IIoT設計における電圧振幅の処理

著者 ヨーロッパ人編集者

DigiKeyのヨーロッパ担当編集者の提供

多くの産業制御システム向けの電子機器は、従来、容易な設計、統合およびメンテナンスのためにDINレール実装システムを使用するキャビネットに組み込まれてきました。 DINレール形式に適合する広範な標準電源、エンクロージャおよびその他製品があります。 この入手性により、最終システムの選択、認定や構築に要する時間が低減されます。

産業用モノのインターネット(IIoT)の傾向により、より高いレベルの分散型制御が求められています。 インテリジェンスは、応答性や柔軟性の理由により、実際のセンサおよびアクチュエータの極めて近くに実装できるプロセッサに移るでしょう。 プロセッサは、有線ネットワークとワイヤレスネットワークの組み合わせを通して通信し、以前はPCBまたはバックプレーンバスをわたってデータを共有していた単一のエンクロージャ内に協調プロセッサが共存する必要性を低減します。

ターゲットシステムは、容易な実装のためにDINレールに適合するように設計可能ですが、各ユニットは、はるかに小さく、より大きなキャビネット内で共有される電源レールではなく個々の電源を必要とします。 それは多くの環境向けに安全な電圧レベルを提供し、既存の環境との適合性を保持するため、24VDCは、ディスクリート機器とキャビネットに収められた機器の両方で電子コントローラに給電するレールとして一般的に使用され続ける可能性があります。

産業環境の本質は、大きな誘導および容量性素子で、近くの機器または断続的重負荷によって引き起こされる誘導電圧およびノイズにより、コントローラの電源は依然として、入力電圧範囲における大きな変動に対処する必要があることを意味します。 必要なのは、小型で、入力電圧における変動および負荷消費における大きな変化にわたって信頼性の高いエネルギーを供給できる電源です。 多くの電子コントローラは、エネルギーを節約するためにアクティブでない時にスリープモードにパワーダウンします。 また、電源は、それらの状況に効率よく反応できる必要があります。

Texas InstrumentsLM43603レギュレータまたはLinear TechnologyのLTM8025は、消費電力の変化に対応し、入力電圧の変化をサポートするために、連続伝導モード(CCM)と不連続伝導モード(DCM)間をスイッチングする機能を提供します。 CCMで、負荷への電流供給の平滑化を支援するのに使用されるインダクタの電流は、スイッチングサイクルのどの部分でもゼロを常に上回り続けます。 DCMで、インダクタの電流は、ゼロに降下することが許容されます。 各サイクル中にコンバータでのFETスイッチのペアによってインダクタに供給される電流量は、パルス幅変調(PWM)を使用して決定されます。

連続伝導モードでのインダクタ電流の画像

図1:PWM制御スイッチモードレギュレータ向けの連続伝導モードでのインダクタ電流。

各サイクルで、コンバータは、特定の時間量でハイサイドFETスイッチを最初にターンオンすることで、安定化出力電圧を供給します。 このオン時間中に、出力電圧は入力電圧に向かって上昇し、インダクタへと流れる電流は、式(Vin - Vout)/Lで与えられるリニアスロープで上昇し始めます。

電圧を安定化し、電圧が入力レベルに向かって上昇し続けることを防止するためにハイサイドスイッチをスイッチオフすることを制御ロジックが決定すると、ローサイドスイッチは、シュートスルーを短時間防止するためにオフの状態を維持して、それからスイッチオンが許容されます。 その後、インダクタ電流が-Vout/Lのスロープで降下し始めます。

コンバータ内のPWMコントローラは、出力電圧をサンプルし、これをリファレンス電圧と比較して、2つの位相用にデューティサイクルの計算に使用される誤差信号を生成します。 理想的なコンバータ設計で、デューティサイクルは出力電圧に比例します。 誤差アンプは、安定化出力電圧を維持するためにDC/DCコンバータがデューティサイクルを調整することを確保します。

アンプによって生成される誤差信号は一般的に、入力電圧と出力要求における変化が、電源コントローラのスイッチングレートよりも一般的に遅いため、どの時点でも非常にゼロに近くなります。 PWMが提供する適応機能により、その戦略が、負荷へのエネルギー供給に影響を及ぼさずに、入力レールでの振幅を補償します。

高周波スイッチングの使用により、LM43603は、3.5V~36VDCの範囲の電源電圧で動作することができ、小型ソリューションで高効率および良好な熱性能を備え、最大3ADCの負荷電流を供給することができます。 スイッチング周波数は、LM43603コントローラ内で発振器モジュールに提供されるRT信号に接続されたプログラム可能抵抗の使用を通して、200kHz~2.2MHzにプログラム可能です。 外付け抵抗を使用しないその標準周波数は500kHzです。 LTM8025は、200kHz~2.4MHzの周波数範囲で動作し、1つの端子がRTピンに接続され、もう1つの端子がグランドに接続された状態で、抵抗器を使用して同様にプログラムされます。

