環境発電用の低電力変換

著者 Tony Armstrong

DigiKeyの提供

私たちの周囲の世界には多くの環境エネルギーが存在し、従来の環境発電手法では太陽光パネルや風力発電を利用していました。 しかし、新しい環境発電ツールでは広範な環境ソースから電気エネルギーを生み出すことができます。 さらに、重要なのは回路のエネルギー変換効率ではなく、むしろ電力として使用可能な「発電される平均」エネルギー量です。 たとえば、熱電式発電機は熱を電気に、ピエゾ素子は機械的な振動を、光起電は日光(またはあらゆる光子源)を、ガルバーニは湿気からのエネルギーを変換します。 これによって、リモートセンサに電力を供給したり、コンデンサや薄膜バッテリなどの蓄電デバイスを充電し、マイクロプロセッサやトランスミッタを離れた場所から、ローカル電源なしに駆動することが可能になります。

しかし、WSN(ワイヤレスセンサネットワーク)やセンサでの微小電力の変換が一般的になりつつある「ロー」エンドの電力スペクトラムでは、極度に低いレベルの電力と電流で動作する電力変換ICが必要となります。 多くの場合、電力は数十マイクロワット、電流は数ナノアンペア程度のものです。 そして、バッテリ充電器も含め、1µA以下の電流で動作する電力変換製品は極めて限られています。

一般的な用語で説明すると、これらのアプリケーションで必要なICのパフォーマンス特性は次のようなものです。

  • スタンバイ時の静止電流が低い - 通常は6µA未満、低い場合は450nA程度
  • 起動電圧が低い - 約20mV
  • 許容入力電圧が高い - 最大で連続34V、過渡的に40V
  • AC入力を処理する能力
  • 複数の出力機能と自律的なシステム電力管理
  • 太陽光入力のMPPC(最大電力ポイント制御)
  • 小型のソリューションフットプリントと、最小限の外付けコンポーネント

WSNは基本的に自己完結したシステムで、環境エネルギー源を電気信号へ変換する変換器が使用され、通常はその後にDC/DCコンバータとマネージャにより、適切な電圧レベルと電流が下流の電子機器へ供給されます。 下流の電子機器はマイクロコントローラ、センサ、トランシーバで構成されます。

WSNを実装するときに考慮すべき問題は、機器の動作にどれだけの電力が必要かということです。 これは概念としてはごく単純ですが、現実にはいくつかの要因から多少難しい問題になります。 たとえば、読み出しはどの程度の頻度で行う必要があるでしょうか。 または、より重要な問題として、データパケットの大きさはどの程度で、それを送信するにはどの程度の電力が必要でしょうか。 これは、単一のセンサ読み出しおよび送信のため、トランシーバはシステムにより使用されるエネルギーの約50%を消費するためです。 環境発電システムまたはWSNの電力消費特性にはいくつかの要因が影響し、すべてを考慮する必要があります。

当然ながら、環境発電ソースにより提供されるエネルギーは、そのソースがどれだけの時間利用可能かに依存します。 このため、抽出対象のソースにおける比較の主要な指標はエネルギー密度ではなく、電力密度となります。 環境発電で利用可能な電力は一般に低く、変動し、予測不能なレベルであるため、発電機と二次的な蓄電デバイスとを接続したハイブリッド構造が多くの場合に使用されます。 無制限のエネルギーを供給できる一方で利用可能な電力が不足するという特性を持つ発電機が、システムのエネルギー源となります。 二次的な蓄電デバイスはバッテリまたはコンデンサで、高い電力を出力できますが、蓄積されるのは小さいエネルギーです。必要に応じて電力を供給しますが、それ以外の場合は発電機から定常的に電荷を受け取ります。 このため、環境エネルギーから発電できないときは、二次的な蓄電デバイスを使用してWSNへ電力を供給する必要があります。 もちろん、これによってシステム設計者の観点からは、環境エネルギー源が不足しているときの補償のために、二次的な蓄電デバイスにどれだけのエネルギーを保存しなければならないかを考慮する必要が生じるため、設計がさらに複雑になります。

