EtherNet/IPとPROFINETの比較

著者 Lisa Eitel(リサ・アイテル)氏

DigiKeyの北米担当編集者の提供

企業がデジタルで接続されるようになる中で、産業用Ethernetは他の選択肢に勝って採用され続けています。これは、データのアクセシビリティとユーザビリティを向上させるためにモノのインターネット(IoT)機能がオートメーションおよび産業用制御システムで使用される場面で、特に当てはまります。この分野では、EtherNet/IPとPROFINETが最善の選択肢です。

EtherNet/IPの構造と拡大するEtherNet/IPの適用性

EtherNet/IPは、標準Ethernetに共通産業プロトコル(CIP)を使用する産業用ネットワークプロトコルです。これは、ネットワークアプリケーションレイヤで動作し、(ネットワークの2つの概念モデル内で) 制御と入出力(I/O)デバイス間の通信を可能にする「最上位」デバイスおよびユーザー対応レイヤにあります。より具体的に言うと、EtherNet/IPは開放型システム間相互接続(OSI)および伝送制御プロトコル/インターネットプロトコル(TCP/IP)モデルの最上位レイヤです。

OSIモデルとTCP/IPモデルを比較した図図1:ネットワークを説明するのに使用される最も一般的な2つのモデルは、OSIモデルとTCP/IPモデルです。(画像提供:Design World

EtherNet/IPは以下を使用します。

  • 前述のアプリケーションレイヤ
  • インターネットプロトコルネットワーキングレイヤ
  • 標準Ethernetリンクレイヤ

EtherNet/IPのIP産業用プロトコルの略であり、RS-232やRS-485(両者ともに産業用データ送信向けの規格)などのシリアル接続を介した通信を可能にするために当初開発されたネットワークプロトコルを指すことに注意してください。現在、そのような接続の多くは、インターネット通信で非常に一般的なTCP/IPなどのプロトコルを使用するEthernetで動作します。EtherNet/IP通信およびその非常に標準化されたハードウェア(ハブ、スイッチ、ルータ、Ethernetケーブル、およびEthernetネットワークカードを含む)は、IEEE 802.3伝送制御プロトコルおよびインターネットプロトコルにより定義されています。

EtherNet/IPがアプリケーションレイヤで機能する様子を示す画像図2:EtherNet/IPはアプリケーションレイヤで機能するため、産業用コントローラとI/O間の通信を可能にします。(NT24kスイッチの画像提供:Red Lion

2009年に開発されたEtherNet/IPは、Open DeviceNet Vendors Association(ODVA)とControlNet International(CI)の共同作業から生まれ、ODVAとその会員の後援を受けています。ODVA自体は、産業用オートメーションにおけるオープンで相互運用可能な通信の向上を目指す目的で、オートメーション企業(Rockwell Automation、Cisco、Schneider Electric、Omron、Bosch Rexrothなど)のコンソーシアムとして1995年に設立されました。ODVAによると、EtherNet/IPは産業用Ethernetの採用をリードしています。その市場シェアは2017年に25%、2018年に28%となり、産業用Ethernetネットワークのノードを最も多く出荷しました。

現在、EtherNet/IPは産業用ネットワークにCIPを採用する4つのODVAネットワークの1つです。その他のネットワークは、DeviceNet、ControlNet、CompoNetです。

CIPは、産業用デバイスでデータを整理および共有するためのコンジットです。より具体的に言うと、CIPは異なる種類のメッセージおよびサービスを使用して、プロセス/システム制御、安全、同期、モーション、構成、および情報などの産業用オートメーションアプリケーションにおいてデータを交換します。CIPは、これらのアプリケーションをエンタープライズレベルのEthernetネットワークおよびインターネットと統合させます。これは、製造および産業用アプリケーションに使用される統合通信ネットワークであり、世界中のベンダーに幅広く採用されています。

産業用プロトコルでは、データはデータの要素または属性を持つオブジェクトとして整理されます。一般的に、これらのデータオブジェクトは、必須オブジェクトとアプリケーションオブジェクトに分類されます。必須オブジェクトはすべてのCIPに存在します。

EtherNet/IPの画像図3:EtherNet/IPとPROFINETは、主要な産業用Ethernetプロトコルです。両方ともODVAによりサポートされています。(画像提供:ODVA Inc.)

