大電流端子で安全に電力を供給しつつ、組み立て時間と電力損失を削減するには
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2021-01-13
産業用システムの設計者は、効率性を追求するためにますます電子制御の利点を活用するようになっています。電子制御を活用するには、スペースを節約し、コストを削減するために、これまで以上に小さなフォームファクタが必要になります。しかし、フォームファクタの小型化が進むにつれ、設計者はハイパワー接続の課題に直面するようになりました。大電流のプリント基板(PCB)コネクタと電源ラインは、太くて頑丈な接続を必要とするため、デジタル電子機器と同じペースで小型化することはできません。さらに、これらの大電流接続点は、面実装であろうとスルーホールであろうと、プリント基板の製造プロセスに親和的でなければなりません。しかも、これらの問題に対処しつつ、予算の引き締めと市場投入までの期間短縮にも対応しなければなりません。
これらの要件を満たすために、ハイパワーエレクトロニクスの開発者は、プリント基板の大電流端子およびアセンブリの設計と選択に細心の注意を払う必要があります。また、大電流端子は、強固なはんだ接続を保証するために、追加のアセンブリ時間が必要になる場合があります。
この記事では、大電流端子にまつわる問題について簡単に解説し、ハイパワープリント基板の設計者が、特殊な大電流PCB端子からどのような恩恵を得られるかを示します。また、Würth Elektronikのソリューションを例に、適切な端子がどのようにシステム間で大電流を確実に供給できるか、そして高い機構的安定性と非常に低い接続抵抗を提供しながら、どのように自動アセンブリを加速できるかを紹介します。
端子が電力損失をどのように導くか
産業用システムの設計者は、数百アンペア範囲の大電流の供給と制御を頻繁に必要とします。多くの場合、システムに電源を供給する大電流端子は、デジタル制御電子機器と同じプリント基板上にあります。制御半導体の高集積化が進むと、プリント基板の面積は縮小します。この小さくなったフォームファクタは、ハイパワーエレクトロニクスの設計者に3つの問題を投げかけます。
第1の問題は、PCB電子部品の温度、湿度、ガスなどの環境の極端な変化への考慮です。接続が気密性に欠けていると、産業プロセスで発生するガスが大電流接続を酸化させたり腐食させたりして、非効率的な接続を引き起こし、電力損失や機器の誤動作を招く可能性があります。これらの問題は診断が難しく、目視による慎重な検査でも発見できないことがあります。
第2の問題は、大電力接続の効率化に対処することです。電力レベルが上昇すると、接続抵抗がわずかに増加しただけでも、熱量の増加が顕著になり、電力損失が発生することがあります。オームスの法則によれば、25.0Aの端子に、わずか0.050Ωの抵抗をもたらすはんだ不良接合があれば、接合部に(25.0² x 0.050)= 31.25W の損失を発生させる可能性があります。損失の他にも、余計な発熱は周辺の電子機器の寿命を縮める可能性があります。最悪の場合、熱による火傷や火災の原因になることもあり得ます。
第3の問題点は、プリント基板を組み立てる際の製造方法と大電流端子との互換性を担保することです。プリント基板の量産には、コンポーネントはすべて面実装であることが好ましいと言えます。スルーホールと比較して、面実装アセンブリは、品質を維持しながら組み立て時間の短縮と人件費の削減を両立させます。ただし、面実装型のPCB端子では、個々の端子の電流伝送能力に限界があります。一方、スルーホールリフローPCB端子は、非常に高い機構的安定性を提供しながら、面実装よりも多くの電流を運ぶことができます。しかし、スルーホールや混合基板の組立ラインは、面実装に比べて2倍の床面積を必要とするだけでなく、組み立ての手間や時間が長くなるため、より高価なアセンブリ方法となってしまいます。
アセンブリ工程がなんであれ、品質を維持しなければならず、エラーを減らすことに重点を置いたアセンブリラインが求められます。この点、スルーホールのほうが端子の性質上、リフローはんだ付け時のはみ出しの可能性が低いため、大電流端子の信頼性が高くなると言えるでしょう。面実装の大電流端子は大きなフットプリントを必要とするため、はんだペーストをはんだパッド全体に均一に塗布することが重要です。凹凸があると、はんだリフロー時にパッドが不均一に加熱され、面実装部品の端子の一端が盛り上がるツームストーン現象が発生します。
