商用車両向けFMS(車両管理システム)標準

著者 Tawfeeq Ahmad(タウフィーク・アハマド)

画像:商用車両向けFMS(車両管理システム)標準(画像提供:iWave Systems

サプライチェーンや電子商取引に大きな動揺が見られる中、商用車両(CMV)ドライバーの困難は多大なものになっています。商用車両はメーカーからリースされることが多く、過酷な稼働条件で長時間使用されるため、オーナーは位置情報などの適切なパラメータを監視して、効率的に使用状況を管理する必要があります。商用車両の故障を防ぎ、車両の寿命を延ばすには、位置、稼働時間数、エンジン性能、エンジンパラメータなどのパラメータを継続的に監視する必要があります。

FMS標準とは

車両管理システム(FMS)は、商用車両の車両データへの標準的なインターフェースです。FMSは、さまざまな商用車両メーカーの車両データへのインターフェースの一つであるとともに、世界標準の一つとも見なされています。関連情報は、車両内電子制御ユニット(ECU)によって異なります。

FMSインターフェースは、内部ネットワークに安全にデータ接続するための唯一のインターフェースとして設計されています。それが設計された理由は、車両の内部バスシステムに直接接続すると、車両の安定性に影響を与える可能性があるためです。FMS標準は、欧州6メーカー(Daimler AG、MAN AG、Scania、Volvo、DAF Trucks、IVECO)がメーカーに依存しないテレマティクスデータアプリケーション/評価を実現するため、2002年に策定したものです。車両管理は、中央のプラットフォームから業務用車両の最適な利用を維持することを可能にします。

画像:トラックトレーラー(画像提供:iWave Systems)

FMS標準の歴史的発展

  • FMS標準1.0は2002年に発行され、サポートしていた車両データとしては速度、エンジン電子制御装置、燃料消費量、車両重量、総エンジン時間、車両登録番号、タコグラフ情報、走行距離/車間距離、エンジン冷却液の温度などがありました。
  • バス用FMS標準(バージョン00.01)は、2007年にバス(含む:長距離用)向けに発行されたもので、策定企業にはDaimler Buses、EvoBus GmbH、MAN Truck & Bus AG、Scania CV、Volvo Bus Corporation、IrisBus Iveco 、VDL Bus International B.V.が名を連ねていました。初版の「FMS標準1.0」は、 「トラック向けFMS標準」とも呼ばれていました。
  • FMS標準2.0は2010年に発行されました。サポート対象としてFMS標準1.0から増えた情報としては、周囲環境条件、ドライバー識別、燃費、PTOドライブエンゲージメント、正確な燃料消費量データなどの情報がFMS標準1.0に追加してサポートするようになりました。
  • バスとトラック向けの調整された標準として、FMS標準3.0が2012年に発行されました。
  • 2017年に発行されたFMS標準4.0のFMS-CANインターフェースは、FMS標準のメッセージに対するScaniaのCANインターフェースです。

FMS標準に準拠したテレマティクス

FMSを使用したテレマティクスにより、車両は、スムーズに稼働し、常にパフォーマンスを向上させる方法を模索し、運用コストを最小額に抑え、政府規制へのコンプライアンスを維持することが可能です。突発故障時の現場対応にかかる時間やコストの面でも大きなメリットをもたらします。

商用車両におけるFMS標準準拠テレマティクスのメリットを以下に示します。

  • 診断データを簡単に利用できるため、故障の迅速な検出とトラブルシューティングが可能
  • マシンの効率状態と危険状態にリモートからアクセス可能
  • 予防(予知)保全による車両のアップタイムを確保可能
  • 過失使用、破損、盗難未遂を直ちに通知
  • 故障の減少や診断精度の向上により、顧客満足度が向上
  • 燃料/整備/操業コストを削減
  • よりシンプルな紛争処理による、突発故障と稼働時間の予測
  • リソースのスマートな配分
  • 盗難車両の追跡と回収