WSNは、利用可能であれば非常に低レベルのエネルギーを使用する必要があることは明白です。 言い換えれば、システムで使用されるコンポーネントはこのような低レベルの電力を扱える必要があります。 トランシーバやマイクロコントローラについては、この条件が既に達成されていますが、電力変換やバッテリ充電器については、これまで対応されていませんでした。 しかし、Linear Technology製のLTC3388-1/-3およびLTC4071は、これらの要件に対応するために開発された製品です。

LTC3388-1/-3は、20Vの入力に対応した同期降圧コンバータで、3mm x 3mm(またはMSOP10-E)のパッケージから50mAの出力電流を連続的に供給できます(図1)。 2.7V~20Vの入力電圧範囲で動作するため、「キープアライブ」、センサ、産業用制御電力などの、広範な環境発電およびバッテリ駆動のアプリケーションに理想的です。

Linear Technology LTC3388-1/-3の標準的なアプリケーション回路図の画像

図1: LTC3388-1/-3の標準的なアプリケーション回路図

LTC3388-1/-3は、ヒステリシスを持つ同期整流を活用し、広範な負荷電流にわたって最適な効率を実現します。 15μA~50mAの範囲の負荷について90%を超える効率を実現し、静止電流は400nAしか必要としないため、補助電力用にバッテリを使用する場合、長時間の駆動が可能になります。

LT3388-1/-3には正確なULVO(電圧不足ロックアウト)機能が組み込まれており、入力電圧が2.3V未満に低下したときにコンバータを無効にするため、静止電流はわずか400nAまで低下します。 無負荷でレギュレーションが開始されると、LTC3388-1/-3はスリープモードへ移行し、静止電流はわずか720nAに最小化されます。 その後で、必要に応じて降圧コンバータがオン/オフされ、出力レギュレーションを維持します。 追加のスタンバイモードではスイッチングが無効になり、低リップルを必要とするワイヤレスモデムなど短時間の負荷については出力がレギュレーションされます。 高い効率、低い静止電流の設計から、長い充電サイクルを必要とし、センサやワイヤレスモデムを駆動するために短時間のバースト負荷が発生する環境発電に理想的です。

多くの場合、WSNでは補助バックアップ電源としてバッテリが使用されますが、低電力のソースでどのようにバッテリを充電するかは、設計において厄介な課題でした。 Linear製のLTC4071はシャントバッテリ充電システムで、バッテリパック保護と低容量バッテリ切断機能により、低容量バッテリが自己放電からダメージを受けることを防止します。 リチウムイオンやポリマーバッテリ用の、単純ながら洗練された充電器で、保護装置でもあります。 動作電流が550nAと極度に低いため、環境発電アプリケーションから提供されるような、従来は使用できなかった非常に低い電流、断続的または継続的な充電ソースからの充電が可能になります。 内蔵のサーマルバッテリコンディショナによりフロート電圧が低下し、リチウムイオン/ポリマー電池、コイン電池、薄膜バッテリを高いバッテリ温度から保護できます。 LTC4071は薄型の8リード、2mm x 3mm DFNパッケージに収納され、入力電圧と直列に外部抵抗を1つ接続するだけで、完全な超小型の充電器ソリューションとなります。

携帯型アプリケーションや環境発電システムは、数マイクロワットから1Wを超える範囲まで、正しい動作を行うための電力レベルが広範囲にわたりますが、システム設計者は利用可能な多くの電力変換ICを選択できます。 しかし、微小電力のレベルになるローエンドの電力範囲では、選択肢が限定されます。

幸い、低電力センサや新世代のWSNのキープアライブ回路のバッテリ駆動時間を延長するため、静止電流がマイクロアンペア未満の電力変換およびバッテリ充電ソリューションが、設計者向けに利用可能です。

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著者について

Tony Armstrong

Article authored by Tony Armstrong of Linear Technology.

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ミネソタ州シーフリバーフォールズに拠点を置くDigiKeyは、試作および設計段階、量産段階のいずれにおいても、電子部品を卓越したサービスとともにグローバルに提供し、DigiKeyでは、750社以上の一流メーカーから提供される600万点以上の製品を取り扱っている。