LPWAN RFモジュールを使用して低電力ワイヤレスIoTセンシングを迅速に開始する方法

著者 Richard A. Quinnell(リチャード・A・クィネル)氏

DigiKeyの北米担当編集者の提供

開発者がモノのインターネット(IoT)センサのワイヤレスコネクティビティを検討する場合、まずWi-Fi、Zigbee、またはBluetoothを考えるのが一般的です。しかしながら、アプリケーションがこれらの技術よりも低電力、長距離性能を必要とする場合や、あるいは使用モデルが異なりデータレートが低い場合もしばしばあります。ゼロから独自のワイヤレスインターフェースを設計した結果、コストの増加や遅れの可能性、さらにはこの方法による作業のやり直しを招くよりも、各種の比較的新しい低電力ワイドエリアネットワーク(LPWAN)向けの出来合いのモジュールを使うことも考えられます。

このようなLPWANには、SigfoxやLoRaWAN、さらに新しいRadiocrafts Industrial IoT(RIIoT)などがあります。いずれも適度なサンプルレートで動作する比較的シンプルなセンサに接続するように設計されており、データ長が短く頻繁にデータバーストが発生しないデータを長距離(最大50kmまたはそれ以上)にわたって送信します。このようなアプリケーションは、離れた場所や不便な場所にあるセンサの電池寿命を最大化するために、きわめて厳しい電力制限が課せられることがしばしばです。理論上は、そのような場所に設置されたセンサはコイン電池かAAA電池で最長10年、信頼性をもって動作するでしょう。

この記事では、標準的な長距離IoTセンシングの設計要件と、Sigfox、LoRaWAN、RIIoTの特性について説明します。その後、Pi SupplySigfoxRadiocraftsの各社が提供している、最適なモジュールとその使い方を紹介します。

LPWANの特性

LPWANの帯域幅が狭いことは、低電力動作を実現している秘密の一部です(図1)。情報理論の教えるところでは、信号帯域幅と信号対ノイズ比(SN比)は情報伝送のエラー率と密接な関係があります。SN比が大きいほど、あるいは帯域幅が狭いほど、エラー率は低くなります。

LPWANの狭い帯域幅の図図1:LPWANは帯域幅が狭いため、低電力で長距離動作が可能です。(画像提供:Peter R. Egli、Slideshareより)

LPWANは、この関係を利用して低出力で長距離にわたって信頼性の高い情報伝送を実現しています。また、比較的低いデータレートを採用することで、LPWANシステムは信号帯域幅の要件も軽減しています。その結果、LPWANシステムはキロメートル単位の距離にわたって通信できます。

LPWANシステムの2つめの重要な要素は、国際的に免許不要のISM(Industrial, Scientific and Medical)周波数帯(886~906MHz)のサブギガヘルツ周波数を使うことです。このような(波長の長い)周波数での動作では、式1にしたがって自由空間伝搬損失が低減し、所定の送信電力に対する有効距離が延びます。

式1式1

式の要素の意味は次のとおりです。

d:距離

λ:波長

周波数が低いほど、壁や建物などの障害物に吸収される無線周波数(RF)のエネルギーが減少するため、LPWANシステムの都会環境における透過能力が増します。

ISMを使用した設計に免許は不要ですが、ISMバンドの運用では、世界的な電力および電磁適合性の規制に準拠する必要があります。

LPWANの例

LPWANには複数の選択肢がありますが、センサを使用したIoTアプリケーションの迅速な開発を求める場合に確実な3つの選択肢となるのが、LoRaWAN、Sigfoxと、最近発売されたRIIoTです。いずれも、開発者が設計に簡単に組み込める事前構成済みの無線およびセンサインターフェースモジュールのサポートに加え、簡単なセットアップおよびアプリケーション開発ができる開発キットが付いています。

LoRaWANは、LoRa Allianceが管理するオープン規格、およびSemtech Corpが所有し、ライセンス供与する専用スペクトラム拡散無線技術に基づいています。このネットワークはスターオブスター型トポロジを使用し、個別ノードが複数のゲートウェイと通信でき、ローミングを許容します。ゲートウェイとノード間の双方向通信をサポートしており、ゲートウェイはノードから他のノードやクラウドベースのサーバへメッセージを中継できます。

LoRaWANは、300bit/s~50kbit/sのデータレートで通信でき、最大243バイトのメッセージペイロードを処理し、125kHzまたは250kHzの信号帯域幅を使用します。変化する条件においても信号信頼性を維持する適応データレートをサポートし、通信距離は都市環境で5km、見通し線(LoS)で最大20kmを達成できます。ユーザーはノードを開発して、商用運用されているネットワークに参加することや、自前のゲートウェイおよびバックホールネットワークを使用してプライベートネットワークを構築することができます。

