軸流ファンと遠心ファンの比較
2022-03-22
システム内の余分な熱に対処する場合、不要な熱を除去し、重要な部品に冷気を供給するための一般的な熱管理ソリューションとして、ファンが使用されています。多くの場合、システム電力の調節、ヒートシンクの追加、パイプや冷却プレートの利用といった方法以外に、強制的に換気を行ってさらに冷却する必要があります。
そのため、技術者は軸流ファン設計または遠心ファン設計の選択を迫られます。これは複雑過ぎる決断ではないものの、この記事では、各タイプの基本動作原理を概説し、一般的な用途と使用方法を考察し、長所と短所を要約することを目的とします。
軸流ファンの基礎と応用
軸流ファンは、プロペラファンと呼ばれることもあり、モータで駆動する回転軸(またはシャフト)に斜めに取り付けられた羽根を特長としています。軸流ファンは、一方の端から空気を吸い込み、もう一方の端から軸と平行な方向に強制的に押し出すことで動作します(図1)。チューブ軸流ファンやベーン軸流ファンといった用語も一般的ですが、これらは単にダクトに収めることを目的とした軸流ファンです。
図1:軸流ファンの基本的な気流方向。(画像提供:Same Sky)
軸流ファンには、基板レベルから部屋の大きさほどのサイズまで、ほぼすべてのサイズがあります。また、サイズにもよりますが、通常は、動作に多くの電力を必要としません。ACとDCの両バージョンが提供されています。ACファンはライン電流を利用し、一般的に100V以上の定格です。一方、DCファンは3~48Vdcの範囲ではるかに低い電圧を有し、通常はバッテリまたは電源によって駆動されます。
軸流ファンが生み出す気流は、風量が大きく、圧力は低くなります。この高風量かつ低圧の出力により、決められたエリアに気流を均等に分散できるため、大小さまざまな装置やスペースの冷却によく適しています。軸流ファンは、コンピュータやデータセンター装置の冷却でよく使用されています。また、HVAC、ACコンデンサ、熱交換ユニットで活用され、産業用システムの局所冷却にも使用されています。さらに、換気扇としての役割も果たすことができます。
遠心ファンの基礎と応用
遠心ファンは、ラジアルファンや遠心ブロワとも呼ばれ、モータ駆動のハブ内にインペラを搭載することで、ハウジング内に空気を取り込み、吸気口に対して90度(直角)の排気口から空気を排出します(図2)。
図2:遠心ファンの基本的な気流方向。(画像提供:Same Sky)
遠心ファンは、高圧かつ低風量の出力装置として、基本的にファンハウジング内の空気を加圧し、安定した高圧気流を生成しますが、軸流ファンよりも限定された風量となります。遠心ファンは1つの排気口から空気を排出するため、パワーFET、DSP、FPGAなど、発熱量の大きなシステムの特定の部分を冷却するために、特定のエリアに気流を向ける場合に最適です。軸流ファンと同様にAC型とDC型があり、サイズ、速度、フットプリントもさまざまですが、一般的に消費電力がより大きくなります。遠心ファンの密閉設計によってさまざまな可動部品がさらに保護されるため、信頼性、耐久性、耐損傷性の高い選択肢となります。
遠心ファンと軸流ファンはどちらも可聴ノイズと電磁ノイズを発生しますが、遠心ファンは軸流ファンよりもノイズが大きくなる傾向があります。どちらのファンもモータを使用するため、EMI効果が高感度用途のシステム性能に影響を与える可能性があります。
遠心ファンの出力は高圧かつ低風量であるため、最終的には配管やダクト(図3)のような密集エリアの気流や、換気・排気にとって理想的となります。これは、遠心ファンが空調システムや乾燥システムで良好に機能し、前述の高い耐久性により、微粒子、熱気、ガスを扱う過酷な環境下でも動作可能であることを意味します。電子機器の用途では、遠心ファンは薄型で方向性が高い(吸気口から90度の方向に気流を排出する)ため、一般的にノートパソコンで利用されます。
図3:ダクトに使用する遠心ファン。(画像提供:Same Sky)
ファンのEMIとノイズに対する考慮事項
ファンから発生する電磁妨害(EMI)は、早い段階から考慮すべき設計上の重要な考慮事項です。すべてのファンは、ファン自体からの放射EMI、または電力リード線からの伝導EMIのいずれかを発生させる可能性があります。また、モータの磁石やステータの巻線から発生する抑制不可能な磁界も、干渉の原因となることがあります。用途によって異なりますが、設計の初期段階で入念に考慮することで、将来的に時間とコストを節約できます。一般的に、DCファンはACファンよりもEMIの発生が少なくなります。
図4:遠心ファンよりも軸流ファンのほうがノイズが小さくなる傾向があります。(画像提供:Same Sky)
用途固有のもう1つの設計考慮事項は、ファンによって発生する可聴ノイズです。ノイズは、用途、部品の密度、システム内の配置、ファンのサイズ、移動する空気の量、使用するベアリングのタイプなどによって異なります。ファンのベアリングは音響に影響を与えるだけでなく、寿命や潜在用途にも影響する可能性があります。可聴ノイズは多くの場合、ファンの配置を工夫したり、機械的に隔離したり、吸気口グリルや排気口ディフューザを使用したりすることで軽減できます。確かな経験則として、CFMや気流が多いほど、可聴ノイズは大きくなります。とはいえ、大きなファンと小さなファンが同様のCFM定格を有する場合は、大きなファンのほうが全体的に静かなソリューションとなるのが一般的です。前述したように、通常、軸流ファンは遠心ファンよりも静粛性が高くなるのです。
最終比較
最後に、軸流ファンと遠心ファンのさまざまな長所、短所、および特徴を簡単に比較してみましょう。最適なオプションの選択は、意図する用途、利用可能なスペース、および最終システムの全体的な熱要件によって実際に決まります。
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図5:軸流ファンと遠心ファンの基本特性の比較。(画像提供:Same Sky)
まとめ
不要な熱を発生する電子部品の温度は、軸流ファンまたは遠心ファンを使用することで効果的に管理できます。どちらのファンも、長年の使用と継続的な改良により、現場で実証されています。Same Skyは、技術者の特定の熱要件に適合するよう、さまざまなフレームサイズと気流定格を備えたDC軸流ファンと遠心ファンを幅広く提供しています。
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