過酷な環境で高電流の電源安定性を確保するための適切なコネクタの選択

著者 Art Pini

DigiKeyの北米担当編集者の提供

電源電圧の低下と負荷電流の増加に比例して、効率と熱管理のために抵抗電力損失と電圧降下を最小化する必要があります。電気自動車(EV)、航空宇宙、産業用電子機器などの電力アプリケーションでも、回路は衝撃、振動、極端な温度にさらされます。

設計者は、機械的に堅牢で、電気的完全性を維持し、拡張温度範囲で動作する電源コネクタを選択して正しく適用するために、これらの要件を認識する必要があります。

この記事では、最も要求の厳しい環境とアプリケーションに対する電源コネクタの選択と使用について説明します。そして、Harwinの電源コネクタの例を紹介し、機械的信頼性を確保しながら低損失で優れた電源安定性を実現するために、どのように使用できるかを示します。

高電力相互接続の考慮事項

高電流と高電圧をプリント回路基板(プリント基板)に接続する際には、細心の注意が必要です。接続不良は、電力損失や予期せぬ電気的破壊の原因となります。相互接続が極端な温度、衝撃、振動にもさらされる場合、問題はさらに大きくなります。電源コネクタの電流定格が不十分なため、設計者は必要な電流レベルを得るために複数のコンタクトを使用することを強いられる可能性があります。その結果、より多くのコンタクトを備えたコネクタは大型化し、プリント基板面積が増加します。また、電流経路が複数あると、不適切な挿入の可能性が高くなり、1つのコンタクトに過電流が流れることとなります。これらの問題に対する解決策は、シングルコンタクトの適切な電流定格を備えた電源コネクタを使用することです。

HarwinのKonaシリーズのコネクタについて考えてみましょう(図1)。これらのコネクタは、極端な温度、衝撃、振動の環境下でも、1コンタクトあたり60A、最大3000VAC(1分間)および1500VACまたは1500VDCピーク動作に対応できるよう定格が規定されています。

HarwinのKonaシリーズ 電源コネクタの画像図1:Konaシリーズの電源コネクタは、1500VACで1コンタクトあたり最大60Aに対応し、ヘッダ、パネルマウント、ケーブルマウントなどのバージョンがあります。(画像提供:Harwin Inc.)

Konaコネクタは、2、3、または4コンタクトの単列ハウジングで入手可能です。構成には、プリント基板ヘッダ、パネルマウントおよび、さまざまなロック配列のオスとメスのケーブルマウントが含まれます。これらは、ケーブル対基板、ケーブル対ケーブルの嵌合に使用できます。

これらのコネクタは、8.5mm(0.335インチ)の間隔でコンタクトを使用しています。この間隔と、極性キー構造で覆われた個別の埋め込み型コンタクトにより、コネクタの高電圧定格と高電流定格が確保されます。また、嵌合不良や不規則な物理的打撃による偶発的な損傷からの保護にも役立つ設計となっています。

このコネクタシリーズの高い電流定格と信頼性の秘密は、6本指のオスコンタクトにあります(図2)。

Harwinの6本指オスコンタクトの画像図2:6本指のオスコンタクトは、メスコンタクトの内壁に対して正の垂直スプリング力を提供し、衝撃や振動があっても良好な接続を確保します。(画像提供:Harwin Inc.、一部修正あり)

Konaシリーズのコンタクトはベリリウム銅製で、-65℃~150℃の最大動作温度範囲を実現し、過酷な環境に長期間さらされた場合に保護するため、耐久性のある硬酸金メッキ仕上げが施されています。コンタクトの定格嵌合回数は250回で、嵌合したペアのコンタクト抵抗は2mΩ以下です。最大定格電流60Aでのコンタクトペアの電圧降下は、わずか0.12Vです。

基板実装用のヘッダ

HarwinのKona KA1-MV10405M1は、プリント基板実装用の4コンタクト垂直ヘッダの一例です(図3)。

HarwinのKona KA1-MV10405M1ヘッダの画像図3:Kona KA1-MV10405M1ヘッダには4つのコンタクトがあります。コンタクト1の明確に視認できる識別マーカーと取り付けスタッドを示しています。(画像提供:Harwin Inc.)

ヘッダの本体はガラス充填高温サーモプラスチック製で、4.5mm(0.185インチ)の基板はんだテールを備えた4つの埋め込み型6本指オスコンタクトで構成されています。明確に視認できるエンボスマークにより、ヘッダの向きとコンタクト1の識別が可能です。また、内部のスレッドネジロックと基板実装スタッドにより、ジャックコネクタの嵌合ロックや、KA1-4240000スロット付き基板実装ナットを使用したプリント基板への機械的な取り付けが可能です。直角、水平の実装コンタクトおよび、代替ロック配列を備えたヘッダが入手可能です。メイクビフォアロックは、ロックの過程で破損する可能性を防ぐために使用されます。

ケーブルおよびパネル実装用のレセプタクル

Kona KA1-2010498F1(図4、左)は、4コンタクトのケーブルマウントレセプタクルハウジングで、HarwinのKona KA1-0400005(図4、右)のような個別コンタクトを使用します。このハウジングは、上記のKA1-MV10405M1 4コンタクトヘッダと嵌合します。

HarwinのKA1-2010498F1 4コンタクトレセプタクルハウジングとメスはんだコンタクトの画像図4:KA1-010498F1 4コンタクトレセプタクルハウジング(左)とそのシュラウド延長および、ハウジングに使用されるメスはんだコンタクト(右)を示します。(画像提供:Harwin Inc.)

