低消費電力マルチプロトコルワイヤレスSoCで安全なライン電源駆動スマートデバイスの設計を簡素化

著者 Stephen Evanczuk

DigiKeyの北米担当編集者の提供

スマート照明やビルオートメーション向けのモノのインターネット(IoT)デバイスは、単純な制御ノードから、より高い演算処理能力、堅牢なセキュリティ、無線周波数(RF)性能の向上をサポートする必要がある、機能豊富な接続システムへと急速に進化しています。これらのデバイスの設計者は、部品コストとシステムの複雑さを最小限に抑えながら、マルチプロトコルコネクティビティ、高度なセキュリティ機能、電力効率といった多様な要件のバランスを取る必要に迫られています。必要なのは、新たなIoT要件に対応する先進的なワイヤレスシステムオンチップ(SoC)デバイスです。

本記事では、新たなIoTデバイスおよびシステムの設計者が直面する課題について解説します。続いて、Silicon Labsの次世代ワイヤレスIoT SoCが、高性能プロセッサと複数の専用サブシステムを組み合わせた超低消費電力アーキテクチャによって、これらの課題にどのように対応できるかを紹介します。

多様な要件による高集積化への移行の推進

LED照明、スマートプラグ、スイッチなどのアプリケーションで使用されるライン電源駆動型スマートデバイスは、より短い開発サイクルでより多くの機能を提供することがますます求められています。これらのデバイスの設計者は、厳しい部品原価目標を維持し、常時動作環境において予測可能な動作を実現しながら、より高い処理能力、複数の無線規格、堅牢なセキュリティの統合という厳しい要件に直面しています。

ワイヤレスコネクティビティの複雑さは、これらの課題をさらに深刻化させています。Bluetooth Low Energy(BLE)、Zigbee、Thread、Matterが共存するケースが増加しており、個々のプロトコルやマルチチップアーキテクチャに基づくソリューションは複雑化しています。外部コンポーネントによる複数の異種プロトコルのサポートは、開発を遅らせ、非効率を生む可能性があります。その結果、IoTの設計は、Silicon LabsのSiMG301/SiBG301シリーズ3ワイヤレスSoC(図1)のような、モノリシックワイヤレスSoCにシフトしています。これらは、アプリケーション処理、セキュリティ機能、ワイヤレス機能を単一のデバイス内に統合しています。

機能スタック全体を統合している先進的なワイヤレスIoT SoCの図図1:高度なワイヤレスIoT SoCは、機能スタック全体を統合し、従来のマルチチップソリューションと比較して設計効率を大幅に向上させます。(画像提供:Silicon Labs)

これらのSoCは、高性能、強固なセキュリティ、柔軟な接続性を実現する先進的なアーキテクチャにより、設計者がスマートデバイスに対する急速に変化する要件に効果的に対応することを可能にします。

新たなIoTアプリケーションの多様な要求を満たす統合アーキテクチャ

SixG301ファミリは、ライン電源駆動スマートデバイスに必要な全機能スタックを統合しています。ますます複雑化する演算要件に対応するため、SixG301 SoCは、デジタル信号処理(DSP)命令と浮動小数点演算ユニット(FPU)を備えた150メガヘルツ(MHz)のArmCortex-M33プロセッサコアをベースにしています(図2)。プロセッササブシステムは、このコアとオンチップランダムアクセスメモリ(RAM)、コパッケージフラッシュメモリ、ダイレクトメモリアクセス(DMA)コントローラ、デバッグインターフェースを組み合わせています。このアーキテクチャは、コネクティビティ、セキュリティ、エネルギー管理、クロック、タイマ、周辺モジュール用の専用ハードウェアブロックを備え、LED照明用の特殊機能を含め、スマートデバイスを幅広くサポートしています。

Silicon LabsのSixG301アーキテクチャの図(クリックして拡大)図2:SixG301ワイヤレスSoCアーキテクチャは、アプリケーション処理、ワイヤレスコネクティビティ、セキュリティを統合し、ライン電源駆動型スマートデバイスにおいてスケーラブルな性能とシステムの複雑性の低減を実現します。(画像提供:Silicon Labs)