FMS向けiWaveテレマティクスハードウェア

商用車両との接続には、iWaveのTelematics Control UnitやTelematics Gatewayを利用することができます。これらのテレマティクスソリューションは、バックホールを使ってセルラー4G、Wi-Fi、Bluetoothを介して、複数のCANポート、RS232、RS485、アナログ、デジタル入力を統合しています。これらのテレマティクスソリューションは強力なマイクロプロセッサを搭載しており、さまざまなメーカーやモデルの商用車両に対応できる柔軟で透過なソフトウェアを組み込んでいます。

画像:Telematics Control UnitとTelematics Gateway(画像提供:iWave Systems)

J1939プロトコルスタックとFMSのアーキテクチャ

iWaveが開発したSAE J1939スタックは、ANSI C標準をベースとしており、バスやトラックからのデータ収集に必要となる、あらゆる仕様のSAE J1939プロトコルに対応しています。このスタックは、拡張された29ビットのCAN識別子で動作し、すべての標準ボーレート(100kbps、125kbps、250kbps、500kbps、1000kbps)をサポートしています。iWaveのスタックに実装されている自動ボーレート検出機構により、外部診断ツール/データロガーデバイスは、車両によってサポートされているボーレートを検出し、デバイスと車両内ECU間の通信を開始することが可能です。このスタックにより、デバイスは、車両ECUから送られてくるSAE J1939標準のあらゆるタイプのメッセージを解釈することが可能です。

画像:J1939プロトコルスタック(画像提供:iWave Systems)

SAE J1939ソフトウェアスタックは、FMS標準のパラメータを効率的に読み取ることが可能です。GPS位置、タコグラフデータ、センサー読み取り値などのJ1939のデータをFMSのデータと組み合わせることで、ユニバーサル通信源/情報源を作成することが可能です。

以下のデータは、トラックブランドのFMSインターフェースでブロードキャストされ、SAE J1939に合わせて標準化されています。

  • アクセルペダル位置(0~100%)
  • 軸荷重(kg)
  • ブレーキスイッチ(オン/オフ)
  • クラッチスイッチ(オン/オフ)
  • 走行制御(オン/オフ)
  • エンジン冷却液の温度
  • エンジン回転数
  • FMS標準ソフトウェアのバージョン(対応モード)
  • 燃料液面高さ(0~100%)
  • 高解像度車間距離
  • パワーテイクオフ(PTO)(状態/モード)
  • 走行距離
  • タコグラフ情報
  • 総エンジン時間(h)
  • 使用した総燃料量(耐用年数全体のリットル数)
  • 車両登録番号(ASCII)
  • 車両改良(全面的)
  • 車両速度(車輪ベース)
  • 車両速度(タコグラフベース)

iWaveでは、スタックは完全にカスタマイズできるように設計されており、ユーザーは機能セットを指定したり、エンドアプリケーションの要件に合わせてスタックを微調整することができます。J1939プロトコルスタックは、商用車両アプリケーション向けに世界的に展開されています。

J1939プロトコルスタックを使用したiWaveテレマティクスソリューションの価値提案は以下の通りです。

  • 使いやすいAPI
  • テレマティクスソリューション向けのエンドツーエンドソリューション製品
  • 利用可能なすべてのカーネルバージョンでサポートされている

iWaveへのお問い合わせは、mktg@iwavesystems.comまでお願いします。

各項目の詳細はこちら:

  1. Telematics Control Unit
  2. Telematics Gateway
  3. FMS(車両管理システム)

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著者について

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Tawfeeq Ahmad(タウフィーク・アハマド)

Tawfeeq Ahmadは、iWave Systems Technologies Pvt.Ltd.でプロダクトマーケティングを担当しています。電子機器への情熱とマーケティングやセールスへの関心を持つTawfeeqは、iWaveの幅広い組み込みの専門知識を活用して、世界中の組織が製品開発のサイクルを短縮し、効率化を図る支援をすることを目指しています。エレクトロニクスおよび通信の学士号とマーケティングのMBAを持つTawfeeqは、iWave Systemsを製品エンジニアリング組織の世界的なリーダーにすることを目指しています。