FPGAシステム設計にFPGA SoMを使用する理由

著者 Tawfeeq Ahmad(タウフィーク・アハマド)

FPGAの需要は、データセンター、高性能コンピュータ、医療用画像処理、精密なレイアウトトレース、特殊なPCB材料、フォームファクタの制約、熱管理などの用途の拡大に伴い高まっています。以前は、ハードウェア設計者は「チップダウン」のアーキテクチャを選択し、特定のシリコンデバイスを選択することで、アプリケーション用に完全にカスタマイズされた回路基板を開発していました。このアプローチは高度に最適化された実装をもたらしますが、生産準備に到達するまでに多大な開発時間とコストが必要になります。時間と費用を節約するために、設計チームは現在、マルチチップモジュール(MCM)、システムインパッケージ(SiP)、シングルボードコンピュータ(SBC)、システムオンモジュール(SoM)のような、より統合されたソリューションを検討しています。

FPGA SoMの市場は急速に拡大しており、より幅広いユーザーがFPGAベースのプラットフォームを採用できるようになっています。これらのSoMは、その適応性の高いアーキテクチャとユーザーフレンドリーな設計により、さまざまなアプリケーションで広く使用されています。

FPGAシステムオンモジュールの概要

FPGA SoMは、スタンドアロンのシングルボードコンピュータとは異なり、より大きなシステムに統合できるように設計された小型の計算モジュールです。高速DDRメモリ、フラッシュストレージ、電源管理、共通インターフェースコントローラ、ボードサポートパッケージ(BSP)ソフトウェアなどの重要なコンポーネントに加え、高速トランシーバブロックや、Ethernet、USB、PCIeなどの複数の通信プロトコルもサポートしています。

SoMのアプローチは、主なコンピューティングパーツとソフトウェアを備えたビルド済み、テスト済みのモジュールを提供することで、開発時間を短縮し、コストを削減し、部品調達を簡素化するという大きな利点をもたらします。これにより、研究開発チームは企業固有のニーズに集中することができ、より予測可能な設計サイクルとより良いビジネス成果につながります。また、SoMはスケーラビリティと柔軟性を備えているため、システム全体をオーバーホールせずに、コンポーネントのアップグレードや変更を簡単に行うことができます。企業はSoMを活用することで、製品をより早く市場に投入し、設計ミスのリスクを低減し、全体的な効率を向上させることができるようになるため、さまざまな先進アプリケーションにとって魅力的なソリューションとなります。

市場投入までの期間

SoMベースのアプローチを採用することで、開発時間を大幅に短縮し、市場投入までの時間を短縮できます。SoMはiWaveなどのメーカーによって事前にテストおよび認定されているため、設計者はこれらのモジュールをより迅速に、より少ないエラーで製品に組み込むことができます。この事前検証により、モジュールが高水準の信頼性と性能を満たしていることが保証されるため、社内で大規模なテストやトラブルシューティングを行う必要がなくなります。企業はSoMを活用することで、開発サイクルを合理化し、設計や検証のプロセスに費やす時間とリソースを削減することができます(図1)。その結果、システム統合の複雑さに煩わされることなく、独自の価値提案やコアコンピタンスに集中できるようになります。また、SoMのモジュール的な性質は設計プロセスに柔軟性をもたらすため、開発の後期段階でも大幅な手直しをすることなく変更や調整が可能になります。

SoMを使用することで設計時間を大幅に短縮できることを示す画像図1: SoMを使用することで、設計時間を大幅に短縮し、市場投入までの期間を短縮できます。(画像提供:iWave)

開発のコストと複雑さ

生産準備が完了して認定されたSoMを利用することで、FPGAシステム設計の複雑さが大幅に軽減されます。企業はテスト済みのSoMを製品開発に統合することで、ハードウェアの設計ミスや互換性の問題に伴うリスクを軽減できます。このアプローチにより、市場投入までの時間を短縮できるだけでなく、開発と検証の全体的なコストも削減できます。SoMは、厳しい電磁両立性(EMC)試験や、熱サイクルや経年劣化などのさまざまな環境ストレス試験など、厳格なテストを受けています。これらのテストにより、モジュールが信頼性の高い性能を維持しながら過酷な使用条件に耐えられることが保証されるため、社内で大規模なテストや検証を行う必要性が最小限に抑えられます。

製品のモジュール性とスケーラビリティ

FPGAシステムオンチップ(SoC)ソリューションにSoMベースのアプローチを採用する主な利点の1つは、モジュール性とスケーラビリティの向上です。SoMは、幅広いFPGAロジック密度、I/O構成、トランシーバ機能をサポートするように設計されています。この柔軟性により、製品設計者はハードウェアアーキテクチャ全体を再設計することなく、特定のアプリケーション要件に沿った適切なSoMを選択することができます。たとえば、1つのキャリアボードアーキテクチャで、基本的な機能を備えた小型のFPGAから高度な処理能力を備えた大型で複雑なFPGAまで、さまざまなSoM構成に対応できます。このモジュール性により、シームレスなスケーラビリティと設計の将来性が促進され、市場の要求の変化に応じて、より新しい世代のFPGAや追加機能へのアップグレードが容易になります。