設計者にとって、SixG301ファミリは幅広い要件を満たすスケーラブルなソリューションを提供します。Bluetooth接続をターゲットとしたスマートデバイス設計向けに、SiBG301 Bluetooth SoCシリーズはBLE、Bluetooth mesh、および独自の2.4ギガヘルツ(GHz)アプリケーションをサポートしています。SiMG301マルチプロトコルSoCシリーズは、同じBluetoothオプションをサポートすると同時に、Zigbee、Matter over Thread、OpenThreadなどの低データレート無線ネットワーク向けに、IEEE 802.15.4物理層(PHY)とメディアアクセス制御層(MAC)のサポートを追加しています。各ファミリ内では、個々の製品が追加の構成オプションを提供しており、最大512キロバイト(Kバイト)のRAMと、最大4メガバイト(Mバイト)のセキュア直接実行(XIP)QSPI(クワッドシリアルペリフェラルインターフェース)フラッシュを搭載しています。構成オプションにかかわらず、SixG301 SoCファミリの全製品は、次世代IoT機器に必要な同一の機能を備えています。

先進的なIoTアプリケーションは、堅牢なコネクティビティに依存しており、SixG301ファミリは、こうしたアプリケーションに典型的な高密度で干渉が発生しやすい環境においても、確実に動作するように設計されています。本ファミリの低消費電力ワイヤレス(LPW)無線機(図3)は、ワイヤレスプロセッサコア、RAM、専用の送受信信号を統合し、完全なコネクティビティサブシステムを提供します。

Silicon Labs SixG301 SoCの統合LPW無線サブシステムの構成図(クリックして拡大)図3:SixG301 SoCの統合LPW無線サブシステムは、専用の送受信機により堅牢なコネクティビティをサポートします。(画像提供:Silicon Labs)

LPWサブシステムは、信頼性の高いコネクティビティを維持するために必要な送信電力と受信感度を提供するように設計されています。本サブシステムは、1ミリワット(mW)(dBm)を基準に最大+10デシベル(dB)の出力電力をサポートし、アンテナの配置やエンクロージャの制約があるライン電源駆動設備環境においても、信頼性の高いリンクマージンを実現します。受信側においては、Bluetooth中心およびマルチプロトコルIoT設計に必要な感度を提供します。すべてのSixG301デバイスのBluetooth/BLEに使用される125キロビット/秒(kbits/s)のガウス周波数シフトキーイング(GFSK)変調において、受信感度は-106.8dBmです。SiMG301デバイスで802.15.4規格に採用されている250kビット/秒オフセット直交位相シフトキーイング(O-QPSK)変調においては、受信感度は-106.3dBmです。

安全性とエネルギー効率のあくなき追求

柔軟なワイヤレスコネクティビティオプションは、先進的なIoTアプリケーションの基盤となります。しかしながら、それらの接続とIoTデバイスのセキュリティは、強固なハードウェアベースのセキュリティ機能に対するあくなき追求にかかっています。SixG301デバイスは、Silicon Labsの多層式Secure Vaultセキュリティ技術の最高レベルであるSecure Vault Highを基盤としたハードウェアベースのセキュリティアーキテクチャを組み込んでいます。こららは、プラットフォームセキュリティアーキテクチャ認証フレームワークの最高レベルであるPSA Certified Level 4の認証を受けています。この認証を受けるには、デバイスは高度なソフトウェアおよびハードウェア攻撃(スケーラブルなサイドチャネル攻撃やフォールトインジェクション攻撃を含む)に対する堅牢な保護を提供する必要があります。これらはすべてSecure Vault Highレベルに含まれています。

このセキュリティアーキテクチャは、専用のセキュリティエンジンと独自のプロセッサを使用してハードウェアによる信頼の起点(Root of Trust:RoT)を確立します。暗号化機能と機密データがメインのCortex-M33アプリケーションコアから分離されます。この分離により、アプリケーションソフトウェアが侵害されても、暗号キーおよびセキュリティ上重要な操作は保護されたままとなります。Arm TrustZoneは、セキュアなコード実行と非セキュアなコード実行をハードウェアレベルで分離します。セキュアなキー管理では、物理複製困難関数(PUF)技術を採用し、電源投入時に固有のキーを生成します。このキーが抜き取られて複製されないよう、暗号化エンジンのみに認識され、デバイスの電源が切れるまでしか保持されません。