EtherNet/IPの実装は非常に簡単で、産業用オートメーション向けの標準Ethernetスイッチと互換性があります。ただし、EtherNet/IPの基本形態は非決定論的であるため、厳格なリアルタイムの産業用アプリケーションには適していません。CIP MotionはEtherNet/IPを補完して、IEEE 802.3およびTCP/IP Ethernet規格に完全に準拠した未変更のEthernetにより、EtherNet/IPが決定論的なリアルタイム制御(閉ループモーション制御を含む)の厳しい要件を満たせるようにします。

CIP Motion技術により補完されたEtherNet/IPは、多軸分散モーション制御を提供します。これは拡張可能で、モーション設計向けの一般的なアプリケーションインターフェースを提供します。

EtherNet/IPを介したデータ送信

TCPおよびユーザーデータグラムプロトコル(UDP)は、インターネットと多くのプライベートネットワークの基本的な通信プロトコルです。EtherNet/IPは、明示的メッセージングと呼ばれるものにTCPポートを使用します。このメッセージングは、システムがそのデータに対する特定のリクエストに応じてクライアントにデータを送信する場合に発生します。これは、クライアントとサーバ間のリンクを明示的に管理する接続指向プロトコルであるTCP/IPを使用します。TCP/IPネットワークの核として、TCPはデータパケットを細分化し、データメッセージが送信先に届くようにします。IPはパケットのみを扱うことに注意してください。また、TCPは2つのホストが接続を確立してデータストリームを交換できるようにします。TCPは、データの配信だけでなく、パケットが送信順に配信されることも保証します。

EtherNet/IPは、事前に予定された間隔でプリセットメモリロケーションからコントローラまたは他のクライアントに送信されるシステム通信である非明示的メッセージングに対して、UDPポートを使用します。このような通信は、明示的メッセージングよりもずっと高速です。また、UDP接続の一方向のデータ送信(受信の検証なし)により、周期的なシステム更新が簡素化されます。

決定論的な通信用のPROFINET

PROFINETは、産業用Ethernetを介したデータ通信のモードを定義するもう1つの技術規格です。標準Ethernetに対するPROFINETの変更により、困難なアプリケーションにおいても適切で迅速なデータ送信が可能になります。PROFINETの定義では、特定の制約(しばしば厳しい時間制約)を満たす産業用装置およびシステムからのデータ収集の方法を定めています。PROFINETは、オートメーションをサポートするフィールドバス通信の規格であるPROFIBUSから生まれました。PROFIBUSは産業用Ethernetをベースとする従来のシリアルフィールドバスですが、PROFINETはさらなる追加機能を備えており、オートメーション部品を制御するためのより高速で柔軟性のある通信を可能にします。

PROFINETロゴの画像図4:EtherNet/IPは米国で最も一般的です。PROFINETは欧州で広範に使用されています。(画像提供:PI North America

実際、2018年現在、PROFINETは産業用ネットワーク市場において30%のシェアを保持しており、世界をリードするEthernetベースの産業用オートメーション向け通信ソリューションになっています。毎年、500万台以上のPROFINET対応デバイスが市場に投入されています。

PROFINETおよびPROFIBUS通信は決定論的であるため、高精度のI/O構造が制限されたオートメーションシステムのサポートが可能になります。また、定義済みのI/O構造により、最大更新時間の高精度な計算が可能になります。PROFINETは、アイソクロナスリアルタイム(IRT)のデータ交換を提供することもできます。IRTはPROFINETの超高精度タイムクロックを本質的に活用して、一部のタイプのデータトラフィックの通過を優先し、残りをバッファします。IRTは、リアルタイム動作よりも決定論的な動作を必要とするモーション制御や他のアプリケーションなどの要求の厳しいアプリケーションに適しています。リアルタイムデータ交換では、バスサイクル時間は10ミリ秒未満です。対照的に、IRTデータ交換は数十マイクロ秒から数ミリ秒以内に発生します。

たとえば、パッケージングおよびラベリング動作において、PROFINETは1秒未満(数ミリ秒以内)で正確な高さまで瓶詰するためのデータ送信をサポートできます。また、PROFINETは、瓶詰めプロセスにおける異常を検知および数値化して操作者に警告し、即座にプロセスをシャットダウンすることもできます。

