セキュリティ・安全性・通信システム用に安定した電源を維持する方法

著者 Bill Schweber氏

DigiKeyの北米担当編集者の提供

住宅、商用、産業用のオートメーション施設は、保険要件や地域の建築法規を満たすため、また居住適格証明書を取得するため、セキュリティ・安全性・非常用通信といった広範なシステムを組み込まなければなりません。これらのシステムに共通している要素は、低電圧DC動作電源を作るためにACライン電源が必要な点と、安定したバッテリバックアップを配置することが必要である点です。

しかし、基本的なAC/DC電源およびバックアップを提供するだけでは、現代の建物や規格には十分ではありません。システムが包括的でかつ法規に準拠するためには、各種の内部および外部の障害状態を知らせる明確なアラーム表示をスイッチ閉鎖によって行う必要があります。さらに、今日のスマートビルディングのシステムは、複数の設置場所やバッテリタイプなどの変動要素に対応するために、物理的な設置方法や動作方法の柔軟性だけでなく、さまざまな接続方法に対応する必要があります。

分散型サブシステムを使用することで、AC/DCおよびDC/DC電源、バッテリの充電・管理、システムの監視・管理・アラーム制御などに必要な機能をまとめることが可能になります。アプリケーション向けに完全に最適化された設計としてまとめることができるのです。しかし、そのような設計にはどのようなコストがかかるでしょうか?この作業には多大な時間と費用がかかります。このため、メインのアプリケーション自体の設計から遠ざかってしまいます。また、最適化した設計は該当する規制当局から認証を受ける必要があるので、設計時間と費用がさらにかさみます。

これに代わる策としては、一から設計することのデメリットを回避すると同時に最低性能要件も満たすオールインワンの統合型電源を使用するという方法もあります。

本稿では、ビルディングオートメーションの電源システム要件について述べた後、MEAN WELLの統合型電源ソリューションを紹介します。また、この洗練されたインテリジェントな電源サブシステムの特長と用途、そして、柔軟性とパラメータプログラミング機能とともにシームレスな機能統合を実現する仕組みについても紹介します。

ビル管理・セキュリティ用電源システムで新たに必要とされる機能

商用オフィスや大規模住宅の電源サブシステムは、効率的な運用のために必要な機能、安全性とセキュリティのために要求される機能など、多くの機能をサポートすることが期待されています。電源レールのサポートが必要な機能には、以下のものがあります。

  • 火災安全警報器・システム
  • 非常用通信機器
  • 非常用照明(火災などの停電のため)
  • ビル入退室管理システム
  • 中央の火災警報・セキュリティ監視システム

建物の規模にもよりますが、電源サブシステムは複数のフロアにまたがる重要な機能をサポートする必要があります。また、「一次AC(またはDC)ラインが利用可能な場合は一時ラインがバッテリを充電し、一次ラインが利用可能でない場合はバッテリがさまざまな負荷やサブシステムをサポートする」という双方向性も必要です(図1)。

画像:分散型の電源サブシステム図1:分散型の電源サブシステムは、一次電源が故障したときにバッテリの充電と放電を管理しながら、複数のフロアの電力需要に対応する必要があります。(画像提供:MEAN WELL)

バックアップバッテリが無停電電源装置(UPS)として果たす重要な役割は、適切に監視する必要があります。このため、主な考慮事項は、バックアップバッテリの(充電と)管理です。しかし、リチウム電池や鉛蓄電池など、さまざまな電気容量や種類の電池が広く使われており、それぞれに充放電の目安があるため、唯一無二のベストな方法はありません。

さらに、AC/DCおよびDC/DC電源は、数多くの従来および新規の規格や建築法規指令を満たさなければなりません。高度な建築構造が増加したり、スマートビルディングにおけるテクノロジーの可能性が認識されるようになったりしたため、欧州、米国、中国の各国政府は、セキュリティや火災システムに関する以下の安全規制を公布しています。

  • 欧州標準化委員会(CEN):EN 54-4(火災探知・火災警報システム 第4部:電源装置)(英国規格:BS EN. 54-4)
  • 米国:UL2524(建物内2方向非常用無線通信強化システム用ANSI/CAN/UL規格)
  • 米国:全米防火協会 NFPA 1221(消防サービス通信システムの設置、メンテナンス、および使用に関する規格)
  • 中国:GB 17945-2010(火災時の非常用照明と避難誘導システム)

これらの規格の他にも、通常のAC安全規格、および、EN55032(CISPR32)とN61000-3-2によるE電磁両立性(EMC)(導電、放射、高調波電流、電圧フリッカ)に関するエミッション規格、EN61000-4によるEMC(静電気放電(ESD)、放射、電気的高速過渡現象(EFT)、バースト、サージ、導電、および磁界)イミュニティ規格があります。

これらの要件をまとめると、電源ユニット(PSU)は単なるAC/DCおよびDC/DC電源であってはならないということです。つまり、PSUは、複数の機能を高い安定性と性能を持つように提供、監視、管理、サポートする必要があるのです(図2)。

