信頼性と精度に優れた車載用電流検出に最適化されたアンプを活用する理由
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2026-01-08
電子システムが自動車アプリケーションに普及する中、電流の流れを常時リアルタイムで測定することは極めて重要です。これにより、過電流状態を監視し、回路やシステムの故障や不具合を検知するとともに、制御ループ性能を最適化するために常時帰還信号を提供することが可能となります。
電流の流れを測定するための技術や部品はさまざまありますがが、シャント(検出)抵抗の両端の電圧降下を測定するという概念的にシンプルな方法は、最も広く使用されている手法の1つです。この手法は、精度、正確性、再現性、利便性、小型化、柔軟性、適応性を兼ね備えています。
この検出抵抗器は、電源レールと負荷の間(ハイサイド検出)、または負荷とグランドの間(ローサイド検出)に配置することが可能です。それぞれの配置方法には、性能面、検出される電流への影響、抵抗器に接続される電圧アンプへの要求など、さまざまな要素においてトレードオフの関係にあります。関連する電流センスアンプ(CSA)は、特に厳しい自動車の動作環境を考慮すると、この役割を最適に果たすために、アプリケーション固有の重要な特性を備えている必要があります。
本記事では、ハイサイドとローサイドの電流検出について、設計者がそれぞれ直面する課題を検証します。続いて、onsemiのCSAファミリを紹介し、これらの課題の多くを解決するためにどのように活用できるかを説明します。
2種類の検出抵抗器構成
負荷と直列に接続された既知の値の固定抵抗器の両端電圧を検出することで、オームの法則(電流=電圧/抵抗(I = V/R))を直接適用し、電流を決定することができます。ただし、検出抵抗のローサイド(図1、左)とハイサイド(図1、右)の配置は測定値の正確性には直接影響を与えないものの、システムレベルでは多くの影響を及ぼします。
図1:負荷とグランド間に抵抗器を配置したローサイド抵抗ベースの電流検出(左)と、ソースレールと負荷間に抵抗器を配置したハイサイド検出(右)を示します。(画像提供:onsemi)
この検出抵抗器はシャント抵抗器と呼ばれていますが、これは誤った名称です。真のシャント抵抗器は負荷と並列に配置され、電流の一部が負荷を迂回して抵抗器を流れるように設計されています。しかしながら、標準的な用途における電流検出抵抗器は実際には負荷と直列に配置され、負荷を迂回するものではありません。とはいえ、「シャント抵抗器」という用語は広く一般的に使用されています。
ローサイド検出は、概念的に最も直接的な手法であり、抵抗器の一端をグランドに接続し、もう一端を負荷のローサイドに接続します。これには以下のようないくつかの明確な利点があります。
- 抵抗の両端の電圧はグランドを基準としています。
- 両アンプ端子における抵抗器の両端電圧(コモンモード電圧)は低くなります。
- 単一電源回路への設計が比較的容易です。
しかし、ローサイド検出には以下のような避けられない課題があります。
- 負荷が接地されていないため、システムレベルに重大な影響を及ぼす可能性があり、検出された電流値を利用する制御ループの性能にも影響を及ぼします。
- 負荷とグランド間の偶発的な短絡が発生した場合、負荷が作動する可能性があります。
- この検出方法はグランドループを生じさせる恐れがあります。
- 短絡による高負荷電流は検出されません。
ハイサイド検出では、抵抗器を電流源とグランド間に配置します。これにより以下のような利点が得られます。
- 負荷は接地されるため、これは大きな利点であり、多くの場合安全要件となります。
- モータなどの負荷本体は、物理的かつ電気的にシステムシャーシに共通グラウンドとして接続できます。
- 測定負荷のグランド経路に抵抗を追加する必要がありません。
- 電源接続部が短絡しても、負荷は通電されません。
- 正電源ラインからグランドへの短絡を検出できます。
ただし、ハイサイド検出には以下のような欠点があります。
- CSAは高い入力コモンモード電圧(CMV)と高速なコモンモード過渡現象に耐える必要があります。その限界を超えると性能が低下し、アンプが損傷する可能性があります。
- 抵抗器両端の検出電圧は、測定および使用のためにシステムの動作電圧へレベルシフトする必要があります。
- 一般的に、必要な回路構成を実装するのはより複雑になります。
