IoTデバイス用アンテナの選び方と適用方法
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2024-09-26
モノのインターネット(IoT)デバイスの普及は、革新的な最終製品の設計を加速させ、刺激し続けています。しかし設計者は、ハードウェアとソフトウェアにどれだけの創造性と努力を注いだとしても、アンテナが極めて重要な役割を果たすということを忘れてはなりません。アンテナが適切に機能しなければ、製品の性能は著しく損なわれます。
デバイスと無線ネットワークをつなぐインターフェースであるアンテナは、IoTデバイスの設計プロセスに不可欠な部品です。アンテナは電気エネルギーをトランスミッタで電磁無線周波数(RF)波に変換し、受信RF信号をレシーバで電気エネルギーに変換します。設計者は、主要な技術的パラメータを満たすアンテナを選択することにより、アプリケーションの性能を最適化できます。しかし、利用可能なオプションや考慮すべき事項が多い場合、設計サイクルの遅延やコスト増につながる可能性があります。
この記事では、無線IoTデバイスにおけるアンテナの役割を要約し、その選択に影響を与える重要な設計基準について簡単に説明します。その後、Amphenolのアンテナを例に挙げて、Bluetooth Low Energy(LE)、Wi-Fiセンサ、GNSS(全地球的航法衛星システム)機能を備えたIoTアセットトラッカ、Wi-Fiアクセスポイント(AP)、LoRa IoTデバイスの最適な選択方法を説明します。
データシートの解釈
アンテナの最終的な性能は、取り付け位置やインピーダンス整合ネットワークの設計など、技術的な決定に左右されます。アンテナを問題なく取り付けるには、アンテナのデータシートを注意深く確認する必要があります。主なパラメータを以下に示します。
- 放射パターン:アンテナが3次元空間でどのように電波エネルギーを放射(または吸収)するかを図示したものです(図1)。
- 最大電力伝送:アンテナとレシーバの間の最適な電力伝送は、伝送線路のインピーダンス(Z0)とアンテナのインピーダンス(Za)が一致する場合に実現されます。インピーダンスの整合が不十分な場合は、リターンロス(RL)が増加します。電圧定在波比(VSWR)は、伝送線路とアンテナの間のインピーダンス整合を示します(表1)。VSWR値が高いと、電力損失が大きくなります。VSWRが2以下であれば、IoT製品の一般的な許容範囲内にあります。
- 周波数応答:リターンロス(RL)は無線周波数に依存します。設計者は、データシートでアンテナの周波数応答を確認し、目的の動作周波数でRLが最小であることを確認する必要があります(図2)。
- 指向性:アンテナの放射パターンの方向性を示します。最大指向性はDmaxとして定義されます。
- 効率(η):入力電力(Pin)に対する全放射電力(TRPまたはPrad)の比は、η=(Prad/Pin)×100%という式から算出されます。
- ゲイン:ピーク放射方向にどれだけの電力が伝送されるかを示します。通常、等方性アンテナを基準としてdBi単位で表され、Gainmax= η×Dmaxという式から算出されます。
図1:アンテナが3D空間で電波エネルギーを放射または吸収する様子を図示した放射パターン。通常、データシートで示されるのは、アンテナが意図した通りに取り付けられた場合のXY平面とYZ平面における最大範囲です。(画像提供:Amphenol)
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表1:VSWRは伝送線路とアンテナの間のインピーダンス整合を示します。VSWRが2以下であれば、IoT製品の一般的な許容範囲内にあります。(表提供:スティーブン・キーピング氏)
図2:周波数に依存するVSWRとRL。目的の動作周波数ではRLを最小にする必要があります。(画像提供:Amphenol)
性能の向上
アンテナの性能が悪いと、トランスミッタで放射エネルギーに変換される電力量と、レシーバで受信RF信号から変換されるエネルギー量が限られてしまいます。トランスミッタとレシーバのいずれかの性能が悪いと、無線リンクの範囲が狭くなります。
アンテナの性能に影響を与える主な要因は、インピーダンスです。アンテナのインピーダンス(アンテナの入力電圧と入力電流に関係)と、アンテナを駆動する電圧源のインピーダンスとの間に著しい不整合があると、エネルギーの伝達が悪くなります。
適切に設計されたインピーダンス整合回路は、トランスミッタ電源のインピーダンスとアンテナのインピーダンスを整合させることにより、VSWRとそれに伴う電力損失を最小限に抑えます。低電力のIoT製品の場合、インピーダンスは通常50Ωです。
