インダストリ4.0の高密度で堅牢な接続要件に対応する方法
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2022-11-04
ロボティクス、マシンビジョン、コントローラ、サーボアンプ、サーバなどのインダストリ4.0アプリケーションでは、高密度、高速、かつ信頼性の高いEthernet接続の必要性が高まっています。インダストリ4.0デバイスのEthernet接続には、最大10ギガビット/秒(Gbits/s)の通信速度への対応、電磁干渉(EMI)からの保護、意図しないケーブルの取り外しを防ぐ確実な嵌合とロック機構、高い振動条件への耐性、長い嵌合/抜去寿命などが必要です。これらのコネクタは、インダストリ4.0アプリケーションで増大する相互接続とシステム密度をサポートするために、十分に小型でなくてはなりません。
従来のRJ45 Ethernetコネクタは、これらの要件をある程度満たしますが、比較的かさばり、今日の設計に必要な設置の柔軟性を満たしません。
これらの課題に対処するために、設計者はCat5e(1Gbit/s)やCat6a(10Gbit/s)などの高速Ethernetケーブル用のix Industrialコネクタを利用できます。これらのコネクタはRJ45コネクタよりも75%小さく、安全なデータ送信のために高レベルのEMI保護と電磁両立性(EMC)を備え、IEC 61076-3-124の要件に準拠しています。
この記事では、まずRJ45とix Industrialコネクタのオプションを比較します。その後、Ethernet接続用と非Ethernet接続用のタイプAとタイプBのixコネクタを取り上げ、ixコネクタの多様な構成オプションについて、Hiroseの代表的なコネクタを紹介しながらレビューします。最後に、ixケーブルを正しく実装するために使用する、組み立てと試験のためのツールを紹介します。
RJ45とixコネクタの比較
インダストリ4.0のアプリケーションの多くでは、迅速な展開と再構成のためにモジュラー接続が必要とされます。多くの場合、これらのシステムでは、レガシー装置と新しい設計を組み合わせます。高速の産業用Ethernetおよび、相互運用性や高可用性が求められる他のプロトコルを使用するのです。レガシー装置ではいわゆるRJ(レジスタージャック)コネクタが一般的で、基本的なEthernet接続には、8ピン8コンタクト(8P8C)のRJ45コネクタを使用します。
新たなインダストリ4.0システムでは、相互接続の密度と柔軟性の向上が求められます。ixコネクタは、RJ45コネクタよりも75%小さいだけでなく、10mmピッチの平行実装が可能で、RJ45コネクタ3個と同じプリント回路基板(プリント基板)スペースにixコネクタを6個搭載できます(図1)。
図1:実装ピッチが10mmのため、RJ45コネクタ3個と同じプリント基板スペースに6個のixコネクタを搭載できます。(画像提供:Hirose )
頑丈で堅牢
IEC 61076-3-124には、ixコネクタの寸法、機械的特性、電気的特性、伝送特性、および環境要件に関する仕様が規定されています。Hiroseのixコネクタは、IEC 61076-3-124を超え、鉄道車両用品の衝撃・振動試験に関する日本の工業規格であるJIS E4031の要件に適合しています。また、ギガビットEthernetの使用をサポートするGigE Visionカメラのインターフェース規格にも対応し、非常に長く低コストの標準ケーブルを使用して高速な画像転送を実現します。その高電流コンタクトにより、IEEE 802.3afおよびIEEE 802.3atで規定されるPoE(Power over Ethernet)およびPoE+アプリケーションの使用がサポートされます。
ixコネクタシステムは、当初から産業用アプリケーションを念頭に置いて設計されています。一方、RJ45コネクタは当初、民生・ビジネス用の電気通信機器向けに開発されましたが、産業環境に適用されるようになりました。たとえば、ixコネクタは金属製の2つのスナップインロック式フックを備えており、プラグとソケットの確実な接続を触覚と聴覚で確認できるようになっています。産業用RJ45コネクタは、単一のロックフックを備えています。
