多目的な小型アンテナでIoTアプリケーションを強化

著者 Pete Bartolik(ピート・バートリック)

DigiKeyの北米担当編集者の提供

適切なアンテナを選択することは、モノのインターネット(IoT)ワイヤレスアプリケーションの成功にとって非常に重要です。さまざまなネットワークをサポートできる高い性能と柔軟性を持つアンテナを選択することで、電子アプリケーションの商業的魅力を高めることができます。

製品設計者はアンテナを受動的な部品と考えるかもしれませんが、IoTエコシステムを活用するために新しい機能を組み込むに従って、アンテナは電子アプリケーションの成功にますます重要になっています。特に産業用IoT(IIoT)アプリケーションでは、複数のワイヤレスネットワークをサポートするアンテナは、重要な冗長性、回復力、カバレッジの最適化を提供することができます。

Wi-Fiアプリケーションのサポートに加え、IoTの成功を保証するために必要な重要機能を提供するセルラーアンテナを組み込む必要性が高まっています。スペクトル効率は、ワイヤレストラフィックの増加によって生じる干渉に対抗するために不可欠です。バッテリを長持ちさせるための電源効率も重要な要件です。多くのIoTアプリケーションは、厳しい気象条件や破壊行為に耐える堅牢なアンテナが必要とされる屋外充電ステーションなど、過酷な環境で動作しなければなりません。

コンクリートや金属などの物理的な建築材料によって信号性能が著しく影響を受けないようにするには、高効率のアンテナが必要です。ワイヤレスサービスがアクセス競争を繰り広げる中、干渉や信号ノイズを避けるため、クリーンで干渉のない伝送がますます重要になっています。産業用5Gアプリケーションへの需要の高まりは、5Gが窓や壁を通過できないことを改善するために、マイクロセルやスモールセルを具体化する設計者を大いに刺激するでしょう。

ネットワークによって有利なエリアが異なるため、より効率的なアンテナを利用する製品設計者は、屋内、屋外を問わず、顧客のニーズに合わせてより広いカバレッジをカバーすることができます。同様に重要なこととして、製品設計者は、マルチネットワークサポートが提供する適応性によって、アプリケーションの将来性を保証することができます。

マルチネットワークをサポートすることで、ベンダーや顧客は、複数のアンテナ在庫の複雑さを管理する代わりに、1種類のアンテナを標準化し、異なる環境でコネクティビティを提供することができます。また、異なるタイプのコネクティビティを組み合わせることで、ネットワーク負荷のバランスをとり、データトラフィックを複数の経路に分散させ、与えられたタスクに最適なネットワークオプションを選択することで混雑状態を防ぎ、パフォーマンスを最適化することができます。顧客は、Wi-Fiで十分な場合はセルラーデータを使用せず、データ要件に基づいて最も費用対効果の高いネットワークを選択することができます。

厳しい環境のニーズへの対応

ワイヤレスコネクティビティは、多くの場合、製品設計者に数多くの課題を突きつける広範な環境において極めて重要になることがあります。

たとえば、スマート工場では、工場設備、センサ、中央管理システム間の信頼性の高い通信が必要であり、多くの場合、過酷な産業環境下にあります。Wi-Fiと携帯電話ネットワークが共存する大規模倉庫では、マルチネットワークアンテナによって在庫追跡と物流管理のためのシームレスな接続を保証することができます。

高性能アンテナにより、遠隔地にセンサを配備し、気象観測所や大気質モニタからデータを収集したり、資産を追跡したり、スマートビルディングアプリケーションを実装したりすることが可能になります。農業分野では、土壌水分、作物の生育状態、灌漑システムの操作に関する重要な情報を提供することができます。

その他の新たなアプリケーションとしては、天候に関係なくバックエンドシステムと通信する必要がある電気自動車充電ステーション、リアルタイムの表示やアナウンスを提供するデジタルサイネージ、リアルタイムの監視やアクセス制御が必要なセキュアストレージソリューション、モバイルチケットや旅客情報システムなどがあります。

各IoTアプリケーションには独自の要求があり、製品設計者は環境や通信要件とともに、特定のユースケースに適応しなければなりません。IoTデバイスはさまざまな周波数帯域で動作するため、性能に影響を与える可能性があります。また、デバイスのスペースが限られているため、他のコンポーネントを損なうことなくアンテナを統合することは困難です。

IoTアプリケーションに適したアンテナを選ぶ際に考慮すべき要因には、性能、サイズ、コスト、互換性などがあります。そのため、設計者は顧客のニーズを満たすためにさまざまなアンテナを統合する必要があり、複雑なサポートやサプライチェーンの問題が発生します。

複数のネットワークプロトコル

ナローバンドIoT(NB-IoT)などの低消費電力広域ネットワーク(LPWAN)プロトコルは、低データレートをサポートし、長距離で安定したコネクティビティを維持するために低消費電力、高ゲイン、高効率を必要とします。アプリケーションでは通常、広範囲の放射パターンを持つ無指向性アンテナが必要になります。

