RenesasのRA0E1 MCUで価格と性能のバランスの取れた設計を実現
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2024-10-30
電子アプリケーション開発でゴーサインが出るかどうかは、結局のところお金の問題に行き着くようです。そのため、適切なMCU(マイクロコントローラユニット)を選択しようとする技術者は、性能と価格を天秤にかけなければならないという辛い課題によく直面します。Renesas Electronics Corporationは、コスト重視の組み込みアプリケーションに向けたArm®ベースの超低消費電力MCUで、そのような選択を容易にしようとしています。
電力効率に優れた低コストアプリケーションを開発する技術者にかかるプレッシャーは想像を絶します。競争上の問題、消費者や法人顧客の期待、技術革新の急速なペースなどを考慮する必要があり、完成品のコストやMCU性能の計算にわずかなミスがあるだけで成功が危うくなりかねません。
単なる構成要素の1つとはいえ、MCUはシステム全体のコストを評価する上で極めて重要です。単価が50セント違うだけでも、最終製品の生産量が10万個なら、5万ドルもの費用が追加されることになります。
それは氷山の一角に過ぎないのかもしれません。開発者が考慮しなければならないのは、MCUの実際の単価だけではないからです。プロジェクト予算に影響を与える可能性のある隠れたコスト要因には、次のようなものがあります。
- ソフトウェアツールや開発環境のライセンス料
- トレーニング時間
- テストとトラブルシューティング
- 周辺機器の必要性
- ファームウェアの開発
- 電源管理
- コンプライアンスと認証
生産数が少ない場合、MCUの価格差の影響はそれほど大きくならないかもしれません。しかし、その場合でも投資した費用を少ない生産数で償却することになるため、相対的に割高になる場合が多くあります。そうなると、プロジェクトは承認されなくなる可能性が高いでしょう。
消費電力と熱管理は、適切なMCUの選択をさらに困難にします。
MCUの消費電力が大きくなればなるほど、追加のコンポーネントを搭載する必要性が高まります。モバイルアプリケーションやポータブルアプリケーションでは高価なバッテリが必要となる場合もあります。同様に、消費電力が大きくなればなるほど発生する熱も増加するため、冷却技術を追加する必要性が高くなります。
必要以上の性能を備えたコンポーネントのために、本来の金額よりも多く支払いたいという人はいないでしょう。とはいえ、現場で十分に機能しないアプリケーションを作りたいという人もいないでしょう。コストと性能の最適なバランスを実現することがアプリケーションの成否の鍵となるのはこのためです。
最適なバランスの実現
MCUを選択する際に、計画されているアプリケーションの具体的な特長と機能の要件を満たす必要があるのは言うまでもありません。しかし、特に価格が重視されるアプリケーションの場合は、希望の予算内に収めることも必要です。そのような場合は、性能、消費電力、組み込み周辺機器の最適な組み合わせを見つける必要があります。
アプリケーションによっては、価格重視の度合いが他よりも高いものがあります。たとえば、家庭用のIoT機器では多くの場合、低コストのデバイスを求める消費者の期待を反映し、競争力のある価格設定にしなければならないという強烈なプレッシャーに直面します。産業用オートメーションアプリケーションの場合は無人での使用が多いため、通常は堅牢で信頼性の高いデバイスが求められますが、それでも価格やその他の考慮事項で競争になる可能性は高いのです。
価格と性能の適切なバランスを見つけるための第一歩は、性能要件を満たし、電力効率が高く、設計の柔軟性が高いMCUを選択することです。
一般的に、高性能のアプリケーションは処理能力が高く、クロック速度が高く、複雑なタスクを実行できます。そのような高価なMCUは、一般的に複数の周辺機器が組み込まれているためコンポーネントを追加する必要性を減らすことができますが、ほとんどの場合、ソフトウェアの開発とデバッグのコストが高くなります。
コスト重視のアプリケーション向けに設計されたMCUは、多くの場合、組み込み周辺機器が少なく、メモリ容量が限られ、設計の柔軟性が低いというデメリットを伴います。しかし、消費電力が少なく、バッテリ寿命が長いというメリットがあります。
価格重視のアプリケーションに適した機能豊富なRenesas製MCU
低コストアプリケーション用の選択を容易にするため、RenesasはRA0E1グループを提供しています。この機能豊富なMCUは最適化された周辺機器を内蔵し、超低消費電力を実現するため、開発者は設計を強化しつつ部品コストを削減できます。
