照明アプリケーションにおけるLEDフリッカの特性化および最小化
Electronic Products の提供
2012-07-17
従来の白熱灯を、効率が良く、非発熱性で長寿命のLEDで置き換えるのは名案です。 しかし、すべての優れたアイデアと同様に、その実行はアイデアを思いつくよりも少し難しいものです。
LED光はドライバ回路と一緒に提供され、既存の家庭用AC電源に接続されることができますが、電源出力での電圧リップルにより、フリッカが発生するリスクがあります。 フリッカはほとんどの照明で発生し、消費者の中にはフリッカによる不快感や健康への被害を訴える消費者もいます。
LEDおよび照明器具のメーカーは、その問題の原因を熱心に探求しています。というのも、ソリッドステート照明がフリッカで悪名を得ることになれば、それが不当な評価であったとしても、従来の光から脱却するよう消費者に説得するのは、さらに難しくなるからです。
この記事は、フリッカの原因を究明し、それがなぜLEDに特有の問題であるか、そしてエンジニアリングの管理および規格策定機関がいかにしてテストハウス、LED、ドライバチップ、および照明器具メーカーに対してその現象を定量化しようとしているかについて説明します。 次に、フリッカなしのLED照明を実装するコスト効果の高い方法を提供すると主張している主要シリコンベンダーが最近導入した製品について取り上げます。
フリッカの影響
研究によれば、4,000人中1人が3~70Hz範囲における点滅光のサイクルの影響を大いに受けるという結果が出ています。 こうした明らかなフリッカは、てんかん性発作のような深刻な病気を引き起こす可能性があります。 あまり知られていない事実として、(70~160Hz範囲で)より高い周波数の(意図しない)フリッカに長期間にわたってさらされた場合もまた、不快感、頭痛、そして視覚障害を引き起こす可能性があります。
残念ながら、自然の昼光下にいない限り、この高い周波数フリッカにさらされる可能性があります。これは、すべての主電源の光源は、白熱、ハロゲン、蛍光またはLEDであれ、フリッカを受けるためです。 その光源は電源のAC成分であり、フリッカの周波数は一般的に、電源周波数(通常は50または60Hz)と等しいか、電源周波数の2倍のどちらかです。
試験により、人間はこれらの高い周波数で光のフリッカを直接感受するのが難しいことが示されていますが、それはほとんど重要ではないように思われます。 科学者が行った研究によると、人間の眼の網膜は、たとえ被験者が意識していなくても、100~150Hzで光のフリッカを解像できることが示されており、この結果、脳が十分に反応している可能性があるという結論が出ています。
100~150Hz範囲でのこのいわゆる知覚できないフリッカの油断のならない影響は、周波数の働きだけにとどまりません。物理的、そして生理学的要因も大きな役割を果たしているのです。 たとえば、明るい光は薄明かりよりも悪影響をもたらし、光のパターンの「明るい」部分と「暗い」部分の違いは重要です(サイクルの「オフ」部分の間に完全に暗くなる光は、部分的に薄暗くなるだけの光よりも悪影響をもたらします)。 赤色光と、赤色と青色の交互の光は特に厄介なものとなり得ます。そして、網膜での光源の位置は、中央で感受する光は周辺部にある光よりも好ましくないため、重要です。
研究者の中には、網膜が最大200Hzのフリッカを感受することができるとも主張する研究者がいますが、試験によれば、160Hzを上回ると、フリッカの健康への影響は軽微なものにとどまることが分かっています。¹
フリッカの定義
近年まで、照明技術者は、知覚できないフリッカの影響に比較的無関心でした。 しかし、健康および安全に関する規則の強化、研究の向上、そして至る所に存在する蛍光灯を使用するオフィスでの従業員からの苦情の増加により、行動を求める声が上がりました。
しかし、フリッカの定義なしで、1つの光源がもう1つの光源よりも良いかどうかを誰が言うことができるでしょうか。 北米照明学会(IESNA)は、この課題に対処し、『The IESNA Lighting Handbook』の第9版において「パーセントフリッカ」および「フリッカインデックス」の定義を策定しました。 図1は、これらの値の定義方法を示しています。

パーセントフリッカは、光源の出力における周期変動の相対的な尺度(すなわち、変調率)です。 「変調指数」と呼ばれることもあります。
上記の図から、次の式で表すことができます。パーセントフリッカ = 100 x (A – B)/(A + B)
『The IESNA Lighting Handbook』によれば、フリッカインデックスは、特定の電力周波数でのさまざまなソースの出力における信頼できる相対的尺度であり、 光出力の波形やその振幅を考慮すると定義されています。 フリッカインデックスは、安定した光出力を0とし、0~1.0の値で表されます。 値が高いほど、著しいランプフリッカや、ストロボ効果の可能性が高いことを示します。
