1.0から4.0までのUSB規格を解説

著者 Jeff Smootは、Same Skyでアプリケーションエンジニアリングおよびモーションコントロール担当副社長を務めています。

画像:Same SkyのUSB規格(画像提供:Same Sky)

ユニバーサルシリアルバスは、USBという略称として知られており、現在最も広く認知されている相互接続規格であると言えます。しかし、多くの方、特にエンジニア以外の方は、USBがどのようなものであるかについて、深く考えておられないかもしれません。簡単に言うと、「バス」は電子システムにおいて異なるコンポーネント間でデータや電力を転送する方法であり、「シリアル」は同一またはいくつかのワイヤでデータを1ビットずつ転送することを意味します。USBは、電子システム内のさまざまなデバイス間の接続に使用されるコネクタやケーブルの「世界共通」(ユニバーサル)仕様を定めた技術標準です。

USBは、1996年の登場以来、デバイス間の相互接続とデータ通信のための簡便な方法として、より多くのことを行えるように進化してきました。USBが1990年代に登場するまで、相互接続の状況は複雑でデータ転送速度も遅いものでした。25年以上にわたる地道な改良と変更により、USBとUSB Implementers Forum(USB-IF)は、当初考えられていた以上の相互接続能力、つまり大きなデータや電力の転送などを実現してきました。しかし、こうした継続的な改良に伴い、新しい規格の策定、既存の規格の更新、さまざまな呼称の作成が行われました。そのため、最新のUSB規格をフォローしようとすると、矛盾を感じて混乱することがあります。本稿は、USB規格の沿革を詳しく解説するとともに、USBの最新の呼称を明確化することを目的としています。

USB登場前の相互接続

前述したように、USB登場よりも前の相互接続の多くは、パラレルの100kB(キロバイト)/秒からシリアルの450kB/秒までというように、データ転送が低速でした。コンピュータメーカーがシリアルポートとパラレルポートの両方を利用していただけでなく、さまざまな独自のプラグ、コネクタ、ケーブルがあり、しばしば専用のドライバやカードが必要とされていました。また、ホットスワップやホットプラグ機能が限られていたため、デバイスを接続する前にハードウェアの電源を切り、再び電源を入れる必要がありました。

USB-IFは1994年にUSB規格の開発を開始し、いくつかのプレリリース(USB 0.8と0.9)を公開しましたが、市販までは行いませんでした。1995年、最後のプレリリースとしてUSB 0.99が公開されましたが、またも市販されることなく終わりました。

USB 1.0および1.1

USB 1.0は、1996年に公開されたUSB規格の最初のメジャーリリースであり、低速モードでは1.5Mbps、フルスピードモードでは12Mbpsのデータ転送速度を実現しています。USB 1.0は、ホットスワップや自動構成などの利便性を備えていたにもかかわらず、最初の市販USBとして広く採用されることはありませんでした。

2年後の1998年には、USB 1.1が登場しました。低帯域のデバイスに合わせて低速で動作できるようになったにもかかわらず、USB 1.0と同等のデータ転送能力を有しています。USB 1.1は、Full Speedとブランディングされ、シリアルポートとパラレルポートの使用を廃止したAppleのiMac G3で採用されたことで有名になりました。これにより、その後のUSB規格の普及に弾みがつきました。また、USB1.0と1.1では、USBコネクタの物理規格であるType AとType Bの使用が規定されています。

図:USBコネクタの規格「Type A」と「Type B」図1:USBコネクタの規格「Type A」と「Type B」(画像提供:Same Sky

USB 2.0

21世紀に入り、PCやその周辺機器の普及に伴い、データ転送速度の高速化ニーズが高まっています。 そこで、2000年4月にUSB 2.0が市場に投入されました。この規格では、データ転送能力が480Mbpsであるという触れ込みでしたが、バスの制約により280Mbpsに減少しました。USB 2.0は、High Speedとブランディングされましたが、従来の規格およびそれらのデータ転送速度1.5Mbpsや12Mbpsとの後方互換性が確保されました。その頃からUSBが電源として使われることが一般的になり、USB 2.0は電気規格として、5Vで最大500mAの電源を供給できるようになりました。

また、USB 2.0はUSB On-the-Goを導入することで、2つのデバイスが別のUSBホストを必要とせずに相互作用できるようにしました。それまでのUSB接続は、ホスト(コンピュータ)と周辺機器(マウス、キーボード、音楽デバイスなど)の間で行われるのが常でした。

USB 2.0は物理コネクタの規格としてはUSB Type A/B/CだけでなくMini & Micro A/Bにも対応していますが、Micro A/BとType Cの物理コネクタはそれぞれ、何年も経った2007年と2014年になってから登場したものです。

USB 3.0

USB 3.0以降はUSB規格の4 番目以降のリリースであり、呼称も変更されています。最新の呼称の詳細を明確化するにあたって、混乱を避けるため規格をオリジナルのリリース名で言及することにします。

