インダストリ4.0オートメーションシステムへの単軸VSDの迅速な設置、接続、統合方法
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2024-03-07
単軸可変速ドライブ(VSD)は、ポンプ、ファン、コンプレッサ、コンベヤおよび、ミルやミキサなどの加工装置のような産業用アプリケーションに不可欠です。これらのアプリケーションには単純なモーションシーケンスがあり、短い試運転時間で基本的なドライブ機能を迅速かつ経済的に実装できる効率的なVSDが必要です。
スカラーボルト/ヘルツ(V/f)、プログラム可能なV/fマルチポイント、エネルギーを節約するためにフラックスを自動的に適応させるV²/f、ドライブ出力を自動的に負荷に適応させるフラックス電流制御(FCC)など、さまざまな制御機能を必要とする場合があります。コスト効率の良い展開と統合は、産業用システムにとって重要であり、次のような特長から恩恵を受けることができます。
- 事前設定されたアプリケーションの選択
- 小型サイズ
- プリセットされた通信パラメータ
- 複数ユニットに対するパラメータ設定の効率的な転送
- ワイヤレスの試運転、操作、診断
- 接続マクロとアプリケーションマクロによる、I/Oの配線と構成の簡素化
この記事では、設置を簡素化するために設計されたSiemensの堅牢でエネルギー効率の高い単軸VFDファミリを紹介します。また、いくつかの統合機能を確認し、基本的なシステムアクセサリ、より専門的で高度なアドオンモジュールおよび、Siemensのコントローラを使用した統合の提案について説明します。最後に、これらのVFDをEMI準拠の制御キャビネットや産業用モーションシステムに組み込む際の考慮事項を考察します。
モータ制御のデジタル化は、産業用単軸モーションシステムに複数の利点をもたらします。単純な機械的制御をVSDに置き換えることで、システムは部分負荷動作の状況に即座に対応できるようになり、消費電力を50%以上削減できます。可変速動作はまた、モータや機械部品の摩耗や損傷を最小限に抑え、メンテナンスの必要性を減らし、可用性を向上させます。
SiemensのSINAMICS V20プラットフォームは、9種類のフレームサイズがあり、0.12kW~30kW(0.16hp~40hp)のパワーレンジをカバーしています(図1)。SINAMICS V20 VFDの例としては、0.12kW~最大3kWの6SL3210-5BB11-2UV1、6SL3210-5BB23-0UV1単相230VAC入力モデル、0.37kW~最大30kWの6SL3210-5BE32-2UV0 3相480VACモデルがあります。
図1:SINAMICS V20のFSAAからFSEまでの9種類のフレームサイズ(0.16~40HP)。(画像提供:Siemens)
SINAMICS V20ドライブを使用する大きな利点は効率性です。これらのドライブは小型で、スペースを有効活用できます。迅速な設置と試運転に対応するため、時間とコストを効率的に使用でき、高いエネルギー効率でより緑豊かな地球環境をサポートします。多くの特長の中には、以下のものがあります。
- V/f、V²/f、FCC、V/fマルチポイントを含む複数の制御モードによりサポートされた経済的な動作
- V/f、V²/f、ハイバネーションモードのECOモードを使用することでエネルギー節約を向上
- 外部電力測定装置なしでエネルギー節約量を監視し、kWh、CO2、または金額で表示可能
- 単相または3相の主電源
- 単相200~240VAC(–10% / +10%)は、3相AC120 / 240VAC主電源の2相に接続することも可能
- 3相380~480VAC(–15% / +10%)
- 事前設定済みのアプリケーションマクロにより、試運転時間を短縮
- プリセットされた通信パラメータにより、標準ライブラリと接続マクロを使用して試運転を高速化
- 不安定な主電源電圧への自動適応機能により、安定した動作、中断の防止、生産性の向上を実現
- 300秒のサイクルタイム内で60秒間、最大150%の過負荷能力
- 最大出力電圧は入力電圧の100%
- 電源なしでパラメータをロードできるため、複数のユニットを素早く設定可能
- Smart Accessウェブサーバを搭載したモバイルデバイスまたはラップトップによる試運転
- 統合されたアプリケーションと接続マクロ
統合機能
SINAMICS V20ドライブには、プロセス制御タスク用の比例積分微分(PID)コントローラ、最大の2フレームサイズに統合されたブレーキチョッパ、同サイズの2つのドライブを連動させてエネルギー節約を向上させるDCカップリング機能など、展開を迅速化して統合を簡素化する機能がいくつも統合されています。PIDコントローラは、セットポイントに対する圧力、レベル、流量の制御のような単純なプロセスタスクに使用することができます。
