AIデータセンターで効果的な電源管理を行う方法
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2025-01-22
人工知能(AI)と機械学習(ML)の台頭は、これまでにない電力需要を生み出しています。次世代のデータセンターは、電源管理、効率性、信頼性において大きな課題に直面しています。従来のパワーソリューションでは、個々のコンポーネントやデータセンターインフラ管理(DCIM)の全体的なレベルで、これらの要求を満たすのに苦労することが多くなります。先進的な電源コンポーネントと統合監視ソリューションは、これらの課題に対応する包括的なアプローチを提供します。
たとえば、ハイブリッドコンデンサ技術は安定した電源供給を実現し、超低等価直列抵抗(ESR)ソリューションは大電流パワー変換の効率を高め、高精度抵抗器は精密な電力監視を可能にし、ワイヤレス統合は包括的な電源管理を実現します。
この記事では、これらの要素がAI駆動型データセンター向けの堅牢な電源管理システムの構築にどのように役立つかを考察します。次に、4つの分野すべてにおけるPanasonicのソリューションを紹介し、最新のデータセンター環境における応用例を示します。
ハイブリッドコンデンサ技術による効率的なデータセンター電源供給
最新のデータセンターには、大規模なパワー変換が必要です。送電網から数百キロボルトの交流(kVAC)を必要とするのが一般的です。この電圧はまず、データセンター構内全体に配電するために数十kVACに降圧されます。その後、さらに数百VACに変換され、機器ラックに配電されます。
ラックレベルでは、IT機器の要件を満たすために、AC電源は、通常12ボルト(VDC)の直流に変換されます。最後に、各機器の中で、電圧はさらに低いレベル、多くの場合1.1~5ボルトに調節され、プロセッサやメモリモジュールなどの個々のコンポーネントに電源を供給します。
このチェーンの各段階で損失が発生し、データセンター全体の効率に大きな影響を与える可能性があります。データセンターの電源設計者は、後段の変換段階における損失を最小限に抑えるため、窒化ガリウム(GaN)のようなワイドバンドギャップ(WBG)半導体の採用を増やしています。従来のシリコン(Si)と比べて、WBGデバイスは、高いスイッチング周波数と低い伝導損失によって優れた効率を達成します。
しかし、これらのコンバータで使用されるコンデンサ技術は、設計上の大きな課題となっています。電源システムの設計者は、従来からの2つの実績あるコンデンサ技術を利用してきました。低漏れ電流が特長の従来型アルミ電解コンデンサと、優れたESR特性を持つ高分子コンデンサです。Panasonicのハイブリッドアルミ電解コンデンサEEHシリーズ(図1)は、両者の長所を組み合わせ、リーク電流とESRによる損失を最小限に抑える第3の選択肢です。
図1:EEHシリーズのハイブリッドアルミ電解コンデンサは、リーク電流とESRによる損失を最小限に抑えます。(画像提供:Panasonic)
ハイブリッドコンデンサには、開放故障モードによる信頼性の向上や、従来の設計よりもはるかに高い周波数で定格静電容量を維持できるなど、他にも利点があります。従来のコンデンサが数十キロヘルツ(kHz)の周波数で効果を失い始めるのに対し、ハイブリッドコンデンサは1メガヘルツ(MHz)に近い周波数でも性能を維持できます。この高い動作周波数により、より小さなコンデンサの使用が可能になり、設計者はより小型のコンバータを生み出したり、追加機能のために基板スペースを確保したりすることができます。
ハイブリッドコンデンサの代表的な例としては、EEH-ZA1V151Pがあります。この150マイクロファラッド(µF)、35ボルトのデバイスは、27ミリオーム(mΩ)という低いESRを維持し、動作温度範囲は-55°C~約+105°C、寿命は10,000時間(+105℃時)です。データセンターアプリケーションへの適合性は、STMicroelectronicsの EVLMG1-250WLLC DC/DCコンバータ評価ボードで実証されています(図2)。このGaN(窒化ガリウム)ボードは、1立方インチあたり20ワット(W/in.³)の電力密度を92%以上の効率で達成しています。
図2:EVLMG1-250WLLC GaN DC/DCコンバータ評価ボードは、ハイブリッドコンデンサの潜在能力を実証します。(画像提供:STMicroelectronics)
高密度および高効率電源供給用低ESRコンデンサの利点
データセンターにおける高電力密度DC/DCコンバータへの傾向は、独特な熱管理上の課題を生み出しています。電力密度の増加と部品の小型化は、動作温度を劇的に上昇させる可能性があります。
コンデンサのESRを最小化することで、これらの熱的課題に部分的に対処することができます。電力損失はI²Rの関係に従うため、抵抗を下げることは電力損失を直接減少させ、その結果、発熱も減少します。このため、小型化の設計で安全な動作温度を維持するためには、低ESRがたいへん重要になります。
しかし、最も効率的なコンデンサであっても、使用環境によっては動作温度が高くなることがあります。したがって、密集したデータセンターの熱に耐えられるコンデンサを選ぶことが不可欠です。図3は、動作温度を考慮した選択チャートです。
図3:リップル電流、静電容量、サイズ、使用温度に基づくハイブリッドコンデンサの選択ガイドを示します。(画像提供:Panasonic)