また、上記の図から、次の式で表すことができます。フリッカインデックス = Area 1/Area 1 + Area 2
LEDでの問題
LEDの物理的特性により、LEDは他の光源に対して異なる方法で給電される必要があることが決定づけられています(TechZoneの記事「Understanding the Cause of Fading in High-Brightness LEDs」を参照)。
LEDは、その名が表しているように、ダイオードの1つの形態です。 通常の操作では、LEDが伝導領域で動作するように十分な大きさの定順方向電圧が適用されます(一般的に、LEDは抵抗と直列接続されます)。 商用の高輝度デバイス向けの順方向電圧は一般的に、3~4.5Vの範囲です。 順方向電圧(VF)と順方向電流(IF)の関係は、電流がLEDの相対的な光束(本質的には輝度)を決定するため重要です。
デバイスメーカーは、一般的に輝度と効率の間で妥協となる、LED向けの狭い動作範囲を推奨します。
図2aおよびbは、CreeのXLamp ML-B LED向けの電圧対電流、および電流対相対的光束を示しています。 順方向電圧の変動により、順方向電流が影響を受け、したがって光束が影響を受けます。

AC源からLEDチップを給電するには、レギュレータが、ほとんどの国が使用している主電源である110V~115Vまたは230V~240V(周波数で50Hzまたは60Hz)を、LEDの少ない電圧および電流要件にステップダウンする必要があります。 照明器具は一般的に、1つの器具につき6個~8個のLEDチップを使用しているため、各ユニットの電力要件は単一のLEDの要件よりも高くなることにご留意ください。
LEDドライバの1つの基本形態は、電流を制限するために、LEDストリングが抵抗と直列接続されている全波整流器(図3)から構成されています。 このアプローチは、AC周波数の2倍(すなわち100Hz~120Hz)でLEDを変調します。 光度は電流に比例するため、LEDはこの速度でフリッカします(図4)。


AC主電源から電力を最終的に得るすべての光源は、フリッカする可能性があります。 しかし、LEDは、そのフリッカインデックス(または変調の深さ)が一般的に従来の光源よりも高いため、フリッカが多くなります。
これは、LEDが電流変動に特に素早く反応するためです。 120Hzで、LED自身とその白色光発光蛍光体の両方には、波形の「オフ」部分の間に光子の生成を完全に停止する十分な時間があります。 それとは対照的に、従来の光源、特に白熱およびハロゲンタイプの光源は「慣性」を有しています。 これは、サイクルの「オフ」部分の間であっても、依然としていくつかの光子を発していることを意味します。
表1は、DC源とAC源の両方から駆動されたLEDを含む、さまざまな光源のパーセントフリッカおよびフリッカインデックスの概要を示しています。²(「最小」、「最大」、および「平均」欄は、各光源の相対強度の概要を表しています。)
上記で述べたように、周波数に加えて、フリッカインデックスは、光から人々が受ける感覚に大きな影響を及ぼします。 フリッカインデックスが高いほど、その影響は顕著に表れる傾向があり、したがってより有害となる可能性があります。
| 最大 | 最小 | 平均 | パーセントフリッカ | フリッカインデックス | |
| 白熱 | 12.180 | 10.745 | 11.460 | 6.2594 | 0.0194 |
| 100W MH | 9.1472 | 3.2066 | 6.5147 | 48.088 | 0.1398 |
| T12磁気 | 9.6281 | 4.6256 | 7.1565 | 35.096 | 0.0897 |
| T5HO電子 | 10.52 | 9.960 | 10.20 | 2.734 | 0.0036 |
| LED @ DC | 43.4 | 41.0 | 42.2 | 2.84 | 0.0037 |
| フリッカありのLED | 15.996 | 0.0555 | 6.3026 | 99.309 | 0.4498 |
LEDドライバの向上
ほとんどの現代のLEDドライバは、高周波のスイッチング電源がその効率性により人気のある選択肢となっており、図3にあるシンプルな例よりも少し高度です。 スイッチング電源が利用する入出力フィルタリングにより、出力での主電源のAC成分が大幅に低減されますが、いくらかのリップルは回避できません。 いくつかのユニットは他のユニットよりもその影響が大きいため、技術者はLEDドライバを慎重に選択したほうがよいでしょう。
