堅牢で安全なBluetoothセンサネットワークによる産業用オートメーションの効率向上
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2025-10-21
モノのインターネット(IoT)センサネットワークは、産業用オートメーション、再生可能エネルギー、スマート照明システムにおいて、リアルタイムデータを活用して効率を高め、予知保全によってダウンタイムを削減することで、画期的な変化をもたらすことが実証されています。しかしながら、システムに搭載されるワイヤレスセンサノードの数が増えるにつれ、設計者は、実装コストと運用コストを最小限に抑え、ネットワークの過密性に対処し、セキュリティを確保しながら、過酷な環境下でこれらの産業用IoT(IIoT)ネットワークを確実に拡張することが課題となっています。
この記事では、IIoTネットワークの拡張時に設計者が直面する問題の概要を説明します。続いて、DigiのBluetooth Low Energy(BLE)モジュールと開発キットを紹介し、これらの問題を迅速かつ効率的に解決する方法を示します。
ワイヤレスIIoTインフラの拡張における課題
IIoTは、効率性と予測可能性の向上にデータ収集が不可欠な幅広いアプリケーションをカバーしています。たとえば、スマート照明では、ワイヤレスセンサが周囲の光量や在室データを収集し、エネルギーと関連するコストを節約するため、使用状態をリアルタイムで調整します。
同様に、再生可能エネルギーアプリケーションでは、太陽光や風力などのさまざまなエネルギー源を監視するために、長距離IoTセンサネットワークが使用されています。これらはシステムの状態とパフォーマンスを監視し、問題を予測して、グリッド供給を動的に調整します。
産業用オートメーションを使用する他の分野と同様に、可動部品から取得したデータは、予知保全を実施する上で重要な役割を担っています。産業システム全体に数百ものワイヤレスセンサを設置することで、プロセスの最適化、メンテナンス作業の低減、運用コストの削減につながる詳細なデータインサイトが得られます。しかし、センサネットワークが拡大するにつれ、次のようなパフォーマンスに悪影響を及ぼす問題が生じます。
- 干渉:産業環境は、モータ、スイッチング電源、アーク溶接装置などから発生する高レベルの電磁妨害(EMI)に悩まされることが多々あります。このEMIは、データ伝送の効率を妨げる断続的な通信障害やデータ転送速度の低下を引き起こす可能性があります。
- ネットワークの過密状態:複数のワイヤレスデバイスを近接して運用すると、ネットワークが飽和状態に陥り、遅延の増加や、通信切断が発生します。これによりリアルタイム監視が妨げられ、電力消費量が増加する恐れがあります。
- セキュリティ:エネルギーやロジスティクスなどの重要インフラにおいて、ハッキングは重大な懸念事項です。そのためセンサネットワークは強固なセキュリティを提供する必要があります。しかし、エンドポイントの数が増えれるほど、脆弱性の数も増えます。
もう1つの課題は、ワイヤレスセンサを標準的な産業用プロトコルと統合することです。この統合には、ネットワークトラフィックを削減するためのデータの再フォーマットや圧縮が含まれる場合があります。しかしながら、これらのプロセスにはデバイス上での処理が必要であり、センサやプロトコルの数が増加するにつれ、コストや電力の面で急速に増大する可能性があります。さらに、現場に設置されるセンサの数が増えるほど、故障や、あるいは単なるバッテリ交換など、予測不可能な点検、修理が必要となるため、メンテナンス作業はますます複雑化します。
大規模IIoTにおけるBluetoothの利点
数あるIIoT無線プロトコルの中でも、Bluetoothはセンサネットワークの拡大に伴い生じるさまざまな課題に対応する強力なソリューションを提供します。たとえば、適応型周波数ホッピング(AFH)技術を採用することで、高い干渉耐性を実現しています。AFHはデータを小さなパケットに分割して複数の周波数で送信した後、受信側で再結合します。欠落が報告されたデータパケットは再送信されるため、信頼性の高い通信が確保され、EMIによる長文メッセージの損失を防止します。
ネットワークの過密化を回避するため、Bluetoothは、接続確立後、受信機に対する送信電力制御をサポートしています。この手法はAFHと組み合わせることで、EMIを最小限に抑えながら電力を節約し、数百台ものワイヤレスデバイスを同一空間で動作させることができます。さらに、Bluetoothは強力な暗号化と耐障害性のある認証プロトコルを活用することで、セキュリティ上の脆弱性を軽減します。
IIoT導入環境において、大規模なBluetoothセンサネットワークは主に、複数のデバイスとペアリングするように設計されたゲートウェイを介して通信を行います。Bluetoothを基盤としたセンサノードを構築することで、開発者はスマートフォンやタブレットとのシームレスな相互運用性を提供できます。これにより、セットアップや診断作業が効率化され、メンテナンス効率を向上させることができます。
しかしながら、ワイヤレスネットワークがIIoTに適しているためには、過酷な設置環境にも確実に耐えうる信頼性に加え、低消費電力、コスト効率の高さ、そしてメンテナンスの容易さも重要です。
産業用グレードのBLEモジュールをIIoTネットワークに活用
DigiのXBee 3 BLU BLE 5.4モジュールおよび開発キットは、設計者にワイヤレスIIoTネットワークの導入を迅速かつ容易に実現する手段を提供します。これらのモジュールは、-40°C~+85°Cまでの産業用グレードの温度許容差と、アイドルモードおよびスリープ動作モードの採用により、信頼性と電力要件を満たしています。XBee 3 BLUデバイスは、それぞれ7.5ミリアンペア(mA)および8マイクロアンペア(µA)の消費電流により、アクセスが困難な場所での長期的なリモートセンサ設置を実現します。これにより、定期的なバッテリ交換のためのアクセスを必要とせずに、貴重な情報収集が可能となります。
