貼りやすいケーブルラベルでメンテナンスの問題を解決

著者 Kenton Williston氏

DigiKeyの北米担当編集者の提供

データセンター、通信機器室、産業用制御パネルなどの複雑な配線環境では、明確なラベリングが配線の識別と整理に不可欠です。しかし、手作業によるラベル貼付は、ミスが発生しやすく、時間がかかる可能性があり、人件費の増加、ダウンタイムの延長、作業者のフラストレーションにつながります。また、特に頻繁にアクセスされる環境では、ラベルは時間とともに劣化し、粘着剤の不具合やインクの汚れにより、ラベルが欠落したり、判読できなくなったりすることがあります。

この記事ではまず、ケーブルにラベルを貼り、定期点検を行う際に技術者が直面する一般的な課題について検討します。続いて、HellermannTytonのセルフラミネートラベルを取り上げ、これらのソリューションの革新的な設計によって、長持ちするラベルをいかに素早く貼ることができるかをご紹介します。また、取り付け前にこれらのラベルを印刷するために使用するツールやソフトウェアについても説明します。

保守頻度の高い環境でのケーブルラベリング

密集した接続環境では、ケーブルの識別が容易であることが、迅速なメンテナンスやトラブルシューティングに不可欠です。ケーブルの両端に明確なラベルを貼ることで、ケーブルの特定に関する疑念を解消し、長い配線やシャーシ、ハーネス、壁の開口部からケーブルをたどる必要性を回避できます。これらのラベルを有効に使用するためには、しっかりと固定する必要があります。ケーブルの識別を簡素化することで、技術者にとってもシステムがより安全になります。以下にその例を挙げます。

  • 明確なラベリングは、正しい接続を促進し、機器や人への危害を防ぐのに役立ちます。
  • 両端でのラベル貼付により、配線の位置確認や追跡時の手作業によるケーブルの取り扱いが減ります。不必要な取り扱いは、ケーブルの寿命を縮める損傷の原因となることがあります。
  • ラベリングはケーブルの機能を伝える役割を果たします。たとえば、ケーブルが電力を伝送する場合、取り扱いが必要な際に適切な予防措置を講じることができます。

セルフラミネートラップアラウンドラベルは、密集したケーブルレイアウトでの手作業による貼付に適した、低価格で信頼性の高いオプションを提供します。ステッカータイプの設計は、ケーブルのかさばりを最小限に抑え、ラミネートカバーで識別コードを保護します。このラミネートは通常、水、汚れ、摩耗に強く、ケーブルの寿命を通じてコードの可読性を維持するのに役立ちます。また、2段階のラッピングプロセスにより、ファスナーやアプリケーションツールを追加することなく、確実で長持ちする取り付けを実現します。

手動ケーブルラベリングの課題

セルフラミネートラップアラウンドラベルには利点があるものの、その粘着裏面は貼付作業時に困難につながる場合があります。手作業によるラベリングの全体的なプロセスは、爪が短く切られすぎているといった些細な要因によっても大幅に遅延する可能性があります。バッキングライナー上のラベルの間隔が狭いと、剥がすのが難しくなり、その結果、メンテナンス作業中に無駄な時間を費やすことになります。

バットカットラベルはこの問題をさらに悪化させ、また、ラベル素材固有の曲げ半径のため、より細いワイヤゲージへの貼付も困難となります。ワイヤゲージが小さくなればなるほど、手作業は難しくなります。ケーブルを大量にラベリングする場合、このような非効率性がさらに増し、人件費とエラーの可能性が高まります。

大規模なラベリングでは、識別コードをマーキングする際にも課題が生じます。ポータブルラベルメーカーは利用可能ですが、特にコードを個別に入力する必要がある場合、印刷に時間がかかることがあります。

手書きも選択肢の1つですが、これにも固有の問題があります。筆記疲れや不適切なマーカーの使用は、読みにくい筆跡や、時間の経過とともにインクがにじんだり薄れたりする原因となります。このような問題は、最終的にラベリングの効果を損なうかもしれません。

セルフラミネートラベルへの革新的なアプローチ

セルフラミネートラップアラウンドラベルの標準設計を変更することで、HellermannTytonは手作業による貼付に伴う運用上の課題に対処しました。同社のTabTagセルフラミネートラベル(図1)には、人間工学に基づいたタブが組み込まれており、このタブは、ラッピングの固定点としてだけでなく、バッキングライナーからの容易な剥離を可能にする自己ディスペンス機構としても機能します。さらに、ラベルの間隔が広いため、他のラベルを剥がすことなく、個々のラベルを取り外すことが可能です。

画像:TabTagは4段階のプロセスで素早く取り付け可能図1:TabTagは4段階のプロセスで素早く取り付けることができます。(画像提供:Kenton Williston氏、HellermannTytonの資料を基に作成)

図1を参照すると、ステップ1では、ライナーを曲げることでタブが露出し、ラベルを素早く切り離せる様子を示しています。ステップ2では、タブがケーブルに固定されるため、最初の配置でよく起こるスリップがなく、小径のワイヤでもまっすぐに巻き付けることができます。ステップ3以降、その貼付作業は標準的なセルフラミネートラップアラウンドラベルと同様の手順となります。印刷部分がワイヤに巻き付けられ、次にコード印刷を保護するラミネート部分が続きます。

TabTagシステムは、台紙からラベルを剥がしてケーブルに貼付する際の一般的な障害を取り除くことで、1時間あたりのラベル貼付数を約12%増加させ、信頼性が高く長持ちするラベリングを実現します。この生産量の増加は、必要な労働にかかる時間とコストの大幅な節約につながります。