通常、どちらが優れているかの判断には、技術的なトレードオフの評価が関わってきます。しかしながら、ハイサイド検出が唯一の実用的な選択肢となる状況は数多く存在します。
たとえば、自動車とそのモータなどの多くの電気負荷を考えてみてください。現代の一般的な自動車には、パワーウィンドウやシート位置制御などのアクセサリ機能用に少なくとも30個のモータが搭載されています。これらの多くは、車体のフレーム、サポートブラケット、またはシャーシに取り付けられており、これらは電気的なグランドとしても機能します。
これらの負荷を車両の構造要素から電気的に絶縁することは可能ですが、実際には困難です。部品表(BOM)に別の部品を追加する必要があり、製造工程も増えます。また、時間の経過とともに絶縁体が摩耗したり、部品交換時に不注意で絶縁体を外してしまう可能性があります。さらに、整備士がモータ本体をシャーシに接触させて回路を短絡させる恐れもあります。
同様の配慮は、先進運転支援システム(ADAS)機能、安全および衝突サブシステム、警報装置、エンターテイメントおよびコネクティビティコンソールなどのモータ非搭載部分にも必要です。さらに、非接地負荷の場合、負荷からバッテリへの帰路ケーブルハーネスはより複雑になり、故障や人為的ミスが起こりやすくなります。
最適化されたアンプソリューション
ハイサイド検出が必須または推奨される状況では、特定用途向けアンプが対策となります。一例として、onsemiのNCV7030ファミリに属するAEC-Q100車載規格対応のNCV7030DM2G014R2G (図 2)CSAが挙げられます。
図2:NCV7030DM2G014R2G CSAは、車載環境におけるハイサイド電流検出用に設計されています。(画像提供:onsemi)
このデバイスは、Micro8(3mm × 3mm)またはSOIC-8(4mm × 5mm)(NCV7030D2G014R2G)の鉛フリーパッケージで提供され、3V~5.5Vで動作し、標準的な静止電流は1.5mAです。
NCV7030ファミリは、85dB(最小)の高い入力コモンモード除去比(CMRR)を実現し、コモンモード入力電圧範囲は、-6V~80V(動作時)および-14V~85V(破壊耐性)です。このデバイスは、検出抵抗器を介した一方向の電流測定が可能であり、全温度範囲において最大±0.3% の利得誤差で14 V/Vの固定利得を提供します。これは過酷な自動車環境において重要な仕様です。
NCV7030アンプは、高いコモンモード除去能力以上の性能を提供します。各アンプは、プリアンプとバッファで構成されており、それぞれ「ブリッジング」ピンA1およびA2を介して出力と入力にアクセスし、中間フィルタ回路の実装や利得の変更が可能です。
さらに、優れたCSAには、CMVが高いにもかかわらず性能を維持すること以上のものがあります。NCV7030デバイスは、75dB(最小)という高い電源電圧変動除去比(PSRR)を特長としており、ノイズの多い環境でも信頼性の高い動作を保証します。入力オフセット電圧が±300μV(最大)と低く、温度ドリフトも最小限であるため、高精度アプリケーションに最適です。また、100kHzの帯域幅により、急激に変化する電流にも迅速に対応できます。
入力オフセット電圧が低いため、シャント抵抗に電流が流れていない場合、NCV7030 CSAの出力はグラウンドから50mV以内の値となります。電流が流れると、出力は正方向に振れ、印加された電源電圧から100mV以内の範囲まで上昇します。この広い範囲により、検出電圧の信号対雑音比(SNR)が向上します。
動作上、1点だけ軽微な制約があります。NCV7030アンプは内部でグランドを基準としているため、一方向に流れる電流しか測定できません。バッテリ駆動やほとんどのバイポーラ電源設計では一方向の電流しか流れないため、これは深刻な制約ではありません。
設計を簡素化するため、デバイスは監視対象と同じ電源に接続することが可能です。負荷電源の短絡電流を検出する必要がある場合(負荷電源が0V近くまで電圧降下する可能性のある事象)、別途電源を使用する必要があります。
NCV7030デバイスは「そのまま」、追加部品なしで固定利得増幅を提供しますが、一部のアプリケーションではより高い利得または低い利得が必要になる場合があります。これらのアンプのアーキテクチャは、A1とA2ピンを介してこの要件に対応しています。
