宇宙対応部品の技術成熟度レベル
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2025-09-02
宇宙空間に製品を打ち上げることは、地上向け製品を市場に投入するよりも複雑です。宇宙環境下で使用される部品は、宇宙環境の過酷な条件に加え、メンテナンスなしで設計寿命まで確実に機能し、打ち上げ時に重量およびサイズ制限を満たす必要があります。
このような環境において、製品設計者は、宇宙アプリケーション向けにすでに設計、試験、および検証が完了した、宇宙用認定部品(QPS)を採用します。QPSは、米国航空宇宙局(NASA)が定義する技術成熟度レベル(TRL)において最高段階に達しています。
TRLは1~9までの段階を示し、製品のコンセプトから実用化に至るまでの進捗を反映しています(図1)。TRL1~3は、基本的なアイデアを概念実証(PoC)へと発展させる段階に焦点を当て、理論上の動作原理を実証することを目的としています。TRL4~6まで、部品は初期試験とシミュレーションが実施されます。TRL7および8では、試作の実地試験と技術の最終実証を通じて、コンセプトを完成させます。
図1:NASAのTRLは、初期のコンセプトから実証された性能までの進化過程を示します。TRL9に達した部品のみが、認められた基準に従って製造および試験された際に、QPS(宇宙用認定部品)とみなされます。(画像提供:Cinch Connectivity Solutions)
TRLが9に到達した製品は、実際の宇宙アプリケーションにおいて、その性能が実証済みであることを意味しています。この高いTRLレベルに到達することに加え、部品がQPSとみなされるためには、特定の試験方法に合格する必要があります。これらの要件を規定する基準は、部品の種類によって異なります。たとえば、QPSのアッテネータはMIL-DTL-3933、レベルTに基づく試験が必要であり、QPSの電子コネクタはNASAのEEE-INST-002に準拠します。
宇宙ベースのアプリケーションにおける固有の課題を理解することは、設計者が要求通りの性能を発揮する既存のQPSを選択し、構想から展開までの期間を短縮し、予定通りかつ予算内で製品を市場に投入するのに役立ちます。
アウトガスの克服
真空環境および極端な温度条件下での動作能力は、宇宙用部品が克服すべき最大の障壁の1つです。全地球測位システム(GPS)衛星が運用されている地球から1,234~22,234マイル(約1,980~35,782km)の高度にある中距離軌道(MEO)の真空度は、平均1mTorr~1μTorrです。同時に、これらのアプリケーションやその他のアプリケーションの部品は、日陰では-270°C、直射日光下では+121°Cという温度にさらされます。
真空や熱にさらされると、非金属部品はアウトガス(製造時に材料内部に閉じ込められたガスが表面に移動する現象)を起こす可能性があります。この移動により、材料内部に亀裂を生じ、材料が弱くなる場合があります。また、放出されたガスは、部品の他の部分で凝縮して凍結し、光学系のぼやけやセンサの汚れなどの損傷を引き起こすこともあります。
アウトガスの深刻さは、真空と熱にさらされた部品からの質量損失比(TML)によって測定され、元の質量のパーセンテージで表されます。メーカーはまた、回収可能な再凝縮物質量比(CVCM)のパーセンテージ、すなわち、より低温表面に凝縮するアウトガス物質の量を測定します。両方の試験はASTM E595プロトコルに基づき実施され、試料は+125°Cかつ5 x 10 -5Torr未満の条件で24時間保持されます。
ほとんどの電子部品は、非金属性絶縁やシールド材を使用しているため、QPSに指定されるためにアウトガス試験に合格する必要があります。Cinch Connectivity SolutionsのCinch Dura-Con™スペーススクリーン済みmicro-Dプラグおよびソケット(図2)もこれに該当します。Dura-Conコネクタの非金属部品、ピン周囲の熱硬化性絶縁体、およびエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)ワイヤ絶縁体は、試験において総質量の1%未満しか失わず、CVCMは0.01%未満です。
図2:Dura-Conコネクタは、低アウトガス性の絶縁材料を使用しており、NASAのLEO(低軌道)アプリケーション向けの電子コネクタ選択基準であるEEE-INST-002規格を上回っています。(画像提供:Cinch Connectivity Solutions)
これらのニッケルメッキコネクタは、超小型角型コネクタに関するMIL-DTL-83513規格に準拠しています。ピン数は9~100ピン、フットプリントは幅0.775インチ~2.160インチ(約19.7~54.9mm)、高さ0.298インチ~0.384インチ(約7.6~9.7mm)に対応しています。
その設計と低アウトガス特性により、NASAの電子コネクタの選択基準EEE-INST-002に基づき、高度1,200マイル(約1,931km)までの地球低軌道(LEO)でのアプリケーションに適しています。ハッブル宇宙望遠鏡、国際宇宙ステーション、そして世界規模の通信を可能にする超小型衛星群がこの軌道を周回しています。
EEE-INST-002規格では、電子コネクタの重要度を3段階に分類しています。レベル1コネクタはミッションクリティカル、レベル2コネクタは高信頼性が必要、レベル3コネクタは標準的な信頼性が要求されます。Dura-Conコネクタはレベル2の認定を受けています。
放射線障害の低減