RoTとセキュアローダ(RTSL)によるセキュアブートは、認証済みファームウェアのみが実行可能となります。さらに認証済みXiP(AXiP)により、この保護がランタイムコード検証にまで拡張されます。自律型ハードウェア暗号アクセラレータは、メインプロセッサから暗号化処理やプロトコル処理を切り離します。これらの機能は、SixG301の侵入防御機能とともに、設計者がファームウェア更新の認証、認証情報の保護、IoTアプリケーションにおける信頼の維持を実現する、安全で高性能なデバイスを構築するのに役立ちます。

最小限の消費電力に向けたエネルギー管理は、常時接続のライン電源駆動をサポートする上で、同様に重要な役割を果たします。クロックおよび周辺機器のパワーゲーティングに加え、SixG301デバイスは複数の実行モードを提供し、設計者が性能と消費電力のバランスを動的に調整することを可能にします。アクティブモード(EM0)では、ホストプロセッサはすべての周辺機器と発振器を利用可能な状態でコードを実行します。通常、150MHzでWhileループを実行する場合、1メガヘルツあたり47マイクロアンペア(μA/MHz)を消費し、CoreMarkを実行する場合は62μA/MHzを消費します。スリープモード(EM1)では、プロセッサは非アクティブ状態のままですが、システムイベント発生時に素早く起動できる状態で待機し、すべての周辺機器が利用可能な状態を保ちます。このモードでは、クロック構成に応じて、消費電力は33μA/MHz以下に低下します。

最小限の動作しか必要としない期間には、停止モード(EM4)によりデバイスの大部分の電源がオフになり、消費電力はバックアップリアルタイムカウンタ(BURTC)を使用しない場合はわずか0.26μA、低周波発振器からBURTCを動作させる場合は0.75μAに低減されます。

これらのモードと柔軟なクロッキング、周辺機器のゲート制御を組み合わせることで、設計者はアプリケーションに求められる電力と性能の最適なバランスを実現できます。

統合されたアナログ機能がスマート照明機器の設計を簡素化する方法

幅広いIoTアプリケーションで必要とされる機能に加え、SixG301デバイスはスマート照明アプリケーションに特化したアナログ機能と電源機能を統合しています。単色および調光可能な白色LED電球アプリケーションにおいて、電力効率に優れたソリューションを提供するように設計された、オンチップLEDプリドライバ(LEDDRV)サブシステム(図4)は、チャージポンプと2チャネルのゲートドライバを統合し、電界効果トランジスタ(FET)に直接電力を供給します。これにより、暖色と寒色のLEDストリングライトを制御するための専用ドライバチップが不要になります。

Silicon LabsのLEDDRVサブシステムの構成図(クリックして拡大)図4:LEDDRVサブシステムは、効率的なLED電流制御に必要な機能を完全に提供します。(画像提供:Silicon Labs)

LEDDRV周辺機器は、電流監視や過電流保護を含む制御信号と監視機能を提供し、LED電流制御を簡素化します。たとえば、典型的なシングルチャネルLED照明アプリケーションでは、設計者はLEDDRV出力をLEDストリングライトを駆動する外部パワーFETに接続するだけで済みます(図5)。AC電圧、ドレイン電圧、ピーク電流の検出には汎用入出力(GPIO)ポートを使用します。

Silicon LabsのLEDDRV周辺機器の回路図図5:統合されたLEDDRV周辺機器は、外部パワーFETおよびセンシング回路を接続し、調整可能な白色照明アプリケーションでLED電流を制御します。(画像提供:Silicon Labs)

ソフトウェア制御においては、プロセッサがタイマブロックによって生成される2つのパルス幅変調(PWM)チャンネルを介してLEDDRVブロックを接続し、精密な調光および色温度混合を実現します。このアプローチにより、設計者はファームウェアを通じて滑らかな調光カーブや暖色から寒色への白色光の変更を実現できます。過熱動作から保護するために、設計者はソフトウェア制御を使用して、エネルギー管理ユニットの内蔵温度センサまたは外部センサからの測定値に基づいてLEDDRVブロックを無効化することも可能です。