逆に、狭い範囲のWi-Fiプロトコルは、高いデータレートをサポートしますが、電力を節約し、他のデバイスとの干渉を避けるために、低いゲインと高い効率を必要とします。アンテナは、信号強度を上げるために狭い放射パターンを持つ必要があります。

セルラーIoTプロトコルLTE CAT-1は、IoTアプリケーション向けに中程度のデータ転送速度と中程度の範囲のセルラーコネクティビティを提供します。帯域幅のカバレッジは1.4MHzから20MHzで、プロトコルは最大10Mビット/秒のピークダウンリンクレートと5Mビット/秒のピークアップリンクレートをサポートします。アプリケーションは全二重と低消費電力を利用できます。

LTE CAT-M1は、データレートと電力効率のバランスを追求しています。1.4MHzの帯域幅と1Mビット/秒のピークダウンリンクおよびアップリンクレートをサポートするアンテナで、非常に低い消費電力を必要とします。アプリケーションは全二重または半二重機能を利用できます。

CAT-4 LTEプロトコルは、リアルタイムアプリケーションを含む、より要求の厳しいIoTアプリケーション向けに、大幅に高いデータレートと低遅延を可能にします。このプロトコルは、下り最大150Mビット/秒、上り最大50Mビット/秒の全二重通信を提供します。

多目的アンテナ

TE Connectivity(TE)は、4G/5Gセルラー、Wi-Fi、全地球航法衛星システム(GNSS)のカバレッジを組み合わせて提供できるコンパクトなフォームファクタのマルチポートIoTアンテナVersAnteファミリを提供しています。異なる通信プロトコルを1つのアンテナに統合できるため、設計者はそれらの設計を簡素化できます。

最適な性能を得るために特定のグランドプレーンを必要とする一部のアンテナとは異なり、これらのアンテナはグランドプレーンに依存せず、金属面にも非金属面にも取り付けることができるため、設計者は信号の受信を最適化する場所にアンテナを設置することができます。レドームは、一般に入手可能な非金属スプレー塗料で塗装可能です。

TEのVersAnteアンテナは360°の無指向性のカバレッジを提供し、電力消耗の原因となる微弱信号による再送信の必要性を低減します。利得と消費電力のバランスをとり、全体的なパフォーマンスを最適化します。

これらの小型アンテナは、小型のIoTエンドポイント、デジタルディスプレイ、EV充電ステーションなど、狭いスペースにシームレスに収まる、スペースに制約のあるアプリケーションに適しています。アンテナは、厳しい条件下でも信頼性の高い性能を発揮するよう堅牢に作られており、破壊行為や環境要因による損傷を受けにくくなっています。

VersAnte L000321-01(図1)は、3ポートの薄型パックアンテナです。4G/5Gセルラー、Wi-Fi、GNSSのカバレッジを提供し、IoTエンドポイントからスマート端末、デジタルサイネージまで、さまざまなアプリケーションのニーズに応えることができます。高さ1.024インチ(26.00 mm)、直径3.55インチ(90.2 mm)で、非常に小さな設置面積で高性能を発揮します。

TE Connectivity VersAnteセルラーパックL000321-01アンテナの画像図1:VersAnteセルラーパックL000321-01アンテナ。(画像提供:TE Connectivity)

TEはまた、2ポートL000322-01および3ポートL000322-02ドーム型アンテナ(図2)も提供しており、それぞれ2つの4G/5GセルラーポートとオプションのGNSSポートを備えています。ベースプレート付きのこの小型モジュールの寸法は、5.90 x 1.77 x 1.97インチ(150 x 1.77 x 1.97mm)です。

TE Connectivity VersAnte L000322-01およびL000322-02アンテナの画像図2:VersAnte L000322-01とL000322-02アンテナのフォームファクタ。(画像提供:TE Connectivity)

まとめ

新たなワイヤレスアプリケーションに対する需要の高まりは、複数の通信技術を製品に統合できる設計者にチャンスを与えています。TE ConnectivityのVersAnteアンテナは、多用途で堅牢であり、コンパクトで薄型のデザインで複数のワイヤレス技術をサポートしています。金属面でも非金属面でも動作するその能力は、IP67およびIP69Kの定格と相まって、信頼性の高い高性能な接続性を必要とする屋内外の幅広いIoTアプリケーションに非常に適しています。

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著者について

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Pete Bartolik(ピート・バートリック)

Pete Bartolikはフリーライターで、20年以上にわたってITとOTの問題や製品について研究し、執筆してきました。それ以前は、IT管理専門誌『Computerworld』のニュース編集者、エンドユーザー向け月刊コンピュータ誌の編集長、日刊紙の記者を務めていました。

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