その他の主な特長は次の通りです。
- 2メガビット/秒(Mbits/s)の最大データ転送速度により、複雑な機械から詳細な情報を得ることが可能
- 最大送信電力が1ミリワット(dBm)基準で+8デシベルのため、屋内で最大15メートル(m)、屋外で最大300メートルの見通し距離で高忠実度の通信が可能
- 13のデジタルI/Oと4つの10ビットA/Dコンバータ(ADC)入力を備え、さまざまな装置やセンサインターフェースと柔軟に統合が可能
- 1.71~3.8ボルトの電源供給により、柔軟な電源オプションを実現
- セキュアブート、保護されたハードウェアポート、デバイス認証を含む、デバイスとネットワーク保護のためのDigi TrustFenceセキュリティ
- 高度なMicroPythonプログラミング機能により、デバイス上のデータ処理および意思決定システムの迅速な開発が可能
- 北米(FCC、IC)および欧州(ETSI)向けの完全な規制認証を取得
XBee 3 BLUモジュールオプションについて
Digiでは、さまざまな設計ニーズやセンサのフォームファクタに対応するため、複数のXBee 3 BLUモデルを提供しています。XB3-24B5UM-J(図1)は、外部アンテナ接続用のU.FLコネクタを備えた面実装ソリューションです。チップアンテナおよびRFパッドアンテナオプションを備えた同様のモデルも提供しています。
図1:XB3-24B5UM-Jは、産業環境における強力なBLE通信のための薄型ソリューションを提供しています。(画像提供:Digi)
13mm × 19mm × 2mm(mm)のこのフォームファクタは、スマート照明器具などの高度に統合された産業環境向けに設計された薄型センサに最適です。プリント回路基板(プリント基板)への直接はんだ付けは、工場のアセンブリラインなどの過酷な環境においても、センサの耐久性と信頼性を高めることが可能です。
また、XB3-24B5PT-J(図2)は、XBee 3 BLUモジュールのスルーホール版です。このフォームファクタは、プリント基板トレースアンテナを備え、U.FLオプションも選択可能です。
図2:XB3-24B5PT-Jはスルーホールモジュールであり、異なるワイヤレスプロトコルに対応する別のXBeeモジュールと容易に交換可能なため、設計の柔軟性が向上します。(画像提供:Digi)
24.38mm × 27.61mmという大きなフットプリントにもかかわらず、このスルーホールフォームファクタは、他のさまざまなアプリケーション向けにIoTセンサを設計する開発者にとって利点となります。共通のキャリアボードにヘッダを取り付けることで、同じセンサ設計でも、より広範なXBeeエコシステム内の別のモジュールと交換することで、異なるワイヤレスプロトコルに対応することが可能です。これにより、開発者の設計負担が軽減され、IIoTインフラに柔軟性が加わります。
XBee開発キットでBLEベースのIIoTシステム開発を効率化
プロジェクト構築を加速するために、設計者はXK3-B5M-WBT XBee 3 BLU開発キットから始めることができます(図3)。XBIBインターフェースボードと主要な周辺機器を備え、ワイヤレスセンサの試作を即座にサポートします。主な構成要素は次の通りです。
- 電流監視用ヘッダ
- 温湿度センサ
- サードパーティ製センサ用Groveコネクタ
- プログラム可能なユーザーボタン
- USBまたはバッテリ電源オプション
図3:XK3-B5M-WBT開発キットは、BLEベースのIIoTセンサネットワーク設計における理想的な出発点を提供します。(画像提供:Digi)
本キットでは、DigiのXBee Studioへのアクセスも提供されます。この無料のマルチプラットフォームアプリケーションは、完全なBLE 5.4ソフトウェアスタックをはじめ、追加のドキュメントやサンプルなど、幅広い開発ツールを通じて市場投入までの時間を短縮します。シンプルなグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)(図4)により、複数のXBeeデバイスを同時に、簡単かつ段階的に設定および管理することが可能です。
図4:XBee Studioは、XBee IIoTノードの開発とテストを加速するために設計された包括的なソフトウェア環境です。(画像提供:Digi)
XBee Studioと併せて、Digi Xbee Mobile Appは、現場での実践的なトラブルシューティングのために、ローカル設定と無線(OTA)ファームウェア更新を可能にします。Digi Mobile SDKは、iOSおよびAndroidシステム向けのアプリ開発をサポートし、開発者がXBeeベースのセンサネットワークとのエンドユーザー操作を効率化することを可能にします。これにより、より容易で効率的なデバイス管理が実現します。
まとめ
データ収集のための大規模なIIoTセンサネットワークを設計する際、開発者は干渉、セキュリティ、統合、メンテナンスに関する多くの課題に直面する可能性があります。Digi XBee 3 BLUモジュールは、低消費電力の産業用グレードBLEソリューションを提供し、組み込みエッジコンピューティング機能によりデータ管理を効率化します。柔軟な統合オプションと充実した開発リソースを備えたモジュールは、高度なセンサネットワークシステムを迅速かつ効率的に構築、拡張するための信頼性の高いプラットフォームを形成します。
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