GaN技術によって実現される高いスイッチング周波数によってパッケージの小型化が可能になる一方で、コンデンサ技術は高いリップル電流を扱うために十分な容量を維持しなければなりません。47μFから680μFまでの静電容量の選択肢と100kHzで最大2.3アンペア(A)を扱える能力を備えたEEH-ZLシリーズ ハイブリッドコンデンサはこれらの課題に対応します。また、+135°Cまでの動作が保証され、ESRは14mΩと、低く抑えられています。
たとえば、EEH-ZL1E681P 680μFコンデンサは、ESRが14mΩ、パッケージの直径が10.0mmです。
高精度抵抗器による正確な電力監視
データセンターアプリケーションのDC/DCコンバータは、電源制御のために高精度のフィードバックを必要とします。これは、デューティサイクルフィードバックにわずかな誤差があっても危険な過電圧や過電流状態になる可能性があるGaNベースの設計では特に重要です。
さまざまな電流センシング技術が存在しますが、シャント抵抗器は、サーバ、ストレージインフラ、電源などのスペースに制約のある環境にとって特に有効です。しかし、最新の設計では電力密度が高いため、抵抗電流センシングにも大きな課題が生じます。
主な課題は熱安定性にあります。抵抗値は、動作温度が変化すると大幅にドリフトし、測定精度を損なう可能性があります。このため、抵抗温度係数(TCR)が重要な仕様となっています。TCRは、データセンターの運用で遭遇する広い温度範囲にわたって測定精度を維持するためには、可能な限り低くなければなりません。
PanasonicのERA-8Pシリーズ抵抗器(図4)は、いくつかの革新的な機能によってこれらの課題に対処しています。
- 精密薄膜加工により実現した±15×10-6/ケルビン(K)の超低TCR
- 抵抗器の下に応力を軽減する柔らかい樹脂層を設け、熱サイクル中のはんだクラックの発生を最小限に抑える
- 抵抗体の膜厚を均一にする平滑なアルミナ基板表面
- 電流負荷の集中を分散させる長く微細な蛇行抵抗パターンにより、業界トップクラスの静電気放電(ESD)耐性を実現
図4:ERA-8Pシリーズは高い熱安定性を持つように設計されています。(画像提供:Panasonic)
ERA-8PEB1004Vは、データセンターの電力監視に適した仕様で、これらの能力を発揮します。
- 高電圧の電源レールを監視するための1MΩで500Vの高い制限素子電圧
- 電力損失を最小限に抑える0.25Wの定格電力
- -55°C~+155°Cの広い動作温度範囲
- ハイパワー環境での信頼性の高い動作のための優れた静電気放電(ESD)耐性
Wi-Fiを使用した電力効率の監視
DCIMは、AIワークロードがより多くのサーバ、ストレージシステム、電源装置の導入を促進するにつれて、複雑さを増しています。これらのシステム全体の消費電力を監視することは、効率を最適化するために極めて重要ですが、従来の有線監視ソリューションでは、コスト、複雑性、ケーブル管理の課題が追加され、施設の規模が拡大するにつれて、その課題はさらに深刻化します。
ワイヤレス監視は、こうした課題に対する洗練されたソリューションを提供します。ケーブル配線を増やすことなく、電圧、電流、温度の測定によるリアルタイムの電力管理が可能になります。この方法は、物理的な接続を換えることなく、運用を拡大または縮小できる柔軟性を提供します。
しかし、データセンターアプリケーション用のワイヤレスモジュールは、いくつかの厳しい要件に対応する必要があります。
- 多くの障害物や潜在的な干渉源がある環境において、信頼性の高い接続性を維持すること
- 消費電力を最小限に抑え、全体的な効率向上を維持すること
- 既存の機器と統合するために、小型なフォームファクタに収めること
- データセンターの機密情報を保護する堅牢なセキュリティ機能を有すること
PanasonicのENW-49A01A3EF PAN9320 Wi-Fiモジュール(図5)は、その包括的な機能セットにより、これらの課題に対応します。
- 2.4GHz動作は、802.11b/g/n規格のサポートにより幅広い互換性を確保しながら、データセンターの障害物を通過する優れた透過性を提供します。
- 802.11bモードでの送信(Tx)時の消費電力は最小430ミリアンペア(mA)、受信(Rx)時の消費電力は160mAで、電力効率は維持されています。
- 29.0mm×13.5mm×2.66mmの小型な面実装設計により、組み込みが容易です。
- TLS/SSL、HTTPS、WPA2などの内蔵セキュリティ機能により、機密情報を保護します。
これらの機能により、データセンター事業者は、このようなシステムに通常伴う物理的および運用上のオーバーヘッドを最小限に抑えながら、包括的な電源監視を実施することができます。
図5:ENW-49A01A3EFは、効果的なDCIMのための包括的な2.4GHz Wi-Fiソリューションを提供します。(画像提供:Panasonic)
まとめ
AIワークロードの需要は、個々のコンポーネントの選択から施設全体の監視システムまで、電源インフラの再考を必要としています。Panasonicのハイブリッドコンデンサ、超低ESR技術、高精度抵抗、ワイヤレスコネクティビティの製品ラインアップは、次世代のAIアプリケーションをサポートする効率的でスケーラブルな電源システムを構築し、維持するために必要なツールをデータセンター事業者に提供します。

免責条項:このウェブサイト上で、さまざまな著者および/またはフォーラム参加者によって表明された意見、信念や視点は、DigiKeyの意見、信念および視点またはDigiKeyの公式な方針を必ずしも反映するものではありません。