産業用IoT設計における低消費電力、通信、およびセキュリティ

著者 Microchip Technology

消費電力およびセキュリティは、特にIoTセンサコマンドおよび制御アプリケーションにおいて、組み込みシステム設計者にとって最大の懸念事項の2つです。

マイクロコントローラの平均消費電力が可能な限り少ないだけでなく、残りの設計においても最小限の消費電力を実現する機能をマイクロコントローラが提供することが産業用IoT設計にとって重要です。

低電力またはバッテリ電力のみのアプリケーション向けに、Microchipが提供するPIC24Fマイクロコントローラファミリで使用されているXLP(eXtreme Low Power)技術は、Bluetooth® LE(BLE)接続およびハードウェア暗号化エンジンを内蔵する追加のセキュリティを介して、IoTセンサ向けに非常に低エネルギーの基本的なコマンドおよび制御通信を実現します。

極めて低電力

低電力またはバッテリ電力を必要とする電子アプリケーションが増えるにつれて、省エネが最重要になります。 今日のアプリケーションの消費電力はわずかである必要があり、いくつかの極端な場合では、単一のバッテリで動作しながら最大20年以上持ちこたえる必要があります。 このようなアプリケーションを実現するために、MicrochipのXLP(eXtreme Low Power)技術を備えた製品は、極めて低電力のアプリケーションがその時間の90~99%を費やす非常に低いスリープ電流を提供します。 図1にあるように、16ビットのXLP技術は、最小40nAのスリープ電流を実現し、最小180μA/MHzの電流を駆動します。

フラッシュメモリおよびピン 最小のスリープ電流 WDTでの最小のスリープ電流 RTCCでの最小のスリープ電流
64~128KB
28~44ピン
40nA、3.3V標準 270nA @ 3.3V標準 400nA @ 32kHz、
3.3V標準

図1:異なるスリープモードでのPIC24FJ128GB204の消費電流

このタイプの極めて低電力のデバイスの好例として、MicrochipのPIC24FJ128GB204マイクロコントローラがあります。 この製品は、ディープスリープなどの極度の電力低減と柔軟なウェイクアップリソース向けに複数の電源管理オプションを有しており、環境センサが非同期の/定期的な読み取りを取得する必要がある時など、内部または外部トリガでウェイクアップする機能で、完全に近いパワーダウンを実現します。 スリープおよびアイドルモードは、セキュリティカメラモーション検出器などにおいて、大幅な電力低減、およびより重要なアプリケーション割り込みの高速ウェイクアップのために、ペリフェラルおよび/またはコアを選択的にシャットダウンします。 仮眠(doze)モードにより、CPUは、ペリフェラルよりも低いクロック速度で動作でき、代替クロックモードは、選択的な電力低減のために、より低いクロック速度へのオンザフライの切り換えが可能です。 もう1つの新しいスリープモードは、別々の低電圧レギュレータから駆動される非常に重要な回路を持つ低電圧保持スリープです。 また、これは、リアルタイムクロック/カレンダ向けに、最小の消費電力のためにデバイスがバックアップバッテリに移行することを可能にするVbatピンを有しています。

多くの柔軟なスリープおよびウェイクモードで極めて低い電力を実現するマイクロコントローラを持つことは、電力に制約があるアプリケーションで重要です。 また、低電力は、通信などのすべてのシステム機能で重要です。

低エネルギー通信

データのセンシングおよびコードの実行時に、電池寿命を最適化するために、アプリケーションは、可能な限り速くかつ効率的に情報を処理し伝送して、スリープに戻る必要があります。 多くのアプリケーションは、シンプルなコマンドおよび制御、またはセンサからの迅速なステータス更新のみを必要とします。 これらのニーズに対応することで、Bluetooth Low Energy(LE)は、これらの低デューティサイクルのアプリケーションをサポートするよう進化を遂げてきました。 Bluetooth SIG仕様のページによると、Bluetooth LEは、長距離無線接続の短いバーストを実現するため、連続接続を必要としないものの長い電池寿命に依存するモノのインターネット(IoT)アプリケーションに最適であるといったことが記述されています。 BLEは、Classic Bluetooth技術と同じスペクトル帯域(2.400GHz~2.4835GHz ISM帯域)で動作しますが、異なるセットのチャンネルと異なる変調方式を使用します。 詳細は、Bluetooth SIGウェブサイトで仕様の下のBLE 4.x仕様でご覧いただけます。