PID機能には、最適動作のためのオートチューニングが含まれており、モータのステージング動作に対応することができます。モータのステージングにより、最大2つのステージングされた(カスケード接続された)モータを制御できます。この場合、システムは、インバータによって制御される1次モータと、インバータのデジタル出力によって制御されるコンタクタまたはスタータを使用して制御される2つの追加モータで構成されます。
FSDとFSEのフレームサイズにはブレーキチョッパが内蔵されています。その他のフレームサイズには、外部ブレーキモジュールが用意されています(下記参照)。モータは電気的または機械的に制動することができます。
- 電気ブレーキのオプション
- ステータ巻線にDC制動がかかり、大きな制動トルクが発生します。吊り荷の保持には適しませんが、回転が止まれば電流によってシャフトを静止させることができます。
- 複合ブレーキは、回生ブレーキにDCブレーキを重ね合わせたもので、制動時にインバータがエネルギーをDCリンク電源に回生します。
- ダイナミックブレーキは回生エネルギーを熱に変換します。ダイナミックブレーキの実装には、エネルギーを消散させるための外部ブレーキ抵抗器が必要です。
- ブレーキを保持する機械式モータを内部ロジックで制御し、インバータがオフのときにモータが回転しないようにすることができます。
SINAMICS V20ドライブにはDCカップリング機能も搭載されており、同じサイズの2台のインバータをDCリンク接続で電気的に結合することができます。適用可能な場合は、DCカップリングにより、一方のインバータが他方のインバータから引き出された回生エネルギーを使用できるようになるため、エネルギーコストを削減できます。両インバータが単一のダイナミックブレーキシステムを共有できるため、設置コストを削減できます。場合により、DCカップリングによってダイナミックブレーキモジュールとダイナミックブレーキ抵抗器が不要になります。
基本的なシステムアクセサリ
統合機能に加え、基本操作パネル(BOP)やBOPインターフェース、スマートアクセスモジュール、パラメータローダなどのシステムアクセサリを追加することで、SIMAMICS V20インバータの実用性を高めることができます(図2)。
- SIMAMICS V20にはコントロールパネルが内蔵されていますが、アプリケーションによってはBOPを追加してユニットをリモートコントロールすることもできます。BOPは分散設置用に設計されており、ULタイプ1のエンクロージャ定格を備えています。
- BOPとSINAMICS V20の接続には、BOPと接続するためのRS232インターフェースを備え、インバータの拡張ポートに差し込むタイプの、専用のBOPインターフェースモジュールを使用します。
- Smart Accessモジュールにはウェブサーバが内蔵されており、スマートフォン、ラップトップ、またはタブレットを使用してSINAMICS V20の試運転や操作を簡素化できます。このモジュールがサポートする機能は、以下の通りです。
- 試運転ウィザードによる迅速な試運転
- パラメータの設定と保存、または工場出荷時設定への復元
- モータのテスト
- 動作データの監視
- システム診断チェックの実行
- パラメータローダは、最大100個のパラメータセットをSINAMICS V20にアップロードしたり、パラメータセットをユニットからダウンロードしたりすることができます。電池駆動のパラメータローダは、ドライブの電源を入れなくても使用できます。
図2:SINAMICS V20(0.16HPのFSAA)と4つの共通拡張モジュール。(画像提供:Siemens)
その他のアクセサリ
ラインフィルタは、必要に応じて追加できます。EN 61800-3カテゴリC2の放射性および伝導性エミッションに適合するために、SINAMICS V20インバータ(400Vフィルタ付きモデルおよびフィルタなしモデル、230Vフィルタなしモデル)には外部EMCフィルタが必要です。たとえば、モデル6SL32030BE177BA0は、FSAフレームサイズの400Vインバータ用に設計されています。
ラインリアクタは、電圧ピークを平滑化したり、整流ディップをブリッジしたりするために使用できます。これらのリアクタは、ライン電源とコンバータへの高調波の影響も低減します。
