LTCC技術を活用して、高性能かつコンパクトで安定したRFバンドパスフィルタを実現
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2026-05-21
ワイヤレス通信、レーダ、衛星、その他のRF/マイクロ波システムへの依存度が高まるにつれ、対象のスペクトル内で所望の周波数を選択し、不要な周波数を除去するバンドパスフィルタの重要性はますます高まっています。ディスクリート受動抵抗器・インダクタ・コンデンサ(RLC)に基づく集中定数フィルタの実装は長年にわたり産業界で広く用いられてきたものの、ギガヘルツ(GHz)フィルタについては、性能・安定性・損失・サイズ・信頼性・一貫性・コストといった、ますます厳しくなる要求をより良く満たすための選択肢が求められています。
この記事では、高周波システムの設計者が直面するフィルタリングの課題について考察します。また、低温同時焼成セラミック(LTCC)技術を紹介し、Mini-Circuitsのフィルタ例を示しながら、この技術がこれらの課題にどのように対処できるかを解説します。
フィルタの基本
受動フィルタ理論には、ローパス、ハイパス、ストップバンド、バンドパスフィルタなど、多くのフィルタトポロジとその特性、役割が含まれます(図1)。これらのフィルタは、ディスクリートRLC部品を用いて解析されます。
図1:4つの基本的なフィルタ機能の回路図記号(左)とゲイン対周波数(右)。(画像提供:Learn About Electronics)
4つのフィルタタイプは、以下の基本的な減衰対周波数伝達関数を提供します。
- ローパスフィルタ(LPF):特定のカットオフ周波数以下の周波数を通過させ、それ以上の周波数を減衰させます
- ハイパスフィルタ(HPF):特定のカットオフ周波数以上の周波数を通過させ、それ以下の周波数を減衰させます
- バンドパスフィルタ(BPF):特定の範囲の周波数を通過させ、その範囲外の周波数を減衰させます
- バンドストップ/ノッチフィルタ(BSF):特定の狭い周波数帯域を減衰させ、他の周波数帯域を通過させます
フィルタのトポロジは、その役割だけでなく、名称、数学的記述子、および方程式によっても分類されます(その中には電子工学以前の数学者に由来するものもあります)。これらの分類には、1次、2次、pi形、最大平坦、T形、バターワース、カウア、チェビシェフ、ベッセルなどが含まれます。
これらのフィルタを定義する原理と数学は依然として有効ですが、フィルタ周波数が数百メガヘルツ(MHz)やGHzの領域に達すると、集中定数での構造は実用的ではなくなります。このようなディスクリート部品に基づくフィルタは、量産するには大きすぎて、コストがかかり、ばらつきが生じます。
避けられない寄生要素の存在により、フィルタ理論とその物理実装の結果はしばしば大きく異なります。周波数が高くなるにつれて、これらの寄生要素や部品許容差の微妙な変動に対応するために、フィルタの各物理的な実装を(多くの場合手作業で)トリミングする必要があるかもしれません。
フィルタ性能を正式に特性づけるためには、多くのパラメータが用いられます。その中には以下のものがあります。
- 中心周波数:バンドパスまたはノッチ(バンドストップ)フィルタの中心周波数
- カットオフ周波数:入力に対して出力信号電力が半分(3デシベル (dB))低下し、パスバンドとストップバンドの境界を示す周波数
- パスバンド:最小限の減衰でフィルタを通過する周波数範囲
- ストップバンド:著しく減衰または遮断される周波数範囲
- ロールオフ率:パスバンドとストップバンドの遷移の急峻さを示す指標で、デケード当たりまたはオクターブ当たりのデシベル値で表されます
- 挿入損失:フィルタを伝送ラインに挿入することで生じる信号電力の損失で、dBで測定されます
- リップル:パスバンドまたはストップバンド内でのゲインの小さな変動で、高次フィルタでよく見られます
- 位相シフト/群遅延:フィルタを通過する信号の位相が、入力に対して周波数依存で変化すること
- Sパラメータ(散乱パラメータ):S21(ゲイン/損失)、S11(リターンロス/反射)など、RF/マイクロ波フィルタで使用されます
さらに、温度によるドリフト、損失限界、部品の経年劣化といった実環境特有の問題も存在します。
