IIoT対応マシンを速やかに設計し、展開する方法

著者 Jeff Shepard(ジェフ・シェパード)氏

DigiKeyの北米担当編集者の提供

産業用モノのインターネット(IIoT)への統合が可能なマシンの速やかな設計と展開は、困難な作業です。IIoT対応のマシンは、マシンツーマシン、マシンツープラント、マシンツークラウドの通信と調整の迅速な性能検証に対応できる必要があります。

そのためには包括的なソリューションが必要であり、そのようなソリューションは、一連の制御、インターフェース、通信モジュールを備えていなければなりません。スケーラビリティは必須であり、高速な展開のために、簡略化されたインストール環境をサポートする必要があります。さらに、レガシーな装置をサポートするために、マルチベンダー環境に簡単に統合できなければなりません。

その成果は、組織のあらゆるレベルやマシンのライフサイクル全体での業務効率の向上です。

この記事では、Schneider Electricのモータ制御オプションが、エンドツーエンドのオートメーションソリューションをどのように提供するかをレビューします。まず、Altistartソフトスタータ、Altivarドライブ、ModiconのEthernetスイッチおよびプログラマブルロジックコントローラ(PLC)、Harmony制御リレー、PowerPacTサーキットブレーカの特長および利点を紹介します。

そして、TeSys islandのシステムエレメントが包括的なソリューションをサポートし、RockwellのStudio 5000およびSiemensのTIA Portal環境と簡単に統合してレガシーマシンをサポートする方法を詳しく説明し、最後にSchneider ElectricのEcoStruxure Machine ExpertソフトウェアでIIoT対応マシンの開発、設定、性能検証を高速化する方法を紹介します。

モーションは産業機械の基本的な特性であり、ポンプ、コンベア、クレーンなどのシステムでの単純なモーションプロファイルから、プロセスや組立作業、ロボティクスでの複雑なモーションプロファイルまで、さまざまな方法で実装されています。

モーションプロファイルが単純なマシンでは、Altistartソフトスタータファミリのようなソフトスタータ機能が役に立ちます。Altistartソフトスタータには、以下のような特性があります。

  • 加速度を制御することで、磨耗や損傷を増やしてメンテナンスの必要性やマシンのダウンタイムを増加させる機械的衝撃を低減する
  • 突入電流を制限してエネルギー使用量を削減する
  • 始動時に発生する可能性のある電力サージからモータを保護し、モータの寿命を延長する
  • モータのブロック、低負荷、不適切な接地などの障害を検出し、機械オペレータに警告を送信することで、信頼性を向上させる

高い始動トルクが不要な基本的なマシンには、ATS01シリーズのソフトスタータが適しています。BOOSTロジック入力を有効化すると、200ミリ秒(ms)の間、公称モータ電圧の100%に等しい電圧ブーストを適用して、システムでの初期の機械摩擦を克服することができます。ブーストの後は、プログラム可能な電圧ランプアップが開始されます。

ATS01N232RTモデルは、最大15kW(20hp)までの三相非同期モータを1~10秒の加減速時間でソフトスタート/ストップします。また、440VAC~480VACで動作するポンプ、コンプレッサ、ファンなどのシンプルなベルトドライブアプリケーション用に最適化されています。コントロールはフロントパネルにあり、設置および性能検証時の開始時間、初期電圧、停止時間を設定できます。

ミキサー、粉砕器、コンベアなど、さらに要求の厳しいプロセス機器やインフラ機器の設計者は、Altivar ATS480シリーズのソフトスタータを利用できます。シンプルなソフトスタータに電圧ランプを使用するのに対し、ATS480ソフトスタータにはよりソフトなトルクランプを使用し、ブレーキ機能を実装することができます。

ATS480C11Yモデルは、208VAC~690VACの電圧で動作します(図1)。モータ電圧に応じて、22~90kW(25~100hp)のモータに使用できます。RJ45コネクタのModbusシリアル通信ポートも備えています。オプションの通信カードは、Profibus、PROFINET、Modbus TCP/EtherNet/IP、CANopenに対応しています。

Schneider ElectricのAltivarソフトスタータの画像図1:このAltivarソフトスタータは、22~90kWの非同期モータ用に設計されています。(画像提供:DigiKey)

より高度なマシンの駆動

マテリアルハンドリング、梱包、テキスタイル、ホイスト、機械アクチュエータ、材料加工などのアプリケーションに対し、定格0.18~15kW(0.25~20hp)のAltivar 320ファミリのような可変周波数ドライブ(VFD)を使用することによって、高度なマシンの複雑なモーションプロファイルをサポートできます。ATV320U75M3Cの定格は7.5kWで、200VAC~240VACの電源電圧で動作します。

設定と性能検証を迅速に行うために、これらのドライブは150もの機能を備え、標準およびカスタマイズ可能な構成となっています。マテリアルハンドリング、テキスタイル、ホイスト、メカニカルアクチュエータなどのアプリケーションに特化した機能も備えています。