画像:2つの重要な役割がある最先端のPSU図2: 最先端のPSUには、さまざまな負荷に低電圧DCを供給すると同時に高性能なバッテリ管理を行うという、2つの重要な役割があります。(画像提供:MEAN WELL)

パッケージングと取り付けも重要

物理的なサイズ、動作温度範囲、冷却、および取り付けに関する考慮事項も、PSUにおける重要な要素です。PSUは通常、クローゼットに設置され、多くの場合、限られたスペースしかなく、冷却も限られています。このクローゼットには、PSUやバッテリのほか、ビル用のスイッチやルータなどの通信機器やデータストレージ装置を収納することもできるので、スペースが不足しがちな状況に対応するため便利にラックマウントできるようになっている点も、機能として魅力的です。

ビルの電源管理ニーズに対応した統合型電源

MEAN WELLは、ビルオートメーション設計者に要求される性能、フォームファクタ、取り付け、設計簡素化のニーズに応えるため、12ボルト/20アンペア(A)、240ワットのオールインワンユニットDRS-240-12と、より大きな兄弟機である24ボルト/20アンペア、480ワットのユニットDRS-480-24をご用意しています。DRS-240シリーズでは、上記以外のユニットとして、24ボルト/10A、36ボルト/6.6A、48ボルト/5Aと、異なる電圧/電流の組み合わせをご用意しています。DRS-480シリーズでは、36ボルト/13.3A、48ボルト/10Aの組み合わせもご用意しております。

設置や取り付けの問題については、DRS-240とDRS-480は、広く使われている業界標準のDINレール(タイプTS-35/7.5または15)に直接取り付けることで解決しています。これにより、取り付けが容易になるとともに、他のシステムやそのエンクロージャを簡単に並べることができます。また、DINレール設計を採用しているため、すべての接続部、インジケータ、読み取り値表示部が前面にあるので、ユーザーがバックパネルや側面に廻る必要はありません。これは、配線の計画、設置、設定、テスト、必要に応じた再配線を行う場合に便利です。

このようなクローゼットでは、利用可能なスペースが限られているため、PSUフォームファクタが小型であることが必要です。ユニットDRS-240は86 × 125 × 129mm(幅 × 高さ × 奥行き)、DRS-480は110 × 125 × 151mmと小型化されています(図3)。

画像:MEAN WELLの240W(左)と480W(右)のDRSユニット図3:240W(左)と480W(右)のDRSユニットは、フォームファクタが小型であり、標準的なDINレールに取り付けられています。480Wのユニットの方が240Wのユニットよりも若干大きめです。(画像提供:MEAN WELL)

これらのクローゼットやキャビネット内の環境条件は、短期的な性能にとっても長期的な性能にとっても課題となりました。DRSファミリのメンバーはすべて、動作温度-30~+70℃、相対湿度(RH)20~90%(結露なしでの動作)、対流空冷に対応しています。耐久性(安定性・信頼性)は、DRS-240ユニットがTelcordia SR-332(Bellcore)において最低564,700時間、MIL-HDBK-217F(25℃)において最低733,000時間となり、DRS-480ユニットはそれらよりわずかに低い数値となっています。

DC出力とバッテリ管理出力につながるライン電源入力

グリッドのバリエーション、ワールドワイドな応用範囲、および設置しやすさを考えると、入力電源レンジも重要です。これらのPSUは、90~305ボルトACおよび127~431ボルトDCに対応しています。これらのユニットには、充電、放電、ステータス表示、およびバッテリの全体的な管理を行う数々の機能があります(図4)。

MEAN WELL製DRS PSUのブロック図図4:DRS PSUのブロック図は、その内部が洗練されていること、およびバッテリ管理、充電/放電、インジケータ、保護をそれぞれ行う回路が数多くあることを示しています。(画像提供:MEAN WELL)

フロントパネルのディップスイッチにより、2段/3段の充電カーブと充電電流の設定(20%~100%)を手動で調整することが可能です。バッテリの最大充電可能電流は、各種DRSモデルで利用可能な最大出力電流によって決まります。バッテリ充電アルゴリズムは、負荷に依存します。このような充電パラメータの柔軟性により、DRS-240/480はさまざまな鉛蓄電池やリチウムバッテリを最適に管理することができます。

また、DRS-240/480には、バッテリ機能の重要性から、低バッテリや逆接続防止などのインジケータも搭載されています。これらをはじめとする機能により、主電源から充電できる、堅牢で安定したバッテリサブシステムを実現できるだけでなく、主電源がない場合でも10ミリ秒以内に定格出力に切り替えることができます。

故障や不具合は起こるもの

PSUが指定されたすべての機能を提供できるかどうかに影響を与える条件が内部または外部に存在することは致し方ありません。このため、DRSユニットには、先に挙げた低バッテリや逆接続のインジケータに加えて、短絡、過負荷、過電圧、過温度などのステータスを示すインジケータが搭載されています。