Linear Technologyが提供するLM43603のブロック図

図2:LM43603のブロック図。

軽負荷の下で、PWM制御CCM安定化の効率は大幅に低下します。 DCMは、より長い時間で負荷を入力から切断することで、効率を向上させることができます。その長い時間の間に、インダクタ電流はゼロに降下することが許容されます。 出力コンデンサは、このモードでリップルの影響を最小限に抑えるのに役立ちます。

LM43603の場合、コンバータは、負荷電流が、CCMでピーク-ピークインダクタ電流リップルの半分未満である時にDCMに移行します。 スイッチング損失は、ゼロ電流でローサイドFETをターンオフすることで低減されます。 DCM中に、スイッチング周波数が低減します。 コンバータは、サンプルされる出力電圧が許容可能値を下回る時にハイサイドFETをターンオンします。

LM43603およびLTM8025などのデバイスは、入力および出力でのほとんどのコンデンサ形態で安定した動作を提供します。 それらの小型サイズにより、セラミックコンデンサは多くの場合に好まれます。これは、静電容量要件が一般的に、高周波動作、および3~12VDCの標準混合信号回路電圧向けに100µFを下回るためです。 セラミックコンデンサは小さく、堅牢で非常に低いESRを備えています。 しかし、すべてのセラミックコンデンサが適しているというわけではありません。 X5RおよびX7Rタイプは、温度範囲や適用される電圧にわたって安定していますが、それとは対照的に、Y5VおよびZ5Uは、静電容量の非常に大きな温度および電圧係数を有しています。 それらは使用されると、ほんのわずかの公称静電容量を示す可能性があり、結果として、予想よりもはるかに高い出力電圧リップルが生じる可能性があります。

Linear Technologyが提供するLTM8025のブロック図

図3:LTM8025のブロック図。

また、セラミックコンデンサは圧電性があります。 DCMまたはバーストモードで、スイッチング周波数は、負荷電流に依存し、可聴周波数範囲でセラミックコンデンサを励起し、可聴ノイズを生成する可能性があります。 DCMの状態で生成される電流はより低いため、ノイズは一般的に低くなりますが、可聴ノイズが許容できない場合、高性能の電解コンデンサがより適しているかもしれません。 あるいは、セラミックコンデンサと低コストな電解コンデンサの並列の組み合わせを使用することができます。

もう1つの重要な考慮事項はソフトスタート機能です。 たとえば、LM43603には、SS/TRKのソフトスタート制御ピンがあります。 入力電圧が適用されると、ピンの使用は、レギュレータに、一定期間にわたって出力電圧をゆっくりと上昇させます。 SS/TRKピンがフローティング状態のままであれば、LM43603は、自身のランプ期間コントローラを使用して、出力電圧をわずか4ms後に全出力にまで移行させます。

大量の出力静電容量を採用するアプリケーション向けに、または比較的高い出力電圧を使用するシステム向けに、スタート時間は、SS/TRKピンとデバイスのアナロググランドリファレンスピン(AGND)の間で外部コンデンサを接続することで延長できます。 静電容量値は、ランプ期間を決定します。 あるいは、ソフトスタートコントローラは、抵抗-デバイダのペア、および望ましいランププロファイルを説明する外部電圧源を使用して、外部ランプ信号を追跡できます。

LTM8025でのソフトスタートの制御は、抵抗を通した外部電圧源への接続とともに、RUN/SSピンおよびグランドに接続されたコンデンサを使用して実行されます。 その結果のRC時定数は、ソフトスタートタイミングを決定します。

Linear Technologyが提供するLM43603の接続図

図4:LM43603をソフトスタートするための外部ランプ信号用接続。

Linear Technologyが提供するLTM8025の接続図

図5:LTM8025でソフトスタートランプを生成するための接続。

IIoTパワーコントローラは小さなスペースに適合して産業機器と容易に統合される必要があるため、電磁両立性(EMC)は重要な考慮事項です。 スイッチモードパワーレギュレータにより生じる電磁妨害(EMI)を確認するための秘訣は、いかなるdi/dtループも最小限に抑えることです。 これは、主に、LM43603およびLTM8025などのデバイスが提供する高レベルの統合によって実現されます。

スイッチモード降圧コンバータでの重要なdi/dtループの図

図6:スイッチモード降圧コンバータでの重要なdi/dtループの図。

しかし、特にすべての帰還ノードで、外部デバイスの配置に注意を払う必要があります。 外付け抵抗およびバイパスコンデンサへのトレースを可能な限り短くする必要があります。 抵抗につながる長いPCBトレースは、過度なEMIを生じる可能性があります。 また、シールドは重要であり、これは主に、PCB内での追加のグランドプレーンを使用して達成できます。 

LM43603およびLTM8025などの高統合のレギュレータを使用することで、IIoT志向の産業コントローラの設計者は、最終製品のEMCでそれらがDC電源を確実にかつ自信を持って供給することを確保できます。

Linear Technologyが提供するLM43603における低EMIレイアウトの推奨事項の図

図7:LM43603における低EMIレイアウトの推奨事項。

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