Sigfoxは、Sigfox社が開発、管理している専用プロトコルであり、同社がチップ開発企業に技術ライセンスを供与し、ユーザーに世界中のゲートウェイ基地局を通してそのネットワークへのアクセスを提供しています。Sigfoxでは、100Hzの信号帯域幅で600bits/sのデータレートを維持することで、通信距離を最大化できます。LoS条件で40km、都市環境で10kmを達成できます。その軽量プロトコルは、送信機の電力使用が短時間ですむようにアップリンクメッセージパケットを26バイト(ユーザーデータは最大12バイト)に制限しています。ノードが送信できるのは1日あたり140メッセージのみ、ゲートウェイからノードへのダウンリンクメッセージの送信は、ノードからアップリンクメッセージを受信後、1日あたり4回のみです。そのため、ノードが無線をアクティブにする時間はごくわずかで、大部分の時間をスリープモードにして消費電力を最小化します。

LPWAN無線は低電力ですが、「低電力」は実世界では相対的な用語です。たとえば、RadiocraftsはSigfoxモジュール製品用に2つの異なる電源オプションを提供しています。RC1692HP-SSM高電力センサインターフェースモジュールは、ホストマイクロコントローラとUART接続で通信し、センサ接続用にSPI、I2C、アナログポート、GPIOポートを備えています(図2)。これは2.8~3.6Vの電圧供給で動作します。

Sigfox RC1692HP-SSM無線およびセンサインターフェースモジュールの図図2:RadiocraftsのRC1692HP-SSMなどの完全Sigfox無線およびセンサインターフェースモジュールでは、非送信時の使用電流はわずか20µAです。(画像提供:Radiocrafts)

スリープモードの場合、このモジュールの使用電流は1µAです。センサを接続したアクティブモードの場合は、アイドル時で20µA未満、送信時で292mAです。

低電力のRC1682-SSMモジュールは欧州市場を対象としており、送信時の使用電流がわずか58mAと大幅に小さくなっています。

RIIoTは、開発者が検討すべきLPWANの最新の選択肢の1つです。これは、当初スマートメータやプロセス制御アプリケーション向け開発されたIEEE 802.15.4g/e物理レイヤ(PHY)規格を土台として構築されています。RFとメディアアクセス制御(MAC)の機能を加えて、低消費電力、長距離通信、高度なセキュリティに対応しています。スター型ネットワークの双方向通信であり、ほぼリアルタイムの制御アプリケーション向けに予測可能なネットワーク遅延が15ms未満を実現しています。

RIIoTでは、ニーズに合わせて電池寿命、データレート、通信距離のトレードオフを最適化できるように、2種類のデータレート(5kbit/s、50kbit/s)と2種類の電力レベルが用意されています。低電力、高データレートの設定では、RIIoTネットワークは、LoSで5km、都市環境で200mの通信距離を達成でき、3.5msのバースト送信をします。高電力、低データレートの設定では、45msのバースト送信での通信距離が、LoSで60km、都市環境で2kmにも達します。標準的なリーフノードのスリープ電流は、0.7µAです。

RIIoTネットワークの構築には、ノード、ゲートウェイ、ネットワークコントローラソフトウェアという、3つの主要素があります。個々の「リーフ」ノードには、RadiocraftsのRC1880CEF-SPRなどのモジュールを使用します。このモジュールは、A/Dコンバータ(ADC)と、GPIO、I2C、SPI、UARTの各インターフェースを内蔵しています。これらのノードは、拡張スロットに挿入可能なボード上の互換性のあるRC1880CEF-GPRモジュールか、またはUSBポートの1つに接続されたUSBドングルのいずれかを使用しているLinux PCと無線通信します。

そのPCをRIIoTゲートウェイとして完全なものにするには、3つめの要素であるRIIoT Net Controllerミドルウェアをインストールする必要があります。このソフトウェアは、OTA(Over-The-Air)によるリーフノードへのファームウェア更新などのネットワーク管理だけでなく、クラウドへのインターフェース接続を簡単にするため、データおよびコマンドのJSONオブジェクトへの変換も行います。

RIIoTネットワーク全体の図図3:リーフノード、ゲートウェイモジュールを搭載したLinux PC、コントローラソフトウェアを含むRIIoTネットワークの全体(画像提供:Radiocrafts)

RIIoTが、土台となっているIEEE202.15.4規格の上に加えた重要な要素の1つは、データ伝送におけるエンドツーエンドのセキュリティを実装できることです。Sigfoxは暗号化に未対応、LoRaWANはノード-ゲートウェイ間の無線リンクにおける暗号化に対応していますが、RIIoTはさらに一歩進んだセキュリティを備えています。

RIIoTのシステムの場合、各ノードに一意のセキュリティ鍵を持たせることができるため、ノードからそのノードとやりとりするクラウドベースのアプリケーションプログラムまでの経路で常にメッセージを暗号化しておくことができます。ゲートウェイは暗号化メッセージを単に受け渡すだけでよく、その内容にアクセスする必要がありません。