エネルギー効率の高いArm Cortex-M23コアを採用し、内蔵タイマ、シリアル通信、アナログ機能に加え、セキュリティ機能とセーフティ機能を搭載したRA0E1 MCUは、コスト重視のアプリケーションの市場を直接対象とする製品です。
Arm Cortex-M23は、エネルギー効率に優れた動作を実現するエントリレベルの32ビットプロセッサとして設計されました。学習とプログラミングが容易なシンプルなアーキテクチャを備えたこのMPUコアは、ArmのTrustZoneセキュリティ技術を採用しており、デバッグ機能とトレース機能でアプリケーションを診断して最適化できるほか、エネルギー効率の高い低消費電力モードに対応しています。
RA0E1の消費電力はアクティブモードで84.3μA/MHz、スリープモードで0.82mAであるため、バッテリ駆動でエネルギー効率が重視されるアプリケーションに最適です。同製品の機能セットは、民生用電子機器、産業用オートメーション、セキュアIoTデバイス、ビルディングオートメーション、小型家電などの多様なアプリケーションに対応し、効率を高めます。
電源電圧は1.6V~5.5Vに対応しているため、5Vシステムに採用する場合でもレベルシフタや電圧レギュレータが不要です。また、高精度のオンチップオシレータを内蔵しているため、スタンドアロンのオシレータを設計に追加する必要がありません。同製品のオシレータはボーレートの誤差を改善し、-40°C~+105°Cの環境で±1.0%のボーレート精度を維持します。
複数の機能を1つのチップに統合したMCUは、追加コンポーネントの必要性を大幅に減らすことができます。この統合により設計を簡素化し、PCBフットプリントを削減して、最終的にはシステム全体のコストを削減できます。外部周辺機器を最小限に抑えられるよう、RA0E1には次のような多数のコンポーネントが搭載されています。
- 最大64KBの内蔵コードフラッシュメモリ、パリティビットを備えた12KBの高速SRAM
- 12ビットADC、温度センサ、内部基準電圧などのアナログ周辺機器
- UARTインターフェースx3、非同期UARTインターフェースx1、簡易SPI(シリアルペリフェラルインターフェース)x3、IIC(インターインテグレーテッドサーキット)x1、簡易IICx3などの通信用周辺機器
- SRAMパリティチェック、無効なメモリアクセスの検出、周波数検出、A/Dテスト、イミュータブルストレージ、CRC演算機能、レジスタ書き込み保護などのセーフティ機能
- 一意のID、TRNG(真性乱数発生器)、フラッシュ読み取り保護などのセキュリティ機能
開発環境と上位互換性
RenesasのFlexible Software Packageは、量産適用可能な品質のドライバや、Azure RTOS、FreeRTOSなどのミドルウェアスタックを含み、開発者に一般的な開発環境を提供します。また、アプリケーションをさらに高性能なRA MCUに移行する道筋を確保します。
Armコアの特長は高い互換性です。Cortex-M23はArmv8-M命令セットを使用し、他のCortex-Mコアアーキテクチャで使用されている命令セットと互換性があります。
RenesasのRA0E1 MCUは、RenesasのRA2E1 MCUラインのピンと互換性があり、周辺機器を共有できます。RA2E1は48MHzのArm Cortex-M23コアをベースとし、最大128KBのコードフラッシュと16KBのSRAMを搭載しています。このため、RA0E1で構築された設計を高性能のMCUにアップグレードすることができます。
Renesasは、RA0E1 MCUをベースとするアプリケーションの試作開発用評価ボードFPB-RA0E1 Fast Prototyping Board(図1)も発売しています。
図1:RA0E1マイクロコントローラアプリケーションの試作開発用FPB-RA0E1ボード。(画像提供:Renesas)
この評価ボードには、Arduino UNO R3インターフェースと2つのPmodコネクタが搭載されています。さらに、内蔵のSEGGER J-Link™エミュレータ回路を活用することで、ツールを追加することなくプログラムの作成とデバッグが可能です。
まとめ
RenesasのRA0E1 MCUは、コスト重視で超低消費電力のアプリケーションを価格と性能を妥協することなく開発するための優れた機能セットと周辺機器を搭載しています。また、複数の接続オプションに対応し、豊かなエコシステムが利用できる包括的な開発環境を実現することで、低BOMコストのアプリケーション開発を支援し、将来的にアプリケーションをさらに高性能なデバイスに移行するための道筋を確保します。
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