他にも重要なインジケータとしては、AC Fail(ACフェイル・異常)、DC OK(DC正常)、Battery Low(バッテリ電圧低下)、Charger Fail(充電器フェイル・異常)といった、主要な動作状態をLEDとフォームCリレーで分かりやすく表示するステータスインジケータがあります(図5)。フォームCリレーは、明確なマークが刻印されているほか、ドライコンタクトクロージャ(ドライ接点の閉鎖)を行うのが特長です。ドライコンタクトクロージャが使用される(場合によっては義務付けられる)理由は、いくつかあります。

画像:ユーザーはフロントパネルだけで電源接続を確認することができます。図5:ユーザーはフロントパネルだけで電源接続、インジケータ、リレーコンタクトを確認することができます。(画像提供:MEAN WELL)

このコンタクトクロージャは一義的に行われるので、いくつかのメリットがあります。このようなコンタクトクロージャは、本アプリケーションで長い間使用されているため、レガシーおよび新規のシステム/部品(外付けの点滅ライトやベルなどの基本的なものも含む)のいずれにも簡単に組み込むことができます。また、このコンタクトクロージャは安定性があります。特に、オープンコレクタ出力やソリッドステートリレー(SSR)など、より「電子的」なインターフェースの動作に影響を与える可能性のある電源の問題がある場合は、スイッチの閉鎖が、システムで提供できる最も確実な指示となります。

通信も必須

最新のPSUは、高度な管理、セットアップ、レポート作成のためにネットワーク接続も提供しなければなりません。標準的なDRSのPSUファミリは、Modbusリンクをサポートしていますが、CANバスオプションもサポートしているのでスマートプログラミングユニットを使用することも可能です。このプログラミングユニットの用途は、業界で使用されているさまざまなタイプのバッテリに対応するために、定電流(CC)、テーパー電流(TC)、定電圧(CV)、フロート電圧(FV)など、バッテリの充電曲線・充電モードに関するパラメータを外部から設定することです(図6)。

画像:Modbusを使用するプログラミングユニット(クリックして拡大)図6:Modbusを使用する本プログラミングユニットを使って、ユーザーはバッテリのサイズとタイプに最適な数多くのバッテリ充電仕様を設定することができます。(画像提供:MEAN WELL)

DRSのPSUファミリは多くの機能や特長を備えていますが、このファミリ製品の接続自体はいたってシンプルです。この接続のシンプルさは、これらのユニットが長年にわたって使用されるケースが多いこととも相まって、実際の設置では大きなメリットとなり、好まれる点です(図7)。

画像:複雑で精巧な内部を持つDRSのPSUファミリ図7:DRSのPSUファミリは内部が複雑で精巧にできているため、ユーザーからは見えないようになっているので、ユーザーはフロントパネルにおける少数の接続部とインジケータを操作するだけでよいようになっています。(画像提供:MEAN WELL)

まとめ

MEAN WELL DRS-240およびDRS-480ファミリのような電源ユニットは、基本的なAC/DCまたはDC/DC変換以上の機能を備えています。これらのユニットは、火災安全・ビルセキュリティシステム(含む:非常用通信機器)の電源管理ソリューションとして認定されています。これまで見てきたように、DRSは必要な機能をすべて小型で取り付けが簡単な、接続される効率的・安定的なDINレールパッケージに組み込んでいるので、記録、設置、操作が簡素化されるとともに、さまざまな規制を満たすために必要な機能、特長、性能が備わっています。

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著者について

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Bill Schweber氏

エレクトロニクスエンジニアであるBill Schweber氏はこれまで電子通信システムに関する3冊の書籍を執筆しており、また、発表した技術記事、コラム、製品機能説明の数は数百におよびます。これまで、EE Timesでは複数のトピック固有のサイトを統括するテクニカルウェブサイトマネージャとして、またEDNではエグゼクティブエディターおよびアナログエディターの業務を経験してきました。

Analog Devices, Inc.(アナログおよびミックスドシグナルICの大手ベンダー)ではマーケティングコミュニケーション(広報)を担当し、その職務を通じて、企業の製品、ストーリー、メッセージをメディアに発信する役割と、自らもそれらを受け取るという技術PR業務の両面を経験することになりました。

広報の業務に携わる以前は、高い評価を得ている同社の技術ジャーナルの編集委員を務め、また、製品マーケティングおよびアプリケーションエンジニアチームの一員でした。それ以前は、Instron Corp.において材料試験装置の制御に関するハンズオンのアナログおよび電源回路設計およびシステム統合に従事していました。

同氏はMSEE(マサチューセッツ大学)およびBSEE(コロンビア大学)を取得した登録高級技術者であり、アマチュア無線の上級クラスライセンスを持っています。同氏はまた、MOSFETの基礎、ADC選定およびLED駆動などのさまざまな技術トピックのオンラインコースを主宰しており、またそれらについての書籍を計画および執筆しています。

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