電力効率の良い大電流端子
大電流端子の潜在的な問題に対処するために、Würth Elektronikは、柔軟な製造オプションで大電流をサポートするREDCUBE端子の製品ラインを開発しました。端子は薄型であるため、周囲への熱放散が早く、周囲への空気の流れも良くなり、周辺の電子機器の冷却が強化されます。REDCUBE端子は、はんだ接合抵抗が極めて低くなるように設計されているため、電力損失や発熱がほとんどなく、最大500Aまで給電することができます。
この製品ラインは、面実装、スルーホールリフロー、圧入基板の製造プロセスに対応しています。これにより、産業用システムのPCB設計者は、単一のサプライヤの端子を標準化することができ、様々な製造プロセスで視覚的な識別が容易になり、ひいては調達を簡素化することができます。
面実装の大電流端子
面実装デバイス(SMD)PCB製造との互換性を確保するには、WürthのREDCUBE SMD産業用端子ファミリを使用するとよいでしょう。これは、発熱を最小限に抑えながら、全自動の面実装アセンブリに対応した端子です。この端子は、基板間の電気的接続用に最大85Aをサポートします。
例として、7466003RはM3ネジ山で、20℃で50A定格のものです(図1)。この端子は、直径8.3mmの小さなフットプリントを採用しています。円形のフットプリントは、端子の重量配分を均等にすることでツームストーンを減らし、はんだペーストを受け付けない可能性のある鋭角を排除し、製造歩留まりを向上させます。REDCUBE SMD 7466003Rの本体は、錫メッキを施した頑丈な真鍮製で、定格温度は-55℃~+150℃です。
図1:REDCUBE SMD 7466003R産業用端子は、8.3mmの小さなフットプリントで、最大50Aの安全な伝送が可能です。オレンジ色のマイラータブが付属しており、面実装基板を配置する前に自動ピックアンドプレース装置によって取り外されます。(画像提供:Würth Elektronik)
熱を抑えながら最良の接続を提供するために、M3ネジ山を同じく錫メッキされたネジと端子に嵌合させることをお勧めします。これにより、7466003Rはほとんどの電源端子とネジに対応します。オレンジ色のマイラータブは、組み立て前にはんだ付けする面を汚染物質や指紋から保護します。こうすることにより、接続抵抗を最小限に抑えた良好な面実装はんだ接続を確保できます。また、端子を錫メッキネジに嵌合する前に、挿入されたネジとタブの嵌合抵抗に影響を与える汚染物質から、M3ネジと端子上部を保護することをお勧めします。これには、ネジ山の上部に指を触れないことも含まれます。
スルーホール基板端子
スルーホール部品を必要とする産業用アプリケーション向けに、WürthではREDCUBE THRファミリを提供しています。これは、自動スルーホールリフローPCBアセンブリをサポートしています。たとえば、74651195Rは、ナットで固定されたケーブルタブを取るように設計された錫メッキのM5ネジ山の9ピンスルーホールネジ端子です(図2)。動作温度範囲は-55℃~+150℃で、定格は20℃で85Aです。
図2:REDCUBE THR 74651195Rは、20℃で定格85A、M5ストレートネジ端子を備えています。9本のプリント基板ピンは、せん断力と引き裂き力に対して機構上の安定性を提供します。(画像提供:Würth Elektronik)
74651195Rの9本のピンは3 x 3グリッドに配置されており、最適なはんだ付け性だけでなく、引裂きやせん断力に対する機構的安定性も考慮して設計されています。74651195Rは、真鍮のソリッドピースに錫メッキが施されており、型打ち端子と比較して高い通電容量と優れたトルク公差を実現しています。この設計により、74651195Rは、接続されたケーブルを任意の角度から引っ張ることができる高出力の産業用アプリケーションに適しています。
74651195Rは薄型で、全高がプリント基板から10mm、ネジの長さは7mmです。標準的なM5ケーブルタブとネジ山の少ないロックナットに対応しており、端子周りの空気の流れを容易にして冷却性を高めます。
大電流用の圧入端子
