SMDヒューズでレイアウトを容易にし、製品の小型化と耐久性の強化を図る
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2020-12-30
熱で作動するヒューズは最も古い回路保護装置であり、現在でも広く使用されています。これはよく理解されおり、信頼性も一貫性もあり、各種の規格標準によって承認されています。しかし、最終製品の複雑さが増し、サイズが縮小するにつれ、設計者は、フォームファクタの低減、組立の簡素化、堅牢性の向上、安全性のさらなる向上のために、ユーザー交換可能なヒューズとヒューズホルダに代わるものを必要としています。
これに代わるものとしては、面実装デバイス(SMD)があります。設計者は性能を犠牲にする必要がありません。SMDヒューズは、多様な技術を用いて熱対応ベースのヒューズを提供し、速断型や遅延型(スローブロー型)など、必要なヒューズ特性を全製品範囲にわたって提供できます。
この記事では、まずヒューズ、回路保護、設計上の考慮事項についての基本事柄を説明します。そして、BournsのSMDヒューズを紹介し、その主な特長と応用について説明します。
長く持ちこたえる基本ヒューズ
熱で作動する可溶性リンクの伝統型ヒューズは約150年の歴史があり、最もよく知られ、最も直接的な回路保護装置です。過電流の発生に対する保護を提供するという単一の機能は、性能的に一貫性があり、信頼性も高く、理解しやすいものです。この機能は、電流レベルがヒューズ設計で決定された量を超えたときに、明確かつ取り消し不能な方法で回路経路を開き、電流の流れを遮断することによって実行されます。
従来のヒューズは、図形規格に応じて様々な回路図記号で表現され、デザイン、寸法、材質などが精密に設計された金属線で構成されます(図1)。電流がこの可溶性リンクを通過する一定の時間、事前に設定された限界を超えると、リンクは自己発熱して溶断します。この自己発熱は、リンクの抵抗を流れる電流によるオームの法則のI2R電力損失の直接的な結果です。
図1:ヒューズは規格に応じて数種類ある回路図記号のいずれかで表されます。(画像提供:ClipArtKey.com)
ヒューズは、直径¼インチ、長さ1¼インチのよく知られた3AGスタイルの小さなガラスカートリッジなど、多くのパッケージタイプで利用できます。各ヒューズおよび定格電流について、各ベンダーは、過電流値に加えてヒューズエレメント(可溶体)が溶断してヒューズを通る電流の流れを止めるのに必要な累積時間との関係を示す詳細なグラフを提供しています。これは、電流の流れから生じる利用可能な熱エネルギーを示すI2t定格と呼ばれ、単位は[アンペア2秒(A2秒)]です。
設計者が使用する回路保護装置はヒューズだけではありません。電流または電圧の過度のサージを制限、遮断、シャント、または「クローバリング」することにより、別の保護形態を提供する他の受動デバイスがあります。ただし、これらはいずれも、ヒューズの明確で不可逆的な電流カットオフを提供しません。このような受動デバイスはヒューズの機能に置き換わるものではありませんが、ヒューズが適切な保護オプションではない場合や、技術的に意味がある場合にヒューズの動作を補完するために使用されることがあります。よく知られている他の回路保護デバイスとしては、次のようなものがあります。
- 金属酸化物バリスタ(MOV)
- 正の温度係数(PTC)サーミスタ
- 過渡電圧サプレッサ(TVS)ダイオード
- ガス放電管(GDT)
- ポリマーPTCリセット可能ヒューズ
ヒューズと同様に、それぞれが回路保護の役割を果たしますが、基本的な回路遮断である可溶性リンクは、一貫性、直接作用、不可逆性などの特性の組み合わせにより、多くの設計でその役割と機能を維持します。
交換可能な可溶性リンクを超えるもの
温度ヒューズは、適切なヒューズホルダまたはソケットと組み合わせて使用する場合、その多くは現場交換可能ユニットと想定されています。しかし、ユーザーによる現場交換を可能にすることは、不必要な機能であることが多く、また多くの製品にとって望ましいことではありません。これは、携帯電話、セットトップボックス、小型バッテリ充電器、AC/DC壁面アダプタ、玩具などの低電力製品のほか、電動工具、産業用コントローラ、民生用発電機などのミッドレンジ機器、さらには電気自動車(EV)充電器などの高電力システムにも当てはまります。以下のケースシナリオを検討してみてください。
- 製品全体よりも、敏感な信号経路を持つものを含むより大きな回路の様々なサブ回路を保護するために、異なる定格のヒューズが必要になる場合がある。
- 溶断が必要とされるユニットは、主にバッテリとその充電回路を保護するためにヒューズを必要とするスマートフォンのような小型密閉型製品である可能性があり、エンドユーザーが内部にアクセスする選択肢はない。