ディスクリート要素を超える
バンドパスフィルタは両側に減衰帯域を持ち、有線および無線システムにおいて、比較的広い対象帯域を選択したり、単一チャンネルに対応する比較的狭帯域の信号を選択したりするために広く使用されています。
ディスクリート要素で構築されるフィルタ固有の限界を克服するため、エンジニアたちは、それぞれ独自の特性を持つさまざまな代替フィルタ技術や製造技術を開発・改良してきました。これらの中には、マイクロストリップ、コプレーナ導波路(CPW)、ストリップラインフィルタなどの平面伝送ライン、キャビティフィルタ、LTCCフィルタ、誘電体フィルタ、表面弾性波(SAW)フィルタやバルク弾性波(BAW)フィルタなどの圧電フィルタがあります。
特にLTCCフィルタは、小型で堅牢、かつ高性能なRF部品であり、現在ではモノのインターネット(IoT)、Wi-Fi 6E/7、衛星システムなど、大量生産かつスペースに制約のある用途向けに設計されています。400MHzから40GHz以上で動作し、低挿入損失、高選択性、一貫した性能、自動面実装技術(SMT)製造プロセスとの適合性を特長としています。
LTCCデバイスは、先進的な積層プロセスを用いて製造されます(図2)。セラミックガラス製の「グリーンテープ」には導電性材料が印刷され、必要な受動フィルタ素子が形成されます。その後、これらは積層・加圧され、比較的低温(+900°C未満)で焼成されます。LTCCプロセスは、高周波RF/マイクロ波アプリケーションに適した、堅牢で熱的に安定した小型パッケージ内に、RLC部品を高密度でかつ3次元的に統合することを可能にします。
図2:LTCCプロセスでは、セラミックガラス基板上に受動部品を積層・加圧し、焼成して一体化したモノリシック部品を形成します。(画像提供:Everything RF)
回路トポロジ、材料、シミュレーション能力、製造プロセスの進歩を組み合わせることで、Mini-Circuitsは、5Gを含むマイクロ波およびミリ波システムに適したLTCCフィルタファミリを開発しました。これらのLTCCフィルタは、フットプリントが大きく、コストが高く、周囲環境への影響を受けやすく、高密度レイアウトではデチューニングも起こりやすいアルミナ上の薄膜などの従来技術に比べて、多くの利点を提供します。対照的に、LTCCフィルタは、性能、物理的堅牢性、サイズ、費用対効果、一貫性の優れた組み合わせを提供します。
LTCC技術は、他のセラミックベースのフィルタよりも低い温度で同時焼成されるため、銅などの電気抵抗の低い金属を導体として使用することができます。その結果、従来のアルミナセラミックスよりも低い挿入損失を提供することができ、高周波パッケージングやモジュール統合アプリケーションで使用されています。
LTCCアプローチの進歩
LTCCフィルタは従来、約30dBから90dB以上のストップバンド除去を実現してきました。
しかし、GHzクラスの部品を使用する場合、その実装や入出力信号経路は、部品そのものと同じくらい重要です。部品表(BOM)に適切な部品があればよいという問題ではなく、レイアウトや製造上の考慮も必要になります。
問題は、こうした高除去フィルタではしばしば、その完全な除去性能を達成するために、ストリップライン、マイクロストリップ、または他の制御されたインピーダンス伝送ラインからRFエネルギーを「放射」させる必要があることです。このため、マイクロストリップやCPW伝送ラインにLTCCフィルタを組み込もうとする設計者には制約があります。たとえば、設計によっては、底面に同軸RF放射構造を備え、ストリップライン回路基板の導電層へのブラインドビアを必要とする場合があります。
しかし、多くのプリント回路基板メーカーがブラインドビアを用いたSMTアセンブリを確実に製造できるようになっている一方で、導電トレースとデバイスポート間のコンタクトがトップ層に露出するCPW配線基板を好む設計者も依然として存在します。ブラインドビアに関する懸念に対処するだけでなく、CPWによって、他のSMT部品を信号トレースと並列または直列にはんだ付けし、最適なマッチングのためにトレース幅と特性インピーダンスを調整することができます。