スイッチングLED電源は、出力のAC成分を減衰することでフリッカインデックスの低減に寄与する一方で、電源周波数の2倍であるフリッカ周波数は影響を受けず、人間にとって問題として研究者が特定した範囲内にとどまります。
影響力のある米国環境保護庁(EPA)は、LED向けの動作周波数を150Hzに上げることを推奨し、この問題への対処を試みました。 商業的に有利となるENERGY STAR認証を得るためにメーカーが遵守する必要がある、同組織のENERGY STAR仕様には、フリッカを対象とした仕様が含まれています。
2009年、フリッカに関する仕様が変更され、最小のLED動作周波数は150Hzであると明記されました。この値は、同仕様の旧バージョンで記載されていた120Hzよりも高い値です。 LEDおよび半導体メーカーは、製品を新しい周波数に合わせるのは非常にコストがかかることから、決して感心しませんでした。
2010年3月付の関係者宛ての手紙³で、EPAは譲歩して仕様を元の120Hzに戻し、今日に至るまでこの値が記載され続けています。
とは言っても、主電源に直接接続されながらも「フリッカなしの」電力を生成すると主張する多くのLEDドライバが市場に出回っています。たとえば、Cirrus Logicは、CS161x LEDドライバファミリ(CS1610-FSZ、CS1611-FSZ)を最近発売しました。 これらのチップは、100~120VACおよび220~240VACのライン電圧との使用に適しており、(フリッカインデックスを妥協するLEDドライバに対して困難な問題をもたらすことが多い)レガシーの調光スイッチとの使用時でもフリッカなしの性能を維持するという付加的利点を誇ります。
CUI Incはまた、全輝度で、およびV-Infinity VLED15(図5)と呼ばれる従来の調光スイッチとの使用時に、フリッカなしの性能を実現する定電流ドライバを提供しています。 このモジュールは、115VAC入力向けのタイプと、230VAC入力向けのタイプの2つのバージョンで入手できます。

もう1つのオプションとして、ROHM SemiconductorのBP5843Aがあります。 この製品は、113~170VAC電源でシリアルまたはパラレル接続される複数の高輝度LEDを給電するのに使用できる、11ピンSIPモジュールです。 このモジュールは、フリッカなしのLED電力の確保に寄与する低ピークツーピーク出力電圧リップルを特長としています。
要約
LED照明器具を設計する照明技術者は、高効率、長寿命、堅牢性などの、LED光源に関する多くの利点を挙げることができます。 しかし、消費者がソリッドステート照明下で不快感を受ける場合は、製品に不利な反応が起こる可能性があることを認識する必要があります。
フリッカは知覚できないかもしれませんが、それでも問題となり得るのです。 たとえば、フリッカのある蛍光灯を使用している職場の従業員は、平均よりも高い欠勤率の理由として即座に「シックビル症候群」を挙げました。 フリッカが不快感を引き起こす直接的な証拠はありませんが、近年の研究では、フリッカが原因の1つであることを示しています。
それに従って、フリッカ低減を念頭に置いてLED照明を設計するのが得策です。 優れた品質の高周波スイッチングLEDドライバを選択することを提案します。なぜならば、これらの製品は、出力での電圧および電流リップルにおけるAC成分を最小化し、LEDのフリッカの変調深さを制限するからです。 そして、その提案を確認するためのさらなる研究が必要ですが、出力リップルでのAC成分を150Hz以上の値に変換するLEDドライバを探し続けるのも名案です。これは、この周波数で、すべてのフリッカが健康に及ぼす影響はほとんどないという初期の兆候があるためです。
リファレンス:
- 「A Review of the Literature on Light Flicker: Ergonomics, Biological Attributes, Potential Health Effects, and Methods in Which Some LED Lighting May Introduce Flicker」、IEEE Standard P1789、2010年2月
- 「The Evaluation of Flicker in LED Luminaires」、Luminaire Testing Laboratory, Inc.プレジデントのMichael Grather氏
- 照明プログラムマネージャであるAlex Baker氏の公開状、ENERGY STAR、2010年3月22日付
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