- 整備士が誤ってパワーレールに触れ、車のシャーシに接続してしまったなど、ヒューズ切れの原因が分かっていれば話は別ですが、安全面の観点から、簡単にできるからといって交換するのは良くて時間の無駄、悪ければ身体に危険をもたらす。たとえば、リチウム系電池の保護回路とその充電回路の一部にヒューズがある場合、ヒューズはその機能の重要な要素となります。そのため、やみくもにヒューズを交換するのではなく、「ヒューズが飛ぶ」という根本的な原因を見つけることが大切。
- ヒューズホルダとその接点は、腐食、振動、その他の使用環境要因による信頼性の懸念材料となる。
- 最後に、サイズの問題。ホルダなしで所定の位置にはんだ付けされたヒューズは、フットプリントが小さく、基板上でのプロファイルが低くなる。
ホルダのない小型ヒューズをSMDとして実装し、標準的な基板数とはんだ付け装置を使用するには、ワイヤ状の可溶性リンクを持つ従来のヒューズを超えるものを検討する必要がありますが、いっぽうで溶断して電流経路を開く自己加熱原理は維持する必要があります。
幅広いSMDヒューズが最新設計の課題に対応
Bournsは、材料、技術、配合、製造技術を組み合わせて使用することにより、広範囲の電流と動作電圧にわたって熱ベースのヒューズ機能を提供できるSMDヒューズファミリを開発しました。BournsのSinglFuse SMDヒューズ製品ポートフォリオには、薄膜スパッタリング、薄膜基板、セラミック多層膜、セラミックキャビティ積層板、ワイヤコア、セラミックチューブ、セラミックキューブの7つの異なるヒューズ製造技術が採用されています(図2)。
図2:SinglFuseファミリはSMDヒューズのみで構成されていますが、多くの電流と電圧の組み合わせを実装するには、7つの異なるヒューズ技術を使用する必要があります。(画像提供:Bourns)
このような多様な技術と構造アプローチにより、SinglFuseの幅広い製品ポートフォリオは、定格電流、定格電圧、遮断容量、I2t、動作温度などの主要パラメータに対応する幅広い仕様のヒューズを提供することができます。さらに、SinglFuse製品はUL、TUV、VDEに適合しているほか、UL 248およびIEC 60127規格にも準拠しているので、製品全体の認証への道筋が容易になります。広い温度範囲でのフルスペックと信頼性の高い動作が要求される車載用アプリケーション向けには、車載用規格の1つであり、その他の過酷な動作環境での使用にも適するAEC-Q200準拠のヒューズが利用できます。
SMDのサイズが小さくても機能は制約されない
特にSMDパッケージでは、部品の小型化が急務となり、その機能や能力に制限が生じる場合があります。しかし、これはSinglFuseデバイスには当てはまりません。SinglFuseデバイスは、低電流範囲ではほとんど目に見えない0402(0.040インチ × 0.020インチ、1.0mm × 0.5mm)パッケージサイズからで入手できます。大容量ヒューズの場合は3812(0.150インチ × 0.100インチ、3.81mm × 2.54 mm)ですが、それでもサイズは従来品より小さくなっています。
長年にわたりヒューズベンダーは、回路のニーズを満たすために独自の属性を持つ特殊バージョンの可溶性リンクデバイスを開発してきました。この状況を認識した上で、SinglFuseデバイスは、次のような異なる応答特性を持つものが用意されています。
- 速断型
- 速断型高精度:主要な仕様の公差が厳格
- 遅延型(スローブロー型):ヒューズの定格電流を超える一時的サージ電流を処理する
- タイムラグ型:実際にヒューズ切れになる前の短時間の電気サージを許容する
- 高突入電流型:過剰な起動電流に対応
これらの異なるヒューズの「個性」の電流対時間プロファイルの詳細は、それぞれのデータシートで定義されており、アプリケーションに最適なマッチングを得るには、設計者が検討する必要があることに注意してください。
電流定格の極値は性能範囲を表す
設計者は、広範囲の公称電流値でSMDヒューズを使用することができます。たとえば、SF-2410FP0062T-2速断型高精度SMDヒューズは、EIA 2410(メートル6125)フットプリントのセラミックチューブに収納されており、長さ約6mm、長方形の端部が2.1mm × 2.6mmです(図3)。
図3:BournsのSF-2410FP0062T-2は、長方形パッケージに入った速断型の高精度SMDヒューズです。(画像提供:Bourns)
このヒューズは125V AC/DC動作用に指定されており、公称定格が62mAで、標準的な I2t 定格が0.0012A2秒です。トップレベルの仕様要点では、定格電流の200%で5秒以内に開くというものですが、ユーザーは、ヒューズの応答時間の重要指標であるプリアーキング時間(図4)とI2t定格(図 5)を定量化した性能グラフを検討したいと思うでしょう。抵抗が約6Ωなので定格電流内で動作する場合、設計者はヒューズを介したIR電圧降下に注意する必要がありますが、この降下は最大40mV未満です。
