赤外線LEDの産業用および民生用アプリケーション
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2025-07-02
赤外線は電磁波スペクトルの一部で、可視光の長い波長とマイクロ波の短い波長の中間に位置します。人間の目には見えませんが、熱として検出可能な赤外線(IR)照射は、760nmから1mmの範囲をカバーします。赤外線帯域は、760nmから1400nmの近赤外線(NIR)レンジを含む、複数の成分に分割されます(図1)。
図1:赤外線領域を強調した電磁波スペクトルを示します。近赤外線スペクトルは 760~1400nm の波長帯を占め、さまざまなアプリケーションで利用されています。(画像提供:Broadcom)
近赤外線アプリケーションの仕組み
近赤外線はワイヤレス通信を容易にするため、特に有用です。ほとんどのアプリケーションにおいて、近赤外線を使った非接触センシングは、赤外線エミッタとレシーバを組み合わせることで機能します。
たとえば、テレビのリモートコントローラは近赤外線を使用しています。リモートコントローラのボタンが押されると、内部回路がその動作をバイナリコードに変換し、赤外線トランスミッタに送ります。それからトランスミッタは、符号化された情報を近赤外光のパルスとして照射します。もう一方では、テレビのペアセンサがパルスを受光し、特定のコマンドを実行するためのバイナリコードに変換します。
アプリケーションがトランスミッタおよびレシーバの組み合わせを利用するかどうかは、ケースによって異なります。リモコンの例のように、レシーバはトランスミッタから照射された信号を復号します。他のケースでは、照射が遮られるとトリガーが作動します。このような遮断に基づくパターンは、人物や物体を検出するアプリケーションで活用されます。
外部からの信号干渉を避けるため、レシーバは特定の波長を検出するように設計されています。エミッタから照射される赤外線はレシーバが検出する波長と一致し、かつ十分な強度を持つ必要があります。BroadcomのHSM8-C120 IR ChipLEDエミッタ(図2)は、民生用電子機器、スマートメータなど、さまざまなアプリケーションで使用できる近赤外線LEDの一例です。
図2:BroadcomのHSM8-C120 ChipLED IR LEDエミッタは、ピーク波長が850nmで、小型のフットプリントを特長とし、高密度PCB回路に最適です。(画像提供:DigiKey)
HSM8-C120は、1.6mm x 0.93mmと小型パッケージフットプリントを備えた側面発光型面実装赤外線チップLEDで、スペースに制約の厳しい幅広いアプリケーションに最適です。
ピーク波長は850nm、150°の視野角を備え、業界標準の自動実装機および赤外線リフローはんだ付けに対応しています。
近赤外線LEDのアプリケーション
光電式煙感知器 - 赤外線LEDは、物体侵入の基本原理を利用して煙の存在を検知します。同じユニット内にエミッタと光検出素子を搭載しています。通常の動作状態では、LEDが赤外線を照射し、検出器に電流を発生させます。しかし、煙が発生すると、照射経路が乱され、赤外線が散乱します。その結果、光検出器が検出する正味の電流が減少し、アラームが作動します。赤外線LEDは、煙を透過し、より小さく高密度の粒子を検出するできるため、このアプリケーションに特に適しています。
このカテゴリに属するのは光電式煙感知器だけでなく、空気のイオン化レベルを測定するタイプもあります。ただし、これらは誤報が発生しやすいことで知られています。調理時の煙による誤報が特に問題となるため、住宅用の煙警報器は「ハンバーガーテスト」に合格する必要があります。これは、調理時の煙で誤報が発生しにくいことを意味します。赤外線LEDは台所の煙の粒子による影響を受けにくいため、誤報の発生が少なくなります。赤外線LEDは、熱、ガス、空気流を検出する他のシステムと統合可能で、危険な状況についてリアルタイムの情報をより詳細に得ることができます。
家電製品 - リモコンでの使用に加え、洗濯機の赤外線センサは水量を検知し、ロボット掃除機はマッピングされた経路上の障害物を回避するために赤外線センサを利用しています。同様のセンサが電子レンジにも搭載されており、ドアが開いたことを検知してアラームを発することができます。自動水栓、ソープディスペンサ、ハンドドライヤはすべて、赤外線LEDの障害物検知と近接検知機能を利用しています。
セーフティライトカーテン - 製造現場、倉庫、建設現場、その他の産業環境で大型または危険な産業機器を操作する際、作業者の安全は常に最優先事項です。物理的なバリアは大型でかさばり、設置に手間がかかるため、物理的なバリアよりもはるかに軽量で携帯性に優れた赤外線LEDが有効な代替手段となります。また、カバーする必要のあるエリアに応じて、さまざまな形状やサイズに対応するように設置することも可能です。
赤外線LEDセーフティライトカーテン(図3)は、物体検出の原理に基づいて事故を防止します。これは赤外線LEDエミッタとレシーバとして機能するフォトダイオードのアレイで構成されています。LEDは同期した平行赤外光線を照射し、監視が必要なエリア全体をカバーします。その結果、格子状に配置されたフォトダイオードが、特定の固有周波数に変調された赤外光を検出します。赤外線カーテンのフィールド内に物体がある場合、危険な状況が発生した可能性が高く、警告を発することができます。たとえば、手や腕がビームフィールド内に入ると、機械が自動的に停止し、怪我を防ぐことができます。
図3:セーフティライトカーテンは、物体の侵入がない場合、左図のように赤外線信号を照射し、受光します。右図のように赤外線ビームが物体によって遮断されると、適切な対応が開始されます。(画像提供:Broadcom)
スマートユーティリティメータ - 省エネと責任ある使用の目標には、必要最低限の電力のみを消費することが含まれます。スマートユーティリティメータは、消費者がリアルタイムで電力使用量を確認し、必要に応じて電力使用量を調整できるようにするため、このような目標の達成に重要な役割を果たしています。また、漏電や故障の早期発見にも役立ち、ピーク時の消費パターンに応じて料金を段階的に設定する料金体系の実現にも貢献します。
スマートメータでは、赤外線LEDを短距離の双方向データ伝送に使用しています。赤外線LEDは暗号化された赤外光パルスを照射し、データ収集装置のフォトダイオードで受光します。これらのパルスは、エネルギー消費量の測定から診断データまで、さまざまなデジタル情報を伝送可能です。さらにセキュリティ強化のため、赤外線パルスには検出器が検証に用いる独自のシグネチャーが組み込まれています。
まとめ
消費者向け家電製品や診断データの伝送など、高性能な赤外線エミッタが必要な設計において、HSM8-C120は特に適しています。その多くの利点には、小型化、効率的なエネルギー使用、安定した出力などがあります。

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