ixコネクタソケットのシェル設計は、機械的耐久性をもたらし、EMC性能を強化します。RJ45コネクタにはタブが3つしかありませんが、ixコネクタソケットには、5つのスルーホールリテンションタブ(2セットの信号コンタクト間の各側に2つずつ、後部に1つ)があります。また、ixコネクタソケットのタブは、RJ45ソケットのタブよりも頑丈です。プリント基板にはんだ付けする際、ixソケットのタブは、プラグの嵌合・抜去時のストレスから信号コンタクトを保護します。また、ソケットの耐衝撃性、耐振動性も向上しています。ハンダ付けされたタブはプリント基板上のグランドに直接接続され、EMI保護が強化されています(図2)。
図2:ソケットの5つのスルーホールタブによって信号コンタクトを保護し、衝撃・振動性能を強化し、ixコネクタのEMC性能を向上させます。(画像提供:Hirose )
モジュラーシステムや再構成可能なシステムの使用により、コネクタ性能に対する期待が変化しています。コネクタを設置したままにしておくことはなくなりました。インダストリ4.0の決定的な特徴であるマスカスタマイゼーションをサポートするために、生産ステーション、工具、その他のシステムコンポーネントは、頻繁に再配置できる必要があります。その結果、コネクタはその寿命の間に何百回、何千回と挿抜される可能性があります。Hiroseのixコネクタは、5,000回の嵌合サイクルを想定して設計・試験されていますが、それでもIEC 61076-3-124の性能要件をすべて満たしています。
非Ethernet接続
IEC 61076-3-124は、Ethernet接続と非Ethernet接続に対応しています。誤接続を防ぐため、Ethernet用と非Ethernet用のixコネクタには、それぞれ「A」、「B」とラベル付けされた別々の機械的コード体系が使用されています(図3)。
- 「A」タイプのixコネクタは、最大10Gbits/sの伝送レートに対応します。PoEとPoE+をサポートし、ソケットの左下隅にある45°の面取りで識別できます。
- 「B」タイプのixコネクタは、シグナリング通信プロトコルおよび、さまざまなシリアル通信プロトコル、その他の産業用通信プロトコルなど、あらゆる非Ethernetアプリケーションで使用できるように設計されています。このコネクタは、ソケットの左上隅にある45°の面取りで識別できます。
図3:ixコネクタは、Ethernetプラグを非Ethernetソケットに挿入することや、その逆を防ぐために、2種類の機械的コーディング設計で提供されています。(画像提供:Hirose )
統合の柔軟性
これらのコネクタは、システム統合の柔軟性も高めます。ixコネクタソケットへのケーブルの接続は、はんだ付けまたは圧接接続(IDC)によって行えます。はんだ接続は、工場環境でのケーブルアセンブリの生産を高速化します。IDC接続は、現場でケーブルアセンブリを製作する際によく使用され、ワイヤのストリッピング、ねじれ、はんだ付けを減らすことにより、設置時間を最大50%短縮できます。対応するコネクタファミリは、30、31、32、40の4種類です。最初の3つは異なるサイズのIDCケーブルに対応し、4つ目ははんだ接続に使用されます。
- 30:ワイヤサイズ26~28AWG(アメリカンワイヤゲージ)を使用し、絶縁体の外径が0.95~1.05mmのIDC
- 31:ワイヤサイズ24~25AWGを使用し、絶縁体の外径が1.1~1.25mmのIDC
- 32:22AWGワイヤを使用し、絶縁体の外径が1.4mm~1.6mmのIDC
- 40:手はんだ付け
Hiroseは、特定のアプリケーションニーズに合わせて3種類のレセプタクル構成と3種類のプラグ構成を備えたixコネクタも提供しています(図4)。レセプタクル構成は以下の通りです。
- 高密度システムでプリント基板スペースを節約できる、10mmピッチで並列実装可能な直立直角型
- 上部からコネクタを嵌め込むことが可能な垂直型
- RJ45コネクタの半分未満となる、高さ5.7mmの薄型直角レセプタクル
プラグ構成は以下の通りです。
- ストレート配線
- 直角上向き配線
- 直角下向き配線
図4:レセプタクルは3つのスタイルで提供されます。3つの回路基板にそれぞれ異なるスタイルを示しています。各回路基板には、3つのスタイルのixコネクタプラグが搭載されています。(画像提供:Hirose )
ixコネクタの例
すでに詳述した構成やオプションに加え、Hiroseは、コンタクト表面に金メッキ、またはパラジウムニッケルメッキと金メッキの選択肢を提供しています。Hiroseが提供する数十のixコネクタの一例は、以下の通りです。
