モバイルデバイスのための、Qi規格適合のワイヤレス充電ソリューション

著者 Ashok Bindra

Electronic Products の提供

健康管理のためのウェアラブルデバイスであれ、情報やコネクティビティのためのスマートフォンやタブレットであれ、消費者はどこででも機能する製品を求めています。 こうした要求の1つとして、充電器にケーブルやコネクタのいらないバッテリ充電ソリューションも求められているのです。 こうした市場の要求を満たすため、ワイヤレス充電がプラグインアダプタに替わる魅力的な選択肢として近年登場し、規格の登場によりその勢いを増しています。 この規格に基づいて、Texas InstrumentsFreescale SemiconductorIntegrated Device Technologyといったベンダが総合的なソリューションを提供し始めています。

ワイヤレスパワーソリューション開発の成功は多大な利益へとつながります。 調査・技術コンサルティング会社のIHSによると、今年末までに約1億台のワイヤレス電源デバイスが利用される可能性があります。 2012年には、ワイヤレス充電ユニットは推定でおよそ500万台しか存在しませんでした。 興味深いことに、この狭い新興市場の中で、3つの規格組織が競合しています。1 最初のワイヤレス電源規格はWireless Power Consortium(WPC)で、2008年に創設されました。代替的なソリューションとして、2012年にはPower Matters Alliance(PMA)がそれに続きました。 第3の取り組みとして、Alliance for Wireless Power(A4WP)も2012年に登場しました。2

最近になって、A4WPとPMAは、合流してワイヤレス電磁誘導充電に関する消費者のニーズに応えるための1つの団体を形成することに合意しました。 このアライアンスは、この技術が消費者に広く受け入れられるために重要な、相互運用可能なワイヤレス充電のエコシステムを作り出すことを狙いとしています。 A4WPはSamsung ElectronicsやQualcommなどの企業から支援を受けており、PMAはDuracellやAT&Tから支援を受けています。

電磁誘導充電

WPCの規模は他の規格団体をはるかに上回っており、加盟企業は200を超えています。また、そのワイヤレス充電規格であるQiも最も普及しており、600以上のQi準拠製品、5000万以上のQiデバイスが市場に出回っています。 WPCによれば、70以上の主要なスマートフォンメーカーがQi規格を利用しており、世界中で公道を走るもののうち約15車種で統合されたQi充電を備えています。

図1に示すように、Qiシステムは電力送信パッドと、ポータブルデバイス内の互換性のある受信コイルとにより構成されます。  2つのコイル間で電力を送信するために、Qiシステムは誘導結合を用います。 その結果、第1(トランスミッタ)コイルの電流は磁界を生成し、この磁界が第2(レシーバ)コイルで電流を誘導します。 この受信された電流が、バッテリの充電や負荷の給電に利用されます。 標準的には、2つのコイルの距離は5mmで、レシーバと結合することによりトランスミッタから引き出せる電力は5Wまでです。動作する周波数は100~205kHzの範囲です。 Qi v1.0と名付けられたこの最初の仕様は、2009年8月に公開されました。 トランスミッタの設計自由度を高めるため、その数年後にQi v1.1が登場しました。 Qi v1.1では、誘導距離をより大きくできます。 v1.1の仕様においては、Qi充電器は台上から40mm離れたQiレシーバに5Wの電力を送信できます。

一般的なワイヤレス充電システムの画像

図1:標準的なワイヤレス充電システムでは、2つの電磁的に結合したインダクタ、送信コイル、受信コイルを用いる。 送信コイルの交流が磁界を生成し、受信コイルに電圧を誘導する。 (Wireless Power Consortium提供)

Qi充電器により柔軟性をもたらすため、WPCは2014年夏、規格をバージョン1.2に更新しました。  Qi v1.2では、Qi規格においてすでに存在する電磁誘導技術に、共鳴充電を追加するよう現在の規格を拡張しました。 この規格では、メーカーはワイヤレス充電器を家具や机などの構造物の奥、目立たない場所に埋め込むことができ、直接接触、低コストの表面用途にも活用できます。 また、この規格は、v1.1のレシーバと互換性があります。

WPCによれば、会員企業はQi v1.2レシーバのプロトタイプを用いて、45mmの距離からの充電を実際に行いました。 さらに、既存のQi v1.1システムとプロトタイプのv1.2システムとの間における相互運用試験にも成功しています。 これは、モバイルデバイスはもはや充電パッドに直接接触する必要がないことを意味します。 結果として、1つのQi v1.2トランスミッタは複数のQiデバイスに同時に充電できます。 また、最新のQi仕様ではキッチン用に2000Wまでの給電ができます。

