プラグ式バッテリポールコネクタを使ってモジュール式BESSを安全かつ効率的に導入するための方法
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2021-12-08
モジュール式BESS(バッテリ電力貯蔵システム)の使用は、住宅、産業、公益サービス規模の設備で増加しています。BESSは、相互に接続された複数のバッテリモジュールで構成されており、主要グリッドが故障した場合のバックアップ電力の供給や、産業環境でのピーク時エネルギー使用量の調整、風力や太陽光などの再生可能エネルギー源のグリッドへの統合をサポートします。モジュール式構造は設置が容易で拡張性があり、消耗したバッテリモジュールを効率的に交換することができますが、設計者がそのバッテリポールコネクタを選定する際には特に注意する必要があります。
設計者が考慮しなければならないのは、最新の安全規格や性能規格を満たすことと、頑丈でコスト効率が高いことだけでなく、向きを変えられるというコネクタの柔軟性や、複数回の挿抜に耐えられること、さらには過熱を防ぐために最小限の電気接触抵抗を維持することです。また、極性反転防止機能や完全なタッチプルーフ機能などを要件のチェックリストに載せてチェックすることで、ユーザーの安全性を確保する必要があります。
この記事では、BESSモジュールのコネクティビティに関する問題点について説明します。また、BESSアプリケーション用に設計されたPhoenix Contactのプラグ式バッテリポールコネクタのラインアップを紹介し、その適用方法を示します。
バッテリポールコネクタの性能要件
バッテリポールコネクタに求められる性能は、住宅用、商用、公益サービス用とで異なります(表1)。安全性はすべての人にとっての優先事項ですが、住宅には高い柔軟性が求められます。商用BESSの設計では、メンテナンスを考慮することが重要です。公益サービス規模のBESS設備では、柔軟性はあまり重視されませんが、総合的に見て最も要求の高いアプリケーションであり、迅速な設置(低労働時間)、高い安全性、低い故障率、低コスト、効率的なメンテナンスが求められます。様々な性能要求を満たすためには、適切な接続ソリューションを選定することが重要です。
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表1:BESSコネクタに対する性能要件はアプリケーションによって異なります。3つのアプリケーションカテゴリすべての要件を満たすことができるのが、最適なバッテリポールコネクタです。(画像提供:Phoenix Contact)
BESSのバッテリモジュールを接続する手段としては、ケーブルラグ配線アセンブリが一般的です(図1)。ラグコネクタは比較的安価ですが、BESSの設置に使用する場合には以下のような欠点を持ち合わせています。
- 標準化が不十分で、アプリケーションでの柔軟性に欠ける。
- 各ラグコネクタへのナットの接続と締め付けを手作業で行うと、手間がかかり、配線ミスも起こりやすくなります。
- ナットがきちんと締め付けられていないと、接続部の抵抗が高くなり、過熱する可能性があります。
- ラグコネクタは製造環境からの保護が行われていないので、屋外のエンクロージャで使用する場合には、埃や低圧水の噴射、結露や水しぶきにさらされるため、信頼性が低下する可能性があります。
- ラグコネクタはタッチセーフではなく最新の安全基準に準拠していないため、設置者やメンテナンス担当者が感電する可能性があります。
図1:ケーブルラグアセンブリでモジュール式BESSを配線するのは時間がかかって配線ミスが起こりやすいため、ラグコネクタは元来からタッチセーフではありません。(画像提供:Phoenix Contact)
ラグコネクタ使用の難点を克服するには、設計者は、民生用、商工業用、公益サービス用のBESS設備の要件専用に設計されたPhoenix Contactのプラグイン式バッテリポールコネクタを利用することができます(図2)。
図2:BESS用プラグ式バッテリポールコネクタは、ラグコネクタの限界を克服し、民生用、工業用、公益サービス用設備の性能要求を満たします。(画像提供:Phoenix Contact)