IX80G-B-10P(01)、0.75μmのパラジウムニッケルメッキと0.05μmの金メッキを施したタイプBの垂直レセプタクル。
IX80G-A-10P(01)、0.75μmのパラジウムニッケルメッキと0.05μmの金メッキを施したタイプAの垂直レセプタクル。
IX61G-B-10P、 0.2μmの金メッキを施したタイプBの上向き直角レセプタクル
IX60G-A-10P、 0.2μmの金メッキを施したタイプAの直角レセプタクル
IX31G-A-10S-CV(7.0)、0.2μmの金メッキを施したタイプAのストレートプラグ
IX30G-A-10S-CVL2(7.0)、0.2μmの金メッキを施したタイプAの直角上向きプラグ
IX30G-B-10S-CVL1(7.0)、0.2μmの金メッキを施したタイプBの直角下向きプラグ
フィールドアセンブリ
産業用Ethernetアプリケーションでは、高い可用性が要求され、配線のフィールドアセンブリが重要な考慮事項となる場合があります。特にモジュラーアーキテクチャでは、摩耗や損傷したケーブルアセンブリを迅速に交換できるため、装置の設置を迅速に行うことが可能になります。Hiroseはフィールドアセンブリのニーズに対処するため、IX30G、IX31G、IX32GのIDC ixコネクタで使用可能なHT803/IXG-8/10S-63-72ケーブルアセンブリ工具を提供しています(図5)。これは、ケーブルとプラグを圧着し、アセンブリに保護ハウジングをかしめるための複合工具です。IX40Gのはんだ付けコネクタの場合、これはかしめ作業にのみ使用します。
図5:この手工具により、ixケーブルアセンブリの現場加工が可能になります。(画像提供:Hirose Electric)
このケーブルアセンブリ工具は、22~28AWGのシールドケーブル、7撚りの軟銅ワイヤ、外径6.3~7.2mmの絶縁体に対応できるように設計されています。操作は素早く、簡単です。
圧着:コーディングキーが上になるようにプラグを工具にセットし、ケーブルをプラグに挿入します。ハンドルを握ると圧着が完了します。この工具はラチェット機構を備えており、十分な圧力がかかるまで開かないため、良好な圧着接続が実現します。必要な圧力に達すると、ラチェットは自動的に外れます。
かしめ:シールドシェルとケースを工具にセットします(適切にセットできるよう、特殊な切り込みがあります)。圧着工程と同様に、コーディングキーを上にしてプラグを工具にセットします。ラチェットが外れるまでハンドルを握ると、かしめが完了します。
試験の重要性
Ethernetケーブルを現場で試験する理由はいくつかあります。装置の初期導入時や既存のケーブルの交換時に、ケーブルがすべての性能要件を満たしていることを試験で証明できます。また、ケーブル試験は、トラブルシューティングの際に問題の原因を突き止めるのにも有効です。Ethernetネットワークでは、コネクタの故障、ケーブルやシールドの断線、EMIの影響の受けやすさなど、さまざまな故障の原因が考えられます。
HiroseのDSX-CHA-5-IX-Sは、ixコネクタとケーブルアセンブリの現場試験を高速化するために最適化された2つのアダプタのセットです(図6)。Fluke NetworksのDSX CableAnalyzerテスターで使用するように設計されています。これらのアダプタを使用してIEEE 802.3仕様を徹底的に試験することで、合格/不合格の結果を提供し、広範な診断を行ってあらゆる問題を迅速に特定することが可能になります。
図6:DSX-CHA-5-IX-Sアダプタセットは、ixコネクタとケーブルアセンブリの現場試験を高速化します。(画像提供:Fluke )
まとめ
設計者はixコネクタを使用することで、インダストリ4.0システムにおける高密度で堅牢な接続性のニーズに対応できるようになります。このコネクタには、Ethernetと非Ethernetの構成があり、幅広いシステム設計のニーズをサポートするために、さまざまな機械的構成で提供されています。はんだ接続は大量生産の環境で使用でき、IDC接続は現場でケーブルアセンブリを構築するために使用できます。また、完成したケーブルアセンブリがixの性能要件を満たしているかどうかを確認するための工具やテスターも容易に入手できます。
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