PROFINETハードウェアに関する注記

標準Ethernetは、自宅、オフィス、および特定の産業用監視におけるデータ送信にのみ適しています。一方、PROFINETの産業用Ethernetは、決定論的なデータ通信が要求される過酷な産業用施設での設置に適しています。PROFINETケーブルおよびコネクタは、標準Ethernetで使用されるものとは異なっており、より重厚なロック機構と堅牢な産業用ケーブルを備えたコネクタが含まれます。PROFINETルータ(他のハードウェアに内蔵またはスタンドアロン要素として構築)は、ネットワークレイヤ3(前述のネットワークモデルを参照)で機能し、IPアドレスを使用して通信します。これらのルータは、アルゴリズムを使用してネットワーク間で最適なデータ送信方法を判断しつつ、ローカルエリアネットワーク(LAN)を結合し、広域ネットワーク(WAN)を形成します。一部のPROFINETスイッチでは、光ファイバ接続も使用します。これらの超高速部品は、銅線から光ファイバへ変換するゲートウェイ要素を介して、PROFINET対応デバイスをEthernetネットワーク(またはPROFIBUS)に統合します。

過酷で厳しい条件に適したPROFINETハードウェアの画像図5:PROFINETハードウェアは、振動、熱、埃、油などの困難な状況にさらされる過酷で厳しい条件に適しています。このBrad PROFINET IO-Link HarshIOモジュールは、PROFINETに接続されたファクトリオートメーション向けの堅牢な部品の1例です。(画像提供: Molex)

PROFINETマネージドおよびアンマネージドスイッチ

PROFINETスイッチは、前述の概念ネットワークモデルの2番目のデータレイヤで機能します。これらのスイッチは、ネットワークを介したデータ信号の送受信を制御します。

アンマネージドPROFINETスイッチは、対象のデバイスエンドポイントに接続された適切なポートを通してEthernet受信データを送信します。ポートにはデータフローの存在を示すLEDインジケータがありますが、通常これらのアンマネージドスイッチはそのデータフローの管理に関する詳細情報を提供しません。

一方、マネージドPROFINETスイッチはさらにインテリジェントで、簡易ネットワーク管理プロトコル(SNMP)やPROFINET向けリンクレイヤ検出プロトコル(LLDP)などのさまざまなITプロトコルで機能します。そのインテリジェンスゆえに、マネージドスイッチはダウンタイムの防止が最重要目的であり、故障のトラブルシューティングが有用である場合に、しばしば使用されます。もちろん、通常これらはアンマネージドスイッチよりもコストがかかります。

EtherNet/IPとPROFINETの特性の直接比較

業界特有のEtherNet/IPへの適応により、多くの業界が変革しています。たとえば、パッケージング業界は、高速通信、決定論、およびリアルタイム性能にEtherNet/IPを活用しています。化学処理、従来型オートメーション、および発電などの業界では、EtherNet/IPを使用して、継続的に出力を数値化しています。さらに他の産業用アプリケーションには、制御用に集計およびリアルタイムデータ収集を必要とする完全自動化プロセスが関係しています。EtherNet/IPとPROFINETはどちらも、そのようなアプリケーションが必要とする決定論的なネットワークを作成するのに適しています。

両者の違いの詳細については、EtherNet/IPおよびPROFINETの信号品質、メッセージサイズ、更新レートを考慮してください。PROFINETは一般的にEtherNet/IPよりも高速で、ほとんどの場合に標準ハードウェアで展開されています。ただし、PROFINET IRTには特定のハードウェアが必要です。EtherNet/IPは、オブジェクト指向のプログラミングに基づき、商用オフザシェルフ(CotS)部品に依存しているため、いっそうの相互運用が可能です。実際、オフィスで使用されるユビキタス機器のバリエーションとよく似たCotS部品とハードウェアの使用は、EtherNet/IPが高速産業用コネクティビティにおいて非常にコスト効率が高いことを意味しています。このハードウェアのスケールメリットおよび相互交換可能な性質は、初期費用を最小化するのに役立ちます。

一方、PROFINET対応部品は、PROFIBUSベースのフィールドバスに組み込むことができます。これにより、完全に交換する必要なく、既存のシステムを効果的に補完できます。既存のデバイスを共有し、既存のネットワークが補完的ハードウェアの追加を受け入れることには、コスト上の利点があります。それでも、PROFINET技術の初期費用は、EtherNet/IPに基づく技術よりも最大15%高くなります。この費用は設置の容易さにより一部相殺されます。Ethernet/IPの設置の複雑さ(高額さ)が半減すると見込まれています。