非常に大きな電流を必要とする電源および産業システムアプリケーション向けに、Würthは最大定格500AのREDCUBE PRESS-FITの製品ラインを開発しました。この端子は、リフローはんだ付けやウェーブはんだ付けを使用しません。代わりに、端子ははんだメッキされたプリント基板の穴に機械的に押し込まれます。端子を基板の穴に押し込むことで生じる摩擦により、200μΩの接触抵抗で気密性の高い冷間圧接結合を実現します。
ソリューション例としては、M8ネジ山の7461090ネジ端子があります(図3)。これは、定格が20℃で350A、動作温度は-55℃~+150℃です。この電流を処理するために、7461090には熱はんだを必要としない20個の圧入ピンがあります。圧入方式では、スルーホール部品と同じPCB穴を使用し、冷はんだ接合などのはんだ付けの問題を排除します。さらに20個の圧入ピンは、はんだ付けされたスルーホールのように基板を貫通して延長する必要がなく、はんだテールがなくても基板内で終端することもできます。これにより、基板下の大電流端子の偶発的な短絡を防止し、システムの安全性を向上させます。
図3:REDCUBE PRESS-FIT 7461090産業用ネジ端子は、ウェーブはんだ付けやリフローはんだ付けを使わずに、基板の穴に押し込まれます。独自の設計により接触抵抗が非常に少なく、350Aまで対応できます。(画像提供:Würth Elektronik)
M8錫メッキネジのプロファイルは13.5mmです。最小限の接触抵抗で最大の電流を流すためには、組み立てられるネジがケーブルタブを通り、基板に接触せずにREDCUBE端子を通る長さが実用的な最大長になるように、錫メッキネジを選択する必要があります。これにより、ネジ端子の長さ全体に最大の接触面積を提供します。
組み立てる前に、汚染物や指がネジ山や端子上部に接触しないようにしてください。汚染物によるわずかな抵抗でも、350Aでは危険温度となる過熱が発生することがあります。
着脱可能な便利なプラグ端子
高出力の産業用システムでは、異なるソース間での再構成や再接続を簡単に行う必要がある場合があります。このような用途向けに、WürthではREDCUBE PLUG圧入式産業用端子リセプタクルのファミリを提供しています。これは、最大120Aに対応するネジなし端子接続の便利さを提供する圧入端子です。
たとえば、REDCUBE PLUG7464000は、-45℃~+125℃の動作温度範囲で、20℃で最大120Aを扱うことができます(図4)。このREDCUBE PLUGは、錫メッキ銅合金製レセプタクルを赤いガラス繊維強化プラスチックハウジングに収めたものです。直径6.2mmのレセプタクルに互換性のあるプラグを挿入するには、ハウジング上部をプリント基板に向かって手で押し下げる必要があります。こうすることでレセプタクルが完全に露出し、錫メッキプラグを簡単に挿入できます。ハウジング上部をリリースすると、プラグが所定位置にロックされます。
図4:REDCUBE PLUG 7464000プラグレセプタクルは、20℃で定格120Aの圧入端子です。大電流プラグの接続と切断が簡単で、再構成可能な電源ソリューションに適しています。(画像提供:Würth Elektronik)
また、REDCUBE PLUG 7464000プラグレセプタクルは、部品上スペースの狭さからネジやナットを取り付けるのが困難な場所にも適しています。鮮やかな赤い色は、混雑したプリント基板上でプラグの識別を容易にします。またこれは、3 × 4グリッド上に12本の密着圧入ピンを備えています。7464000は最大接触抵抗が1mΩで、非常に大きな電流のアプリケーションに適しています。
まとめ
設計の統合化が進むにつれ、高電力システムの設計者は、効率的で低損失の電力供給と組み立ての容易さのバランスを取る必要があります。このため、プリント基板の適切な大電流産業用端子の選択が特に重要になります。設計者は、基板の組み立てプロセス、端子が安全に扱える電流量、基板の取り付け方法を十分に理解していなければなりません。
先に紹介したように、柔軟なアセンブリオプションを備えた産業用グレードの端子を使用することで、設計者は1つの製品ラインで標準化を図り、調達と相互運用性を簡素化することができます。これにより、産業用システムは安全に電力を供給しながら、組み立てエラーを最小限に抑えて製造歩留まりを向上させることができます。その結果、組立時間を短縮し、コストを削減することができます。
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