USB 3.0は、2008年にリリースされ、最大5Gbps(ギガビット/秒)のデータ転送をサポートしていましたが、その後、3Gbpsに近い速度で転送できるようになりました。USB 3.0は、SuperSpeedUSBとブランディングされ、USB 2.0ハードウェアの4本の接続ラインを8本に倍増し、USB 2.0との後方互換性を保ちつつ、双方向のデータ転送を可能にしました。また、電源能力が「5Vで900mA」に向上しました。さらに、USB 3.0 Type A/BコネクタなどUSB 3.0固有のハードウェアは、互換性を示すために青色になっていることにも注目してください。

USB 3.2の呼称が登場したことにより、USB 3.0はUSB 3.2 Gen 1と呼ばれるようになりました。

USB 3.1

USB 3.1は、2013年にリリースされたものであり、データ転送速度を単純に2倍の10Gbpsまで引き上げただけの暫定規格(この点でUSB 3.0と同様)であって、SuperSpeed+とブランディングされていました。一時期は、USB 3.1 Gen1(USB 3.0)とUSB 3.1 Gen2の2層の呼称がありました。この場合も、USB 3.2の呼称が登場するとともに、USB 3.1 Gen 2がUSB 3.2 Gen 2と呼ばれるようになりました。

USB 3.2

USB 3.2規格は、2017年9月にリリースされ、USB 3.0および3.1規格の呼称に取って代わり、同時に第3層として最大20Gbpsのデータ転送能力を加えたものです。この規格は、USB 3.2 Gen 2x2とブランディングされ、USB Type-C®コネクタのデュアルレーンデータ転送チャンネルをフルに活用し、2本のワイヤペア上で方向ごとに10Gbpsでデータを転送することができます。また、USB 3.2規格の下位2層は、USB 3.2 Gen 1x1およびUSB 3.2 Gen 2x1と記載されていることが多いのですが、これらは使用されるデータラインの数を分かりやすくしたものです。

さらに分かりやすくするために、USB-IFでは、層ごとに、おなじみのSuperSpeed USBの後にデータ転送速度の上限を記したブランディングに更新しています。それらの別称とはSuperSpeed USB 5 Gbps、SuperSpeed USB 10 Gbps、SuperSpeed USB 20 Gbpsです(下の表1にも記載)。

表:定義されているUSB 3.2の呼称表1:定義されているUSB 3.2の呼称(画像提供:Same Sky)

USB 4.0

USB 4.0は、Thunderbolt 3プロトコルをベースとして、最大40Gbpsのデータ転送速度と専用のビデオ伝送方式を備えたもので、2019年8月にリリースされました。また、USBの電力能力がPower Delivery 3.1規格では240Wまで向上しました。Power Delivery規格とUSB 4.0は技術的には別物ですが、同時に開発されたため、一緒に見かけることが多くなっています。最近の両規格は、物理的なUSB Type Cコネクタのハードウェア性能を使用した場合に限ってフルに活用できるものとなっています。

また、USB-IFではUSB 4.0の呼称をUSB4と変更し、以下の2つの層に分けました。

  • USB4 20 Gbps(データ転送速度はこの呼称通り)
  • USB4 40 Gbps(データ転送速度はこの呼称通り)

これらUSB4の各層とUSB 3.2の各層には、消費者の混乱を解消するために、製品に使用するための新しいロゴが設定されています。しかし、デバイスはいまだに旧来の呼称で呼ばれることが多いため、USB規格の呼称が多様化したことでいくつかの問題が起きています。

表:現在のUSBの呼称および対応するロゴ表2:現在のUSBの呼称および対応するロゴ(画像提供:Same Sky)

USBの未来

この記事では、USB規格にまつわる混乱を解消することに努めるとともに、たえず改良されて急速に進化してきたUSB規格の機能とその歴史をご紹介してきました。スマートフォンやモバイル機器、さらには産業用アプリケーションで使用される周辺機器を簡単に接続できる、「USBデバイス」というこの小さく費用対効果の高い手段は、なくてはならない存在になりつつあります。データ転送を行わずに、給電(充電)のみに使用するUSBコネクタ(電源専用に設計されたUSB Type C)も一般的に使用されつつあります。「USBは今後も新しい用途と機能を見出し続けるだろう」と言っても間違いではないでしょう。Same Skyには、複数のUSB規格を満たすさまざまなUSBコネクタUSBケーブルをいろいろなフォームファクタ用に設計できるエンジニアがいるからです。

免責条項:このウェブサイト上で、さまざまな著者および/またはフォーラム参加者によって表明された意見、信念や視点は、DigiKeyの意見、信念および視点またはDigiKeyの公式な方針を必ずしも反映するものではありません。

著者について

Image of Jeff Smoot

Jeff Smootは、Same Skyでアプリケーションエンジニアリングおよびモーションコントロール担当副社長を務めています。

Same SkyのJeff Smootによって提供された記事です。