Microchipは、RN4020でBLEをサポートします。この製品は、低電力ワイヤレス機能を製品に容易に追加することを希望する設計者向けの完全に認証されたBluetoothバージョン4.1 Low Energyモジュールです。 このスモールフォームファクタの面実装モジュールは、オンボードで完全なBluetoothスタックを有しており、UARTインターフェース上でシンプルなASCIIコマンドを介して制御されます。 RN4020(図2)には、すべてのBluetooth SIGプロファイルや、カスタムデータ用のMLDP(Microchip Low Energy Data Profile)が含まれています。 また、Microchipは、広範なアプリケーションへの容易な実装のために設計されているBM71 Bluetooth(4.2)Low Energyモジュールなどの、BLE仕様の後のバージョンをサポートするその他の製品を有しています。 これは、最新のBluetooth規格をサポートし、最大2.5倍のスループットの向上と、Bluetooth 4.1ベースの製品と比べてより安全な接続を実現しています。

MicrochipのRN4020 Bluetooth Low Energyモジュール

図2:MicrochipのRN4020 Bluetooth Low Energyモジュール

低電力のワイドエリアネットワーク(WAN)向けに、LoRaWAN™プロトコルスタックは、MicrochipのLoRa®モジュール上で利用可能です。 LoRaWANプロトコルは、LoRaゲートウェイおよびネットワークサーバに容易に接続し、スマートデバイス間の相互運用性を提供します。

また、インターネットへの低エネルギー接続に加えて、多くのアプリケーションは、データセキュリティ伝送およびストレージ要件を有しています。  

データ保護向けの内蔵のハードウェア暗号化

安全なデータストレージは、データロギングに焦点を当てるアプリケーション、サムドライブにデータを保存しているアプリケーション、または複数の構成ファイルからロードする必要があるアプリケーションなどの多くのアプリケーションにとって重要です。 そのデータが何らかのタイプの外部メモリ(例:EEPROM)でボードのMCUの近くに保存されるか、USBを介してまたはワイヤレスで別のデバイスに送信されるかを問わず、暗号化を持つことは、データ整合性の保護および通信の確保に重要です。

MicrochipのPIC24FJ128GB204マイクロコントローラファミリは、AES、DES、およびTriple DESのサポートを含むフル機能のハードウェア暗号化エンジンを内蔵しています。 内蔵の乱数発生器は、データ暗号化/復号化向けのキーの作成に使用され、キーの複製を困難にすることで、より高いレベルのセキュリティを提供します。 ワンタイムプログラマブル(OTP)キーストレージは、暗号化キーがソフトウェアによって読み取られるか、または上書きされるのを防止します。

(ソフトウェアではなく)ハードウェアにこれらの機能を実装することで、ソフトウェアのオーバーヘッド、および処理帯域幅が低減されます。 内蔵のハードウェアAESは、ソフトウェアAESよりも約10倍高速です。 速度に関するこの利点により、より低い周波数でMCUを動作でき、消費電力を節約します。 ハードウェア対応保護は、セキュリティカメラ、ドアロックおよびパネル、スマートカードリーダ、POS端末、投票装置などの低デューティサイクルアプリケーションまたは低電力組み込みセキュリティアプリケーションに最適です。 