アンテナの位置も、最終製品の送信出力と受信感度に大きく影響します。設計ガイドラインでは、内部アンテナの場合はIoTデバイスの上部のプリント回路(PC)基板の端部に設置し、動作中に電磁妨害(EMI)を発生させる可能性のある他の部品からできるだけ遠ざけることが推奨されています。インピーダンス整合部品は例外で、これはアンテナに近接することが避けられないためです。アンテナを他の回路に接続するプリント基板のパッドとトレースは、決められたクリアランス領域にある唯一の銅導体である必要があります(図3)。
図3:プリント基板の端部付近に設置する必要がある基板実装アンテナ。クリアランス領域を設けるなど、他の部品(インピーダンス整合回路に使用されるものを除く)から離して設置する必要もあります。(画像提供:Amphenol)
(アンテナ設計ガイドラインの詳細については、「IoT設計におけるスペース、複雑さ、コストを削減するマルチバンド組み込みアンテナの使用方法 」を参照してください。)
アンテナの種類
アンテナの指定は、IoTデバイスの設計プロセスの非常に重要な部分です。アンテナは、対象の無線インターフェースのRF帯域に合わせて最適化する必要があります。たとえば、NB-IoTは450MHz~2200MHzの間の複数の帯域で動作し、LoRaは北米の902MHz~928MHz、Wi-Fiは2.4GHzおよび5GHz、Bluetooth LEは2.4GHzで動作します。
各種のアンテナには、さまざまな電気的コンセプトが採用されています。たとえば、モノポールアンテナ、ダイポールアンテナ、ループアンテナ、逆Fアンテナ(IFA)、平面逆Fアンテナ(PIFA)などがあります。各アンテナは、特定のアプリケーションに適しています。
また、シングルエンドアンテナと差動アンテナもあります。シングルエンドアンテナは不平衡型、差動アンテナは平衡型のアンテナです。シングルエンドアンテナは、グランドを基準とする信号を受信または送信し、特性入力インピーダンスは通常50Ωです。しかし、多くのRF ICは差動RFポートを備えているため、シングルエンドアンテナを採用する際には、多くの場合、変換ネットワークが必要になります。このバランネットワークは、信号を平衡から不平衡に変換します。
差動アンテナは、2つの相補的な信号それぞれを独自の導体で伝送します。差動アンテナは平衡型であるため、差動RFポートを備えたRF ICと併用する場合、バランは不要です。
最後に、アンテナは、プリント基板、チップまたはパッチ、外部ホイップ、ワイヤなど、いくつかのフォームファクタで構成されます。図4は、一部のアプリケーション例を示しています。
図4:さまざまなIoTアプリケーションに対応する各種アンテナ。(画像提供:Amphenol)
アプリケーションに合ったアンテナの選択
アンテナの選択で最終的な決め手となるのは、アプリケーションと製品のフォームファクタです。たとえば、スペースに制約のあるIoT製品の場合は、プリント基板アンテナをプリント基板回路に直接組み込むことができます。これらのアンテナは、照明、サーモスタット、セキュリティシステムなどのスマートホームデバイスのBluetooth LEやWi-Fiセンサのような2.4GHzアプリケーションに最適です。また、薄型アーキテクチャで信頼性の高いRF性能を提供します。とはいえ、プリント基板アンテナは設計が困難です。その代案として、市販のプリント基板アンテナを調達するという方法があります。調達したアンテナは、接着式固定具を使ってプリント基板に貼り付けることができます。
プリント基板アンテナの一例が、AmphenolのST0224-10-401-A Wi-Fi PCBトレースRFアンテナです。このアンテナは、2.4~2.5GHz帯と5.15~5.85GHz帯で全方向性の放射パターンを提供します。サイズは30×10×0.2mmで、インピーダンスは50Ωです。RLは両周波数帯域とも-10dB未満で、ピークゲインは等方性(dBi)に対して2.4GHz帯で2.1dB、5GHz帯では3.1dBiです。各帯域での効率は、それぞれ77%と71%です(図5)。
図5:ST0224-10-401-A Wi-Fi PCBトレースアンテナは、2.4GHz帯と5GHz帯の両方で効率的に動作します。(画像提供:Amphenol)
スペースに制約のあるIoT製品向けのもう一つの選択肢が、チップアンテナです。自動化装置では、この小型部品をプリント基板に直接実装することができます。このアンテナは、Bluetooth LEベースやWi-Fiベースの無線IoTアプリケーションに適しています。チップアンテナの主な利点は、省スペースで製造コストを削減でき、設計プロセスを簡素化できるという点です。