さらに、フィルタパッケージのランドパターンには、底面に導電性メッキが施されている場合があります。そのため、CPW基板の露出したトレースにユニットをはんだ付けしただけでは、プリント回路基板のメタライゼーションとフィルタ底面の間で短絡が発生し、機能上の問題が生じます。
ピックアンドプレースLTCCフィルタ
これらの問題に対処するため、Mini-CircuitsはピックアンドプレースSMTプラットフォームで使用するCPW対応フィルタのBFHKIシリーズを開発しました。これらのLTCCバンドパスフィルタは、LTCC部品からなるサブアセンブリとインターポーザ基板から構成されており、LTCCの同軸放射をCPWインターフェースに変換します(図3、上)。このインターポーザの利用により、BFHKIシリーズのLTCCバンドパスフィルタをマイクロストリップおよびCPWトレースに実装することが可能になり(図3、下)、従来のLTCCフィルタや他のフィルタ技術に比べて大きな性能上の利点が得られます。
図3:BFHKIシリーズ LTCCフィルタは、フィルタとプリント回路基板の間にインターポーザを備えており(上)、トップ層の伝送ラインに簡単に使用できます。同シリーズのプリント回路基板レイアウトガイド(下)は、マイクロストリップおよびCPWトレースへのデバイス配置に対応していることを示しています。(画像提供:Mini-Circuits)
実現可能な性能を示す2つの例
2つの代表的な例は、BFHKI LTCCフィルタのRF性能を示しています。1つ目の例がBFHKI-5001+(図4)です。これは4.5~5.3GHzのパスバンドを持つバンドパスフィルタであり、衛星通信リンク、航空宇宙・防衛分野の信号調整、量子コンピューティングなどの用途に対応しています。CPWレイアウトに実装した場合、13GHzまで54dB(標準)という高いストップバンド除去特性を備え、広帯域にわたって3.6dB(標準)の挿入損失を実現します。
図4:BFHKI-5001+ 4.5~5.3GHzバンドパスフィルタは、13GHzまで54dB(標準)のストップバンド除去を特長としています。(画像提供:Mini-Circuits)
BFHKI-5001+は、コンパクトな0.195インチ x 0.144インチ x 0.072インチのセラミックパッケージに収められており、高密度のプリント回路基板レイアウトに適しています。一体型インターポーザ基板により、自動化された製造装置での設置が可能です。
LTCC製造プロセスにより、RF性能のばらつきを最小限に抑え、高湿度や高温を含む過酷な環境条件にも適した製品を実現しています。シールド構造により、干渉、隣接部品への影響、およびデチューニングを最小限に抑え、これらはすべて高密度RFレイアウトにおいて重要な要素です。
もう1つの例として、小型LTCC超高ストップバンド除去バンドパスフィルタのBFHKI-3142+があります。28~36GHzのパスバンドを持つこのモデルは、CPWレイアウトに実装した場合、67GHzまで30dB(標準)のストップバンド除去を提供します。広帯域で2.8dB(標準)の挿入損失を実現します。
BFHKI-5001+と同様に、デザインインと生産効率のためのインターポーザを備えた、0.195インチ x 0.144インチ x 0.072インチの小型セラミックフォームファクタパッケージに収められています。その他の重要な性能指標には、広帯域挿入損失およびリターンロス(図5、上)ならびにパスバンド挿入損失およびリターンロス(図5、下)があります。
図5:BFHKI-3142+のユーザーは、全体的な挿入損失およびリターンロスの仕様(上)に加え、パスバンド内の同様の仕様(下)についても把握しておく必要があります。(画像提供:Mini-Circuits)
まとめ
現代のRF/マイクロ波システムの性能、信頼性、一貫性、サイズ、およびコスト要件を満たすためには、設計者は個々の抵抗器、インダクタ、コンデンサから構築された従来のバンドパスフィルタから移行する必要があります。前述の通り、Mini-CircuitsのBFHKIファミリ LTCCフィルタは、優れた性能と必要な特性を提供し、基板へのフィルタ実装やRFインターフェースのオプションを設計者に提供するインターポーザを備えています。
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