科学のスーパーボウルに潜入:2023年Regeneron Science Talent Search

図1:Regeneron STS 2023の受賞者:エミリー・オカシオ、ニール・ムードガル、エレン・シュウ。(提供:Society for Science)

高校の科学フェアは、体育館でレゴのロボットや火山の模型を展示することから、長い道のりを歩んできました。現在では、若手科学者に奨学金や研究助成金など、数百万ドルの賞金を授与する高額なコンペティションが行われています。全国大会での入賞は、並外れた学業やキャリアの機会への出発点となり得ます。これらのイベントは、世界で最も優秀な科学者や学者、次世代のSTEMリーダーを発掘している企業との交流の機会を提供しています。

Regeneron Science Talent Search

Regeneron Science Talent Search (STS)は、世界で最も権威のあるコンテストの1つです。また、賞金額も最も高く、1位の賞金はなんと250,000ドルです。1942年に設立されたRegeneron STSは、アメリカで最も歴史のある科学と数学のコンテストです。もともとはWestinghouse STSとして知られていたが、1998年にIntelがスポンサとなりました。2017年にRegeneronが10年で、1億ドルのコミットメントを行い、その座を射止めました。(Regeneronは、難病に対して人生を転換させる薬を開発する世界的なバイオテクノロジー企業です。)プログラム自体は、1921年以来、科学リテラシ、科学研究、STEM教育へのアクセスを目指して活動している非営利団体、Society for Scienceが運営しています。

図2:Regeneron STSのロゴ。(提供:Society for Science)

受賞までの流れと賞品

STSは、独創的な研究プロジェクトを完成させた高校の最上級生のみが参加できます。競争は激しく、応募の手続きは多岐にわたります。(応募規約と応募要領は43ページに及びます。)研究報告や科学的なメリット、学問的な適性や成果、科学界のリーダーとしての総合的な可能性などを基準に、博士号取得レベルの科学者のパネリストが評価し、採点します。

年間約2,000件の応募の中から、STS奨学生として認定されるのはわずか300件です。各奨学生には、出身高校のSTEMプログラムのために2,000ドルが授与されます。STSファイナリスト40名には、1週間にわたるワシントンD.C.での直接対決のための招待旅行が贈られます。10位から1位までの賞金は40,000ドルから250,000ドル(図3参照)で、残りの30名の学生には25,000ドルが贈られます。賞金は、受賞者の教育資金として、または直接、希望する大学や専門学校に支払われます。

図3:Regeneron STS賞(提供:Society for Science)

2023年受賞者の紹介

結果は2023年3月14日に発表されました(図1)。第1位のニール・ムードガル(17歳、ミシガン州サライン)は、がん、自己免疫疾患、ウイルス感染症などの病気に対する新しい診断薬や治療薬の開発を促進するために、さまざまなRNA分子の構造を迅速かつ確実に予測するコンピュータモデルを開発しました。

第2位は、AIモデルを使って、公開されているFBIデータと Boston Globe のアーカイブ記事を照合したエミリー・オカシオ(18歳、バージニア州フォールズチャーチ)でした。彼女のプロジェクトは、殺人事件の被害者についての報道において、人種、性別、年齢に基づく隠れた偏見を実証しました。

エレン・シュウ(17歳、カリフォルニア州サンディエゴ)は、畳み込みニューラルネットワーク(機械学習のサブセット)のコンピュータモデルで、幼い子供に起こる珍しい心臓病である川崎病の診断を改善し、3位に入賞しました。

その他の上位入賞者には、q-calculusを研究し、「s-calculus」という独自のバージョンを開発したマックス・ミスターカ(16歳、バージニア州ハリソンバーグ)に10万ドルが贈られました。彼は、量子物理学の分野に役立てたいと考えているようです。リンデン・ジェームズ(17歳、ノースカロライナ州ダーラム)は、ヒトの外傷性脳損傷の治療に甲状腺ホルモンT3を使用することの有益性を調査し、アンビカ・グローバー(17歳、コネチカット州グリニッジ)は、脳卒中患者の血栓を取り除くための注射用マイクロバブル療法を考案しました。

Regeneron STSの参加者の創造性とモチベーションを考えると、卒業生にノーベル賞受賞者13名 全米科学メダル受賞者11名、フィールズメダル受賞者2名、マッカーサー財団フェロー、スローン研究フェロー、科学アカデミー入会者数十名がいるのも不思議ではないかもしれません。

STEMギャップの解消

女子中学生の約75%がSTEMに強い関心を示していますが、高校に入るとその数は大きく減少します。大学時代には、ほとんどのSTEM分野で男性が女性を圧倒的に上回り、現在ではSTEM分野の労働者に占める女性の割合はわずか28%です。このギャップを埋めるには、高校時代を通じて女子の科学への熱意を育むことが必要だと思われます。Regeneron STSのような大会での仲間意識と指導が、まさにその一助となっています。実際、過去5回のSTS大会のうち3回で女性が1位を獲得しており、2023年のファイナリストも半数以上が女性です。

2022年の第1位受賞者であるクリスティーン・イェは、25万ドルの奨学金をスタンフォード大学で使っています。受賞したプロジェクトは、中性子星とブラックホールの大衝突から放出される重力波を解析したものです。現在、彼女は天体物理学を中心に物理学を専攻しており、すでに権威ある Astrophysical Journalに研究論文が掲載されています。

2024年Regeneron STSの募集は、2023年6月1日から開始します。締め切りは11月上旬です。

 

参照:

1 - Society for Science(2023年、3月14日)。RNA分子の構造、メディアの偏り、小児心臓病の診断法に関する素晴らしい科学的研究により、2023年Regeneron Science Talent Searchで学生たちが180万ドル以上を獲得。www.Societyforscience.org。2023年3月15日に取得しました。

2 - Association of American University Women(n.d.).STEMギャップの解消。www.aauw.org。2023年3月15日に取得しました。

著者について

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Julie Eleftheriou is a freelance technical writer, editor, and content creator. Her specialty is translating complex subject matter into material that all audiences can understand and appreciate. As a full-time writer for more than 20 years, she’s covered topics from automation and design to genetic testing and financial services. Julie lives in the Los Angeles area with her family and an ever-expanding coterie of pets.

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