モジュール性とスケーラビリティを向上させるFPGA SoCの画像図2:FPGA SoCはモジュール性とスケーラビリティを向上させます。(画像提供:iWave)

サプライチェーンと製品ライフサイクルの管理

FPGAベースのシステムのサプライチェーンを管理するには、さまざまな仕入先から調達した多数のコンポーネントを調整する必要があります。SoM中心のアプローチは、調達とサプライチェーン管理の責任をiWaveのようなSoMベンダーに集約することで、この複雑さを簡素化します。これらのベンダーは、主要部品の仕入先との戦略的関係を維持しており、安定した供給力と競争力のある価格設定を確保するために、先を見越した予測技術を採用しています。このプロアクティブな管理は、リードタイムを短縮し、調達リスクを最小限に抑え、在庫管理を最適化し、最終的に企業のコスト削減と業務効率化に貢献します。

SoM中心のアプローチで複雑さを簡素化することを示す画像図3:SoM中心のアプローチは、調達とサプライチェーン管理の責任を統合することで、複雑さを簡素化します。(画像提供:iWave)

効果的な製品ライフサイクル管理(PLM)は、FPGAベースの製品の寿命と競争力を維持するために極めて重要です。SoMベンダーは、部品の陳腐化や市場動向を継続的に監視することで、この面で極めて重要な役割を果たしています。こうしたベンダーは、SoMの設計やソフトウェアパッケージを積極的に更新し、新機能や拡張機能、セキュリティパッチを組み込んでいます。このプロアクティブなアプローチは、コンポーネントのEOL(生産終了)発表に伴うリスクを軽減し、シームレスな製品継続を保証し、顧客業務の中断を最小限に抑えます。PLMの責任をSoMベンダーに委ねることで、企業はサプライチェーンの動態管理や製品ライフサイクルのリスク軽減ではなく、イノベーションとコアコンピタンスに社内のリソースを集中させることができます。

ソフトウェア開発者にとっての利点

FPGAベースのシステムのソフトウェア開発は、SoMを使用することで合理化および加速できます。これらのモジュールには、検証済みのボードサポートパッケージ(BSP)とリファレンス設計が搭載されており、標準化されて安定したソフトウェア開発環境が提供されます。開発者はこれらのリソースを活用することで、異なるハードウェア構成にソフトウェアを適合させる複雑な作業を行うことなく、アプリケーションソフトウェア開発を迅速に行えます。このアプローチにより、開発サイクルを短縮できるだけでなく、ソフトウェアの信頼性と互換性を高め、開発者がアプリケーションのパフォーマンスと機能の最適化に集中できるようになります。

iWaveは、AMD、Altera、Achronixなどの大手FPGAベンダーと共同で、多様で包括的なSoMポートフォリオを提供しています。この提携により、iWaveは最先端のFPGA技術にいち早くアクセスできるようになり、さまざまなアプリケーションのニーズに合わせた幅広いSoMや商用オフザシェルフ(COTS)モジュールの開発が可能になります。たとえば、AMDのZynq UltraScale+シリーズでは、iWaveはiW-RainboW-G35M、iW-RainboW-G30M、iW-RainboW-G47Mといった複数のオプションを提供しており、それぞれが異なる性能要件に適した異なる構成を提供しています。同様に、iWaveはAlteraやAchronixと共同で、iW-RainboW-G58M Agilex 5 SoC FPGAやiW-RainboW-G64M Speedster7T SoMなどのSoMを提供しており、多様なFPGAプラットフォームに対応する能力を示しています。

まとめ

iWaveは、SoMポートフォリオ以外にも、キャリアボード設計、FPGA IP開発、移植、カスタマイズ、Linuxおよびボードサポートパッケージ(BSP)の移植、認証、機械設計など、さまざまなFPGA設計サービスで顧客をサポートしています。1999年の創業以来、iWaveは組み込みシステムエンジニアリングを専門とし、産業、医療、自動車、航空電子機器などの業界にサービスを提供してきました。また、FPGAやSoC FPGA技術に関する広範な専門知識により、厳しい業界標準を満たす堅牢なソリューションを提供し、世界中の顧客がシームレスな製品開発を行えるよう支援しています。

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著者について

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Tawfeeq Ahmad(タウフィーク・アハマド)

Tawfeeq Ahmadは、iWave Systems Technologies Pvt.Ltd.でプロダクトマーケティングを担当しています。電子機器への情熱とマーケティングやセールスへの関心を持つTawfeeqは、iWaveの幅広い組み込みの専門知識を活用して、世界中の組織が製品開発のサイクルを短縮し、効率化を図る支援をすることを目指しています。エレクトロニクスおよび通信の学士号とマーケティングのMBAを持つTawfeeqは、iWave Systemsを製品エンジニアリング組織の世界的なリーダーにすることを目指しています。