すべての設計者が知っておくべきメモリカードコネクタの基礎知識

著者 Nick Grillone, Applications Engineer, Same Sky

DigiKeyの北米担当編集者の提供

ソリッドステートメモリカードは、幅広い電子システムにおいてモジュール式で不揮発性のストレージソリューションとして機能し、拡張機能、機能セット、およびユーザー利便性を向上させます。これらのメモリカードをホストデバイスと接続するためには、信頼性の高い機械的および電気的接続が可能な互換性のあるコネクタが必要です。これらのコネクタは、サイズがますます小型化するデバイス制約下でも、安定した性能を維持する必要があります。フットプリントと信号の完全性は、設計上の重要な要素です。メモリカードコネクタを詳細に検討する前に、まずメモリカードアーキテクチャと、組み込み機器および民生用電子機器におけるその役割について、基礎的な理解を深めることが重要です。

メモリカードの概要

メモリカードは、写真、動画、音楽、文書などのデジタルデータを保存する小型のソリッドステートストレージデバイスです。これらは、1980年代に開発されたフラッシュメモリを採用しており、電源が切れてもデータを保持するためにフローティングゲートトランジスタを使用しています。可動部品がないため、フラッシュメモリは高速なアクセス、高い耐久性、電気的に消去および再書き込みが可能な特長を備えています。

年月を経て、メモリーカードは大幅な進化を遂げ、小型化と容量の増加が主なトレンドとなっています。現在の最も一般的な形式には、以下のようなものがあります。

  • SIMカード(加入者識別モジュール):SIMカードはユーザーの認証情報やモバイルネットワークデータを保存し、音声通話、SMS、モバイルインターネットなどの機能を実現します。各SIMカードには、セルラーネットワークとの認証に使用されるIMSI(国際移動加入者識別番号)が格納されています。SIMカードは、廃れたフルサイズ形式(クレジットカードサイズ)から、miniSIM(25 × 15mm)、microSIM(15 × 12mm)、nanoSIM(12.3 × 8.8mm)へと小型化されてきました。モバイルデバイスでは、スペース効率の良さからナnanoSIMが主流となっています。また、miniSIMは現在、SIMまたは標準SIMと呼ばれることが一般的である点にも注意が必要です。
  • SDカード(セキュアデジタル):SDカードは、民生用電子機器においてデータ保存と転送の両方に広く使用されています。スマートフォン、デジタルカメラ、ゲーム機、タブレットPCなどの内蔵メモリを拡張します。現在のバリエーション(SDHC、SDXC、SDUCなど)は、より大容量と高速な転送速度を提供しています。その機械的な形状(標準SD、miniSD、microSD)と標準化されたピン配置により、取り外し可能なメモリの主要な形式として広く採用されています。
  • スマートカード:スマートカードはクレジットカードと同じくらいのサイズですが、認証、暗号化、安全な識別、支払い処理などの追加機能を実現するための集積回路チップを内蔵しています。コンタクトを介して接続するか、RFIDやNFC規格を使用した非接触方式で動作します。これらのカードは、金融、医療、アクセス制御システムなどで広く使用されており、ホストデバイスと互換性のあるリーダが必要です。

長年にわたって変化したメモリーカードのサイズの画像図1:長年にわたって変化したメモリーカードのサイズ。(画像提供:Same Sky

メモリカードコネクタの挿入タイプ

前述の通り、SIMカードとSDメモリカードにおいて、ホストデバイスとの間で安定した電気的な接続が実現できるかどうかは、機械的な相互接続システムによって決まります。この接続は、頻繁な使用や機械的なストレス下でも、安定した信号接続を可能にしつつ、カードの挿入と取り出しをスムーズに行える必要があります。これらの要件に対応するため、最新のコネクタ設計では、異なる使用ケースと機械的制約に最適化された、以下のようなさまざまな嵌合機構が採用されています。

  • プッシュイン/プルアウト:シンプルな設計で、押して挿入、引いて取り外す方式です。ラッチ機構やスプリングはありません。低振動環境や半永久的な取り付けに最適です。
  • プッシュ‐プッシュ(オートイジェクト):スプリング式機構で、1度押して挿入し、もう1度押して取り出します。触覚フィードバックを提供し、民生用デバイスでの頻繁な使用に最適です。
  • ヒンジ式:ロックカバーを使用してカードを固定します。自動車や産業用システムなど、高振動環境において確実な接続が重要な用途向けに設計されています。

各方式は、耐久性、スペース、および使いやすさの面でトレードオフがあり、アプリケーションの機械的および環境的要件によって選択します。

メモリカードコネクタのコンタクトについて

SDカードとSIMカードは、カード表面に配置された導電パッド(ピンまたはコンタクト)を介して、ホストデバイスと通信します。これらのピンは、コネクタソケットの対応するコンタクトと位置合わせをして電気回路を完成させます。各ピンには、ピン配置(ピンアウト)と呼ばれる標準化された配置で特定の機能が割り当てられています。