以上のように、チップアンテナの性能は、プリント基板のレイアウトや周辺部品などの要因に影響されますが、アンテナ技術の進歩によって高効率なデバイスが実現されています。チップアンテナは、スマートフォンやタブレット、スマートホームシステム、産業用センサなど、さまざまなアプリケーションに適しています。
たとえば、AmphenolのST0147-00-011-Aは、2.4GHzの面実装チップアンテナです。このアンテナは、2.4~2.5GHz周波数帯で全方向性の放射パターンを提供します(図6)。サイズは3.05×1.6×0.55mmで、インピーダンスは50Ωです。RLは-7dB未満、ピークゲインは3.7dBiで、平均効率は80%です。
図6:ST0147-00-011-A面実装チップアンテナは小型で、XY平面において全方向性の放射パターンを示します。(画像提供:Amphenol)
プリント基板アンテナと同様、パッチアンテナは小型で、プリント基板に直接取り付けることができます。その標準的なアプリケーションが、GNSS(全地球的航法衛星システム)機能を備えたアセットトラッカなどのデバイス用のアンテナです。GNSSパッチアンテナは、誘電体基板上にパッチ素子が形成されています。効率が高く、複数の衛星からの微弱なGNSS信号を確実に受信することができます。
その一例が、AmphenolのST0543-00-N04-UパッシブGNSSパッチアンテナで、1.575および1.602GHz周波数帯で動作します。サイズは18×18×4mmで、インピーダンスは50Ωです。RLは両周波数帯域とも-10dB未満で、ピークゲインは1.575GHz帯で-0.5dBi、1.602GHz帯で1.0dBiです。各帯域での効率は、それぞれ80%と82%です。
Wi-Fi APのアンテナのような外部ホイップアンテナは、無線通信を最適化するためにIoTデバイスの外部に取り付けられます。外部ホイップアンテナは、信号範囲を拡大し、信号品質を向上させ、障害物や干渉を克服します。家の壁や天井、家具による減衰など、信号が弱い環境や信号が遮られる環境で役に立ちます。SMA、RP-SMA、Nタイプなどの標準的なRFインターフェース接続を備えた、ストレートホイップ設計とスイベルホイップ設計があります。
その一例が、AmphenolのST0226-30-002-A 2.4および5GHz SMA RFスティックアンテナです。このアンテナは、Wi-Fi APやセットトップボックス(STB)に適したソリューションです。また、2.4~2.5GHz帯と5.15~5.85GHz周波数帯で全方向性の放射パターンを提供します。サイズは88×7.9mm径で、インピーダンスは50Ωです。RLは両周波数帯域とも-10dB未満で、ピークゲインは2.4GHz帯で3.0dBi、5GHz帯で3.4dBiです。各帯域での効率は、それぞれ86%と75%です。このアンテナでは、SMAプラグコネクタまたはRP-SMAプラグコネクタのいずれかを使用できます(図7)。
図7:SMAプラグコネクタまたはRP-SMAプラグコネクタで使用できるWi-Fi AP用ST0226-30-002-A外部ホイップアンテナ。(画像提供:Amphenol)
ヘリカルワイヤアンテナは、868MHz周波数帯で動作するLoRa IoTデバイスなどのサブGHz帯アプリケーション向けの安価でシンプルなオプションです。通常、プリント基板に直接はんだ付けされ、良好な性能を発揮します。欠点としては、特に低周波数で運用する場合にサイズが大きくなってしまうことと、一部の代替アンテナと比べて効率が低いことが挙げられます。
ヘリカルワイヤアンテナの一例が、AmphenolのST0686-10-N01-U 862MHz RFアンテナです(図8)。このヘリカルワイヤアンテナは、862~874MHzの周波数帯域で動作し、インピーダンスは50Ωです。その特長はスルーホールはんだ実装で、最大高さは38.8mmです。RLは-9.5dB未満、ピークゲインは2.5dBiで、平均効率は58%です。
図8:LoRa IoTアプリケーションに最適なST0686-10-N01-Uヘリカルワイヤアンテナ。(画像提供:Amphenol)
まとめ
無線IoTデバイスの無線性能はアンテナの選択に依存するため、設計者は、Amphenolなどのサプライヤが提供する幅広いアンテナ設計の中から、アプリケーションに最適なものを慎重に選択する必要があります。選択する際にはデータシートが重要ですが、確立された設計ガイドラインに従うことで、最高の無線性能を確保できます。
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