モジュールとキットの使用で設計を迅速化:RIIoT

LPWAN IoTネットワークの実装を試みる場合、各種ネットワーク向けに用意された数ある事前構成済みのRFおよびセンサインターフェースモジュールのうちのいずれかを使用すれば、設計を容易に始めることができます。そのようなモジュールは、RF設計、電力の最小化、プロトコルの実装の厄介な問題をすべて解決済みで、ホストプロセッサ用の実質的なドロップイン通信デバイスとなっています。さらに、それらのモジュールはISMバンドの規制要件への適合があらかじめ認証済みです。最終製品にはまだ認証が必要であるものの、無線要素が認証済みであるため、最終認証がかなり容易で確実になります。

これらのモジュールは、センサインターフェースおよび制御論理を内蔵しているため速度設計にも役立ちます。たとえば、RadiocraftsのRC1880CEF-SPRは、ADCへのアナログ入力、スイッチ用GPIO、適合センサ用のI2CおよびSPI、ホストプロセッサへの接続用UARTインターフェースを備えています(図4)。開発者はこのモジュールを設計に組み込むことで、システムのワイヤレス通信およびセンサインターフェースのニーズを解決できます。このモジュールは、センサのセットアップ、制御、サンプリングを処理するようにそれ自体をプログラムでき、アプリケーションプロセッサのタスクを単純化できます。センサおよび通信の処理は、アプリケーションコードからは単にメモリの読み書きのように見えます。

無線とセンサのインターフェース両方を内蔵できるLPWANシステムの図図4:LPWANシステム用モジュールは、無線およびセンサのインターフェース両方を内蔵することができ、IoTセンサシステムへの組み込み設計が容易です。(画像提供:Radiocrafts)

RC1880-RIIOT-DKなどの開発キットを使うと、実験用にエンドツーエンドの完全なRIIoTネットワークを迅速にセットアップすることができます。このキットには、完全なネットワークを構築するためのリーフノード、ゲートウェイモジュール、システムソフトウェアが含まれています。また、リーフノードでの接続センサの処理をCでプログラミングするためのソフトウェアツールも含まれています。

LoRaWAN、Sigfoxのモジュールおよび開発キット

LoRaWANにも、IoTシステムを簡単に実装できる事前構成済みモジュールが用意されています。1つのよい例として、Pi SupplyのPIS-1019 RAK811 LoRaWANモジュールがあります(図5)。

Pi Supplyが提供するPIS-1019 RAK811 LoRaWANモジュールの画像図5:Pi SupplyのPIS-1019 RAK811 LoRaWANモジュールは、内蔵センサインターフェースとともに、ホストマイクロコントローラが標準的なATコマンドを使用して制御できるシリアルポートを装備しています。(画像提供:Pi Supply)

このデバイスは、ホストマイクロコントローラが標準的なATコマンドを使用して本モジュールを制御するためのシリアルポートを備えています。PIS-1019PIS-1037開発キットには、ネットワーク全体のセットアップを容易にするため、ホストPCIeコントローラをゲートウェイ/ルータアクセスポイントにできるゲートウェイコンセントレータモジュールが含まれています(図6)。

Pi Supply PIS-1037開発キットの画像図6:LoRaWANのユーザーは、PIS-1019用開発キットであるPi Supply PIS-1037のリソースを使用して専用ネットワークゲートウェイを設置できます。(画像提供:Pi Supply)

Radiocraftsにも、RC1692HP-SSM-DKキット(RC1692HP-SSM RFモジュール用)やRC-1682-SSM DK(RC1682-SSM RFモジュール用)などの完全Sigfox開発キットがあります。これらのキットを使用すれば、Sigfox無線モジュールのテストおよび開発がすぐに行えます。このキットには、温度センサ、湿度センサ、加速度計、ホール効果センサが付属しています。

ただし、Sigfoxを使う場合、自前のネットワークを構築するという選択肢はありません。Sigfoxがシステムゲートウェイおよびバックホールを運用、保守し、ユーザーはアクセス料金を支払います。このモジュールはプリコード済みIDと暗号化キーを完備しており、登録が完了すると最小限のセットアップでSigfoxクラウドへのデータ送信を開始します。

まとめ

低データレートのセンサを低電力で長距離のIoTに接続することを試みる場合、RIIoT、LoRaWAN、SigfoxなどのLPWANソリューションは、Wi-FiやZigbee、ライセンス方式のセルラーネットワークに取って代わる有力な方法になります。これらのソリューションにはそれぞれ利点がありますが、いずれもスマートメータからスマート農業にいたるまで種々のアプリケーションに対応できます。

 
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著者について

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Richard A. Quinnell(リチャード・A・クィネル)氏

Richard Quinnell氏は、エンジニアおよびライターとして45年の長きにわたり活動を続けており、さまざまな出版物でマイクロコントローラ、組み込みシステム、通信などのテーマを扱っています。技術ジャーナリストになる前は、ジョンズホプキンス大学の応用物理学研究所(JHU/APL)などで企業向けの組み込みシステム設計者およびエンジニアリングプロジェクトマネージャーとして10年以上を過ごしました。氏は電気工学と応用物理学の学位を取得しています。また、大学院では通信、コンピューター設計、量子エレクトロニクスを研究しました。

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