利得を低く設定する場合は、A1をA2に接続し、この接続からグランドへ抵抗器(REXT)を追加することで、内部100kΩ(キロオーム)抵抗器と抵抗分圧回路を形成します(図3)。
図3:単一の外部抵抗器(REXT)を追加し、内部の100kΩ抵抗と組み合わせて抵抗分圧回路を形成することで、NCV7030アンプの利得を低減します。(画像提供:onsemi)
逆に、正帰還構成で外部抵抗を追加することで利得を増加させることが可能です(図4)。いずれの利得変更においても、外部抵抗値と希望する利得低減値または増加値との関係は、単純な代数式で表されます。
図4:NCV7030アンプの帰還ループに外部抵抗を配置することで利得が増加します。(画像提供:onsemi)
フィルタリングについて
自動車や産業設備など、多くの電流検出アプリケーションは、本質的にノイズが発生しやすい性質を持っています。このノイズは、検出された電流信号の完全性や、関連するアンプ出力電圧を低下させる可能性があります。検出抵抗両端に発生する電圧が低いことも、ノイズに関連する課題を増大させます。
この電圧が低い理由は何でしょうか。検出抵抗の選定にはトレードオフが伴います。一方では、抵抗値が高いほど電圧降下が大きくなり、信号増幅が増大します。これによりSNR(信号対雑音比)と分解能が向上します。一方で、抵抗値が高いほど電力損失が増加し、発熱量が増え、負荷ループへの影響が大きくなります。
多くのアプリケーションでは、約100mVの電圧降下を目標値として抵抗値を決めるのが経験則としての妥協点となります。この値は抵抗器が1ミリオーム(mΩ)以下であることを意味することが多いため、抵抗器への接続も電圧降下および検出電圧の計算要素となります。
NCV7030デバイスの真の差動入力は、ノイズ低減効果のある4線式ケルビン接続シャントと、従来の2線式シャントの両方に適しています。さらに、真の差動入力は、コモンモードノイズを除去します。このノイズは、ローサイド電流検出においても頻繁に発生します。
一部のアプリケーションでは、CSA入力でのフィルタリングが必要となる場合があります。これは、シャント抵抗とアンプ入力の間に2つの抵抗(RFILT)と1つのコンデンサ(CFILT)を追加することで容易に実現できます(図5)。
図5:入力フィルタリングには、CSAへ入力部に2つの整合抵抗器(RFILT)と1つのコンデンサ(CFILT)のみが必要です。(画像提供:onsemi)
なお、このような入力フィルタリングは、フィルタ抵抗器の追加抵抗器とそれらの間の抵抗不整合によって複雑化され、利得、CMRR、入力オフセット電圧に悪影響を及ぼす可能性があることに注意してください。データシートでは、これらの値の選択方法とその影響について説明しています。
入力のフィルタリングが不要な場合でも、アンプ出力のフィルタリングが必要となる場合があります。このフィルタリングは、NCV7030アンプの 「分割」内部アーキテクチャにより容易に実装できます。A1とA2を接続し、この構成からグランドにコンデンサを追加することで、ローパスフィルタを構成することができます(図6、左)。これにより、内部の100kΩ抵抗を利用したシンプルな1極抵抗-コンデンサ(RC)フィルタが構成され、周波数10倍あたり20dB(dB/decade)の減衰が得られます。より高い減衰率が必要な場合は、2つの外付けコンデンサと1つの抵抗器を追加することで、40dB/decadeの減衰を持つ2極のサレン・キー型フィルタを構成することができます(図6、右)。
図6:A1/A2とグラウンド間に1つのコンデンサを配置すると、20dB/decadeの減衰を持つ1極フィルタ(左)が構成されます。抵抗器とコンデンサを追加すると、40dB/decadeの減衰を持つ2極フィルタ(右)が構成されます。(画像提供:onsemi)
まとめ
ハイサイド電流検出は、ソースと負荷の間に低抵抗値の抵抗器を挿入する手法であり、車載回路など多くのアプリケーションにおいて負荷電流という重要なパラメータを測定する標準的な手法です。この手法は効果的ですが、関連するCSAの性能に関する課題も生じます。このように、onsemiのNCV7030アンプファミリは、この特定の用途向けに最適化されており、高いCMV耐性と、固定利得およびユーザー調節可能な利得を提供する2段設計を備えています。さらに、入力側と出力側の両方でフィルタリングを行うための機能も備えています。
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