Altivar 320 VFDは、超低速でのトルクと速度の精度、センサを使用しないフラックスベクトル制御によるダイナミックなモーションなど、非同期モータや永久磁石モータの高性能な制御を実現します。三相同期モータや非同期モータに使用する場合、これらのVFDには以下のような特性があります。

  • 高速モータに対応
  • オープンループ同期モータの静的速度精度
  • Ethernet、CANopen、Profibus、EtherCAT、DeviceNetなどの柔軟なシステム統合オプション
  • 機能安全規格に準拠した統合安全機能
  • IP20からIP66までの保護等級を備えたコンパクトドライブやブックドライブなどの形式により、各種キャビネットへの統合をサポート(図2)

Schneider ElectricのAltivar 320 VFDの画像図2:Altivar 320 VFDは、設置を簡略化し、装置キャビネット内のスペースを最大限に活用するために、さまざまなフォームファクタで提供されます。(画像提供:DigiKey)

高性能な多軸マシン

ModiconのEthernetスイッチとプログラマブルロジックコントローラ(PLC)は、独立した1軸マシンから、ロボティクスのように高速で精密な位置決めや動作を必要とする高性能な同期軸マシンまで、高性能な設計をサポートします。

これらのIIoTネイティブエッジコントローラは、MQTT(Message Queuing Telemetry Transport)、OPC UA(Open Platform Communications Unified Architecture)サーバおよびクライアント、TLS(Transport Layer Security)暗号化を使用してクラウドに直接接続することができ、安全機能とサイバーセキュリティ機能が組み込まれています。デュアルEthernetポートは、Ethernet/IPおよびModbus TCPプロトコルをサポートします。RS232およびRS485ポート、USBポート、SDカード用スロットも搭載されています。

TM262Lコントローラは、4つの高速デジタル入力と4つの高速デジタル出力など、複数の入出力配列の論理制御用です。TM262L10MESE8Tモデルの命令実行速度は5ナノ秒(ns)です。デュアルコアプロセッサは、並列のアプリケーションおよび通信を効率的に管理します(図3)。

Schneider ElectricのModicon M262 PLCの画像図3:このModicon M262 PLCは、IIoT対応のマシンツークラウドとマシンツープラントのEthernet接続を実現します。(画像提供:DigiKey)

Modicon M262ファミリのTM4バスは、最大3つの通信拡張モジュールをサポートします。Profibus DP(TM4PDPS1)とEthernet(TM4ES4)の拡張モジュールは、各種の組み合わせで最大3台まで使用できます。

異常の回避

IIoT対応マシンを含め、マシンを異常な状態から保護しなければならないことがあります。そのような場合に役立つのがHarmony制御リレーです。電気的な状態と機械的な状態を監視し、電流、電圧、位相、周波数、速度、温度、ポンプ制御、さらには液面に関する異常も特定することができます。

ポンプ、水処理、ホイストおよびリフト、梱包システム、テキスタイルマシンなどのアプリケーションにおいて、異常を素早く正確に特定することで、稼働時間を延ばし、予定外のメンテナンスの必要性を減らすことができます。Harmony制御リレーでは、特定のアプリケーションニーズに合わせて幅広い機能を利用できます。

RMNF22TB30モデルは、近距離無線通信(NFC)が統合された三相リレーです。位相損失、位相シーケンス、非対称性、不足電圧、過電圧、不足周波数、過周波数という7つのパラメータを監視できます。設計者はNFCアプリを使用することで、AND、OR、NOTのロジックを使用して、個別に設定可能な2つのリレー出力のカスタム監視の組み合わせを設定できます。

過電圧監視のみが必要な単純なマシンには、RM22UA21MR(図4)を使用できます。この単相制御リレーは、選択可能なメモリ機能と制御状態を示す内蔵LEDを備えています。また、スクリュートリマで閾値を簡単かつ正確に設定でき、障害の迅速な特定やトラブルシューティングのために自動シャットダウン管理が用意されており、障害情報が提供されます。

Schneider Electricの単相過電圧制御リレーの画像図4:スイッチング容量2kVAの単相過電圧制御リレー。(画像提供:DigiKey)

基本的な保護

より基本的な保護で十分なアプリケーションの場合は、定格15~125A、1極、2極、3極、4極が利用できるPowerPacTサーキットブレーカが適しています。これらのサーマルマグネット式回路ブレーカは正極コンタクト表示を備えており、「低圧スイッチギアおよび制御ギア」のためのIEC/EN60947-1およびIEC/EN60947-2規格に準拠した絶縁を実現します。

BDF16020モデルは、UL489に準拠した定格動作電圧240VAC 50/60Hzの20A単極ユニットです。BDF16020の連続電流定格は最大定格の80%で、IEC 60947-2では定格サービス遮断容量となっています(図5)。VisiTrip LED表示により、エンクロージャやパネル内のどの回路ブレーカがトリップしているのかを簡単に確認できます。また、取扱説明書、部品番号、CAD図面などの情報にアクセスできるQRコードも用意されています。

Schneider ElectricのBDF16020 20A単極ユニットの画像図 5:このような回路ブレーカは正極コンタクト表示を備えており、IEC/EN60947の絶縁要件に対応しています。(画像提供:DigiKey)