図4:SF-2410FP0062T-2のデータシートには、超低電流から公称最大値までのヒューズのプリアーク時間の詳細が記載されています。これは、ヒューズの応答対電流プロファイルを定義するパラメータです。(画像提供:Bourns)
図5:SF-2410FP0062T-2のデータシートには、様々な電流レベルでの蓄積熱エネルギーの臨界 I2t プロファイルも示されています。(画像提供:Bourns)
非常に異なる範囲と性能プロファイルがSF-1206S700遅延型ヒューズ(図6)によって提供されています。これは、最大定格電流の250%で5秒以内に開くように仕様設計された7Aデバイスです。
図6:BournsのSF-1206Sシリーズで使用されるSF-1206S700遅延型面実装ヒューズは、最大定格電流の250%で5秒以内に開くように指定された7Aデバイスです。(画像提供:Bourns)
SF-1206S700は、SF-2410FP-Tとは異なるパッケージと技術を採用しており、薄膜構造のため3216(EIA 1206、1.55mm × 3.1mm)フラットパッケージで、高さがわずか0.6mmとなっています(図7)。その抵抗値はわずか7mΩで、最大電流で50mVをわずかに下回る低IR降下を保証します。
図7:このSF-1206S700遅延型SMDヒューズの断面図は、デバイスの製造に使用される高度な材料と技術のヒントを提供してくれます。(画像提供:Bourns)
このヒューズのデータシートにはSF-2410FP-T 62mAヒューズと同様のグラフがありますが、遅延型ヒューズとしては、フルオン/オフ回路動作を繰り返す場合の遅延型ヒューズ性能をさらに定義する「I2Tディレーティング曲線とリピータ突入電流」のグラフも必要です(図8)。
図8:遅延型ヒューズは高突入電流サイクルを繰り返すことが多いため、SF-1206S700データシートでは、これらのサイクルがヒューズの動作に与える影響を明確にしています。(画像提供:Bourns)
設計者が様々なヒューズのタイプ、定格、サイズを実際に評価するには役立ちますが、これには課題があります。能動素子(オペアンプなど)や受動素子(抵抗器、インジケータ、コンデンサ)とは異なり、ヒューズは1回限りのデバイスであり、突入して効果的に自己破壊することによってのみテストが完結されます。このため、評価を行う際には、種々の値とタイプのヒューズをそれぞれ複数個手元に用意しておくと便利です。
この手順を容易にするために、Bournsでは、クイックターンプロトタイプテスト向けのSF-SP-LAB1 SinglFuse SMD FuseLabキットを提供しています(図9)。これには、0402、0603、および1206(メトリック1608〜3216)パッケージサイズで18種の遅延型ヒューズがそれぞれ5個(合計90個)収められています。同様のSF-FP-LAB1キットには、0402~1206(メトリック1005~3216)パッケージには、160個の速断型高精度ヒューズ(32種の値を5個ずつ)が入っています。
図9:テストではヒューズが自己溶断することが多いため、このSF-SP-LAB1 SinglFuse SMD FuseLabキットのような遅延型ヒューズ用の設計キットを使用することで、サイズ、実装、熱問題、性能、およびその他の問題を評価しなければならない設計者の作業が楽になります。(画像提供:Bourns)
まとめ
概念的には単純であるにもかかわらず、温度ヒューズは、熱、材料、および製造上の微妙な考慮事項に基づいた、高度な受動電気/機構部品です。回路や製品が小型化し、ユーザーによるヒューズ交換がますます現実的でも賢明でもなくなってきているばかりか、危険でさえあるため、他のSMDデバイスと同様に扱える面実装デバイス(SMD)ヒューズの必要性は明らかです。さらに、SMDヒューズは、組み立ておよび製造プロセスを簡素化し、振動や腐食に対する設計上の影響を低減します。
上で図示したように、BournsのSinglFuseシリーズ SMDヒューズは、今日の製品やプリント基板製造プロセスのニーズを満たすために、幅広い過電流保護範囲とタイプを設計者に提供してくれます。
関連研究リンク:
参考:
- IEEE 2007年、第8回電気ヒューズとその応用に関する国際会議「ヒューズの原点へ」
免責条項:このウェブサイト上で、さまざまな著者および/またはフォーラム参加者によって表明された意見、信念や視点は、DigiKeyの意見、信念および視点またはDigiKeyの公式な方針を必ずしも反映するものではありません。