このコネクタは、手が届きやすく、どの方向からでもバッテリポールに接続できる柔軟性があって迅速に設置でき、しかも接触抵抗が低くなっています。本コネクタは極性反転防止機能を備え、オペレータの安全性を考慮した完全なタッチプルーフ構造となっています。IP65に準拠したハウジングは、埃の侵入やあらゆる方向からの低圧水の噴射、さらには結露や水しぶきからも保護されます。
本コネクタは、国際電気標準会議(IEC)の過電圧カテゴリIIIに準拠しており、BESSを収納する屋外キャビネットなどの固定設備における過渡電圧に持ちこたえることができます。IEC 60664-1の汚染度評価は2で、非導電性の汚染のみが発生する環境での使用に適していますが、結露による一時的な導電状態が発生する場合もあります。
Phoenix Contactのプラグ式バッテリポールコネクタは、色分けされて機械的にキーイングされているため、混線を防ぐことができ、タッチ保護されたソケットに差し込むだけで、カチッと音がして所定の位置に固定できます(図3)。
図3:これらのプラグ式バッテリポールコネクタは、機械的にキーイングされて色分けされているため、混線を防ぐことができます。本コネクタは、タッチ保護されたソケットに差し込むと、「カチッ」と音がして固定されます。(画像提供:Phoenix Contact)
設置をより簡単・迅速に行う必要がある場合は、コネクタを360°回転させることができます。このバッテリポールコネクタを使用すると、ラグコネクタを使用した場合に比べて、一般的な設置時間の4分の3を省くことができます。商工業用の一般的なバッテリラックには10~12個のモジュールが搭載されますが、コンテナに設置される公益サービス規模のBESSでは数百~数千個のバッテリモジュールが搭載されます。このような用途では、専用設計のバッテリポールコネクタを使用することで、設置の時間およびコストをラグコネクタよりも大幅に削減することができます。
これらのプラグ式バッテリポールコネクタは、低い接触抵抗を備えるとともに、信頼性と安全性が非常に高いオペレーションを可能にします。そのような操作の例としては、不意の切断を防ぐポジティブロック機構があります(図4)。本バッテリポールコネクタの定格は、直流1500ボルト(VDC)と120アンペア(A)であるほか、挿入力75ニュートン(N)以下、抜去力10N以上に対して100回以上の挿入・抜去サイクルとなっています。
図4:これらのプラグ式バッテリポールコネクタは、ポジティブロック機構を備えています。左側(A)はロック機構とリリースレバーがロックされた状態、中央(C)はロック機構とリリースレバーのペアが切り離された状態を示しています。この切り離しは、ロック機構(右、B)を嵌合インターフェースに向かって前方にスライドさせることで行います。(画像提供:Phoenix Contact)
バッテリポールコネクタの例
Phoenix Contactのバッテリポールコネクタシステムは、銀メッキされた接点を持つパネルマウントコネクタとケーブルコネクタのペアで構成されており、総接触抵抗は5ミリオーム(mΩ)以下となっています。これらのコネクタは、バッテリアプリケーション用の最新のUL規格であるUL 4128に準拠しています。この規格が制定される前は、ほとんどのバッテリコネクタは、UL 1977規格を使用して評価されていました。UL 1977規格は、最大電圧定格が1,000VDCの、より一般化された規格です。Phoenix Contactのバッテリポールコネクタは、1500VDC定格で、UL 4128規格に準拠しています。このバッテリポールコネクタは、最新のUL 4128規格(下記)に準拠しているだけでなく、以下に示すBESS関連の重要な国際規格の要件も満たしています。
- IEC 61984 – コネクタ - 安全要件とテスト
- IEC 62933 – 電力貯蔵(EES)システム
- IEC 63066 – 取り外し可能な電力貯蔵ユニットの低電圧ドッキングコネクタ
- UL 9540 – 電力貯蔵システム&機器の規格
- UL 4128 – 電気化学電池システムアプリケーションで使用するセル間および層間コネクタの検査要綱
