エンコーダ技術の利点と妥協点を検討

著者 Jeff Smootは、Same Skyでアプリケーションエンジニアリングおよびモーションコントロール担当副社長を務めています。

ロータリエンコーダは、産業用オートメーション装置、プロセス制御、ロボティクス、医療デバイス、エネルギー、航空宇宙など、さまざまなアプリケーションのモーション制御フィードバックループにおける重要なコンポーネントです。エンコーダは機械的なモーションを電気信号に変換するデバイスとして、システム全体の性能の最適化に利用できる、位置、速度、距離、方向などの重要なデータを技術者に対して提供します。

技術者が自由に使用できるエンコーダの3つの主要な技術には、光学、磁気、容量式があります。しかし、このうちのどれがエンドアプリケーションにとって最適かを決定するにあたっては、いくつかの点を考慮する必要があります。この記事ではこの選択プロセスに役立つよう、光学、磁気、容量式エンコーダ技術の概要について紹介し、それぞれの技術の利点と妥協点について説明します。

エンコーダ技術の概要

光エンコーダ

光エンコーダは長年の間、モーション制御の市場で頻繁に利用されている選択肢です。このエンコーダは、LED光源(一般には赤外線)と光検出器で構成されています。光源と検出器は、それぞれがエンコーダディスクの反対側に配置されています。このディスクはプラスチックまたはガラス製であり、一連の透明および不透明なライン(スロット)が交互に並んでいます。ディスクの回転中、LEDライトの経路はディスク上にある交互のライン(スロット)によって遮断されます。これにより、一般的な矩形波AおよびBの直交パルスが作られ、このパルスがシャフトの回転や速度の決定に使用されます。

光エンコーダの一般的なAおよびBの直交パルスの画像図1:光エンコーダの一般的なAおよびBの直交パルス、そしてインデックスパルス(画像提供:Same Sky

幅広く使用されているにもかかわらず、光エンコーダにはいくつかの短所があります。産業用途などの埃や汚れが多い環境では、ディスクに汚染物質が付着して、LED光が光センサまで到達できなくなることがあります。この状態は、光エンコーダの信頼性と精度に大きな影響を与えます。汚染されたディスクが原因で、矩形波が散逸したり、完全に消失したりする可能性があるためです。また、LEDにも寿命があり、最終的に寿命が尽きることによって、エンコーダの障害が発生します。さらに、ガラス製またはプラスチック製のディスクは振動や極端な温度による損傷を受けやすいため、使用できる範囲が堅牢なアプリケーションに限られます。その一方で、モータへのアセンブリには時間がかかる場合があるうえに、開けたままの状態にすることで汚染のリスクがさらに高まります。加えて、分解能が高い光エンコーダは100mA以上の電流を消費する可能性があるため、モバイルや電池駆動のデバイスでの利用にさらに影響が及びます。

磁気エンコーダ

磁気エンコーダは構造が光エンコーダと似ていますが、光線ではなく磁場が使用されるという点が異なります。磁気エンコーダではスロット付きの光学ホイールの代わりに、極が交互に配置された磁気ディスクが使用され、このディスクがホール効果(磁気抵抗性)センサのアレイ上で回転します。ホイールが回転するとこれらのセンサが反応し、この反応が信号を調整するフロントエンド回路に送られてシャフト位置が決定されます。磁気エンコーダには、光エンコーダに比べて衝撃や振動への耐久性が非常に高いという利点があります。光エンコーダが埃、汚れ、油などの汚染物質の悪影響を受けやすい一方で、磁気エンコーダはこうした物質の影響を受けないため、厳しい環境での利用に適しています。

ただし、磁気エンコーダは、電子モータ、特にステッピングモータが原因で発生する磁気干渉の影響を非常に受けやすく、温度の変化によって位置ドリフトが発生します。また、分解能や精度が比較的低いことから、性能は光学および容量式エンコーダには及びません。

容量式エンコーダ

容量式エンコーダの3つの主要コンポーネントは、ローター、固定式トランスミッタ、そして固定式レシーバです。静電容量式センシングはバーまたはラインのパターンを使用し、一方を固定要素、もう一方を可動要素に設定し、一対のトランスミッタ/レシーバで構成される可変コンデンサを形成します。ローターの動作とモータシャフトに取り付けられたその正弦波パターンが、固有でありながら予測可能な信号を生成します。この信号は、シャフトの位置と回転の方向を計算するためにエンコーダのオンボードASICによって変換されます。

エンコーダディスクの比較画像図2:エンコーダディスクの比較(画像提供:Same Sky)

容量式エンコーダの利点

容量式エンコーダは、デジタルノギスの開発に使用されるものと同じ原理が利用された、光学および磁気エンコーダの欠点の多くを克服するためのソリューションです。Same SkyのAMTエンコーダシリーズでは、この容量式ベースの技術が実装されており、高い信頼性と精度を実現することが実証されています。LEDや見通し線が必要ないことから、容量式エンコーダは、埃、汚れ、油など、光エンコーダに悪影響を与える環境汚染にさらされても予期したとおりの性能を発揮します。また、光エンコーダのガラス製ディスクに比べて、振動および極端な高温や低温への耐性に優れています。先ほど述べたとおり、寿命が尽きるLEDが使用されていないため、容量式エンコーダは光エンコーダより長期間使用できます。さらに、パッケージサイズが小さくなり、分解能全体において6~18mAと電流消費が少ないことから、電池駆動型のアプリケーションに適しています。磁気エンコーダにとっては問題となる磁気干渉および電気的ノイズも、容量式技術にとってはそれほど大きな問題ではないため、磁気エンコーダと比べて堅牢であり、精度と高分解能も向上されます。

柔軟性がありプログラム可能性を備えていることも、デジタルな性質を持つ容量式エンコーダならではの主な利点です。光エンコーダや磁気エンコーダの分解能はエンコーダディスクによって決まるため、別の分解能が必要な場合は新しいエンコーダを使用する必要があります。そのため、設計および製造プロセスにおいて、時間とコストの両方が増加します。一連のプログラム可能な分解能により、容量式エンコーダでは新しい分解能が必要になるたびに設計者がエンコーダを交換する必要はありません。そのため、保持している在庫を減らし、PID制御ループおよびシステム最適化の微調整をシンプルにすることができます。BLDCの転流については、容量式エンコーダではデジタルアライメントとインデックスパルスの設定が可能です。これも、光エンコーダの場合は繰り返し実施する必要があり、時間のかかることがあるタスクです。診断機能を内蔵しているため、設計者は、現場での最適化やトラブルシューティングに使用するシステムデータにさらに詳細にアクセスすることができます。

容量式、光、および磁気技術の主要な性能指標を比較した表図3:容量式、光、および磁気技術の主要な性能指標の比較(画像提供:Same Sky)

選択肢を比較検討する

温度、振動、そして環境汚染は、さまざまなモーション制御アプリケーションにおいてエンコーダが対処しなければならない重要な要素です。容量式エンコーダはこうした課題を克服していることが実証されており、光または磁気技術と比べて信頼性と精度が高く、柔軟なソリューションを設計者に提供します。プログラム可能性や診断機能の向上とともに、容量式エンコーダが備えているデジタルな性質も、このエンコーダが現在のモノのインターネット(IoT)や産業用IoT(IIoT)アプリケーションで使用されるようになっている要因です。

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Jeff Smootは、Same Skyでアプリケーションエンジニアリングおよびモーションコントロール担当副社長を務めています。

Same SkyのJeff Smootによって提供された記事です。