図4:D1000スリムハウジングに使用されている列識別とキー方向マーキングを示しています。(画像提供:TE Connectivity AMP)
現場での取り付け
ダイナミックシリーズには、圧着コンタクト版に加え、幅広いタイプのコネクタがあります。D-2970シリーズ(図5)のようなケージまたはスプリングクランプコネクタも利用可能です。スプリングクランプコネクタは、圧着コンタクトコネクタと異なり、現場での取り付けや変更が容易です。端部の被膜を除去されたワイヤは、コネクタ本体のワイヤ挿入口に挿入され、そこでスプリング式のクランプがワイヤを固定します。リリースボタンにより、挿入したワイヤを取り外すことができます。コネクタのワイヤおよびワイヤ解除に工具は必要ありません。
図5:ワイヤ対基板用D-2970シリーズコネクタは、被覆を剥いたワイヤをワイヤ挿入口に挿入するだけで工具不要で配線できます。(画像提供:TE Connectivity AMP)
D-2970シリーズの例としては、2336491-4が挙げられます。これは、4極1列ヘッダで、2336488-4の4極レセプタクルコネクタと嵌合し、ワイヤ対基板アセンブリを実現します。コネクタペアは5mmのコンタクトピッチで、14~24AWGまでのワイヤに対応可能です。選択された線径に基づき、最大14Aの電流を扱うことができます。定格電圧は300Vまで対応しています。
ヘッダの寸法は、幅22mm、奥行き34mm、高さ18.7mm、レセプタクルの寸法は幅24.9mm、奥行き14.8mm、高さ9.8mmとなっています。
まとめ
ロボティクスおよびファクトリオートメーション向けの産業用電源および信号コネクタは、信頼性、安全性、柔軟性、および信号の完全性を確保するため、慎重に選択する必要があります。TE Connectivity AMPダイナミックシリーズコネクタは、設計者が幅広いピン構成から選択可能であり、高密度、キー付きハウジング、明確なマーキング、ロック機能、耐衝撃性、耐振動性、小型サイズなどの特長を重視しています。
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