ケーブルコネクタには、負極に黒を使用する1106307などもあれば、正極にオレンジを使用する1106306もあります(図5)。これらのケーブルコネクタの圧着端子は、16平方ミリメートル(mm²)と25mm²のケーブルサイズに対応し、ストリップ長が22mmとなっています。スライド式ロック機構により、予期しない断線を防ぐことができます。
図5:バッテリポールコネクタシステムのケーブルコネクタは、正極用の片割れとしてはオレンジ(上の写真)と負極用の片割れとしては黒で提供されています。また、予期しない断線を防ぐために、スライド式ロック機構(上のコネクタの右側)を備えています。(画像提供:Phoenix Contact)
パネルマウント型バッテリポールコネクタは、設置業者やシステムインテグレータの技術的要件を満たすだけでなく、BESSシステムの設計者がシステム内の付属品としてバスバーとスクリューポストから柔軟に選択できるようになっています(図6)。パネルマウントコネクタには、ケーブルコネクタと同様に、正極用のオレンジ(1130816などのバスバー付属品と、1106303などのスクリューポスト付属品から選択可能)のものと、負極用の黒(1130814などのバスバー付属品と、1106304などのスクリューポスト付属品から選択可能)のものがあります。
図6:パネルマウント型バッテリポールコネクタの片割れには、システム接続用オプション部品として、バスバー(左)またはスクリューポスト(右)があります。(画像提供:Phoenix Contact)
バッテリポールコネクタシステムの性能上の特長と利点を以下にまとめておきます。
- ラグコネクタに比べて取り付け時間が75%短縮され、取り付けコストを削減
- 極性を識別するための色分けあり:
- 正極(+):オレンジ色
- 負極(-):黒
- 黒とオレンジのコネクタペアには交差部嵌合を防ぐための独自インターフェース(境界面)あり
- ポジティブロック機構により、予期しない断線を防止
- ケーブルコネクタには16mm²および25mm²のワイヤサイズに対応した圧着端子あり
- 嵌合されたコネクタシステムが360°回転可能であることによる取り付けの簡素化
- 挿入力75N以下、引抜力10N以上の場合に100回の挿入/抜去サイクルに対応
- オペレータの安全性を考慮した完全タッチプルーフ設計
- 環境からの保護を提供するIP65定格ハウジング
- 銀メッキを施した接点により、接触抵抗が5mΩ以下となり、信頼性の高い接続インターフェースを実現
- IEC定格:120A、1500VDC
- 動作温度範囲:-40°C~+125°C
設計とアプリケーションに関する考慮事項
安全で信頼性の高いオペレーションを実現するために、設計者や設置者がプラグイン式バッテリポールコネクタシステムを使用する際に考慮しなければならない要素は、以下のとおりです。
- 負荷がかかった状態でコネクタの接続や取り外しを行わないでください。
- コネクタが完全に挿入されてインターロックされていることを確認してから、通電してください。
- 通常のオペレーションであっても、コネクタは温かくなります。高温の環境では、温度がさらに上がり続けます。コネクタが高い周囲温度条件で使用されることが予想される場合は、DIN EN ISO 13732-1:2008-12で要求されているような燃焼警告が必要になります。
- 使用しないコネクタには、保護キャップを装着してください。
- ケーブルアセンブリ内のコネクタにかかる引張荷重が、仕様の上限値を超えてはなりません。
まとめ
信頼性の高い電力を確保し、再生可能なエネルギー源に適応するためにBESSシステムの導入が加速する中、設計者はこのモジュール式バッテリシステムのバッテリポールコネクタの要件に特に注意する必要があります。プラグ式バッテリポールコネクタを使用することで、設計者はコアとなる安全性と性能の要件を満たすと同時に、住宅用、商工業用、公益サービス用のBESS設備の信頼性/スケーラビリティ/メンテナンスしやすさ/環境/コストに関する要件を満たすことができます。
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