統合されたフィールドバスノード

TeSysはデジタル化されたIIoT接続の負荷管理ソリューションで、フィールドバスネットワークの統合ノードとして機能し、IIoT対応マシンの実装に必要なモジュールを備えています。最大負荷が80アンペアである産業用アプリケーション用の多機能デバイスとアバターをベースにしており、設計、配線、性能検証の時間を短縮できます。

TPRBCEIPのようなバスカプラは、リボンケーブル経由でTeSys islandモジュールとの内部通信を行うコアモジュールです。また、EtherNet/IPまたはModbus TCP通信を使用する外部オートメーションシステムとTeSys islandの間の接続ポイントにもなります。組み込みのウェブサーバは、診断とメンテナンスをサポートします。Ethernet用のRJ45サービスポートが1つ、マイクロSDカードポートが1つ、islandのモジュールを相互接続する内部バス用のポートが1つあります。一般的な構成は以下のようになります(図6)。

  1. バスカプラ
  2. アナログ入力/出力モジュール
  3. デジタル入力/出力モジュール
  4. 電圧インターフェースモジュール
  5. 標準スタータ
  6. SIL(安全度水準)スタータ
  7. SILインターフェースモジュール
  8. 電源インターフェースモジュール

Schneider ElectricのTPRBCEIPバスカプラの画像(クリックして拡大)図6:TeSys islandの組み合わせられたユニットは、フィールドバスネットワークの1つのノードとして機能します。(画像提供:Schneider Electric)

一般的なTeSys islandモジュールの内容は以下のとおりです。

  • LC1DT406BL:40A、4極、ノーマリオープン、産業用およびHVACシステム用のIEC60335-1に準拠したTeSys Decaコンタクタ
  • LC1G115EHEN:150A(440VACで75kW)、3極、ノーマリオープン、TeSys Gigaコンタクタ、最大600サイクル/時の動作率および動作温度60℃以上の過酷なアプリケーション用に設計
  • TPRDG4X2:4つのデジタル入力と2つのデジタル出力を備えたデジタルI/Oモジュールで、最大65A(37kW、40hp)のモータなどの電流負荷を管理。すべての調整と設定はデジタル化されており、機械的なダイヤルやディップスイッチはない
  • TeSys island通信モータスタータ:定格最大40hp(480Vで80A)これらのSILスタータはIEC 61508、IEC 62061、ISO 13849-1の要件に対応し、PL dおよびSIL 2をサポート

TeSys islandは包括的なソリューションにも対応し、RockwellのStudio 5000やSiemensのTIA Portal環境と簡単に統合することで、レガシーマシンをサポートします。

組み立て

設計者は、完全なマシンの組み立てにEcoStruxure Machine Expertを利用できます。このソフトウェアソリューションは、IIoT対応マシンの開発、設定、性能検証、運用、保守をサポートします。

EcoStruxure Machine Expertは、Modicon M262 PLCやTeSys islandのデジタル負荷管理システムなど、最新のIIoTマシンの基本部品をすべて扱うことができます。安全性、信頼性、効率性、コネクティビティ、持続可能性のために最適化されたマシンを実現するように設計されています。また、モビリティ、センシング、クラウド、アナリティクス、サイバーセキュリティのソリューションを備えたIIoTを活用し、このような複雑なタスクに対応します。

まとめ

IIoT対応のマシンは、インダストリ4.0業務の重要な要素です。このようなマシンの設計、性能検証、統合は複雑な作業です。Schneider Electricは、マシンの設計者に対してIIoT対応マシン向けのデバイスとソフトウェアツールの包括的なセットを提供し、組織のあらゆるレベルとマシンのライフサイクル全体にわたって運用効率の向上を実現します。

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著者について

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Jeff Shepard(ジェフ・シェパード)氏

ジェフ氏は、パワーエレクトロニクス、電子部品、その他の技術トピックについて30年以上にわたり執筆活動を続けています。彼は当初、EETimes誌のシニアエディターとしてパワーエレクトロニクスについて執筆を始めました。その後、パワーエレクトロニクスの設計雑誌であるPowertechniquesを立ち上げ、その後、世界的なパワーエレクトロニクスの研究グループ兼出版社であるDarnell Groupを設立しました。Darnell Groupは、数々の活動のひとつとしてPowerPulse.netを立ち上げましたが、これはパワーエレクトロニクスを専門とするグローバルなエンジニアリングコミュニティで、毎日のニュースを提供しました。また彼は、教育出版社Prentice HallのReston部門から発行されたスイッチモード電源の教科書『Power Supplies』の著者でもあります。

ジェフはまた、後にComputer Products社に買収された高ワット数のスイッチング電源のメーカーであるJeta Power Systems社を共同創設しました。ジェフは発明家でもあり、熱環境発電と光学メタマテリアルの分野で17の米国特許を取得しています。このように彼は、パワーエレクトロニクスの世界的トレンドに関する業界の情報源であり、あちこちで頻繁に講演を行っています。彼は、定量的研究と数学でカリフォルニア大学から修士号を取得しています。

出版者について

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