LEDDRVブロックは、デュアルドライバおよびダイレクトドライブ構成もサポートしており、設計者は基本的に2チャンネル設定を超えて拡張したり、異なるパワー段のトポロジに適応したりすることが可能です。これらの照明向け機能をSoCに直接組み込むことで、SixG301デバイスは、ライン電源駆動照明システム向けに、より緊密な統合、より低い部品コスト、より小型の設計を実現します。

評価および試作リソースによる開発の加速

Silicon Labsは、評価と試作を加速するために設計されたハードウェアおよびソフトウェアのリソースにより、SixG301の開発をサポートします。

SixG301エクスプローラキット(SIXG301-EK2719A)(図6)は、USB給電開発プラットフォームで、設計者に小型で低コストな導入手段を提供します。4Mバイトのフラッシュと512KバイトのRAMを搭載したSiMG301モジュールを中心に構築されたこのボードは、追加センサや周辺機器用のソケットおよびコネクタを備えています。仮想COMポートとパケットトレースインターフェースを備えたオンボードJ-Linkデバッガにより、設計者は追加機器なしでファームウェア開発とワイヤレス評価を行うことができます。

小型USB給電開発プラットフォームを提供するSiliconのLabsのSIXG301-EK2719Aの画像図6:SIXG301-EK2719A は、迅速な試作のためのコネクタとオンボード J-Link デバッガを備えた小型のUSB給電開発プラットフォームを提供します。(画像提供:Silicon Labs)

より高度な開発と詳細な性能評価には、SixG301 Flash Proキット(SIXG301-PK6037A)(図7)は、SI-MB4002A BRD4002ワイヤレスProキットのメインボードと4Mバイトのフラッシュを搭載したSIXG301-RB4407Aプラグイン無線ボード、または8Mバイトのフラッシュを搭載したSIXG301-RB4408Aプラグイン無線ボードを組み合わせています。メインボードは、統合デバッグ、高度なエネルギー監視、システムレベルの統合テストのための包括的な周辺機器ブレークアウトを提供します。一方、両方のプラグイン無線ボードには、512KバイトのRAMを搭載したSiMG301、整合回路、およびプリント回路基板(PCボード)アンテナが含まれています。

Silicon LabsのSixG301 Flash Proキットの画像図7:SixG301 Flash Proキットは、豊富な機能を備えたメインボードとプラグイン式の無線ボード、デバッグおよび性能特性評価用のポートを組み合わせた製品です。(画像提供:Silicon Labs)

SixG301エクスプローラキットとSixG301 Flash Proキットは、いずれもSilicon LabsのSimplicity Studio開発環境に対応しています。同環境ではConfiguration Wizard、サンプルプロジェクト、Simplicityソフトウェア開発キット(SDK)へのアクセスが提供されます。これらのリソースを併用することで、設計者は初期評価から試作、量産対応設計まで効率的に進めることができます。

まとめ

LED照明、スマートプラグ、スイッチなどのライン電源駆動スマートデバイスの設計者は、最小限のコストで高性能、高信頼性、マルチプロトコルコネクティビティ、堅牢なセキュリティ、エネルギー効率を実現する必要に迫られています。Silicon Labの次世代シリーズ3ワイヤレスSoCであるSiMG301およびSiBG301は、関連開発ツールとともにこれらの要件をサポートし、迅速な開発のための拡張性に優れた基盤を提供します。

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著者について

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Stephen Evanczuk

Stephen Evanczuk氏は、IoTを含むハードウェア、ソフトウェア、システム、アプリケーションなど幅広いトピックについて、20年以上にわたってエレクトロニクス業界および電子業界に関する記事を書いたり経験を積んできました。彼はニューロンネットワークで神経科学のPh.Dを受け、大規模に分散された安全システムとアルゴリズム加速法に関して航空宇宙産業に従事しました。現在、彼は技術や工学に関する記事を書いていないときに、認知と推薦システムへの深い学びの応用に取り組んでいます。

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