システムオンモジュールのOSM規格の解説
2022-06-23
システムオンモジュール規格
SMARCやQseven(図1)など、システムオンモジュールのさまざまな規格が製品設計者、ソリューションアーキテクト、システムエンジニアに採用されています。企業や組織の国際的な非営利団体であるSGeT(Standardization Group for Embedded Technologies)は、組み込みコンピュータ技術の独立した仕様を協調および策定しています。システムオンモジュールの業界標準を選択することで、技術のスケーラビリティを高め、サプライヤ間の相互運用性を活用できます。
最近、SGeTによってシステムオンモジュールの新しい規格が定義されました。それは、はんだ付け可能なシステムオンモジュールという独自の価値を提案するOSM(オープンスタンダードモジュール)です。この規格は、LGA設計と面実装技術によってさらなる堅牢性を実現します。
図1:SMARC、Qseven、OSMを含むシステムオンモジュール規格(画像提供:iWave)
OSM規格の解説
システムオンモジュールの最新業界標準であるオープンスタンダードモジュールは、2020年12月に発表されました。小型・低コストの組み込みコンピュータモジュール向けに新しく将来性の高い汎用規格を作成するため、SGeTはOSM 1.0を発表しました。OSMは、直接はんだ付けが可能で拡張性の高い組み込みコンピュータモジュール向けに作られた最初の規格の1つです。
OSMは、クレジットカードサイズのモジュールに代わり、切手サイズの組み込みコンピュータモジュールで業界へ進出しています。OSMにより、MCU32、Arm®、x86のアーキテクチャ向けの組み込みモジュールの開発、生産、販売が可能になります。OSMモジュールの主な特徴は、以下の通りです。
- はんだ付け、組み立て、テスト時の完全な機械加工性
- コネクタなしで直接はんだ付けできる錫メッキ済みのLGAパッケージ
- あらかじめ定義されたソフト/ハードインターフェース
- ソフトウェアとハードウェアのオープンソース化
この全く新しい規格は、モジュールに搭載されているLGAコンタクトの違いにより、サイズゼロ、スモール、ミディアム、ラージという4種類のサイズで提供されます(図2a、2b)。4つの異なるフォームファクタは、互いの上に構築することができます。
図2a:OSMの標準的なサイズ、フォームファクタ、ピン配列。(画像提供:iWave)
図2b:図2aにしたがって色分けしたOSMの標準的なサイズ。(画像提供:iWave)
オープンスタンダードモジュールでは、モジュールPCBとベースボードPCBを接続するために、対称的なLGAパッケージを採用しています。メーカーの判断で、コンタクト技術として、溶融錫グリッドアレイ、ENIG LGA、またはBGAを使用することができます。また、この仕様では、モジュールベンダーが要件に基づいて異なる高さを採用し、「PCBスペーサー」を介して拡張するオプションも用意されています。
サイズS以上のモジュールは、最大1個のRGBと4チャンネルDSIのビデオインターフェースを提供します。サイズMのモジュールはさらに2個のeDP/eDP++に対応し、サイズLではグラフィックス用に2個のLVDSインターフェースが追加されます。したがって、最大6つのビデオ出力を並列に配置することが可能です。サイズS以上のすべてのモジュールには、さらに4チャンネルのカメラシリアルインターフェース(CSI)が搭載されています。サイズLのモジュールは最大10本のPCIeレーンを提供するため、周辺機器を素早く接続できます。サイズMは2x PCIe x1、サイズSでは1x PCIe x1を提供します。超小型フットプリントを考慮して、サイズ0のモジュールには前述のI/Oが搭載されていませんが、OSM仕様に記載されたすべてのインターフェースが提供されており、システム間通信用に最大5個のEthernetが設定されています。
すべてのモジュールには専用の通信領域があり、異なるワイヤレス技術のためのアンテナ信号用に18ピン、メーカー固有の信号用に19ピンが用意されています。
OSMを検討する理由
OSMモジュールの主な利点には、振動耐性を備えたはんだ付け可能なPCBモジュール、最小のピン/面積比を備えた小型フォームファクタ、技術的スケーラビリティの提供などがあります。
このモジュールは、キャリアカードに直接はんだ付けできるため、振動の多い製品や小型フォームファクタを必要とする製品に適しています。たとえば、電動2輪車のコネクティビティクラスターが挙げられます。OSMモジュールは、スケーラビリティ、フォームファクタ、コストを理想的に組み合わせたソリューションを設計者に提供します。
IoTアプリケーションが増え続ける中、この規格は、増大するコスト、スペース、インターフェースの要件とモジュラー型組み込みコンピューティングの利点を組み合わせることに貢献します。OSMモジュールのアプリケーションとしては、オープンソースのOSを実行し、過酷な産業環境で使用されるIoT接続の組み込みシステム、IoTシステム、エッジシステムなどが想定されます。
OSMシステムオンモジュールにおけるiWaveのポートフォリオ
システムオンモジュールの設計および製造をリードするiWave Systemsは、このほどiW-RainboW-G40M(図3)を発売しました。これは、はんだ付け可能なi.MX 8M Plus OSMモジュールです。iW-Rainbow-G40Mは、強力なi.MX 8M Plusプロセッサを小型のOSM 1.0規格に統合し、強力なAIおよび機械学習機能を小型モジュールで提供します。
図3:iW-G40Mシステムオンモジュールの表側と裏側。(画像提供:iWave)
2つの画像信号プロセッサ(ISP)と最大2.3TOPSの専用ニューラルネットワークプロセッサを搭載したi.MX 8M Plusは、機械学習、ビジョン、高度なマルチメディア機能を備えており、スマートホーム、スマートシティ、産業用IoTなどに最適です。
モジュールの主な特長
- i.MX 8M Plusデュアル/クワッドライト/クワッド
- 2GBのLPDDR4(最大8GB)
- 16GBのeMMC(最大256GB)
- Wi-Fi(802.11b/g/n/ac/ax)(axはオプション)
- Bluetooth 5.0
- 2個のCAN-FDポート
- 2個のRGMIIインターフェース
- 1個のPCIe 3.0
- 2個のLVDS
- サイズLのLGAモジュール
このモジュールは、柔軟性と拡張性のあるオプションを提供し、市場投入までの時間を短縮します。このプロセッサは、CAN-FDなどの産業用インターフェース、タイムセンシティブネットワーキング、高速インターフェースを備えており、マルチメディアデータのインテリジェントかつ高速な処理をサポートするインダストリー4.0やオートメーションシステムに最適です。
設計者は開発キットと製品レベルのSOMにより、リスクを軽減しながら市場投入までの時間を短縮できます。このモジュールはアプリケーションに対応し、Ubuntu、Android、Linuxソフトウェアをサポートするために必要なソフトウェアドライバとBSPがすべて付属しています。
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