メスケーブルマウントハウジングには、メスレセプタクルコンタクトとの偶発的な接続を防止し、嵌合コンタクトを電気的に絶縁する極性キー付きシュラウド延長が含まれます。Kona KA1-0400005コネクタソケットコンタクトでは、ケーブルにはんだ接続を使用します。これらのコンタクトは、#8 AWG装置ワイヤ用に設計されています。最大直径7.5mm(0.295インチ)のシリコーンゴム絶縁が推奨されます。

標準ジェンダーコネクタには、トルクドライバー用の六角ソケットキャビティを備えたフローティング蝶ネジが取り付けられています。ロック方向を反転させた逆固定ハードウェアには、エンクロージャのフロントパネルに取り付けるための長さ5.2mmのパネルマウントスタッドがあります。ロックハードウェアは耐腐食性のステンレス鋼製です。

ケーブルおよびパネル実装用のプラグ

Kona KA1-3010498M5(図5、左)は、KA1-2010498F1ハウジングのオスケーブルマウントバージョンで、KA1-1410005ピンコンタクト(図5、右)を使用します。

HarwinのKA1-3010498M5オスハウジング(左)とはんだバージョンの画像図5:4コンタクトのKA1-3010498M5オスハウジング(左)と、ハウジングに使用される6本指オスコンタクトのはんだバージョン(右)を示します。(画像提供:Harwin Inc.)

オスハウジングまたはプラグハウジングは、6本指オスコンタクトのはんだバージョンを使用し、メスバージョンと同じ#8 AWGワイヤを使用するように設計されています。このモデルのコネクタは、逆固定ロック蝶ネジを使用し、パネル実装用の逆固定ハードウェア付きメスコネクタと嵌合します。標準的なロックハードウェアも入手可能です。

小型で軽量

コネクタの物理的サイズは、60Aと3000Vの定格を考えると小型です(図6)。

Konaレセプタクルハウジングの寸法図の画像図6:Konaレセプタクルハウジングの寸法図から、小型であることがわかります。(画像提供:Harwin Inc.)

4つのコンタクトコネクタの長さ(A)は50mm(1.97インチ)、幅は12.5mm(0.49インチ)、高さは18mm(0.71インチ)です。プラグヘッダと嵌合するレセプタクルケーブルハウジングは、プリント基板からの高さが21.7mm(0.85インチ)です。嵌合ペアの重さは約25g(0.88オンス)です。

試験基準

すべてのKonaコネクタの設計は、EIA-364の適切なセクションに従って試験されています。電気試験には、コンタクト抵抗、電力、耐電圧、絶縁抵抗が含まれます。機械的試験には、衝撃と振動、挿入力と抜去力、熱衝撃、湿度、塩水噴霧が含まれます。振動仕様は、12時間接触不良なしで20Gピークです。同様に、衝撃仕様は、6ミリ秒間接触不良なしで100Gです。

Konaコネクタは、EV電源接続に適した耐衝撃性と耐振動性に加え、NASAとESAのガス抜け要件を満たしているため、宇宙、航空電子、無人航空機(UAV)のアプリケーションに最適です。

干渉に対するシールド

電磁干渉(EMI)と無線周波数干渉(RFI)に制限のあるアプリケーションでは、Konaコネクタがケーブルコネクタとヘッダコネクタの両方に対し、さまざまな軽量アルミバックシェルを提供します(図7)。

タイバンド付きの柔軟な編組を備えたHarwinのアルミバックシェルの画像図7:EMI/RFI保護のため、タイバンド付きの柔軟な編組を備えたアルミバックシェルが入手可能です。(画像提供:Harwin Inc.)

バックシェルは、耐摩耗性と柔軟性がある金属編組を収納できるように設計されており、編組をシェルに固定するためのタイバンドが付いています。バックシェルと編組の組み合わせにより、効果的なEMI/RFI保護のためのシールドを提供します。加えて、バックシェルはケーブルのさらなるストレインリリーフにもなります。

アセンブリ用工具

Konaコネクタは、最小限の工具しか必要としません。ケーブルコンタクトははんだ付けされているため、工具を使用せずに押し込むだけで挿入できます。コンタクトの取り外しや交換が必要な場合は、取り外し工具を利用できます。取り付けスタッドのスロット付きナットを締め付けたり緩めたりする際は、ドライバーも使用できます。

まとめ

8.5mmピッチ、高信頼性のKonaコネクタファミリは、最も要求の厳しい環境でも電源安定性を確保します。これらのコネクタは、追加の工具を必要とせず、迅速で簡単な嵌合プロセスを提供します。航空電子機器、UAV、人工衛星、EVおよび、過酷な環境で動作するハイパワーシステムを備えたその他のアプリケーションに最適です。

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著者について

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Art Pini

Arthur(Art)PiniはDigiKeyの寄稿者です。ニューヨーク市立大学の電気工学学士号、ニューヨーク市立総合大学の電気工学修士号を取得しています。エレクトロニクス分野で50年以上の経験を持ち、Teledyne LeCroy、Summation、Wavetek、およびNicolet Scientificで重要なエンジニアリングとマーケティングの役割を担当してきました。オシロスコープ、スペクトラムアナライザ、任意波形発生器、デジタイザや、パワーメータなどの測定技術興味があり、豊富な経験を持っています。

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