PIC24FJ128GB204ファミリの製品で使用されている内蔵のハードウェア暗号化エンジンは、CIP(Core Independent Peripheral:コアから独立したペリフェラル)とみなされます。 いったんシステム内で初期化されると、CIPは、MCUのコアから全く介入なしで、定常状態閉ループ組み込み制御を提供することができます。 結果として、これらは複雑な制御システムの実装を簡素化し、設計者に技術革新の柔軟性を提供します。

この組み込みセキュリティがいかにして実装されているかを示す1例は、安全なセンサデータを備えたPIC24 XLPデバイスで見つかります。

IoTにおけるセンサ

検出される必要があるイベントの性質に応じて、IoTアプリケーションで使用できる多くの異なるタイプのセンサがあります。 センサカテゴリには、環境、モーション、ライト、物理、化学、および電気が含まれますが、これをはるかに超えて、ナビゲーション、光学、圧力、力、近接などの多くのその他領域を加えて拡大することができます。 最終的な目標は、データのキャプチャまたはアクチュエータの制御を行う組み込みシステムと、エンドユーザーまたはマシン間のインタラクションを作成することです。 Bluetoothアプリケーションとのユーザーインターフェースの明らかな選択肢は、モバイル技術です。

Microchipは、この基本的なセンサ機能を発揮するPIC24 XLP Bluetooth LE IoTデモ(図3)を開発しました。 このデモは、Explorer 16ボードPIC24FJ128GB204プロセッサプラグインモジュール(PIM)、およびBluetooth LE PICtail Plusドーターカードを含むMicrochipの標準開発ツールを使用して構築されています。 これらのすぐに利用可能なツールを使用して、このデモを自身で容易に複製できます。 このデモは、MCUファームウェア、およびAndroidフォンまたはタブレットで実行するアプリによってサポートされます。 最初のアプリケーションは、タブレットのタッチボタンを使用してLEDをターンオンおよびオフし、基本的な双方向コマンドおよび制御をデモンストレーションします。 また、このアプリはボードのスイッチの状態を示し、トグルオンおよびオフすることができます。 また、このデモは、最大128ビットのAES、およびマイクロコントローラのA/Dチャンネルの1つに接続されるMicrochip TC1074Aアナログ出力温度センサを備え、PIC24FJ128GB204 MCUに内蔵される暗号エンジンを使用したデータセキュリティを含みます。

MicrochipのPIC24F XLP Bluetooth LE IoTデモ

図3:MicrochipのPIC24F XLP Bluetooth LE IoTデモ

クラウドへの安全なIoTセンサデータの取得には、多くの利点があります。詳細は、下記をご覧ください。

クラウドへの接続

IoTデバイスにとって、クラウドに接続する多くの利点があります。 その例には、リモートコマンドおよび制御、リモート診断およびフィールド再プログラム可能性、プロファイルおよびステータス、プッシュ通知などがあります。 また、IoT製品からクラウドへの多くの可能性のあるパスがあります。 いくつかの一般的な構成には、1)ルータを通したWi-Fi®、2)セル接続を介したBluetooth、3)ルータを通したEthernet、4)ゲートウェイを通したLoRa、および5)ゲートウェイおよびルータを通したMiWiが含まれます。 広範なワイヤレスソリューション、センサおよびXLP(eXtreme Low Power)マイクロコントローラを備えたMicrochip製品は、最終製品および必要なコネクティビティを含むエンドツーエンドIoTソリューションを実現し、クラウドへの組み込みシステムの接続を成功するのに寄与します。  

結論

消費電力およびセキュリティは、マイクロコントローラにとってだけでなく、残りのIoT設計においても、組み込みシステム設計者にとって最大の懸念事項の2つです。 低電力またはバッテリ電力のみのアプリケーション向けに、Microchipは、非常に低い電流を提供し、内蔵のハードウェア暗号化エンジンでセキュリティに対処し、クラウドに接続するために複数の通信パスを提供するXLP(eXtreme Low Power)技術のマイクロコントローラを含む、これらのアプリケーションに最適な一連の製品を取り揃えています。

 

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