接続は、ホストデバイスのプリント回路基板(PCB)に搭載された専用ソケットを介して行われます。コネクタは、microSDやnanoSIMなどの特定のカード形式に適合するように設計され、信頼性の高い位置合わせと信号伝送を実現します。

SDカードのコンタクト構成

SDカードは、複数のインターフェース規格の採用により、より高いデータレートに対応するように進化してきました。標準的なフルサイズのSDカードには9つのコンタクトピンがありますが、microSDバージョンは通常8つです。UHS-IIやSD Expressなどの高速モデルでは、信号帯域幅の増加に対応するため、ピンや2列目のピンが追加される場合があります。最新のSDカードは、以下の通信プロトコルに対応しています。

  • SPI(シリアルペリフェラルインターフェース):組み込みシステムや趣味の電子工作などで広く使用される、シンプルで低速なインターフェースです。
  • SDバスインターフェース:デフォルト速度からハイスピード、UHS-I、UHS-II、UHS-IIIまで、各段階ごとに転送速度が高速になります。
  • PCIe/NVMe:SD Expressカードに採用されているこのインターフェースは、超高速データアクセスをサポートし、プロフェッショナルグレードの動画、大容量ファイルの転送、SSD並みの性能を実現します。

コネクタの設計は、カードのピン配置および対応するプロトコルと一致させる必要があります。これにより、完全な機能性とデータの完全性が保証されます。

SIMカードのコンタクト構成

SIMカードは通常、6~8本のコンタクトピンを備えており、正確な数はカードの形式とアプリケーション要件によって異なります。8ピンSIMカードのコンタクト機能は以下の通りです。

  • VCC:電源入力
  • GND:グランドリファレンス
  • CLK:データ同期用のクロック信号
  • I/O:双方向シリアルデータライン
  • VPP:プログラミング電圧
  • RST:シグナルリセット
  • RFU: 将来の使用のための予約(通常は2ピンで、標準的なアプリケーションでは非アクティブ)

6ピンのSIMカードは、2つのRFUコンタクトを省略し、必須のライン(VCC、GND、I/O、CLK、RST、およびVPP)のみを残しています。

一部のSIMコネクタには、カード検出用の1つまたは複数の追加のピンがあります。これらのピンはコネクタの一部であり、SIMカードではありません。カードが挿入されると、これらのピンは機械的にグラウンドに短絡されます。これにより、ホストシステムはカード挿入/取り外しイベントを検出し、信号コンタクトに影響を与えることなく適切に対応できます。

SDカードとSIMカードのピン配列の比較の画像図2:SDカードとSIMカードのピン配列の比較。(画像提供:Same Sky)

スマートカードのコンタクト構成

既に述べたように、スマートカードは、組み込みプロセッサとメモリ(RAM、EEPROM、ROM)を搭載したクレジットカードサイズのデバイスです。ホストシステムとの接続は、コンタクトパッドまたは非接触RF通信のいずれかを介して行われます。スマートカードソケットは、信頼性の高いデータ交換と頻繁な使用に対応する安全で取り外し可能なインターフェースを提供します。スマートカードのコンタクト構成は、上記で説明した8ピンのSIMカードと同じです。

成長を続けるメモリカードアプリケーション

SIMカードの登場は、ユーザー認証とネットワークアクセスを可能にすることで、モバイルデバイスのコネクティビティを一変させました。同様に、SDカードの進化は、データ転送と拡張のための安全で取り外し可能なストレージにより、デバイスの機能性を大幅に向上させました。当初は携帯電話やポータブル電子機器向けに開発されたメモリカードアプリケーションは、現在では、ホームセキュリティ、IoTデバイス、ウェアラブルデバイス、ドローン、ゲームコンソールなど、幅広い先端技術分野に拡大しています。

まとめ

最新のメモリカード技術は、多様なデバイス間で高性能なデータストレージとコネクティビティを実現しています。SD、SIM、スマートカードなどの多様な形式に対応するため、コネクタ、イジェクタ、エクステンダ、アダプタを含む幅広い相互接続ソリューションが用意されています。これらのコンポーネントは、トップマウントとボトムマウントのオプションや超低プロファイル設計を採用しており、小型設計やスペースが限られたアプリケーションに最適です。Same Skyの相互接続ソリューションメモリカードコネクタは、ほぼすべての設計要件に対応するため、幅広い構成で提供されています。

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著者について

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Nick Grillone, Applications Engineer, Same Sky

Nick Grillone brings over 10 years of customer support experience to the Same Sky's Applications Engineering team. His technical and application expertise is particularly focused on our diverse range of audio components, such as microphones and speakers, as well as our sensor technology offering. In his spare time, Nick enjoys all things outdoors with his partner and his dog, including backpacking, camping, cycling, and paddleboarding.

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DigiKeyの北米担当編集者