真空や極端な温度といった危険に加え、宇宙空間の部品は放射線量の増加にも対応しなければなりません。地球の大気による保護がないため、これらの部品は紫外線(UV)放射の全スペクトルにさらされます。LEOの外では、ガンマ線やその他の電離放射線も懸念事項となります。放射線は非金属部品の寿命を縮め、また一般的に無線周波数干渉(RFI)や電磁干渉(EMI)を通じて電磁信号を劣化させる可能性があります。
Cinch Connectivity SolutionsのTrompeter QPS電気コネクタのように、これに対応する電気コネクタは、堅牢なRFIおよびEMIシールドを備えており、MIL-STD-1553Bデータバス規格に適合することができます。
また、金メッキベリリウム銅コンタクトとニッケル製ボディを含む、主に金属で構成されています。低アウトガス性のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)誘電体材料により、TMLは1.0%未満、CVCMは0.10%未満を実現しています。
宇宙定格のTrompeterシリーズには、2種類の接続スタイルのミニチュアコネクタがあります。TRBコネクタはバヨネット式ロック(図3)、TRTコネクタはネジ式(図4)で取り付けられます。各タイプには、複数の設計が用意されており、バルクヘッド、ケーブル端、またはプリント回路基板(PCB)を介しての接続が可能です。
図3:TRB宇宙対応ミニチュアバヨネットコネクタは、優れたRFIおよびEMIシールド性能と低アウトガス性を備えています。(画像提供:Cinch Connectivity Solutions)
図4:TRT宇宙定格ミニチュアネジ式コネクタは、バルクヘッド、ケーブル、またはPCBに取り付けることができます。(画像提供:Cinch Connectivity Solutions)
TRS超小型バヨネットコネクタ(図5)とTTS超小型ネジ式コネクタ(図6)は、大型コネクタと同等の堅牢な信号伝送性能を備えています。小型化により、衛星やその他の宇宙船の限られたスペースをより効率的に活用できます。
超小型部品はまた、宇宙アプリケーションにおけるもう1つの設計上の課題、すなわち軌道への打ち上げコストの問題も解決します。2025年時点で、LEOへの1キログラムの物体打ち上げコストは3,000ドルでした。これはスペースシャトル時代の1kgあたり50,000ドルに比べれば1桁以上安価であるものの、依然として重量は割高になります。超小型QPSコネクタは、軽量化とコスト削減に役立ちます。
図5:TRSの宇宙定格超小型バヨネットコネクタは、優れた信号伝送性能を維持しながら、打ち上げ重量とコストを削減します。(画像提供:Cinch Connectivity Solutions)
図6:TTSの宇宙定格超小型ネジ式コネクタは、低アウトガス絶縁材料を採用し、LEOアプリケーション向けの電子コネクタ選定基準であるNASAのEEE-INST-002規格を上回っています。(画像提供:Cinch Connectivity Solutions)
Trompeterコネクタの低アウトガス特性、軽量性、高品質な信号伝送性能により、LEOの通信衛星、MEOのGPS衛星、NASAの火星探査機に採用されています。
打ち上げに耐え、長寿命を実現する部品
コスト面での考慮は、宇宙空間に部品を打ち上げる際の設計上の課題の一部に過ぎません。部品は、打ち上げ時の加速度や振動、熱衝撃に耐えなければならず、これらの衝撃後も試験台上と同様の性能を発揮する必要があります。
MIL-DTL-3933規格は、無線やマイクロ波用の固定アッテネータに対する認定およびスクリーニング要件を規定しています。このアッテネータは信号の波形を歪ませることなく、その電力を減衰させます。この規格は、レベルTと称される具体的な指針を提供しています。
QPSアッテネータ(図7)は、MIL-DTL-3933レベルT要件に基づき試験され、これを満たしています。0dB~20dBまでの減衰値を±0.3dBから±0.7dBの精度で提供します。ステンレス鋼とベリリウム銅、PTFE誘電体、フッ素ゴムガスケットを採用しているため、アウトガス要件を満たすか、またはそれを上回ります。
図7:QPSアッテネータは、無線信号やマイクロ波信号の出力を0dB~20dBまで減衰します。GPS衛星や惑星間ミッションで使用されてきました。(画像提供:Cinch Connectivity Solutions)
これらのアッテネータには、最終用途を反映した3段階のスクリーニングレベルが用意されています。レベルAは、最大電力印加前後の減衰性能を全部品で確認するもので、非飛行用途向けです。レベルBは、宇宙飛行前の最低限のスクリーニングであり、熱衝撃や真空調整といった打ち上げ時のストレス要因が評価に追加されます。LEOに投入される衛星部品に使用されます。レベルCは、スクリーニングプロセスに熱サイクルと振動を追加し、静止軌道(地球から22,234マイル(約35,782km))およびそれ以上の軌道に向かう部品を含む、あらゆる宇宙向け部品に推奨されます。
まとめ
過去の宇宙飛行ミッションで成功裏に機能し、TRL9を達成したQPS部品は、長寿命でメンテナンスフリーであることが実証されており、極端な温度、衝撃、振動、真空、放射線に耐えることが可能です。QPSメーカー各社は、宇宙定格の宇宙用部品の100%が、現在および将来にわたって軌道上や深宇宙環境における運用課題に耐えられることを保証するスクリーニングプロトコルを開発しています。
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