ブレーキは、フレームサイズFSAA~FSCの6SL32012AD208VA0ブレーキモジュール(図3)を使用して実装できます。FSDとFSEのフレームサイズにはブレーキチョッパが内蔵されており、外部モジュールは必要ありません。どのような場合でも、モデル6SE64004BC050AA0のような外部ブレーキ抵抗器を追加し、モータによって生成される回生エネルギーを消散させることで、より優れた制動性能と減速度の改善を実現できます。
図3:SINAMICS V20モータドライブ用ブレーキモジュール。(画像提供:DigiKey)
入力または出力が必要なアプリケーションでは、SINAMICS V20 I/O拡張モジュールを追加できます(図4)。このモジュールは400Vレンジのインバータに直接取り付けることができ、2つのデジタル入力と2つのデジタルリレー出力を提供します。たとえば、I/O拡張モジュールはマルチポンプ制御アプリケーションに使用できるため、1台のSIMAMICS V20ドライブで最大4台のポンプを制御できます。このモジュールは、複数のファンやコンプレッサを制御する必要がある場合にも便利です。フロントとリアに接続口があり、BOPインターフェースやスマートアクセスモジュールなど、他のアクセサリと組み合わせることができます。ただし、パラメータローダモジュールと同時に使用することはできません。
図4:SINAMICS V20ドライブの前面に取り付けられた拡張モジュール。(画像提供:Siemens)
FSAフレームサイズ用のモデル6SL3202-0AE16-1CA0のような出力リアクタは、モータ巻線への電圧ストレスを低減することができます(図5)。これらの出力リアクタは、長いモータケーブルを使用する場合にインバータにストレスを与える容量性充放電電流も低減します。
図5:SINAMICS V20ドライブ(0.5HP、3相380VAC ~480VAC、6.1AのFSAフレーム)用出力リアクタ(画像提供:Siemens)
大規模システムへの統合
SINAMICS V20ドライブは、モデル6ES75173FP000AB0のようなSINAMICS S7-1200またはS7-1500コントローラでRS485インターフェースを介し、ユニバーサルシリアルインターフェース(USS)プロトコルを使用して制御できるように設計されています。SINAMICS V20でこれらのコントローラを構成およびプログラムする方法を示すサンプルプロジェクトが用意されています。USSがデフォルト設定ですが、SINAMICS V20ではMODBUS RTUプロトコルも使用できます。
マスターコントローラ1台で最大31台のVFDに接続することが可能です。
組み立て
上記のコンポーネントを完全なシステムに組み立てることは、特にEMCコンプライアンスが重要な考慮事項である場合、挑戦となります。通常は、潜在的な干渉源を隔離することが最も迅速でコスト効率の良いアプローチです。これは、図6に示すように、制御キャビネットとシステムの残りの部分を、隔離された4つのゾーンに編成することで実現できます。隔離ゾーンを実装する際の考慮事項は、以下の通りです。
- ゾーンの電磁デカップリングは、接地された分離プレートまたは分離した金属ハウジングを使用して実現することができます。
- SINAMICS V20はゾーンBにあり、SIMATIC S7-1200またはS7-1500コントローラはゾーンCにあります。
- EMC性能を向上させるため、ゾーンのインターフェースにフィルタやカップリングモジュールを追加することができます。
- ゾーン間の接続ケーブルは、EMCカップリングを防ぐために分離する必要があり、同じケーブルチャンネルやハーネスに接続してはなりません。
- キャビネットを出入りするRS485などの通信ネットワークケーブルや信号ケーブルを遮蔽する必要があります。
図6:電磁気的にデカップリングされたゾーンにより、SINAMICS V20の設置におけるEMC性能を向上させることができます。(画像提供:Siemens)
まとめ
SINAMICS V20コンバータは小型で汎用性が高く、さまざまな産業用単軸可変速アプリケーションをサポートします。また、内蔵された機能や性能も充実しています。基本操作パネル、リモートアクセスモジュール、パラメータローダなどのアクセサリを追加することで、実用性を高めることができます。さらに、これらのドライブは、高度なシステム機能をサポートする豊富なアドオンモジュールとともに使用でき、Siemensのコントローラとの併用に最適化されています。最後に、これらのVFDをEMI準拠の制御キャビネットや産業用モーションシステムに組み込む方法を紹介しました。

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