Qi準拠のソリューション

WPCの創設会員の1つであるTIは、システムのトランスミッタ側とレシーバ部の両方に用いるICを開発してきました。 TIは新たな会員と共にワイヤレス充電ポートフォリオを拡張し続けています。 昨年、TIはQi準拠の2つのモノリシックレシーバ、bq51020bq51021を発表しました。 シングルチップの5Wレシーバは、Qi v1.1仕様に対応するため、整流、安定化、デジタル制御、通信を行います(図2)。 TIによると、これらのレシーバICはQi準拠の携帯電話、タブレットおよびその他のエレクトロニクスを他のワイヤレス充電ソリューションに比べてより早くより効率的に充電できるよう調整されています。 レシーバはプログラム可能な出力電圧を最大8Vまで提供でき、オン抵抗の低いMOSFETにより、電力損失を50パーセントも減らすことができます。 また、bq51021はI2Cインタフェースを備えており、これによりシステム設計者は異物検知(FOD)や独自の「パッド検知」機能を実装することができ、レシーバと充電器をより簡単に合わせられ、より良いユーザ体験を提供できます。

Texas Instrumentsが提供するbq5102xシングルチップレシーバの画像

図2:TIのシングルチップレシーバのレシーバbq5102xは、Qi v1.1仕様に対応するため、整流、安定化、デジタル制御、通信を行う。

トランスミッタ側においては、TIは新世代のチップbq500212Aを追加しました。このチップでは、ソリューション完成に必要なコンポーネントがより少なくなり、USBポートまたは5Vの電源アダプタで動作できます。 これはWPCのv1.1タイプA5またはA11トランスミッタコイル仕様に適合しています(図3)。 要するに、このコントローラはQi v1.1準拠のレシーバチップに行うワイヤレス充電を制御するために必要なすべての機能を統合しているということです。 他の主な特徴としては、動的電力制限、FOD、および拡張されたParasitic Metal Object Detection(PMOD)があります。 サプライヤに応じて、チップの包括的な状態および障害監視機能により、Qiに準拠する、低コストで堅牢なワイヤレスパワーシステム設計が可能になります。

Texas Instrumentsが提供するbq500212AワイヤレスパワーレシーバICの画像

図3:TIのワイヤレスパワーコントローラIC bq500212Aを使用した標準的なトランスミッタ回路

昨年、TIはさらにデュアルモードの5Wレシーバ、bq51221を発表しました。これは通信および制御のプロトコルにおいて、WPCのQi v1.1およびPMAの両方の規格に準拠しています。 この単一のワイヤレスパワーレシーバチップは、パワー変換(整流および安定化)と、両規格のためのデジタル制御および通信を提供します。 追加のソフトウェア開発は不要です。 加えてこのチップは動的整流器制御を備えており、ソリューションのサイズを抑えつつ高い効率を提供します。

ワイヤレス充電器により電力を供給するため、TIは最近になってQi規格に準拠するとともに5W Qiレシーバと下位互換を有する、業界初の完全に統合された10Wワイヤレス充電ソリューションを公開しました。 このソリューションには、ワイヤレスパワーレシーバチップbq51025と、それに対応するワイヤレスパワートランスミッタbq500215が含まれています。 TIによれば、これらを組み合わせることにより、レシーバはプログラム可能な出力電圧4.5V~10Vをサポートし、10Wで最大84パーセントの充電効率を達成できます。 ワイヤレスパワーレシーバソリューションはわずか3.60mm×2.89mmの寸法に収めることができ、ポイントオブセール(POS)スキャナから携帯型医療診断機器、さらにはタブレットやウルトラブックといったパーソナルエレクトロニクスまで幅広い範囲のポータブル産業設計に組み込むことができます。 標準的なQi v1.1準拠のレシーバ回路は、図 4に示したとおり、ワイヤレスパワーレシーバチップbq51025に基づいています。

Qi v1.1準拠レシーバ回路の画像

図4:ワイヤレスパワーレシーバチップbq51025に基づくQi v1.1準拠のレシーバ回路。 出力は7V、最大出力電流は1.4A。

同様に、専用の周波数固定のワイヤレスデジタルトランスミッタbq500215は5Wまでの電力送信においてQi v1.1に準拠しており、プロプライエタリな双方向通信プロトコルを用いることによってワイヤレスレシーバbq51025に最大10Wの充電を行えます。 充電においては、FOD方式で物体を検知した後にのみ電力を送信し、過大な電力損失を検知した場合には動的に電源を切る機能を有します。  

要約すれば、電磁誘導充電技術は成長しており、TIなどのサプライヤは新たな規格に準拠する総合的なシステムソリューションを準備しています。 こうすることによって、サプライヤはチャンスの窓が大きく開いているうちに、急成長する市場への参入をうかがうメーカーの仕事を簡素化しているのです。

この記事で扱っている部品の詳細については、このページにあるリンクを使用して、DigiKeyウェブサイトの製品情報ページにアクセスしてください。

リファレンス

  1. ホワイトペーパー、『Wireless Power Consortium規格およびTIの準拠ソリューション入門』ビル・ジョンス、シニアアプリケーションエンジニア、Texas Instruments Inc.
  2. ホワイトペーパー、『A global wireless power standard will open the market, encourage consumers to live without power cords』ニランジャン・パタリ、bqTESLAワイヤレスパワー製品マーケティングマネージャ、Texas Instruments

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