熱伝導率センサが優れた水素漏れ検知器である理由

著者 Ashok Bindra

DigiKeyの北米担当編集者の提供

大型トラックからバス、自動車、さらには航空機や船舶に至るまで、水素発電による動力は、ゼロエミッション、迅速な燃料補給、長距離走行、高効率といったいくつかの理由から、輸送分野で注目を集めています。従来の化石燃料ベースの内燃機関(ICE)が排出する温室効果ガスと比較すると、水素燃料電池は排気ガスとして水蒸気のみを発生させます。コストとインフラは依然として導入上のハードルとなっていますが、技術の進歩により効率はさらに改善されており、一方で脱炭素化への動きが高まる中、化石燃料に代わるクリーンな燃料としての水素への関心と投資が引き続き強まっています。

水素を動力源とする輸送手段の普及に伴い、これらのシステムにおける水素漏れを検知する必要性が非常に高まっています。水素分子は非常に小さく拡散性が高いため、材料やシール部から漏れ出しやすく、水素発電システムでは漏れが頻繁に発生します。さらに、水素は水素脆化を引き起こす可能性があります。これは水素が鋼鉄などの材料に浸透し、経時的に材料を弱くさせるプロセスであり、漏れの発生機会を増大させます。水素はまた、非常に可燃性が高く、無色、無臭、無味の気体であるため、瞬時に危険な状況を作り出す可能性があります。漏れが発生した際には、場所や時間を問わず、即座に検知しなければなりません。

電気化学センサや触媒ビーズセンサなど、水素漏れを検知する方法は数多くありますが、最も効果的で正確な方法は熱伝導度型検出(TCD)センサによる検知です。これらは、センサを通過する水素の熱的特性を正確に測定し、空気の熱的特性と比較することで機能します。

HLDセンサの主な特長

TCDセンサがガス漏れ検知、特に水素漏れ検知(HLD)センサとして優れている主な特長には、衝撃や振動などのさまざまな条件下での安定性、2秒未満の高速応答時間、高精度、高感度などが挙げられます。Honeywell Sensing and Productivity SolutionsHLD-111-111-001センサ(図1)は、高度な補正アルゴリズムを実装し、低レベルの水素漏れを検知します。これにより、10年間にわたり手動操作を必要とせず、正確なソリューションを提供します。

HoneywellのHLD-111-111-001センサの画像図1:HoneywelのHLD-111-111-001センサは、熱伝導度型検出技術を採用し、水素漏れを確実かつ正確に監視します。(画像提供:Honeywell Sensing and Productivity Solutions)

さらに、TCDベースのHLDセンサは、他のセンサ技術に影響を与える可能性のある化学物質による汚染の影響を受けにくい特性もあります。経時劣化を起こす化学センサや、硫黄などの化合物による被毒の影響を受けやすい触媒式センサとは異なり、HLDセンサは反応性材料を使用しないため、はるかに長い寿命と高い信頼性を実現しています。

また、TCDセンサは起動時間が1秒未満であり、動作温度範囲は-40°C~+85°C(-40°F~+185°F)です。

水素漏れ検知器としてのTCDセンサの主な利点

水素漏れの監視に熱伝導度型検出センサを使用することには、いくつかの利点があります。高い精度が保証されるだけでなく、長寿命であることが挙げられます。HLDセンサは、手作業や較正なしで最長10年間動作するように開発されており、メンテナンスコストとダウンタイムを削減します。他のガスセンサと異なり、熱伝導率ベースのHLDセンサは、効率的で安定した検知を行うために酸素を必要としません。HLDセンサは、触媒ビーズのような他のタイプのセンサが動作しなくなる不活性または酸素欠乏環境でも動作します。

また、HLDセンサは応答時間が非常に速く、自動車や燃料電池システムなどの安全性が求められる用途において極めて重要です。高い感度と精度により、安全上のリスクとなる前にごく微量の水素漏れを検知することが可能です。迅速な漏れ検知により、危険な状況の悪化を防ぐための早急な是正措置が可能となります。さらに、過酷な産業環境下でも信頼性と耐久性に優れ、水素安全基準や業界規制への適合をサポートします。

最後に、構造が単純なためコストが低く、大量生産可能な再現性の高いソリッドステート検出素子を用いて製造できることから、広範囲に展開するための経済的な選択肢となります。

代表的なHLDの応用例

TCDセンサの代表的な応用分野には、燃料電池自動車(FCEV)、水素ステーション、水素発生装置、化学処理、金属精錬、半導体製造などの産業用途、水素貯蔵、流通、船舶用途などがあります。