各種ラベルサイズは、多様な取り付けニーズに対応

TabTagシリーズには、さまざまなケーブルタイプや識別コード要件に対応するように設計された複数のオプションがあります。596-12201(図2)は最大サイズのバリエーションで、寸法は25.4 x 39.6mmです。拡大した幅は、長い識別コードに対応しており、より詳細な識別や判読しやすい名称が必要なケーブルに好適です。長さがあるため、RG6同軸、HDMI、CANバス、標準Ethernetケーブルなど、外径2.5mm~7.6mmの太いケーブルに適しています。

画像:HellermannTyton 596-12201 TabTagラベル図2:大型の596-12201 TabTagラベルは、1ロールに5000枚が1列に3枚ずつ配置されています。(画像提供:HellermannTyton)

対照的に、596-12203(図3)は最小サイズのTabTagのバリエーションで、寸法は12.7mm x 20.8mmです。狭い幅は、シンプルなシステムやラベル幅にスペース上の制約がある場合に、簡潔なコードをサポートします。これらのラベルは、外径4.3mmまでのマルチファイバープッシュオン(MPO)光ファイバ、スリムおよびスーパースリムEthernet、USBケーブルなどの小径ケーブル用に設計されています。

画像:HellermannTyton 596-12203 TabTagラベル図3:小径ケーブルに対応する596-12203 TabTagラベルは、1ロールあたり合計10,000枚を6列で配置しています。(画像提供:HellermannTyton)

HellermannTytonは、太いワイヤでは短いコード、細いワイヤでは長いコードをサポートする追加のTabTagオプションも提供しています。このシリーズの全製品は、アクリル系粘着剤を使用した白色透明100Bビニールで製造されています。紫外線(UV)耐性があり、動作温度範囲は-40~+96°Cで、過酷な環境でも堅牢な性能を発揮します。

カラフルなオプションでラベル印刷を効率化

TabTagシステムを採用する上で重要なステップは、取り付け前にケーブル識別コードが明確に印刷されているかを確認することです。TT230SM(556-00230)プリンタ(図4)は、この作業向けに特別に設計されています。軽量でコンパクトなフォームファクタにより、標準的な技術者用機器と一緒に持ち運ぶことが可能です

画像:HellermannTyton TT230SMはコンパクトなデスクトップ印刷ソリューション図4:TT230SMは、最小限のセットアップ時間で複数のラベルを素早く作成できるコンパクトなデスクトップ印刷ソリューションです。(画像提供:HellermannTyton)

このプリンタの特長は以下の通りです。

  • 高解像度ラベル印刷用300ドット/インチ(dpi)印字ヘッド
  • 高精度のセンサにより、ラベル交換時の較正が不要となり、時間の節約とエラーの低減が可能
  • 大量のラベルを効率的に生産する高速プリントスピード
  • セットアップ、診断、調整を簡素化するLCDユーザーインターフェース

TT230SMは、電源およびコンピュータ接続に必要なケーブル、取り扱いを容易にするラベルホルダ、黒の熱転写リボン、TagPrint Proラベル設計ソフトウェア、耐久性のあるハードシェルキャリングケースを含むキット(556-00239)として購入できます。

また、熱転写リボンは、TT822OUTSM(図5)など、標準的な黒を含むさまざまな色で別途入手可能です。この15mの樹脂ベースのリボンは、+82°Cまでの耐薬品性と耐摩耗性を備え、優れた印刷耐久性を発揮します。内蔵されたクリーニング機構が印字ヘッドの寿命を延ばし、HellermannTyton印刷エコシステム全体のメンテナンスコスト削減に貢献します。

画像:HellermannTyton TT822OUTSM 15m熱転写リボン図5:TT822OUTSM 15m熱転写リボンは、優れた印刷耐久性を提供します。(画像提供:HellermannTyton)

TagPrint Proでラベリングを簡素化

TagPrint Proは、HellermannTytonプリンタの利点を最大限に引き出すために不可欠なソフトウェアツールです。Windowsオペレーティングシステムと互換性があり、視覚的なプレビューを備えた複数のラベルの自動印刷をサポートしています。これにより、交換したケーブル用に新しいラベルを作成したり、新規取り付け用に大量のバッチを生成したりするプロセスが効率化されます。

完全なシステムラベル要件を単一のファイル名でグループ化できるため、ユーザーは印刷時に特定のラベルを視覚的に、または部品番号で見つけることができます。これにより、TagPrint Proでは手動で参考資料を検索する必要がなくなります。このソフトウェアは、標準的なテキストラベル以外のアプリケーションにも対応できるよう、バーコード、QRコード、グラフィック印刷もサポートしています(図6)。

画像:HellermannTyton TagPrint Proソフトウェア図6:TagPrint Proは、多数のラベルを必要とする大規模システム向けに効率化された印刷環境を提供します。(画像提供:HellermannTyton)

まとめ

安全な運用を促進し、頻繁にアクセスするシステムのメンテナンスにかかる時間とコストを削減するためには、明確で効果的なケーブルラベリングが不可欠です。HellermannTytonのTabTagシステムは、ラベルの取り扱いを向上させ、貼付を効率化して作業者の効率を高める人間工学に基づいたタブで、これらの目標をサポートしています。関連する印刷ハードウェアおよびソフトウェアと組み合わせることで、このラベリングシステムは、幅広いアプリケーションにおいて、明確で堅牢、かつコスト効率の高いケーブル管理を可能にします。

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著者について

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Kenton Williston氏

Kenton Williston氏は2000年に電気工学の学士号を取得し、プロセッサベンチマークアナリストとしてキャリアをスタートさせました。その後、EE Timesグループの編集者として、エレクトロニクス業界を対象とした複数の出版物やカンファレンスの立ち上げや指導に携わりました。

出版者について

DigiKeyの北米担当編集者