EtherNet/IPとPROFINETによりサポートされているトポロジおよび部品もいくらか異なります。ネットワークトポロジは、ネットワークのリンクとノードの配列です。リンクは、同軸、リボン、ツイストペア、および光ファイバケーブルなどのワイヤレスおよび有線技術です。一方、ネットワークノードは、ハブ、ブリッジ、スイッチ、ルータ、モデム、およびファイアウォールインターフェースです。トポロジには、スター型、ライン型、リング型、デイジーチェーン型、およびメッシュ型が含まれます。

EtherNet/IPネットワークは、スター型トポロジを主に使用し、他のトポロジがそれを補完します。リング型トポロジは複数のデバイスをシーケンシャルに接続し、リング内でケーブルが切断されたとしても、各デバイスは制御へのパスを維持します。ツリー型トポロジは、デバイスグループ間の接続に配線されたデバイスまたはスイッチを使用します。切断されると、ソリューションに対する次善の実行可能なパスを判断するためのアルゴリズムが起動します。

PROFINETのライン型トポロジは最小限のケーブルを使用し、外部スイッチは使用しません。スター型およびツリー型トポロジへの接続にはスタンドアロンスイッチを経由します。ここで、スター型またはツリー型スイッチに障害が発生すると、すべてのノードに対する通信が影響を受け、問題となる場合があります。したがって、ケーブルやノードが故障した場合に通信の連続性を確保するため、PROFINETはメディアバックアップを提供する追加デバイスや他の要素を備えたトポロジをサポートします。

EtherNet/IPおよびPROFINETネットワークは、集中型および分散型制御下のシステムで展開し、両方の制御配列を組み合わせたシステムで動作する場合があることに注意してください。EtherNet/IPとPROFINETでは、集中型システムは1つ以上のクライアントノードに接続する中央サーバを備えたクライアントサーバ設定を使用します。サーバはすべての主要な処理を扱いますが、クライアントノードはリクエストを自ら処理するのではなく、中央サーバに送信します。分散型システムでは、すべてのノードが独自のロジックを自律的に実行します。システムの最終アクションは、全ノードのロジックの合計です。

EtherNet/IPおよびPROFINETゲートウェイ

ゲートウェイ(スタンドアロンのハードウェア、またはルータ、ファイアウォール、サーバ機能に内蔵)は、特定のネットワーク内外および異種システム間のデータの流れを制御します。これには、EtherNet/IPおよびPROFINETネットワーク間のI/Oと通信するために特別に設計された一部のゲートウェイが含まれます。PROFINETネットワークでは、ほとんどのゲートウェイが、自動的な互換性のためにPROFINETデバイスおよびEtherNet/IPアダプタとして機能します。

ゲートウェイは主な役割の他に、システムのPLCを信号のタイミング、集計、計算、比較、および処理のタスクから解放することもできます。ルータ機能を備えたEtherNet/IPおよびPROFINETゲートウェイにより、コンピュータはインターネット上でデータを送受信できます。今日、ネットワークに接続されたスマートなヒューマンマシンインターフェース(HMI)は、オートメーションシステム間のゲートウェイおよびコントローラとして2役をこなす場合があります。これにより、簡素化されたシステムコミッショニングとメンテナンスを実現できます。

Anybus Communicatorプロトコル変換ゲートウェイの画像図6:このAnybus Communicatorプロトコル変換ゲートウェイにより、ネットワーク化されていない機器のPROFINETネットワークへのシリアル接続が促進されます。(画像提供:HMS Networks

将来の産業用オートメーション設備の接続

EtherNet/IPおよびPROFINETコネクティビティは、前例のないアジリティとIIoT機能により、オートメーションおよび産業制御の革新的で新しい配列を実現しています。ハードウェア、ソフトウェア、およびコネクティビティ技術がEtherNet/IPおよびPROFINETを新たな方法で活用することにより、システムはこれまで以上に厳しい産業用生産要件を満たせるようになります。

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著者について

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Lisa Eitel(リサ・アイテル)氏

Lisa Eitel氏は、2001年からモーション制御業界で働いています。彼女が注力する分野には、モータ、ドライブ、モーション制御、動力伝達、リニアモーション、センシングおよびフィードバックテクノロジが含まれます。彼女は機械工学の理学士号を取得しています。Tau Beta Pi工学名誉協会(全米最古の工学名誉協会)の新参会員であるほか、女性エンジニア協会会員、FIRST Robotics Buckeye Regionalsの審査員を務めています。motioncontroltips.comへの寄稿に加え、Lisaは業界誌Design Worldで四半期ごとにモーション制御問題の制作も指揮しています。

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