他の電気自動車(EV)と同様、FCEVは電気モータを動かすために電気を使用し、その電気は水素を燃料とする燃料電池で生成されます。したがって、燃料システムにおける水素漏れは安全上の危険をもたらし、車両の効率を低下させる可能性があります。HLDセンサは、FCEVの水素タンク、パイプライン、燃料電池スタックを常時監視することで、漏れを検知し、危険な状況を防ぎ、水素燃料効率を維持します(図2)。

Honeywell TCDベースのHLDセンサの画像図2:燃料電池式電気自動車に搭載されたTCDベースのHLDセンサは、水素漏れなどの危険な状況を防止し、水素燃料効率を維持します。(画像提供:Honeywell Sensing and Productivity Solutions)

同様に、水素を動力源とするEVは、高圧貯蔵タンクと燃料ステーションに依存しており、これらの漏れが重大な安全リスクをもたらす可能性があります。TCDは、燃料インフラの漏れを常時監視することで、EVメーカーが発火リスクを軽減できることを保証します。同時に、これらのセンサを水素ディスペンサや水素貯蔵システム全体に配置することで、運用効率と安全性を高め、ダウンタイムを最小限に抑え、水素補給インフラに対する消費者の信頼を高めることができます。

同様に、水素発生装置は、産業、医療、エネルギー用途における現場での水素製造に不可欠です。これらの発生装置周辺のユーザーの安全のために、HLDセンサは重要な場所に設置され、わずかな漏れを検知し、ガス蓄積、火災、爆発などの危険を防止します(図3)。

ユーザーの安全のためにHLDセンサを採用した水素発生装置の画像図3:水素発生装置はユーザーの安全のためにHLDセンサを採用しています。(画像提供:Honeywell Sensing and Productivity Solutions)

化学処理、金属精錬、半導体製造、倉庫物流などの他の産業分野においても、水素エネルギーの利点を活用する動きが広がっています。たとえば、水素燃料電池フォークリフトは、迅速な燃料補給能力とゼロエミッションのため、倉庫での使用が増加しています。作業現場の安全は、フォークリフト周辺や燃料補給ステーションの重要な場所にHLDセンサを設置し、周辺の漏れをリアルタイムで監視することで確保されます(図4)。HLDセンサを活用することで、倉庫運営者は水素フォークリフトの安全な運用を確保しながら、同時に作業効率を維持し、コストのかかるダウンタイムを防止しています。

水素燃料フォークリフトの安全運用を保証するHLDセンサの画像図4:HLDセンサは水素燃料フォークリフトの安全な運用を保証します。(画像提供:Honeywell Sensing and Productivity Solutions)

高感度で安定性、信頼性に優れたソリューションの提供

Honeywell Sensing and Productivity SolutionsのHLDシリーズセンサは、熱伝導度型検出技術を採用し、自動車、輸送、産業安全、住宅用電源など、多岐にわたる産業分野のさまざまな用途において、高感度、安定性、信頼性を提供します。これらのセンサは、温度、圧力、湿度などの要因を補正する独自のアルゴリズムを組み込んでおり、幅広い動作条件下で正確な測定値を保証します。その結果、わずか50ppmという微量な漏れを±10%の精度で、わずか2秒以内に検知することが可能です。HLDセンサはその独自の特性により、一酸化炭素や炭化水素など他の環境ガスが存在する場合でも、誤検知を防ぐことができます。

HLDセンサは、軽量化や補助出力の搭載など、用途の要求に合わせてカスタマイズが可能です。ソリューションは、製品化までの時間短縮、システム全体のコスト削減、信頼性の向上を実現するため、正確な仕様に合わせてカスタマイズが可能です。HLDセンサは、耐火性(UL94V0)と防塵防水性能(IP67)を備えた頑丈なポリカーボネート製ハウジング仕様と、カスタム統合向けのハウジングなし(回路基板のみ)仕様の両方でご用意しています。

まとめ

水素は、温室効果ガス排出量の削減や化石燃料への依存軽減が期待できるため、持続可能なエネルギー目標達成に向けた有望なクリーンエネルギー代替案として、多くの産業分野で注目を集めています。Honeywell Sensing and Productivity Solutionsは、安全性上の懸念を軽減し、水素燃料電池に対する顧客の信頼を構築するため、高精度かつ信頼性の高いHLDセンサシリーズを通じて、この移行をサポートしています。

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